2014年の最重要事件は「集団的自衛権行使容認の7月1日閣議決定」
年の瀬である。2014年を振り返って見なければならない。良い年ではなかったが、そのトップニュースは何だっただろうか。
上野千鶴子が「壊憲記念日」と名付けた7月1日の、集団的自衛権行使容認閣議決定をおいてほかにないだろう。この日憲法がないがしろにされ、政権が国の運命変更に舵を切った日。とりわけ「立憲主義に大きな傷がついた日」であり、「専守防衛の方針が打ち捨てられた日」と記憶されなければならない。
各メディアが、「今年の十大ニュース」を報じている。12月15日に、新聞之新聞社が主宰する「社会部長が選ぶ今年の十大ニュース」が発表された。在京の新聞・通信8社の社会部長らが出席しての選考会でトップになったのは、予想のとおり「集団的自衛権の行使容認を閣議決定」であった。ちなみに2位以下は次のとおりである。
(2)御嶽山噴火や広島の豪雨など自然災害相次ぐ
(3)消費税8%スタート、景気足踏みで再引き上げは延期
(4)衆院選で自公大勝、解散前に「政治とカネ」で女性2閣僚辞任も
(5)袴田事件で再審開始決定、48年ぶり釈放
(6)青色LEDで日本人3氏がノーベル物理学賞
(7)STAP細胞論文に改ざんなど不正
(8)朝日新聞が「吉田調書」、慰安婦記事の一部取り消し、社長が辞任
(9)危険ドラッグの事件事故が激増、規制強化
(10)朴槿恵韓国大統領めぐる報道で産経新聞の前ソウル支局長起訴
このほど共同通信社と加盟各社が選んだ今年の国内十大ニュースが発表になったが、やはりトップは「集団的自衛権の行使容認を閣議決定」であった。2位以下は大同小異だが、10位に「普天間飛行場の辺野古移設で国調査反対の知事が当選」がはいっている。
当然のことながらニュースの重大性の比重は各社・各紙で異なる。読売の十大ニュースには「集団的自衛権行使容認の閣議決定」はランクインされていない。12位である。しかも、「集団的自衛権を限定容認、政府が新見解」とネーミングが微妙に異なる。
共同通信加盟紙による閣議決定ニュースの解説をそのまま引用すれば、「政府は7月1日、従来の憲法解釈を変更し、自国が攻撃を受けていなくても他国への攻撃を実力で阻止する集団的自衛権の行使容認を閣議決定した。『国民の権利が根底から覆される明白な危険がある』などに限定する『武力行使3要件』を設けたが、行使できる範囲をめぐり自民、公明両党で意見が分かれる。歴代内閣は憲法9条の許す範囲を超えるとしてきただけに、専守防衛の理念を逸脱しかねない戦後安全保障政策の大転換だ」というもの。
このような「専守防衛の理念を逸脱しかねない」「大問題」「大転換」「最大級のニュース」であることが常識的な理解。
この閣議決定は、安倍政権によるこれからの改憲路線への布石である。自衛隊を海外に派兵して戦闘させるには閣議決定では足りず、具体的な法的根拠が不可欠である。閣議で憲法原則を壊しておいて、次には立法改憲の手続きにはいることになるわけだ。来年は、閣議決定に基づく具体的な安全保障法制のせめぎ合いの元年となる。その手はじめが、既に予告されている「自衛隊の後方支援恒久法」である。
「安倍政権は、来年の通常国会に、自衛隊による米軍など他国軍への後方支援をいつでも可能にする新法(恒久法)を提出する検討に入った。首相周辺や政府関係者が明らかにした。これまで自衛隊を海外派遣するたびに特別措置法を作ってきたが、新法を作ることで、自衛隊を素早く派遣できるようにする狙いがある。自衛隊の海外活動が拡大するため、活動内容や国会承認のあり方でどこまで制約をかけるかが焦点になる」(朝日)
自公政権が、国会内での議席数に驕って、数の力で憲法を無視した立法を強行できると思ったら大まちがいだ。まず、国会での自公政権の議席の数は、小選挙区制のマジックによって嵩上げ上げされた虚構の多数でしかない。しかも、「アベノミクス選挙だ」「経済再建この道しかない」と、争点をずらして掠めとった議席であって、憲法問題や安全保障政策についての国民の信任を得たものではない。
国民の目は醒めている。安倍の暴走がこれ以上になればあっさりと民意は離れることになるだろう。しかも、国民の現政権支持はアベノミクスへの期待が持続する限りにおいてのもの。安倍政権はいよいよキナ臭いが、民意を恐れてもいる。後方支援恒久法案の国会審議入りは来春の統一地方選への影響に配慮して、その後になるだろうと言われている。すべては民意にかかっているのだ。
今年のせめぎ合いは新年にもちこされる。まずは、来春の統一地方選挙が大きな政治戦として自公政権への信任の可否を問うことになる。新たな年は、新たな決意が必要な年となるのだろう。
(2014年12月30日)