澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

無知と偏見にもとづく「沖縄差別NO!」の声を。そして「安倍政権NO!」の声も。

この社会に理不尽な差別が絶えない。新たな差別が生み出されてもいる。部落や在日に対する差別に加えて、どうやら「沖縄差別」「沖縄ヘイト」というものが存在するらしい。このような差別を許していることを恥ずかしいとも、腹ただしいとも思う。

差別は、社会のマジョリティがつくり出す。権力の煽動と結び付くことで、差別は深刻化し、痛みを伴うものとなる。マジョリティの周辺部に位置する弱者が、「無知と偏見」によって煽動に乗じられることとなる。軽挙妄動して差別の行動に走るのは、より弱い立場にある被差別者に、安全な位置から差別感情を吐露する者。こうしてカタルシスを得ようとする「無知と偏見」に彩られた者たちなのだ。

権力やマジョリティの中枢に位置するエスタブリッシュメントは「無知と偏見」を助長することによって、自ら手を汚すことなくヘイトに走る者を利用するのだ。

いま、「無知と偏見」の輩が、沖縄ヘイトに走っている。本日(12月25日)付毎日の朝刊一面トップ記事が、「米軍ヘリ窓落下被害小学校に続く中傷」の大見出し。「のぞく沖縄差別」と続く。

12月13日米軍ヘリが普天間第二小学校の校庭に窓を落下させて以来、米軍への抗議ではなく、小学校や普天間市教委に抗議の電話が続いているという。「文句言うな…」「やらせだ」「自作自演だ」など…。

毎日新聞はよくぞトップ記事としてこのことを書いた。全国紙がこれだけの扱いをしたことそれ自体のインパクトが大きい。

リードは、「米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に隣接する市立普天間第二小学校への米軍ヘリの窓落下事故で、同校などに『学校を後から建てたくせに文句を言うな』といった抗議電話が続いている。第二小の歴史を踏まえ、差別意識ものぞく抗議の背景を考えた。」というもの。事実関係は、今さら繰り返すまでもない。

この件については、朝日の報道が先行している。恐るべき中傷の内容だ。
「市教委によると、中傷電話は事故翌日の14日が13件と最も多く、その後も1日2?3件ある。米軍が窓を落としたことを認めているにもかかわらず、『事故はやらせではないか』などと中傷する内容もあった。東京在住と説明した男性は『沖縄は基地で生活している。ヘリから物が落ちて、子供に何かあっても仕方ないじゃないか』と言ったという。

18日には、謝罪に訪れた米軍大佐が『最大限、学校上空は飛ばない』と告げたことに、喜屋武悦子校長が『最大限ではなく、とにかく飛ばないでほしい』と反発し、文書での回答を求めたが、これに対しても『校長のコメントは何だ。沖縄人は戦闘機とともに生きる道を選んだのだろう』と批判する電話があった。」

この報道を踏まえて、12月22日朝日は、「沖縄への中傷 苦難の歴史に理解欠く」という社説を掲載した。
冒頭に、「沖縄の長い苦難の歩みと、いまなお直面する厳しい現実への理解を欠いた、あるまじき言動だ。強い憤りを覚える。」と珍しく感情を露わにした。

「後から学校を造ったくせに文句を言うな」「沖縄は基地で生活している」。事実を正しく把握しないまま、学校側をののしるものもあるという。

「中傷電話が『無知と偏見』によるものであるのは明らかだ。日々の騒音や墜落への恐怖に加え、心ない日本国民から『二次被害』まで受ける。あまりに理不尽な仕打ちではないか。」

「今回だけではない。オスプレイの配備撤回を求めて沖縄の全市町村長らが東京・銀座をデモ行進したとき、『売国奴』との罵声が飛んだ。ヘリパッド建設工事に抗議する住民を、大阪府警の機動隊員は『土人』とさげすんだ。沖縄差別というべき振る舞いが後を絶たない。」

「嘆かわしいのは、本土の政治家らの認識と対応である。防衛政務官が沖縄の基地負担は重くない旨のうその数字を流す(13年)。自民党若手議員の会合で、普天間飛行場の成立過程について間違った発言がまかり通る(15年)。沖縄担当相が土人発言を批判せず、あいまいな態度をとる(16年)――。
誹謗中傷を許さず、正しい情報を発信して偏見の除去に努めるのは、政治を担う者、とりわけ政府・与党の重い責任である。肝に銘じてもらいたい。」

まったく同感。「無知と偏見」に凝り固まった「政府・与党の走狗」たちの迷妄を啓くことは、容易ならざる難事なのだ。

ところで、本日の毎日の記事は社会的背景を考えさせる4名のコメントを付している。

まず、翁長知事。
「翁長雄志知事は21日、『目の前で落ちたものまで「自作自演」だと来る。それ自体が今までにない社会現象だ』と語った。」

次いで、沖縄現地の政治学者。
「中傷の背景に何があるのか。沖縄国際大の佐藤学教授(政治学)は『基地集中を中国の脅威で正当化する誤った正義感がある。一度デマが広がると、事実を提示しても届かない』と話す。」

