いよいよ明日が投票日ーアベ非立憲政治にノーの審判を
6月22日に公示の第24回参議院議員通常選挙。18日間の選挙戦が本日終了して明日(7月10日)が投票日となる。
日本の命運に関わる今回の選挙。関心の焦点は、改憲勢力に3分の2の議席をとらせるのか否か。各メディアの調査では、軒並み厳しい獲得議席予測となっている。しかし、私には信じがたい。国民の護憲バネを信じたいし、選挙戦最終盤での巻き返しにも大いに期待したい。
何よりも、選挙区議席73のうち32を占める1人区の全選挙区で成立した、市民と4野党の共闘の成果に注目したいし、比例区ではアベ政治と真っ向対峙する日本共産党の勝利を願う。
アベ政権は、紛れもなく壊憲政権であり、非立憲政権である。けっして、戦後の保守本流の自民党政権ではない。右翼政権であり、好戦政権と言ってもよい。日本国憲法大嫌い政権なのだ。
その姿勢は、直接憲法攻撃に向けられているばかりではない。教育とメディアに対する統制にも色濃く表れている。沖縄問題や歴史認識、さらには原発(核)についても、家族法制についても同様である。
分けても、解釈改憲についての突出した姿勢には驚くばかりだ。
私は長く、「憲法9条は専守防衛の立場を認めている」という論者を憲法解釈を歪める論敵ととらえてきた。「自衛のための必要最小限度の実力を逸脱しない限り、自衛隊は9条2項で保持を禁じられた戦力に当たらない」という政府解釈を9条破壊の謬論とし、1954年以後はこの考えで一貫している内閣法制局こそ謬論の元凶と考えてきた。
ところが、アベ政権になって事態は一変した。アベは、専守防衛など生温いとして、海外で戦争ができる道を開こうと言うのだ。歴代の内閣法制局は、専守防衛を合憲解釈とするために、「個別的自衛権の行使は違憲ではないが、集団的自衛権の行使は憲法上容認し得ない」と主張してきた。アベはこの法制局見解を邪魔として、一線を踏みこえた。しかも、内閣法制局長官の首のすげ替えという強硬手段をもってしてのこと。
そうして、閣議決定で憲法の解釈を変え、国民の強い反対を押し切って戦争法を強行させた。無茶苦茶な話だ。今は、その戦争法廃止が最大の課題となっている。
専守防衛論、集団的自衛権行使違憲という、かつての内閣法制局の考え方が、アベ政権によっていとも簡単に否定され排除された。その結果専守防衛論者は、アベ壊憲に反対する立場において、自衛隊違憲論者と目的を共通にする味方になった。アベが極端な立場に位置しているからである。
明日の投票では、アベ政治に対する批判票の集積を期待したい。戦争法廃止も、選挙結果次第で道が切り開かれる。
アベ政権は、今回選挙でも徹頭徹尾の争点隠し争点はずしの戦略をとっている。明文改憲にも、戦争法の必要性にも触れない。戦争法成立時には、説明が足りなかったことを認めて、「国民の皆様の理解が更に得られるよう、政府としてこれからも丁寧に説明する努力を続けていきたいと考えております」と殊勝に述べたものだ。にもかかわらず、今回選挙ではまったく触れようとしない。徹底して争点化を避ける方針なのだ。それでいて、選挙が済んだら、南スーダンへの自衛隊派遣発表の段取りとされている。欺されてはならないと思う。
戦争法は、政権主張のとおりの抑止力となっているだろうか。果たして平和に寄与するものだろうか。むしろ、近隣諸国との軍事的緊張を高める愚策なのではないか。一方の「挑発行為」に、もう一方が軍事的な対応をすれば、結局は軍事対立・軍事緊張のエスカレーションをもたらすことになる。アベ政権は、そのような軍事緊張をもたらす政策をもてあそんでいるのだ。戦争の惨禍をもたらした戦前の軍国主義への反省を忘れ去っている。
平和を願い、立憲主義を取り戻すという願いが結実する明日の投票日であって欲しいと切実に思う。
(2016年7月9日)