「大阪市の廃止・分割 やめとこ アホらしい」
先週の土・日(5月9日・10日)は、大阪出張だった。市営地下鉄のアナウンスが、「5月17日の住民投票には、必ず出かけましょう」と、差し出がましい呼びかけを繰り返していた。市長の側は、投票率が上がることを賛成派に有利と見ているのだろう。
毎日(共同・産経)、朝日、読売の各調査すべてが、反対派優勢の結果となっており、橋下自身も街頭演説で劣勢を認めている。とりわけ、「女性に超不人気」と自ら口にしている。普通に考えてみれば当たり前の話し。負ければ即・橋下引退だ。このことをよく確認しておこう。
産経の報道では、「20代女性は調査のたびごとに賛成の割合が低下し、今回は初回の半分以下にまで落ち込んだ(賛成17・1%、反対60・0%)。また、70歳以上の男女も反対が賛成を大きく上回った。子育てや、70歳以上が対象の優待乗車証「敬老パス」に象徴される高齢者福祉など、身近な行政サービスの先行き不透明感に対する不安を投影している可能性もある。」
説得力ある反対派の論拠は、「大阪市内で集められた大量の税金が、大阪市「外」に流出することになるのです。その総額は、実に2200億円!もちろん、これは今、大阪市が担当している事業の一部が大阪府に引き継がれることになるので、その事業のための資金だと解釈できるのですが、2200億円の予算が大阪市外に流出し、それを現大阪市民の自治でその使い道を、現在の様に「管理」出来なくなるのは事実です」。
「年2200億円が大阪市から大阪府に吸い上げられ、市民には大損だ」「住民サービスが不便になる」「住民サービスが下がるのは嫌だ。政令市を守りたい。そう思うなら、反対と書きましょう!」この宣伝が効いている。
これに対する橋下の反論が、大阪の街をつぶすのではない。役所の仕組みをつくり変えるだけだ。「住民サービスが極端に下がることはない」(産経)というもの。これでは防戦にも反論にもなっていない。勝負あったというところ。
安倍と菅が、改憲問題への協力とバーターで橋下・維新にエールを送って、この問題を全国区マターにした。しかしおそらくは、両者の思惑に反してこの薄汚い取引が政権にも大阪維新にも裏目に出ているのだ。
橋下のこの問題での街頭演説をネットで聞いてみた。香具師の口上そのものではないか。およそ、論証というものがない。これに拍手を送っている聴衆がいるのだから寒心に耐えない。容易に口車に乗せられる、人のよい無防備な人々。悪徳商法被害が尽きないわけだ。
とは言え、賛成派は投票所に行くモチベーションが高かろう。反対派は相対的に低いことが予想される。世論調査のとおりの結果が出るかは予断を許さない。
本日の当ブログは、「大阪市解体住民投票」に、反対の立場の気利いたコメントを掲載してみる。発言者の氏名を省略するが、本日のブログのタイトルを含めて、すべて引用である。
二重行政の弊害を取り除いて、それで浮いたカネで、大阪経済の活性化と大阪財政の再建ができる、っていうんだから、こんなウマイ話はない。ウマイ話には気を付けよう。
大阪市長と知事のポストを同じ維新の会の人間が占めてこれだけの時間が経過しているのに、な〜んにもできていない。それがどうして、効率的に行政が運営されるようになると言えるのか…全然理解できない。
小保方晴子「STAP細胞はあります」⇒成功しませんでした。
橋下徹「都構想の効果はあります」⇒試算したらありませんでした。
「東京の繁栄は『都区制度』のおかげでなく、『一極集中』の賜物」
ひと言で言えば、東京の都区制度は自治体として不十分なものであり、それでも栄えているのは企業や人口が集中する首都だから、という話である。大阪の行政の仕組みを東京に似せて変えたからといって東京のように経済発展するはずがない、そもそも各都市の行政機構のかたちと経済情勢の間にほとんど関連がないことなど、子どもでもわかりそうなものだが、橋下は「金持ち東京みたいになるんです」と吹聴しつづけてきた。東京コンプレックスの強い大阪人につけ込む詐術的弁舌である。
大阪市を廃止・分割し、将来の経済効果を図る目処もなく、
必要経費ばかりが膨らむいわゆる「大阪都構想」。
政治をゲーム感覚で捉える権力志向のリーダーのわがままに付き合わされるのは、もううんざりです。
大阪市の廃止・分割より、市民・府民の毎日の暮らしの中には課題がいっぱい!