そして江川昭子さん。
「ジャーナリストの江川紹子氏も『政権に一体感を覚える人には、飛行反対は現政権にたてつく行為と映るのだろう』と指摘する。」

最後が、安田浩一さん。
「2013年、東京・銀座でのオスプレイ反対デモは『非国民』との罵声を浴び、昨年には沖縄県東村でヘリパッド移設に反対する住民に大阪府警の機動隊員が『土人』と言い放った。差別問題に詳しいジャーナリストの安田浩一氏は「沖縄が悪質なデマ、『沖縄ヘイト』の標的になっている。それを日本社会全体の問題として議論すべきだ」と語った。」

全員が、社会現象として「沖縄差別」を論じている。「無知と偏見」の輩が、現政権に煽られ、現政権にたてつく者に対する攻撃を行っているのだ。「無知と偏見」の輩には確信がある。安倍政権と米軍に味方する自分こそが、この社会の多数派で、政権と米軍に楯突く不届き者を懲らしめてもよいのだ、という確信。強者にへつらうイジメの心理である。そのイジメの心理の蔓延が、社会現象としての「沖縄差別」を形成している。

この沖縄差別に象徴される今の社会が安倍晋三を政権に押し出し、また政権に就いた安倍が差別を助長し利用している。DHCテレビが制作し、DHCが提供のテレビ番組「ニュース女子」も在日差別と沖縄差別に充ち満ちたフェイク番組だった。これも、在日や沖縄を攻撃しても安全という、イジメの構造が生み出したものだ。

沖縄差別は、安倍政権と同じく、日本社会の病理が生み出したものだ。あらゆる差別とともに、安倍政権も一掃しなければならない。イジメは加害者と被害者だけで成立するのではない。これを見て見ぬふりをする多くの傍観者の存在が不可欠なのだ。本土の私たちが、そのような消極的加害者であってはならない。「沖縄差別NO!」の大きな声をあげよう。そして、「安倍政権NO!」の声も。
(2017年12月25日)

しっかり眉に唾を付けよう。「アベ・9条改憲」案のたくらみに欺されてはならない。

自民党に「憲法改正推進本部」という部門がある。ここが党としての改憲案を作ることになる。前任の本部長保岡興治が引退して、先月(2017年11月)に細田博之がそのトップとなった。細田は、安倍晋三が所属する党内最大派閥「清和政策研究会」(細田派)の領袖でもある。

12月20日、その憲法改正推進本部が全体会合でこれまでの検討結果をまとめて「憲法改正に関する論点取りまとめ」を発表した。お世辞にも充実しているとは言いがたい、憲法改正推進本部のホームページだが、ここでその全文が読める。
https://www.jimin.jp/news/policy/136448.html

もっとも、このPDFはコピぺができない。コピぺ可能な全文を、本日の当ブログの末尾にも貼り付けておく。批判のたたき台として、引用に活用していただきたい。

改憲論議は、当面この「論点整理」の文書をめぐって行われることになり、改憲反対派は当面この文書の批判に集中することになる。

さして長くないこの「論点取りまとめ」は、下記の改憲4項目を整理したもの。
(1)自衛隊について
(2)緊急事態について
(3)合区解消・地方公共団体について
(4)教育充実について
その内、(1)の自衛隊問題と、(2)の緊急事態対応については、各2案の併記となっており、「党内の意見集約が間に合わないとしてのこと」と報じられている。

最大の焦点が。「(1)自衛隊について」の「9条改憲」であることは論を待たない。この点の整理が、
?「戦争放棄を定めた9条1項、2項を維持した上で『自衛隊を憲法に明記するにとどめる』」とする案と、
?「9条2項を削除して『自衛隊の目的・性格をより明確化する改正を行う』」との案の
両論併記となった。

いうまでもなく、?は本年(2017年)5月3日唐突に出てきた安倍晋三案である。よく知られているとおり、これは右翼組織「日本会議」幹部案でもある。?は2012年4月の「自民党憲法改正草案」を基調とした従来タイプの改正案。

東京新聞は今後について、「推進本部は来年1月に全体会議を再開し、衆参両院の憲法審査会の議論が本格化するとみられる春までに、一本化を図る見通し」と記事にしている。

今回の両論併記は、誰が見ても暫定的なステップに過ぎない。全体会合では石破茂が「9条2項残置論」への反対意見を述べたことが報じられているが、早晩?案(「安倍9条改憲案」)でまとまることになる。

この両論を比較して、「?案の危険性は明らかだ。?案ならまだマシではないか」などと印象をもつ人が出てくれば、そこがアベの思う壺。目眩ましにはまることになる。悪得商法並みの姑息な手口に欺されてはならない。

安倍9条改憲案には、両面がある。
(a)「これ以上は望んでも現実的に無理」「やむをえず今はこの線で、我慢しよう」という側面と、
(b)「実は、これだけでも成功すれば相当なことになる」という側面。

