「DHC」「DHCシアター」「東京MXテレビ」そして「長谷川幸洋」に、『デマ』と『ヘイト』の刻印をーDHCスラップ訴訟を許さない第100弾
本日(2月2日)の東京新聞1面に、「『ニュース女子』問題 深く反省」と、社としての謝罪記事が出ている。いささか遅きに失した感は否めないが、さすがに東京新聞。誠実に詫びるべきを詫びている。
記事には、「論説主幹・深田実が答えます。沖縄報道 本紙の姿勢は変わらず」とサブタイトルがついている。この記事掲出まで社内でいかなる論議がなされたかは知る由もないが、社としての本格的な取り組みとの姿勢を窺うことができる。これなら、読者の信頼を繋げるのではないか。
謝罪記事の全文を引用しておこう。
「本紙の長谷川幸洋論説副主幹が司会の東京MXテレビ『ニュース女子』1月2日放送分で、その内容が本紙のこれまでの報道姿勢および社説の主張と異なることはまず明言しておかなくてはなりません。
加えて、事実に基づかない論評が含まれており到底同意できるものでもありません。
残念なのは、そのことが偏見を助長して沖縄の人々の心情、立場をより深く傷つけ、また基地問題が歪めて伝えられ皆で真摯に議論する機会が失われかねないということでもあります。
他メディアで起きたことではあっても責任と反省を深く感じています。とりわけ副主幹が出演していたことについては重く受け止め、対処します。
多くの叱咤の手紙を受け取りました。
『1月3日の論説特集で主幹は「権力に厳しく人に優しく」と言っていたのにそれはどうした』という意見がありました。
それはもちろん変わっていません。
読者の方々には心配をおかけし、おわびします。
本紙の沖縄問題に対する姿勢に変わりはありません。」
続けて、東京新聞自身が、「『ニュース女子』問題とは」と解説をつけている。
「東京MXテレビは1月2日放送の番組『ニュース女子』で冒頭約20分間、沖縄県東村高江の米軍ヘリコプター離着陸帯建設への反対運動を取り上げた。本紙の長谷川幸洋論説副主幹が司会を務めた。『現地報告』とするVTRを流し、反対派を「テロリストみたい」「雇われている」などと表現。反ヘイトスピーチ団体「のりこえねっと」と辛淑玉(シンスゴ)共同代表(58)を名指しし「反対派は日当をもらってる!?」「反対運動を扇動する黒幕の正体は?」などのテロップを流した。辛さんは取材を受けておらず、報告した軍事ジャーナリストは高江の建設現場に行っていなかった。
MXは「議論の一環として放送した」とし、番組を制作したDHCシアターは「言論活動を一方的に『デマ』『ヘイト』と断定することは言論弾圧」としている。辛さんは名誉を侵害されたとして、1月27日、放送倫理・番組向上機構(BPO)放送人権委員会に申し立てた。
のりこえねっとは沖縄の現場から発信してもらう『市民特派員』を募集、カンパで捻出した資金を元手に、本土から沖縄までの交通費として5万円を支給。昨年9月から12月までに16人を派遣した。」
関連記事が5面の「読者部便り」に掲載されている。「読者部長・榎本哲也」による「読者の批判重く受けとめ 『ニュース女子問題』」と題するもの。これも、貴重な記事として、全文を引用しておきたい。
特定のニュースや問題について、同じ趣旨のお問い合わせや要望が多くの方から読者部に相次ぎ、関心が高いと判断した時は、紙面で紹介したり、関連記事を掲載するよう心掛けています。ですが、年明け以来、1カ月にわたり連日、ご意見が相次いでいることに、きょうまでお答えしていませんでした。まず、深くおわび申し上げます。
東京MXテレビの1月2日放送の番組「ニュース女子」に、沖縄県の米軍施設建設に反対する人々を中傷する内容があり、その番組の司会を長谷川幸洋・本紙論説副主幹が務めていたことです。厳しいご批判や、本紙の見解表明を求める声は、読者部にいただいた電話やファクス、メールや手紙だけでも250件を超えました。重く受け止めており、きょうの1面に論説主幹の見解を掲載しました。
