澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

「瑞穂の國記念小學院」入学予定の生徒と父母の皆さまへ

よい子のみなさん、お集まりなさい。お父さまお母さま方も、ご参列ください。

さあ、まずは天皇陛下のいらっしゃる宮城に向かって、みんなで遙拝しましょうね。それから、いつものとおり教育勅語を唱えて、「君が代」と「海ゆかば」を合唱しましょう。天皇陛下や皇室を敬い、立派な日本人になる気持ちを込めて唱うのですよ。

みなさんは、塚本幼稚園を卒業して、この春から新しくできる「瑞穂の國記念小學院」の一年生になります。その学校では、ほかの学校とは違った正しい日本人になるための教育をうけることになります。その正しい日本人としての心得を、これから安倍昭恵名誉校長先生がビデオメッセージでお話しになります。みなさん、しっかりお聞きしましょうね。

ご存じのとおり、安倍昭恵名誉校長先生は安倍晋三首相の奥様でいらっしゃいます。安倍晋三首相は、常々「今の時代はまちがっている。戦争に負ける以前の強く正しい、立派な日本を取り戻さなければならない」とおっしゃって、これまでの塚本幼稚園の教育をお褒めいただいてまいりました。奥様には、新設の小学校の名誉校長就任までお引き受けいただき、当学校法人森友学園にはいろいろ便宜をはからってただいたことを、心から感謝申し上げます。では、名誉校長先生のお話しのビデオのスイッチを入れます。

私が、「瑞穂の國記念小學院」名誉校長の安倍昭恵です。夫・安倍晋三は、右翼だ、軍国主義者だ、歴史修正主義者だと悪口を言われておりますので、本校のような、真正の右翼で、軍国主義で、歴史修正主義の教育支援をすることはなかなか難しいのです。そこで、妻である私が代わってお引き受けし、右翼の皆さまに安倍の本心を察していただくとともに、リベラルの皆さまから安倍への直接の攻撃を避けているわけでございます。

「瑞穂の國記念小學院」は、清き明き直き心で、すばらしい日本人をつくることを目的としています。教育勅語を教育の基礎に据えて、教育勅語に書かれた理想のとおりの民草を育てることが校是です。生徒は教育勅語と五箇條のご誓文を暗記して毎日奉唱いたします。けっして、日本国憲法の条文を暗記させるなどいたしません。こうしてこそ、天皇陛下や皇室を敬い尊ぶ立派な日本人が育つのです。

たまたま、今日は紀元節です。日本という國の誕生日というおめでたい日。日本という國は万世一系の天皇がしろしめす國ですから、初代の天皇が即位した日をもって國の誕生日と定めたのです。

古事記には、次のように書かれています。
神倭伊波禮毘古(かむやまといはれびこ)の命、その同母兄(いろせ)五瀬の命と二柱、高千穗の宮にましまして議(はか)りたまはく、「いづれの地(ところ)にまさば、天の下の政を平けく聞(きこ)しめさむ。なほ東のかたに、行かむ」とのりたまひて、すなはち日向(ひむか)より發(た)たして、…… かれかくのごと、荒ぶる神どもを言向けやはし、伏(まつろ)はぬ人どもを退(そ)け撥(はら)ひて、畝火の白檮原(かしはら)の宮にましまして、天の下治(し)らしめしき。

分かりやすく言えば、こういうことです。
昔むかし、「かむやまといはれびこ」という神様がいらっしゃって、日向の高千穗から東に征伐の旅を続け、土地土地の悪い神と闘い、苦労してやっつけて、畝傍の橿原宮まできて天下を治めた、というのです。

日本書紀には、「かんやまといわれひこのすめらみこと」が、即位して、「はつくにしらすすめらみこと」と称したとなっています。この方が、初代・神武天皇で、以来皇統が連綿と続いているのでございます。古事記にも日本書紀にも、これがいつのことかは、書いてありません。しかし、明治時代に、きっとこの日に違いないと、2677年前の2月11日に決めたのです。特に、大した根拠はないのですが、立派な日本人はそんなことは問題にしません。縄文期に国家の形成はあったのかしら、などと不敬なツッコミをしてはなりません。隣国朝鮮の檀君神話などは非科学的だと攻撃してもよいのですが、日本の皇室の尊厳をおとしめてはならないのです。

なぜ、皇室が尊いか。それは、皇室が神様の子孫であるからです。古事記には、こう書かれています。

天照らす大神の邇邇藝の命(ににぎのみこと)へのお言葉として、「豐葦原(とよあしはら)の千秋(ちあき)の長五百秋(ながいほあきの)水穗(みづほ)の國は、汝(いまし)の知(し)らさむ國なりとことよさしたまふ。かれ命のまにまに天降(あもり)ますべし」

アマテラスオオミカミの孫がニニギノミコトで、その子孫が神武天皇なのです。「水穗(みづほ)の國」とは日本のことで、アマテラスオオミカミがおっしゃったとおり、「水穗(みづほ)の國・日本」は、ニニギノミコトの子孫である万世一系の天皇が永遠に治める国とされたのです。神様がそうおっしゃったのだから、絶対に間違いありません。このことを少しでも疑うものは、立派な日本人とは言えないのです。