安倍は、この両面を都合よく使い分けるだろう。
国民への説得は、もっぱら(a)面を使う。「この改憲によっては、自衛隊が日陰の存在から憲法に規定された日向に出て来るだけのこと。実質的に何も変わりませんよ。」と強調する。友党や、ふらふら中間政党の説得にも、同様だ。

しかし、自民党内に向けては、特に右派にはこう言う。「この改正が実現したら、9条の構造はがらりと変わる。既に、自衛隊は集団的自衛権行使まで容認された組織だ。それを憲法に書き込めば、9条2項は安保法制によって上書きされて死文化する」「個別的自衛権と集団的自衛権の両者を行使できる自衛隊が憲法上の根拠をもてば、まさしく一人前の軍隊となる」と解説することだろう。

さらに、右派の世論には、こう言うのだ。
「冷静に情勢を見つめれば憲法9条の抜本改正は直ぐには無理なのです。2項の削除提案は危険で得策ではありません。むしろここは『急がば回れ』で、2段階で行う確実な作戦をとるべきなのです。今回はその第1段階」

2017年9月2日の毎日新聞朝刊はこう言っている。
「自民・船田氏 『憲法9条2項 首相、次は削除』」という見出し。首相(アベ)は「次の段階で、9条2項削除を考えている」という記事。

「自民党の船田元衆院憲法審査会幹事(註 現本部長代行)は(9月)1日、宇都宮市で講演し、憲法9条改正を巡り、安倍晋三首相は2度の改正を経て、戦力不保持などを定めた2項を削る『2段階論』が念頭にあるとの見方を示した。
2項を含む現行の9条を維持し、自衛隊を明記する首相提案を実現した上で『次は2項をなくす2段階論を深めるのが首相の考えだ。われわれの考えにも近く、その方向で進めたい』と語った。」

何のことはない。アベ9条改憲案は、小さく産んで大きく育てる、その第一歩なのだ。この「安倍9条改憲」が実現すれば、さらに次は、「実体は何も変わりませんからご安心を」として、「自衛隊」を「国防軍」に変更するだろう。幾つかのステップを経て、憲法9条を虐殺し、名実ともに軍事大国化への憲法整備をしようというのが、アベの魂胆と見なければならない。

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東京新聞が一昨日(12月22日)の社説で取り上げている。「自民論点整理 『改憲ありき』では困る」という見出しで、 説得力のある論説になっている。

「自民党憲法改正推進本部が提示した改憲四項目に関する論点整理は、改憲を前提としているが、それでいいのか。改憲しなければ本当に対応できないのか。根源的な議論に立ち返るべきである。

論点整理は同本部でのこれまでの検討結果をまとめたもので、10月の衆院選で政権公約の重点項目に掲げた、
▽自衛隊の明記
▽教育の無償化・充実強化
▽緊急事態対応
▽参院の合区解消
の四項目を取り上げている。

焦点の九条については、一、二項を維持したまま自衛隊の存在を明記する案と、戦力不保持と交戦権の否定を定めた二項を削除して「自衛隊の目的・性格をより明確化する改正を行う」案を併記した。前者は安倍晋三首相(党総裁)の意向に沿った案、後者は党が野党時代の2012年にまとめた改憲草案に近い内容である。」

「戦力不保持の二項を削除する九条改憲案に比べると、維持したまま自衛隊を明記する案は、より穏当に見えるかもしれない。それが首相の狙いなのだろう。

しかし、本当に九条改憲が必要な切迫した状況にあるのか。

歴代内閣は、専守防衛に徹する自衛隊は戦力には該当せず、九条の下でも合憲と位置付けてきた。憲法に自衛隊の存在を明記しないことが活動領域や予算の膨張を防ぐ歯止めとなったことも現実だ。

安倍内閣は「集団的自衛権の行使」を一転容認したが、このまま自衛隊を憲法に明記すれば、歴代内閣が違憲としてきた活動が許される存在として、自衛隊を追認することになってしまう。」

「憲法について議論するのなら、そもそも改正が必要なのかという問題意識を常に持つべきだろう。自民党が一方的につくる議論の土俵に、安易に乗ってはならない。」

また、12月23日赤旗「自民の改憲論点整理 断じて認められない」は、小池晃書記局長の会見での発言を紹介しているが、その記事の中で、「自民党の船田元・憲法改正推進本部長代行が『2回目には2項は削る』という9条の『2段階』改憲に言及していることにもふれ、『ねらいははっきりしている。頭隠して尻隠さずだ』と批判」している。

「アベ9条改憲論」は、いま市民と立憲野党とが作っている9条改憲阻止のスクラムを壊そうというたくらみである。現在の改憲阻止共闘スクラムの中から、「自衛隊存置肯定」派や、「このくらいの改正で済むならならやむを得ない」派、あわよくば「専守防衛」派などを、切り崩そうというもの。

