祝・「法と民主主義」創刊500号
日本民主法律家協会の機関誌「法と民主主義」創刊500号の記念誌が発刊となった。いまは、佐藤むつみさんに編集長をお任せして楽をさせてもらっているが、私も5年ほど編集長を務めている。そんなことで、500号のリードは、私が書いた。本日のブログはこれを転載して宣伝としたい。
ご注文は、下記のURLから。
http://www.jdla.jp/
「法と民主主義」500号の記念特集号をお届けする。
創刊号から、ほぼ毎月一号ずつを積み重ねての500号到達である。この間半世紀余。編集に携わった者には、いささかの感慨を禁じ得ない。
本誌は、この間半世紀余の法律家運動を紙面に反映させ続けてきた。積み重ねられた500号は、60年代以後の「平和と民主主義と人権」を目指した闘争の集大成である。それゆえ、本記念号は半世紀を振り返っての民主的諸運動について、とりわけ法律家が何をなしてきたかについての総括という壮大な特集となっている。
本誌の創刊号発行は、1962年1月である。その前年61年10月に結成された日本民主法律家協会の機関誌として、当時の誌名は組織名そのものの「日本民法協」であった。また、当時は隔月の発行であった。本誌が、単なる機関誌を脱皮したのが第46号(1970年4月号)以後のことである。誌名が改題されて、理念を冠した現題名となった。その新誌名第一号の巻頭には「『法と民主主義』創刊の辞」が掲載されている。以来年10回刊が定着して現在に至っている。今号は、通算しての500号となった。
よく知られているとおり、日本民主法律家協会は、歴史的な60年安保闘争の昂揚の中から生まれた。安保改定に反対した壮大な国民運動の一翼を担った「安保改定阻止法律家会議」が協会の前身である。当時、戦争の記憶は多くの人々に鮮明で、新たな日米軍事同盟の締結が憲法9条の理念を否定して、再びの戦争の惨禍を日本にもたらす危惧が多くの人に共有された。日本国憲法の理念と日米安保条約の論理との矛盾は、そのまま保守と革新、平和勢力と戦争推進勢力との拮抗を意味するものと認識された。
安保闘争が、平和と民主主義を求める統一戦線的国民運動であったことの反映として、日本民主法律家協会は多様な法律家運動の統一体となった。こうして発足した協会は、「独立と平和と民主主義を確立し、人権の擁護伸長をはかる」という目的のもと、運動団体であるとともに、運動に資する法的理論団体ともなった。そのことから、「法と民主主義」は、単なる機関誌であることを越えて、運動と法理論を結ぶ、他にない特徴を持つ定期刊行物となった。特に近年は、毎号特集テーマをもつ理論誌として定着している。
60年安保の国民運動の中で生まれた日民協の機関誌が、創刊55年を経たいま、安保関連法(戦争法)案の廃案を求める国民的運動の昂揚の中で、500号を迎えた。安保に始まり今の安保に至るこの半世紀余。本誌が、この半世紀を「独立と平和と民主主義」を掲げて歩んできたことの意義をあらためて本号で再確認したい。
本記念号の総合タイトルを「憲法の危機に抗し続けて」とした。改憲を党是とする保守政党による長期政権下、日本国憲法は危機にあり続けた。平和も、民主主義も危機の連続であり、私たちはこの危機に抗してのたたかいを続ける中で、日本国憲法やその理念を私たち自身のものとしてきた。そのようなたたかいの意義と誇りを込めてのメッセージである。
本号は3部構成となっている。
第1部「日本国憲法をめぐるたたかいと私たちの課題」は、500号記念誌を飾るにふさわしい3本の論文から成っている。巻頭論文にあたるものが、森英樹理事長の「日民協の『原点』と『現点』」。本誌500号時点に立って、日民協発足の理念とこれまでの法律家運動を振り返って、「原点」と「現点」に通底するものを見極めようとするもの。次いで、渡辺治前理事長の「日本国憲法をめぐる攻防の70年と現在」。法律家の役割に目配りの重点を置いて、日本国憲法の誕生から今日までの憲法運動を概観するもの。そして永く憲法裁判実務に携わってきた新井章弁護士「戦後70年・憲法裁判と私」である。この貴重な3本の論文を通じて、当協会発足の原点となった砂川闘争から60年安保、そしてその後の半世紀を通じた国民運動の中での法律家の役割を確認することができるだろう。
本号のメインとなるものが、第2部の企画「平和・民主主義・人権のバトンを引き継いで」である。
民主的な法律家運動の経験交流と意見交換、そしてその運動の記録による承継と発展こそが「法と民主主義」の関心事であり使命である。この半世紀、500号の紙面の積み重ねの中から重要テーマを選定して、バトンを引き渡す者と引き継ぐ者とに登場していただいた。具体的な諸課題について、かつてはどのようにたたかわれ、そしていまどのように承継され、発展したかの検証である。各課題について、先輩法律家がかつての経験を語り、そのバトンを受け継いだ若手が生き生きと現在の活動を語っている。
選定したテーマは、平和的生存権・核廃絶・基地撤去・歴史認識・国家秘密・表現の自由・子どもの権利・公務員の政治活動・教育の自由・生存権・労働基本権・労災職業病・女性差別・公害・薬害・消費者・納税者の権利、そして司法の独立等々。日本の民主的運動の中での法律家の役割が具体的に語られている。地域を越え、世代を越えての運動の交流と承継の成果を確認したい。
そして、第3部。貴重な資料や連帯のメッセージにも、目を通していただきたい。
本記念号は、安保関連法案(戦争法案)反対運動の盛り上がりの中で編集され発刊された。その運動の結果を盛り込むことはできていない。500号、飽くまで通過点である。今後の運動の糧にご利用いただきたい。(編集委員会・澤藤統一郎)
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戦争法案採決の不存在を主張し審議の続行を申し入れる緊急のメール署名は、醍醐聰さんが提唱し、一昨日の当ブログでも拡散を呼びかけたもの。
http://form1.fc2.com/form/?id=009b762e6f4b570b
署名数は昨日(9月23日)の24時00分現在で24,081筆となったとの報告である。23日の1日で7,256筆増えたことになるという。
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/blog/2015/09/post-bd74.html
「あんな採決は認めない」という市民の怒りの声を参院議長と特別委委員長に届けたい。未署名の方は、ぜひ緊急にお願いしたい。
(2015年9月23日・連続906回)