自・共の対抗軸の中に各党がある ー都議選の争点その8
朝日(デジタル版)の「都議選全候補者政策アンケート」の集計結果が興味深い。
http://www.asahi.com/senkyo/2013togisen/enquete.html?ref=com_rnavi
私は、政党の位置関係の座標軸の一極に保守の自民党を置き、他極に革新の共産党を置く。その上で、その他の諸党を、その2極の間の「中間政党」とみる。
民主党は自民と政権を争う「保守2大政党」の一員、公明党は自民べったりの同盟者、維新と「みんな」は自民の右側からの補完勢力、などというそれぞれの側面をもつが、所詮は社民・生活・みどり等々と同様の中間政党のひとつである。
憲法問題にしても、経済・財政問題にしても、暮らしと雇傭の問題にしても、あるいは原発問題にしても、政策選択は「自民対共産」の対抗関係における分布からのものとなる。財界の利益と国民の利益、秩序と自由、国家主義と個人の尊重、権威主義と個人の自律、新自由主義と福祉国家思想、国防と外交…。あらゆる対抗関係が「自民対共産」の座標の中に位置する。
だから、革新の共闘も、反自民の連携も、現体制批判の連帯も、共産党を抜いて語ることができない。
そのような目で、全候補者アンケートを見ると、自共対決の対抗軸が明瞭に浮かびあがってくる。そして、その他の政党候補者の意見のばらつきには意外性があって興味深い。
アンケートにおける質問は12問。憲法問題に直接関わる争点として2設問がある。まず、96条改正問題である。
問:「憲法を変えやすくする憲法96条改正に賛成ですか、反対ですか」
この問に対する賛成・反対・その他の回答は、各党で次のとおり。
共産党42人の候補者全員が「反対」である。これに対極の自民は、59人の候補者中53人が「賛成」で、反対はゼロ。6人が「その他」だが、「発議要件が緩やかになれば、『反日自虐的改悪』が容易に実行される事態も十分考えられるので要注意」(古賀俊昭)という意見などを含んでいる。維新は、総数34のうち賛成24・反対0・その他9(無回答1)である。「右からの補完勢力」というにふさわしい。ところが「みんな」は、やや傾向が異なる。賛成10・反対2・その他8と、賛成が半数に過ぎず、反対が2候補も。明らかに、みんなの党内部に憲法問題での動揺と逡巡が感じ取れる。世論の風向きを、改憲一辺倒では支持を得られないと読んでいるのだ。
民主党は、総候補者44名中、賛成1・反対40・その他3、と意外にも親憲法的である。これも、憲法運動がつくりだした世論の反映と見るべきであろう。そして、公明党が候補者23名のうち、賛成0・反対1・その他22。端的に賛成・反対を言わぬところが、いかにもこの党らしい。
ついで、憲法9条と国防軍問題である。
問:「安倍首相は憲法9条を改正し自衛隊を国防軍に、としていますが、賛成ですか、反対ですか」
これについても、共産党42人の候補者全員が「反対」である。これに対極の自民は、59人の候補者中56人が「賛成」で、反対はゼロ。3人が「その他」だが、「国防軍という名称が適切かどうか」というレベル。維新は、総数34のうち賛成12・反対3・その他6(無回答3)。「みんな」は、総数20のうち賛成5・反対5・その他10。両党とも、けっして賛成一色ではなく、意見が割れている。
また、民主党は、候補者44名中、賛成1・反対32・その他7、とこれも意外に親憲法的である。そして、公明党が候補者23名のうち、賛成0・反対22・その他1、とこちらはきちんと「反自民」である。
主軸の双極をなしている共産党と自民党は、世論の風向き如何にかかわらず、それぞれの政策を打ち出さねばならない。共産党は革新の、自民は保守の政策を語る立ち場にあるが、その余の諸政党は、世論の風向き次第で、自共の間のどこかに位置を決め、その位置での政策を語っている。そして今、選挙政策を見る限り、自民以外の各党は、自民と距離を置いた方が票を取れると踏んでいる。そのような世論の動向であり、そのような向きに風が吹いていることに自信を持ちたい。
中間政党の政策は、世論次第で自民党寄りにもなり、共産党に接近もする。共産党の政策に接近した中間政党は、反自民の有権者の投票を、共産党にまで行きつかせずに吸収する役割を演じる。反自民の世論が盛りあがるとき、共産の議席が減るという不思議なジンクスには根拠があるのだ。
いずれにせよ、政策の次元においては自共対決の構図が鮮明である。議会内の勢力において自共が拮抗する事態となれば、真に国民の前に進むべき方向をめぐって堂々たる論戦を展開する本物の「討議をする議場」が出現するだろう。国会でも、都議会でも。
(2013年6月20日)