この「改正」実現だけで影響は甚大であり、しかも、次のステップはなお大きな危険を抱えている。その意図を見抜いて、断固はね返さなければならない。「なにも現状を変えるものではない」というアベのウソに、けっして欺されてはならない。かけがえのない平和を守るために。

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憲法改正に関する論点取りまとめ

平成29年12月20日
自民党憲法改正推進本部

1 これまでの議論の経過
(1) 自由民主党における憲法論議
日本国憲法は、本年5月3日に施行70周年を迎えた。この間、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義など憲法の基本原理は定着し、国民の福祉、国家の発展に大きな役割を果たしてきた。一方、70年の歴史の中でわが国内外の環境は大きく変化しており、憲法の規定の一部には今日の状況に対応するため改正すべき項目や追加すべき項目も考えられる。
自由民主党は結党以来、現行憲法の自主的改正を目指し、「憲法改正大綱草案」(昭和47年)、「日本国憲法総括中間報告」(昭和57年)、近年では「新憲法草案」(平成17年)、「日本国憲法改正草案」(平成24年)などの試案を世に問うてきた。これらは、党内の自由闊達な議論を集約したものである。

(2) 憲法改正推進本部における議論の状況
平成28年の初めから、憲法改正推進本部は具体的な改正項目を検討するため、総論的なテーマを掲げた有識者ヒアリング(平成28年2月?5月)、各論的なテーマを掲げた有識者ヒアリング(平成28年11月?29年6月)を行い、知見の集積及び整理を行ってきた。
こうした知見や議論を踏まえ、本年6月以降8回の推進本部会議において以下のテーマが優先的検討項目として議論された。わが国を取り巻く安全保障環境の緊迫化、阪神淡路大震災や東日本大震災などで経験した緊急事態への対応、過疎と過密による人口偏在がもたらす選挙制度の変容、家庭の経済事情のいかんに関わらずより高い教育を受けることのできる環境の整備の必要性など、わが国が直面する国内外の情勢等に鑑み、まさに今、国民に問うにふさわしいと判断されたテーマとして、
?安全保障に関わる「自衛隊」、
?統治機構のあり方に関する「緊急事態」、
?一票の較差と地域の民意反映が問われる「合区解消・地方公共団体」、
?国家百年の計たる「教育充実」の4項目である。
現段階における議論の状況と方向性は、以下の通りである。

2 各テーマにおける議論の状況と方向性
(1) 自衛隊について
自衛隊がわが国の平和と安全、国民の生命と財産を守る上で必要不可欠な存在であるとの見解に異論はなかった。
その上で、改正の方向性として以下の二通りが述べられた。
?「9条1項・2項を維持した上で、自衛隊を憲法に明記するにとどめるべき」との意見
?「9条2項を削除し、自衛隊の目的・性格をより明確化する改正を行うべき」との意見
なお、?及び?に共通する問題意識として、「シビリアンコントロール」も憲法に明記すべきとの意見が述べられた。

(2) 緊急事態について
国民の生命と財産を守るため、何らかの緊急事態に関する条項を憲法上設けることについて、以下の二通りが述べられた。
?選挙ができない事態に備え、「国会議員の任期延長や選挙期日の特例等を憲法に規定すべき」との意見
?諸外国の憲法に見られるように、「政府への権限集中や私権制限を含めた緊急事態条項を憲法に規定すべき」との意見
今後、現行憲法及び法律でどこまで対応できるのかという整理を行った上で、現行憲法体系で対応できない事項について憲法改正の是非を問うといった発想が必要と考えられる。

(3) 合区解消・地方公共団体について
両議院議員の選挙について、一票の較差(人口比例)への対応により行政区画と選挙区のずれが一層拡大し、地方であれ都市部であれ今後地域住民の声が適切に反映されなくなる懸念がある。このため47条を改正し、?両議院議員の選挙区及び定数配分は、人口を基本としながら、、行政区画、地勢等を総合勘案する、とりわけ、?政治的・社会的に重要な意義を持つ都道府県をまたがる合区を解消し、都道府県を基本とする選挙制度を維持するため、参議院議員選挙においては、半数改選ごとに各広域地方公共団体(都道府県)から少なくとも一人が選出可能となるように規定する方向でおおむね意見は一致している。同時に、その基盤となる基礎的地方公共団体(市町村)と広域地方公共団体(都道府県)を92条に明記する方向で検討している。

(4) 教育充実について
教育の重要性を理念として憲法上明らかにするため、26条3項を新設し、教育が国民一人一人にとっての幸福の追求や人格の形成を基礎づけ、国の未来を切り拓く上で欠くことのできないものであることに鑑みて、国が教育環境の整備を不断に推進すべき旨を規定する方向でおおむね意見は一致している。
89条は私学助成が禁止されていると読めることから、条文改正を行うべきとの意見も出されている。