新聞は、事実に基づいて、本当のことを伝えるのが使命です。編集局では現在、沖縄の在日米軍基地問題を取材するために、社会部や政治部の記者を沖縄に派遣し、東村高江や辺野古などで、住民の方々などの取材を重ねています。近く、紙面でご報告いたします。
また、「沖縄ヘイト」問題の本質を問う識者インタビュー連載記事を、きょうから始めました。
沖縄で今、何が起きているのか。本当のことをお伝えする努力を、これからも続けていきます。
この記事のとおり、3面に「『沖縄ヘイト』言説を問う」の第一回として、津田大介が、それなりのインパクトのある記事を書いている。
今回の「ニュース女子」の報道を「メディアが、間違いだらけで、偏見と憎悪に基づく番組を放送してしまった。…根底にあるのは沖縄への差別意識以外のなにものでもない」「ほかのメディアはこの問題に対して、もっと怒るべきだ。そうしないと、政府が放送に介入するきっかけを作ってしまう」と言っている。
幾つか、感想を述べておきたい。
先に今回の謝罪を評価すると述べたが、必ずしも満足しているわけではない。東京新聞が、読者に何を謝り何を反省しているのかが、必ずしも明確でないのだ。自社の幹部の肩書きを持つ者の不祥事として、監督不行き届きを謝罪しているのだろうか。あるいは、何らかの内規違反なのだろうか。さらには、ジャーナリストの風上におけぬ輩を社内のしかるべき地位に就けていたことなのだろうか。
この件の反省と謝罪は、真っ先に長谷川幸洋(論説副主幹)自身がすべきであろう。本日の紙面には、長谷川幸洋が自らの責任を認めている記事がない。おそらくは、長谷川は反省していないのだ。であれば、東京新聞として、その責任を明確にしなければなない。いったい、どのような経過で、沖縄ヘイト番組が作られ、その制作に長谷川がどう関わったのかが、明らかにされなければならない。今のところ、その作業がなされた形跡はない。
私は、1面の謝罪記事の「他メディアで起きたことではあっても責任と反省を深く感じています。とりわけ副主幹が出演していたことについては重く受け止め、対処します。」の部分を、最初は迂闊にも「処分します」と読んで、あとで間違いに気が付いた。「対処」は、「処分」も含むのだろうが、処分以外の対処もあり得る。さて、東京新聞は、これからこの問題にどう対応するだろうか。
もう一つ、この問題の対応には、大手の広告スポンサーであるDHCが絡んでいる。「ニュース女子」は、東京MXテレビの制作番組ではない。DHCの子会社であるDHCシアター制作の持ち込み番組である。DHCは東京MXテレビの最大スポンサーであるとともに、ヘイトスピーチを恥じない吉田嘉明が主宰する企業でもある。スラップ訴訟を提訴して恥じない企業である。明らかにDHCの息のかかったこの番組にたいする批判は、DHC批判に直結する。東京新聞も広告スポンサーであるDHCを意識せずには批判を徹底できない事情がある。それでも、経済事情よりはジャーナリズムの使命を優先して、ブレないことを示してもらいたい。
そして、反省皆無のDHCシアターに、腹の底からの怒りの一言を記しておきたい。「言論活動を一方的に『デマ』『ヘイト』と断定することは言論弾圧」だと? その開き直りに、開いた口が塞がらない。
報道とは、真摯な取材によって確認された正確な事実を伝えることである。そして、正確な事実に基づく公正な論評をすることでもある。放送メディアは、そのことを放送法(4条)で義務付けられてもいる。ところが、DHCシアターのやったことは、取材もせずに不正確な事実を伝えた。これを『デマ』という。さらに、不正確な事実を前提に差別感情丸出しの偏見を述べたのだ。これを『ヘイト』という。DHCシアターの「ニュース女子」こそは、真正の『デマ』と真正の『ヘイト』というべきなのだ。ヘイトは「沖縄ヘイト」と「在日ヘイト」の両者を含んでいる。
「DHC」と「DHCシアター」と「東京MXテレビ」と、そして東京新聞論説副主幹「長谷川幸洋」の4者に、『デマ』『ヘイト』の刻印を押そう。真摯な謝罪があるまでは、その『デマ』『ヘイト』の刻印を強く深く押し続けよう。
(2017年2月2日)