「法と民主主義」をお読みください
本日は、日民協の機関誌「法と民主主義」の宣伝。
長年私も編集委員を務めているが、このところ毎号の出来がよいと思う。ひいき目ではなく、読むに値する誌面となっている。下記の一冊でも、目を通していただきたい。その上で、定期講読をしていただけたらとても嬉しい。
3月号 特集「原発災害を絶対に繰り返させないために パート?
ー3年目のフクシマは いま」
4月号 特集「憲法9条で真の平和を
ー徹底検証・安倍流『積極的平和主義』」
5月号 特集「安倍政権の『教育再生』政策を総点検する
ー『戦後レジームからの脱却』に抗して」
注文フォームは下記のとおりである。
http://www.jdla.jp/kankou/itiran.html#houmin
最近刊が4月号(№487)。4月下旬の発刊で、予想される安保法制懇の報告を予想して、安倍政権の「積極的平和主義」、「集団的自衛権行使容認問題」を本格的に取りあげている。浅井基文・剣持久木・浦田一郎・大内要三・稲正樹・山田健太・岡田俊宏などの執筆陣。この問題に関心を持つ人にとって、読み応え十分だと思う。
以下は、同号の紹介文。
「今号は、〈憲法9条で真の平和を──徹底検証・安倍流「積極的平和主義」〉と題する特集を組みました。安倍政権の外交姿勢ならびに歴史認識に対し、国際政治学者の浅井基文先生の「日米中関係と東アジアの平和」と題する論稿を筆頭に、歴史学者の剣持久木先生からは、日本を含めたアジアで今日、平和を構想する際に、「ヨーロッパの歴史和解」から何を学ぶのかについてお書きいただきました。そして、今年の2月に開催された当協会主催のシンポジゥム「徹底分析・安倍政権の『積極的平和主義』」でのご発言を改めて書き下ろしいただくかたちで、浦田一郎先生からは、予想される安保法制懇報告の内容とその論理、安倍政権の「積極的平和主義」の意味などについて「集団的自衛権容認─『必要最小限度』論と『積極的平和主義』」と題する論稿を。大内要三先生からは、昨年12月17日の3つの閣議決定などからうかがえる安倍政権の安保・防衛政策や日米共同演習、訓練等の先取り状況を分析、「安保政権の安保・防衛政策と自衛隊の動向」と題してお書きいただきました。
今特集は、安倍首相のいう『積極的平和主義』の問題点を各方面からえぐり出しています。真の平和をめざす運動に、役立つ内容となっています。
特集とセットで、特別企画として、去る3月5日に開催した法律家7団体共催によるシンポジゥム「秘密保護法廃止へ」から、平和・憲法9条の観点から、稲正樹先生より「安倍政権の進める戦争する国づくりと特定秘密保護法」と題し、山田健太先生からは、「国民の知る権利と特定秘密保護法─国際的観点から」と題し、適性評価制度の問題性と公務員労働者の人権の観点から、岡田俊宏先生は「秘密保護法と公務員論同社の権利・義務」と題する論稿を、そして、海渡双葉先生からは、結成された「秘密保護法対策弁護団」の活動についてご報告いただきました。「秘密保護法」の廃止を求める共同運動に役立てていただけるよう願ってやみません。」
私が編集を担当した5月号(№488)が、もうすぐ刷り上がって5月下旬に発刊の予定。特集は、「安倍政権の『教育再生』政策を総点検するー『戦後レジームからの脱却』に抗して」。そのコンセプトは以下のとおり。
安倍政権は、「戦後レジームからの脱却」を掲げ、「日本を取り戻す」と呼号している。その「脱却すべきレジーム」「取り戻すべき日本」の内実には、教育の在り方が深く関わっている。このことを政権側も強く意識して、憲法改正と並ぶ政策の柱に「教育再生」が据えられている。
本特集は、安倍政権が急ピッチで推し進めている、教育再生政策の全体像を総点検しようとする試みである。冒頭の堀尾輝久論稿がいみじくも述べているとおり、日本の国のかたちとしてのレジームは戦前の「帝国憲法・教育勅語体制」から、戦後の「日本国憲法・教育基本法体制」に大きく転換した。その戦後レジームの内実を再確認し再評価することが本特集の主眼のひとつである。
「よみがえり」を意味する再生には、復古のイメージが強い。しかし、安倍政権の教育政策は、そのような戦前回帰の復古主義的側面のみをもつものではない。明らかに、「グローバル時代」の経済体制を支える新自由主義に奉仕する教育が目指されている。臆面もない選別と差別、そして競争万能の教育である。一握りのエリートの人材と、その他の従順な労働力提供者育成の教育でもある。
「国家主義」と「新自由主義」、これが政権のめざす教育政策の二側面と言ってよいだろう。両者は、矛盾するものとしてでなく、相互に補完し合うものとして、教育政策を形づくっている。戦後教育改革が、民主的な社会の創造者として主権者にふさわしい平和で民主的な人格の完成を目的とした教育の理想の影もない。教育を公権力や政治勢力の支配から切り離し、民主的国家の明日の主権者を育てるにふさわしいものとする理念や制度は、いま危殆に瀕している。
巻頭の、堀尾輝久「安倍政権の教育政策ーその全体象と私たちの課題」は、以上の問題意識を総論として、論じ尽くしている。とりわけ、憲法問題と教育問題との関連について行き届いた論述がなされており、時代の背景状況から安倍政権の教育政策の全体像を把握するについての好個の解説となっている。
川村肇「戦後教育改革の内容とその後の変遷」は、本特集の問題意識に欠かせない歴史的背景についての論説である。戦後教育改革から説き起こして、安倍教育改革まで叙述して、その掉尾に、「既に旧教育基本法を葬った安倍は、新自由主義政策のさらなる遂行と、…日本の極右的改造をはかっているが、教育改革の内容も手法もこれらの一環である。今私たちは、国民窮乏と戦争への道の岐路に立っている。」と警告されている。
村上雄介「安倍政権の教育改革プランの全体像」は、自民党「教育再生実行本部」の「中間とりまとめ」の提言から、具体的な立法が実行に移されていることを述べ、焦眉の急の問題である地方教育行政法の改正問題や、教科書検定問題、教育再生推進法案(仮称)などの内容を明らかにしている。
俵義文「教科書問題の最近の動向と竹富町への『是正要求』」は、トピックについての報告にとどまらず、「究極の教科書国家統制をめざす検定制度の大改悪」強行を述べて、採択制度を詳細に論じて学ぶところが大きい。
村山裕「安倍政権の教育成策・競争と選別の思想」は、筆者が日弁連での取り組みを通じて見えてきたものとして、「国の経済的発展のための教育」の実態を解き明かしている。
齋藤安史「大学における教育・研究体制への影響」は、地方教育行政法改正に続いて国会上程となった、学校教育法改正(大学の自治骨抜き法案)の背景事情を詳細に論じている。
中村雅子「国立市教育委員の経験から」は、自身の経験から、教育委員会の活性化にヒントを与えるものとなっている。
竹村哲也報告は、「日の丸・君が代」反対のビラ配りの実践の中から見えてきた市民や生徒の反応のレポート。
安倍政権の教育政策と切り結ぶためには、その全体像を正確に把握することが不可欠である。本特集はそのための第一歩にふさわしいものと確信し、活用を期待したい。
(2014年5月17日)