3 憲法改正の発議に向けて
憲法改正は、国民の幅広い支持が必要であることに鑑み、4テーマを含め、各党各会派から具体的な意見・提案があれば真剣に検討するなど、建設的な議論を行っていきたい。????????????????????????????????????????????????????????????????????? 以 上
(2017年12月24日)

12月23日・A級戦犯処刑の日に。

本日、12月23日は、極東国際軍事裁判(東京裁判)において死刑の宣告を受けたA級戦犯7名が処刑された日として記憶される。69年前の今日のことだ。

判決が言い渡されたのは、同年11月12日。刑の執行の日取りについて特に定めはなかったが、皇太子明仁の誕生日を選んでの執行と伝えられている。

GHQと極東委員会は、諸般の事情や思惑があって天皇(裕仁)の戦争責任訴追はしないこととしたが、連合国の圧倒的世論は天皇(裕仁)の戦争責任追求を求めていた。A級戦犯7名の死刑の日を次期天皇の誕生日としたのは、国際世論との関わりがあるのだろう。将来の天皇の誕生日の都度、日本国民に日本の戦争責任を想起させる意図は当然あっただろう。あるいは、天皇に代わっての戦犯たちの死の意味を、国民に突きつけたいとしたとも考えられる。

「平和に対する罪」など、55の訴因で裁かれて死刑の判決を受け執行された7名は以下のとおりである。
東條英機 – 総理大臣(ハワイの軍港・真珠湾を不法攻撃)
板垣征四郎 – 陸相・満州国軍政部最高顧問・関東軍参謀長
木村兵太郎 – ビルマ方面軍司令官・陸軍次官
土肥原賢二 – 第12方面軍司令官(中国侵略の罪)
武藤章 – 第14方面軍参謀長
松井石根 – 中支那方面軍司令官(南京事件)
広田弘毅 – 唯一の文民(南京事件の残虐行為を止めなかった不作為の責任)

1978年に至って、靖国神社はこの7名に獄中死の下記7名を加えた14名を「昭和殉難者」として合祀した。この14名は、いずれも戦死者でも戦病死者でもない。死亡の理由は「法務死」とされている。広田弘毅に至っては軍人軍属でさえなく、軍への協力死でもない。

梅津美治郎
小磯国昭
白鳥敏夫
東郷茂徳
永野修身
平沼騏一郎
松岡洋右

当時の皇太子はその後40年を経て天皇となった。本日は、その地位に就任して29回目の天皇誕生日である。今日、A級戦犯の刑死はさしたる話題にならず、もっぱら明後年(2019年)の天皇の生前退位だけが話題である。GHQと極東委員会の思惑ははずれたことになるのだろうか。しかし、今日は昭和天皇の戦争責任を考えるとともに、国民精神を戦争に動員した天皇制の危険性について、思い語り合うべき日であろう。

その天皇(明仁)は昨日(12月22日)記者会見をした。自身の退位日が2019年4月末に決まったことに関して、「このたび、再来年4月末に期日が決定した私の譲位については、これまで多くの人々がおのおのの立場で考え、努力してきてくれたことを、心から感謝しています。残された日々、象徴としての務めを果たしながら、次の時代への継承に向けた準備を、関係する人々と共に行っていきたいと思います。」と話したという。

「私の譲位については、これまで多くの人々がおのおのの立場で考え、努力してきてくれたことを、心から感謝しています。」を翻訳すれば、「内閣も国会も、天皇への忖度ありがとう」「私が一言メッセージを発したら、皇室典範特例法を作って私の退位の希望を叶えてくれたことに感謝」ということだ。国政に関する権能を一切有しないはずの天皇の「実力」に触れた大いに問題ある発言。

さらにおおきな問題は、「象徴としての務め」だ。本来、「象徴」とは存在するだけのもの。「務め」も、「努め」も不要なのだ。天皇が自分で天皇のあり方を解釈し、ひとり歩きするようなことを憲法は想定していない。

国民意識の中に、次第に天皇の存在感が増しているのではないか。このことに、不気味さを禁じえない。
(2017年12月23日)

選挙共闘の候補者には、しかるべき人物を。

今年も残すところあとわずか。今年を振り返って憲法に関わる最大の出来事は第48回総選挙(10月22日投開票)だった。それぞれの立場からの総括はあるのだろうが、私にとっては今振り返ってなんとも無念な結果。全国的な総括はともかく、地元のことにはきちんと発言しておかなければならない。部分の出来事が全体の教訓ともなり得よう。

結論から言えば、地元の小選挙区では不適切共闘候補を抱えての選挙だった。立憲民主党所属の松尾明弘というこの候補者を、市民団体や共産・社民・自由などが、次回にも再度共闘候補として擁立するようなことがあってはならない。立憲民主党の候補者としても適切ではあるまい。

にもかかわらず、共闘候補としてまったくふさわしくないこの人物が、次回を目指して政治活動をはじめているという。これは看過しがたい。早いうちに、周りがきっぱりと「NO!」というべきだ。選挙が近づいてからの、ごたごたは御免をこうむる。選挙総括の今の時期に、はっきりしておかなくてはならない。