私が名誉校長となった、「瑞穂の國記念小學院」の名前は、この古事記や日本書紀の「みづほの國」から取ったものです。この学校では、その名前のとおりの、立派な日本人を育てようというのですから、日本の国が便宜を払ってくれてよいはずと思います。

この学校の敷地は、近畿財務局から国有地を払い下げていただいて取得しました。この払い下げの件について、一昨日(2月9日)の朝日新聞が、あたかも裏に重大な疑惑があるような悪意の記事を書いています。今日(2月11日)の赤旗新聞もこれに続いています。

朝日も、赤旗も、敬神尊皇の心をもたない荒ぶる輩ですから、書いてあることを信用してはいけません。たとえ記事が真実と証明されてもです。真実などには、大した価値はありません。大切なのは、皇室と日本を敬い尊ぶ心であり、政権を支えようとする善意なのですから。

朝日の記事の見出しは次のとおりです。
「学校法人に大阪の国有地売却 価格非公表、近隣の1割か」
国が本校の敷地を払い下げるにあたって、汚い裏工作があったのだろうと思わせる、意地悪な見出し。問題は3点ほどとなっています。

第1点。払い下げ価格が隠されていたこと。
国有地の払い下げ価格は公表が原則なのに、本件では公表されなかった。不審に思った、地元の豊中市会議員が情報開示を求めたが、却下された。朝日新聞も情報開示を求めて却下された。近畿財務局管内の類似払い下げ案件は36件あり、他の35件は全て公開されているのに、本件だけが非公開。これは、意図的な隠蔽ではないのかという指摘にほかなりません。常識的には、後ろ暗いところがあるから、値段を非公開に隠蔽したのだろうと思われても仕方がないようですが、けっして朝日や赤旗の尻馬に乗ってはいけません。

第2点。払い下げ価格が安すぎるという点。
報道のとおりだと、相場の10分の1程度の安い価格での払い下げだったようです。そして、財務当局は、朝日新聞の取材に対して、「価格は土地の個別事情を踏まえたもの。その事情が何かは答えられない」と話しているそうです。これだけ聞くと、朝日や赤旗の多くの読者が、何か不正なことが行われているのだろうと思うことになるでしょう。しかし、立派な日本人を育成するための小学校の敷地の払い下げなのですから、安ければ安いほどいいんじゃございません。

朝日の記事では、同じ土地について、「別の学校法人が森友学園より前に校舎用地として取得を希望し、路線価などを参考に『7億円前後』での売却を財務局に求めていた。これに対し、財務局から『価格が低い』との指摘を受け、12年7月に購入を断念したという。それから約4年後、近畿財務局は同学園(学校法人森友学園)に1億3400万円でこの国有地を売却したとみられている。」と意地の悪いことを書いています。どうせこの別の学校では、皇室の尊厳など教えないんだから、結果はよかったんじゃないでしょうか。

なお、その後の報道では、払い下げ土地内の廃棄物の除去費用をいくらに見積もるべきかが問題になっているようです。情報開示を求める裁判で、いずれは明確になることなのでしょうが、財務局や学校法人側の説明がいかにも歯切れが悪く、心配でなりません。

そして、第3点。この土地払い下げを受けた学校法人が、右翼的思想で安倍首相と通じて、特別のはからいを受けたのではないか。それでなくては、こんなに安くし、こんなに秘密にした理由の説明はつかない、という政治的なものです。

朝日も、赤旗も、あからさまにそこまで書いてはいませんが、普通の人が読めばそう読める記事の内容になっています。

朝日の記事は、「森友学園の…籠池理事長は憲法改正を求めている日本会議大阪の役員で、ホームページによると、同校は『日本初で唯一の神道の小学校』とし、教育理念に『日本人としての礼節を尊び、愛国心と誇りを育てる』と掲げている。同校の名誉校長は安倍晋三首相の妻・昭恵氏」としています。

赤旗は、大きな見出しで、「名誉小学校長は安倍首相夫人」とし、「同小学校の名誉校長には、安倍晋三首相夫人の昭恵氏が就いています」と、私の写真まで載せています。政治的意図がありありですね。

なお、朝日は、「昭恵氏には安倍事務所を通じて文書で質問状を送ったが、回答は届いていない」と意地悪を重ねています。確かに、質問状は届いていますよ。でも、何と答えても、次の矢が来ることになるではありませんか。じっとしているのが、一番利口なやり方でしょう。どうせみなさん、理解ある日本人。その内、忘れてくれますよ。

でも思うのです。この学校の教育の表向きは、「清き明き直き心で、すばらしい日本人をつくる」こと。でも、「だんまり、ごまかし、不正直、裏工作」も上手にできなけれは世渡りなんてできませんよね。今回のこと、学校の姿勢や安倍政権の実態、世の中の裏表がよく見えて、生徒たちには、とてもよい勉強になったのではないでしょうか。プツリ。(ここでビデオメッセージは中断)
(2017年2月11日)

Comments are closed.

澤藤統一郎の憲法日記 © 2017. Theme Squared created by Rodrigo Ghedin.