保育や教育の質の向上。若い世代の女性の就職難や貧困層の増大。女性シニア世代の独居問題。高齢者介護の問題。「大阪市廃止・分割はアカンやろ!」
橋下はこれだけの批判を浴びながらも、一向に反省することなく、「実務を知らない学者が批判している」といった反論を繰り返している。公務員を叩き、学者や教師を叩き、マスコミを叩き、大衆の「負の感情」を煽って自らの支持に変えてきたいつものやり方で、この住民投票を乗り切ろうとしているようだ。しかし、有権者は今度こそ、こうした橋下の反知性主義的な詐術に騙されてはならない。「大阪都構想」などというデタラメによって甚大な被害を受けるのは、ほかでもない、大阪市民自身なのだから。
橋下はいろいろ大袈裟に言う割には、実現しないか、実現すれば失敗だからです。
橋下はある案のいい面だけを強調し、悪い面を隠しているように思われます。世の中にそんなウマイ話はあるものではありません。その案実現の障害となる要因、あるいは、実現した場合の弊害などを検討し、あらかじめ手を打っておくべきなのです。しかし橋下はそれをしません。仮に大阪都構想がそんなに悪くないものだとしても、橋下がやれば失敗するでしょう。
橋下市長はどのタウンミーティングでも「平松さんのときにはたった教育予算67億円、たった67億円、ところが維新の会、もう大阪府と大阪市が一体となっていま政策をすすめています。教育予算は370億円、その額にして6倍です。そこまでもう増やしています」と、「教育予算」を5倍にしたと宣伝するのですが、これは教育予算全体ではなくて自分が重点投資した政策予算の部分だけ取り上げているのです。ちょっと考えれば、260万人人口のいる大阪市の教育予算が67億円とかありえないでしょう。
橋下市長と維新の会が「増やした」と言うのは、塾代助成や学校現場へのパソコン導入など、橋下氏肝いりの目玉施策を積み上げたものに過ぎないのです。橋下市政になったら、そこだけぐんぐん増えるのは当たり前でしょう。
橋下市長になってから、教育予算はその重点投資を合わせても減っているのです。
橋下市政では塾代を補助して、小学校は統廃合し、保育料は値上げしてます。そしてさらに、大阪「都」になったら市内の全保育所を民営化するというのです。まさに暴挙。
これでは子どもの数が減るのは当たり前です。
普通は旧システムから新システムに乗り換える時、新システムが安全であることを確認し、その場所を確保した上で旧システムを閉じる。しかし5月実施の大阪市住民投票では、新システムが確保できないのに旧システムをまず壊すことに同意せよと問うている。まるで住民は博打を強要されているかのようだ。
現在、橋下維新側は、17年間で2700億円程度の財政効果があると喧伝し、これが都構想賛成論の重大な根拠とされているが、この金額の内訳を知る人々は一般にはほとんどないだろう。しかし財政学者はその中身を冷静に分析し、これが如何に「粉飾」された「盛りに盛りまくった数字」であるかを明らかにしている。
財政学の森裕之・立命館大学教授は次のように指摘する。「大阪府市は特別区になった場合の財政シミュレーションを示しているが、再編効果には大阪市の事業の民営化(地下鉄・バスや一般廃棄物事業など)や『市政改革プラン』など、『大阪都構想』による二重行政の解消とは関係のないものが意図的に盛り込まれている。それらを差し引けば、純粋な再編効果は単年度でせいぜい2?3億円程度」。要するに、「大阪府と大阪市の二重行政が税金のムダづかいを生むというのが、『維新の会』が『大阪都構想』を主張する最大の根拠になっています。しかし、その主張には根拠がありません」(鶴田廣巳・関西大学教授・財政学)ということなのである。
なお、この問題では、もっとも充実している宮武嶺ブログ、「Everyone says I love you !」を是非参照されたい。写真や図解が親切で分かり易く説得力がある。今日の当ブログの記事の一部もここから引用させていただいた。
http://blog.goo.ne.jp/raymiyatake
5月17日住民投票の結果は、大阪の将来にかかわるだけでなく日本の民主主義や憲法改正問題にも影響が大きい。是非、「反対」の立場での運動にご協力を。
(2015年5月14日)