選挙に関わった政党や市民団体からは、面と向かって言い出しにくい事情もあろう。私はものが言いやすい。はっきり言っておこう。

「松尾明弘君、君は反アベ反自民を掲げる立憲野党の共闘候補としてふさわしくない。そのことを自覚して、今後立憲野党の共闘候補として立候補する意思のないことを公式に表明していただきたい。できれば、不出馬宣言と同時に野党共闘への協力姿勢堅持の表明もあってしかるべきだろう。そして、今後の選挙でそれにふさわしい立候補者が擁立された場合には、誠心誠意その当選のための運動に力を尽くすことも表明していただけたらありがたい。
 もとより政治活動の継続は君の自由だ。立候補も君の権利だ。誰もそれを妨害はできない。しかし、もし君があくまで立候補するというのなら、君の思想にふさわしい支持母体、たとえば自民党からの出馬をお勧めする」

「松尾明弘君を市民と野党の共闘候補として擁立された東京2区内の市民団体や諸政党の皆さま。彼が、市民と野党の共闘候補としてふさわしくないことをそれぞれの組織内でご確認のうえ、今後共闘候補としての擁立はあり得ないことを早期に公表されますよう、一市民として強く要望いたします」

私の地元の文京区は、革新の気風が強い土地柄。都議選では定員2のところ、共産党候補者が度々勝ってきた。ときには、トップ当選もした。もちろん、共産党だけでそんな力はない。革新票を共産党候補が集めてのことだ。今年の夏の都議選でも、225票の僅差で惜敗はしたが、共産党候補は28%を得ている。民進党よりもはるかに、存在感があるのだ。その文京区を中心に台東区・中央区と、港区の一部が総選挙における東京2区となっている。今回の選挙直前、その2区の野党共闘候補として立憲民主党の松尾明弘が突然に決まった。振り返ってみれば、あのごたごたの中での成り行き。やむをえない一面はあったのだろうが、関係諸政党からの共闘候補者決定の経緯は知らされなかった。

一度決まれば、疑義を挟めない。立ち位置の知れぬ立憲民主党の候補者であつても、自民党の議席を一つでももぎ取ることができるのならお手柄だ。そう思って、私も気乗りのしないまま投票依頼をした。

この選挙の前には知らなかったが、松尾明弘は弁護士である。私は、護憲運動や人権課題に携わる弁護士の事情に比較的通じた立場にある。だから、度々質問を受けた。「松尾さんってどんな弁護士さんですか」「これまで、どんな分野で活動をされてきた方ですか」。これに、なんとも答えようがないのだ。

正直に言えば、こんなところなのだ。「弁護士とは人権と社会正義を貫くのが使命ですが、松尾さんがそういう分野で仕事をしたという話しはまったく聞いたことがありません」「弁護士会は人権擁護のための諸活動に取り組んでいますが、彼がある分野で活躍したということは知りませんね」「平和や人権の課題に取り組み、その活動の延長として立候補したというなら応援したくもなりますが、そんなところはまったくなさそうです」「普通、政治家は大切にしている強い理念実現のために立候補するのですが、彼の場合にはなにも見あたりませんね」「いったい何のために、立候補したのやら」

もちろん、選挙中にそんな正直なことを言えるはずはない。気持ちは乗らなかったものの、「安倍自民党の9条改憲の策動を阻止するために、市民と野党の共闘候補である、松尾明弘さんをよろしく」と繰り返した。

この候補者、選挙中の東京新聞と朝日新聞の候補者アンケート回答で馬脚を現した。
まず、東京新聞アンケートを再現してみよう。
「設問1 改憲はどうする? 松尾明弘の答 改正すべきだ」
「設問2 憲法9条は? 松尾明弘の答 改正すべきだ」
「設問3 憲法9条の2項を残したまま自衛隊を明記することには  松尾明弘の答 賛成」
「設問5 安倍政権下で成立した安全保障関連法、特定秘密保護法、「共謀罪」の趣旨を含む改正組織犯罪処罰法についての評価は  松尾明弘の答 評価できるものも評価できないものもある」

「9条改憲賛成で」「憲法9条の2項を残したまま自衛隊を明記することに賛成」とは対決している敵の主張であり論理である。うっかりこんな者を当選させたら、敵に塩を送ることになる。大切な護憲派の一票を、アベ9条改憲派に掠めとられることになる。「安保関連法、特定秘密保護法、「共謀罪」法は、評価できるものも評価できないものもある」とは何ごとか。それでも、弁護士か。いや、良識ある市民か。なんのために法を学び、歴史を学んだのか。

朝日のアンケートに対する回答にも驚愕した。
「『原子力規制委員会の審査に合格した原子力発電所は運転を再開すべきだ』いう意見に、「賛成」「どちらかと言えば賛成」「どちらとも言えない」「どちらかと言えば反対」「反対」の5段階で求められた問への松尾明弘の回答は、「賛成」なのである。これも、明確な敵の立場だ。 

