澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

総選挙 低投票率の不気味

またまたの師走選挙の惨憺たる結果が重苦しい。自民の議席が291、公明35という数字が恨めしい。維新41も面白くない。これらの数字が、日本国憲法の運命への暗雲となっている。言うまでもなく、憲法の危機は平和の危機であり、人権と民主主義の危機でもある。

共同通信が次の記事を配信している。「共同通信社は15日、衆院選当選者(475人)のうち、立候補者アンケートで回答を寄せていた458人について回答内容を分析した。憲法改正に賛成との回答は84.9%に当たる389人で、改憲の国会発議に必要な3分の2(317)を大きく上回っていることが分かった。集団的自衛権の行使容認には『どちらかといえば』を含め計69.4%が賛成した。」

もっとも、同記事は、「共同通信社が衆院選に合わせて実施した全国電話世論調査(トレンド調査)では改憲反対が賛成を上回っており、国民の意識とは異なる可能性もある。」とつながっている。

絶望ばかりの状況ではないが、ひょっとするとあの忌まわしい時代の再到来…と危惧せざるを得ない。あの時代にも、旧憲法や治安維持法、国防保安法体制のなかで、気骨の政治家もあり、ジャーナリストもいた。しかし、議会の権威が失墜し、ジャーナリストの口も封じられた。そこから軍国主義、日本型ファシズムの芽が伸び広がった。

今回選挙では、民意が議会政治そのものを見限ったのではないかというあらたな危機感をもたざるを得ない。多くの有権者が、政治そのものあるいは民主主義の有効性を信用しなくなったのではないか。投票率の低下がそのことを物語っている。

実際、今回ほど白けた雰囲気の総選挙を知らない。有権者は、政治に期待があれば勇躍して投票所に足を運ぶ。2009年の「マニフェスト選挙」が好例である。このとき、投票率は69.28%であった。7000万人の有権者が投票をして、第1党の座を占めた民主党は、比例代表で3000万、小選挙区で3350万票を獲得した。民意が動いたことを実感させられた。

ところが、今回の投票率は「戦後最低」の52.66%である。実は、戦前の衆議院議員総選挙の投票率はけっこう高い。戦前戦後を通じての47回の総選挙での最低なのだ。これが白けた雰囲気の原因だ。前々回09年選挙に比較して2000万に近い人が投票を拒否したことになる。その結果、奇妙なことが起こっている。

09年選挙は民主党大勝・自民党惨敗の選挙として記憶されている。ところが、今回14年選挙における自民党獲得票数は、09年選挙の得票数に及ばないのだ。信じられないような本当のはなし。

  09年自民党比例得票数 1881万票
  14年自民党比例得票数 1766万票

  09年自民党小選挙区得票数 2730万票
  14年自民党小選挙区得票数 2546万票

自民党は5年前の得票数を回復していない。他党よりも、「票の減り方が少なかったから今回は勝てた」ということなのだ。これで「勝てた」「民意を得た」などと本当に言えるのだろうか。

この投票率の低下は、支配勢力の思う壺ではなかろう。もしかしたら支配勢力にとっても予定コースを外れた深刻な危機的状況なのかも知れない。

もう一つのテーマに触れておきたい。本日の東京新聞夕刊の一面トップの見出しが、「衆院小選挙区ー自民、得票48%議席75%」というもの。

記事の内容は、「小選挙区では、自民党の得票率(有効投票総数に占める自民党候補全員の総得票)は約48%で、議席占有率は約75%。自民党は、小選挙区に投票した人の二人に一人に満たない得票で、四分の三の議席を獲得した計算。
一選挙区から一人を選ぶ小選挙区制は『死に票』が多く、民意が正確に反映されにくい特色があるが、今回もその傾向が現れた。」というもの。

本来、議会とは民意を正確に映す鏡でなくてはならない。自民党は、下駄を履かせられた見せかけの多数であり第1党に過ぎない。この点においても、この度の総選挙において本当に安倍自民が国民の信任を得たと言えるのか疑問なしとしない。

安倍政権に驕る資格はない。
(2014年12月15日)

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Published in 月曜日, 12月 15th, 2014, at 23:56, and filed under 選挙.

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