澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

改憲実現へ?票を掠めとる国民欺しの大作戦

アベ晋三でございます。日本会議国会議員懇談会特別顧問のアベ、神道政治連盟会長のアベ、みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会のアベでもございます。また、行政府のトップであるだけでなく、時折は立法府の長までも兼ねているワタクシ。要するに右翼の軍国主義者で権力を掌握しているアベ晋三なのでございます。本日は、自民党総裁として、また、改憲勢力のリーダーとして、ここだけの話しを身内の皆様方に申しあげるわけでございます。

7月10日の参院選投票日まで、ちょうどあと一月となりました。6月22日が公示日で、7月10日に投開票が行われます。この選挙は、この道しかない我が国の今後にとってこの上ない重要な選挙なのでございます。

何となれば、敗戦によってGHQに押しつけられ、心ならずも涙とともに飲み込んだ日本国憲法を、いまこそ改正して真の日本を取り戻すまたとないチャンスだからでございます。我が国においては、いまだに戦後民主主義の外来思想に毒された蒙昧な輩が社会の隅々にまではびこっています。彼らは、個人の尊厳が原点だ、個人の尊厳を守るために国家の権限を制約すべきだ、などと言っています。国が強くなっては、国民個人の権利を圧迫するから、国は弱くてもよい。いや、国は強くなってはならない。むしろ権力は弱いに越したことはないなどとまで。このような亡国の暴論が幅をきかせています。その根拠となっているのが、日本国憲法。護憲勢力と言われる連中が、憲法に基づいているとしてこの暴論を喧伝しています。これが、我が国の嘆かわしい現実なのでございます。

言うまでもなく、国家は強くなければなりません。富国強兵こそが、維新以来の正しいスローガンなのでございます。人権だの平和だのと、軟弱なことを言っていては、近隣諸国に侮られ貶められて、やがては国の存立を危うくすることになることは火を見るよりも明らかではありませんか。

個人の尊厳を確立する以前に、強固な国家の建設をこそ重視しなければなりません。基本的人権の尊重よりは、国家の公序確立を優越する価値としなければなりません。しかも、その国家の公序において、その中心に天皇陛下を戴くのが、古来よりの我が国の国柄ではありませんか。

精強な国家は、何よりも強い経済によって支えられます。富国がすべての基礎となります。富国が実現してこそ、人心は安定して国家を信頼し、強兵たる軍隊を作ることができるのでございます。

その点、いろんな批判を受けながらもアベノミクスは正しい政策であると自負しております。つまり、アベノミクスとは、国民個人を豊かにする目的を持つものではなく、強兵のための富国をこそ目的とする経済政策なのでございます。貧富の差はあってよい。不安定雇用も、男女賃金の格差も、子どもの貧困も、そんなことは些細な問題。要は強兵のための財政支出を可能とする強い国家の基礎となる経済であればよいのでございます。

しかし皆さん。いま、そのような本音を口にしようものなら、「憲法違反だ」「日本国憲法を理解していない」「アベは立憲主義を解ってない」「アベ政治を許さない」と、集中砲火を受けることが目に見えています。ですから、ここは隠忍自重、賢く対処しなければなりません。

アベノミクスはいずれ国民を豊かにする、と有権者を引っ張り続ける策略が必要なのです。端的に言えば、国民を欺さねばなりません。戦後レジームから脱却して、真正の日本を取り戻すためです。正しい政治を行うという目的のためですから、嘘が許されて当然なのでございます。

日本国憲法こそが、戦後レジームの骨格であり、強い国家の敵対物であり、また、非日・反日と自虐史観の根源なのですから、憲法改正の実現までは、じっと我慢で本音を隠し続けねばならないのでございます。

政治家の評価があっという間に地に落ちる恐ろしい世の中であることは、オリンピック招致であんなにはしゃいでいた東京都知事も、二代続いて、あっという間に炎上して袋だたきに遭っていることが証明しています。猪瀬も舛添も、所詮はジャーナリストや学者であって政治家ではありません。上手に嘘がつけないのでございますよ。その点、私は三代目の生粋の政治家ですから、嘘のつきかたの呼吸はよく心得ているのでございます。

舛添は、「せこい」「せこすぎる」として攻撃されています。ここが面白いところ。本来、政治家のつつましさは美徳。せこさを非難される筋合いはありません。でも、庶民には「せこい不祥事」はよく分かるのです。反応しやすいのです。二泊三日の正月の家族旅行の費用を政治資金の流用で捻出するなんてことは、常に身銭を切らざるを得ない我が身との比較で容易に怒り心頭の対象となるのです。私の海外旅行の金額などはケタが違います。でも、堂々とやってのければ、庶民には想像もできないこととて怒りが現実化してこないのでございます。

ともかく、本音を隠すこと、上手に嘘をつきとおすことが肝要なのです。そうすれば憲法を改正する絶好のチャンスがやって来る。その大事なときに、舛添のようなヘマを犯してはならないのでございます。本音は隠して、票をかすめ取る。憲法改正は争点にしない。でも勝てばこっちのもの。「国民の信任を得た」として、改憲に踏み出すのでございます。

ご承知のとおり、憲法を改正するためには各院の3分の2の議員による発議が必要。ですから、今回の改選議席で3分の2をとるためには、改憲勢力は78の議席をとらねばなりません。もちろん、自民党単独では無理。下駄の雪の公明党と一緒でぜひ78議席を。それでも足りなければ、頻りに政権への擦り寄りを目指している、おおさか維新も一緒にして78議席。

改憲を阻止しようという、民主・共産・社民・生活4党は、改憲の危機意識から共闘を組んだのでございます。けっして侮ることはできません。彼らの目標は、改憲3党で3分の2をとらせないこと。今回改選121議席のうち、78議席をとらせないこととなります。

われわれ改憲派の陣営は、どうすれば78議席をとることができるか。勝敗を左右するのは32ある一人区でございます。この32の一人区すべてで野党統一候補が立つことになりました。由々しき事態といわねばなりません。

わたくしは、選挙遊説を、被災地視察として福島、大分、熊本から始めました。次いで、山梨、そして昨日(6月9日)山形、本日(6月10日)は奈良、三重両県と、すべて一人区をまわっています。

そして、訴えるのは、「景気回復、この道しかない。」ともっぱらアベノミクスの成果。乏しい成果を針小棒大に言わねばなりませんが、嘘をつくのは慣れたもの。また、従順な国民の皆さまは、結構その気になって、欺されてくれるのでございます。

もう一つの訴えは、「野党統一候補が、民進党と共産党の両党に共通する政策を作れるはずがない。民進か共産か、どちらの考え方に賛成するのか、はっきり示すべきだ」と言う分断作戦です。自民党と公明党の関係はどうなんだ、と切り替えされたりもしますが、両党は基本姿勢も政策も一致ですから、問題はないのでございます。

改憲のくわだては後景に引っ込め、アベノミクスの成果を針小棒大に宣伝して票を掠めとろうとする、国民欺しの大作戦。その内容につきましては、くれぐれも内密にお願い申しあげる次第でございます。
(2016年6月10日)

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