さらなる衝撃は、彼が軍拡論者だということだ。
「『日本の防衛力はもっと強化すべきだ 』に、「賛成」「どちらかと言えば賛成」「どちらとも言えない」「どちらかと言えば反対」「反対」の5段階の選択肢への回答を求められて、『賛成』と回答しているのだ。

これが、市民と野党の共闘候補か。共産党も、社民党も、立憲民主党も、こんな人物をどうして候補者としたのだ。いったい何を考えているのだ。どう責任を取ろうというのだ。いや、私も、こんな人物の票読みをしたのだ。謝罪して許しを乞うしかない。

彼は、これまで平和も民主主義も人権も、本気で考えたことはない。なんの理念もなく、選挙はイベントのノリでの出馬。客観的には、アベ改憲陣営から野党陣営に送り込まれた「トロイの木馬」の役割だ。野党陣営を撹乱し、護憲票を取り込んだ改憲派議員。

小選挙区制を所与の前提とする限り、改憲を阻止するには、改憲阻止を掲げる諸政党や無党派市民との共闘が不可欠である。しかし、現実の問題として共闘は難しい。難しいが、こんな人物を擁立してはならない。御輿に乗る人とかつぐ人が、真反対の方向を向いているような共闘は成立し得ない。見る夢がちがっていれば、夢の達成をともにすることはできないのだから。
(2017年12月22日)

アベ政権をパワフルに笑い飛ばす「ウーマンラッシュアワー」

☆見たか、聞いたか。ウーマンラッシュアワー。
★ウーマンがラッシュアワーで、いったいどうした。

☆この動画を見てみろよ。
★なんだ、たかが漫才か。

☆漫才だけれど、たかがではない。これがすごい。
★すごいってなんだ。話題か、芸か、人気のことか。

☆ネタがすごい。すごすぎる。
★それだけか。

☆それだけで十分すごいが、スピード感も大したもんだ。
★なにがきっかけで突然話題になったんだ。

☆フジテレビの番組に出てのブレイクだ。
★どこかのサイトで紹介してるかな。

☆いつものとおり、リテラが早い。こう言っているぞ。
まさに「圧巻」の5分30秒だった。昨晩、放送されたフジテレビの恒例演芸番組『THE MANZAI 2017』に登場した、ウーマンラッシュアワーの漫才のことだ。
ボケが村本大輔、ツッコミが中川パラダイス。

★さわりを教えて。
☆リテラによると、こんな具合だ。

村本「現在、沖縄が抱えている問題は?」
?中川「米軍基地の辺野古移設問題」
?村本「あとは?」
?中川「高江のヘリパッド問題」
?村本「それらは沖縄だけの問題か?」
?中川「いや日本全体の問題」
?村本「東京でおこなわれるオリンピックは?」
?中川「日本全体が盛り上がる」
?村本「沖縄の基地問題は?」
?中川「沖縄だけに押し付ける」
?村本「楽しいことは?」
?中川「日本全体のことにして」
?村本「面倒臭いことは?」
?中川「見て見ぬふりをする」
?村本「在日米軍に払っている金額は?」
?中川「9465億円」
?村本「そういった予算は何という?」
?中川「思いやり予算」
?村本「アメリカに思いやりをもつ前に──」
中川「沖縄に思いやりをもて!!!」

?村本「現在アメリカといちばん仲がいい国は?」
?中川「日本」
?村本「その仲がいい国は何をしてくれる?」
?中川「たくさんミサイルを買ってくれる」
?村本「あとは?」
?中川「たくさん戦闘機を買ってくれる」
?村本「あとは?」
?中川「たくさん軍艦を買ってくれる」
?村本「それはもう仲がいい国ではなくて──」
?中川「都合のいい国!!!」

?そして、極めつきが、この応酬だ。

?村本「現在日本が抱えている問題は?」
?中川「被災地の復興問題」
?村本「あとは?」
?中川「原発問題」
村本「あとは?」
?中川「沖縄の基地問題」
?村本「あとは?」
?中川「北朝鮮のミサイル問題」
?村本「でも結局ニュースになっているのは?」
?中川「議員の暴言」
?村本「あとは?」
?中川「議員の不倫」
?村本「あとは?」
?中川「芸能人の不倫」
?村本「それはほんとうに大事なニュースか?」
?中川「いや表面的な問題」
?村本「でもなぜそれがニュースになる?」
?中川「数字が取れるから」
?村本「なぜ数字が取れる?」
?中川「それを見たい人がたくさんいるから」
?村本「だからほんとうに危機を感じないといけないのは?」
?中川「被災地の問題よりも」
?村本「原発問題よりも
中川「基地の問題よりも」
?村本「北朝鮮問題よりも」
?中川「国民の意識の低さ!!!」

言葉の勢いは増し、息をつかせぬまま、最後に突きつけられる「国民の意識」という問題。社会や政治の出来事を風刺する旧来の漫才ネタではなく、情報の多さとスピード感で見る者を引きつけながら、言葉の力で圧倒させる。しかも、毒舌芸人として鳴らす村本らしく、最後はマイクに向かって「お前たちのことだ!」と言い放ち、ステージを去った。それは、まったく見事な、新しい「漫才」だった。

★それって、ほめすぎじゃない?
☆沖縄タイムスが紙面に取り上げて、こう書いてるぞ。

「アメリカより沖縄に思いやりを」 ウーマンラッシュアワー、時事ネタ漫才に反響続々
 吉本興業所属のお笑いコンビ「ウーマンラッシュアワー」が、17日放送のフジテレビ系番組「THE MANZAI」で、沖縄の米軍基地問題などの時事ネタで政府や国民の無関心を痛烈に皮肉り、話題を呼んでいる。毒舌を振るう芸風で知られる村本大輔さん(37)は放送後「全国放送でこれをやる今日を待っていた」とツイート。視聴者からは「よくぞ言った」「国のお偉いさんたちにも見てほしい」と称賛の声が上がる一方、「政治を漫才に持ち込むな」といった批判も飛び交っている。
 村本さんは、出身地の福井県おおい町周辺の小さな地域に原発が4基あるのに、夜7時以降は街が真っ暗になると紹介。「電気はどこへ行く!?」と大量消費する都会と負担を押し付けられる地方の構図に疑問を投げ掛けた。その後も相方の中川パラダイスさん(36)と早口でリズム良く掛け合い、小池百合子東京都知事を「自分ファースト」と風刺。米国にとってミサイルや戦闘機を大量に買ってくれる日本は「仲がいい国」ではなく「都合のいい国」などと畳み掛けた。

 沖縄の基地問題では辺野古や高江を取り上げ「日本全体の問題」なのに「沖縄だけに押し付ける」「面倒くさいことは見て見ぬふりをする」と強調。在日米軍に払う9465億円を思いやり予算と説明した上で「アメリカに思いやりを持つ前に沖縄に思いやりを持て」と訴えた。

★まあ、ネタで沖縄取り上げたからな
☆沖縄タイムスだけじゃない。なんと、共産党の志位和夫がこう呟いた。
「ウーマンラッシュアワー」は凄い才能だ。「沖縄が抱えている問題は」「辺野古基地問題」「その他には」「高江ヘリパット問題」「米軍に思いやりをもつ前に」「沖縄に思いやりを持て」!。速射砲のように繰り出される政治風刺。笑いこそ、政治風刺の最高の武器だ。日本にもっと笑いを。もっと風刺を!

★共産党の協賛か。反響は大きいが反共ではないということ。
☆村本が、リツィートして、また話題になっている。
 ありがとうございます。どんだけいいネタ作っても、芸人のくせに、村本のくせに、と罵られ、やっと稼いだギャラもよしもとに搾取されます。村本にも、芸人にも、おもいやりを持てという街頭演説をしてください。

★そのコメントは、毒もあるけどシャレている。
☆エラそうにしている奴や傲慢な輩を笑い飛ばす。それが庶民の芸の真骨頂だ。

★無理に定義しなくても、型にはまらない芸は大歓迎だ。
☆彼ら、テレビに出続けることができるだろうか。

★こんなネタ。アベは怒るだろうな。
☆笑って聞き流す余裕はないからな。

★誰かが忖度して、あいつら絶対テレビに出さん。
☆出してもよいけど、しゃべらせない。

★しゃべってよいけど、ヨイショしろ。
☆日本よい国、強い国。アベ様一強、よい政治。

★それではまったくつまらない。
☆つまらぬ政治は誰のせい?
★アベのせい?
☆いやいや
★自民のせい?
☆なかなか
★じゃあ大企業のせいだ
☆それもちがう
★つまらなくしているのは、やっぱり
☆★おまえだ。

★☆いや、おれたちだ。
(2017年12月21日)

恐るべし。貴乃花のアナクロニズム。

大相撲の不祥事はあとを絶たない。言うまでもなく、相撲界が刑法適用の圏外にあるはずはなく、傷害事件には処罰がなされるべきが当然のことだ。

だが彼らに求められる規範意識は、通常人のレベルまでのこと。暴力はいけない。暴言はよくない。賭博も万引きも犯罪だ。まあ、それで十分だろう。

大横綱とか名力士とか持ち上げられても、所詮は力自慢の肉体派若者集団の中での比較強者というだけのこと。乱暴者もいれば、酒癖の悪いのもいるだろう。過度に精神性や品格を強調して、相撲道や国技の自覚を求めるのは、気の毒でもあり滑稽でもある。とりわけ、モンゴルら外国人力士に、意味不明の「角道精神」や「日本精神」を押しつけるなどは、時代錯誤も甚だしく愚の骨頂だ。

貴乃花が池口恵観なる人物に送ったメールが話題になっている。私は、日馬富士の傷害事件には特段の関心はない。傷害にはしかるべき処罰がなされればよいだけのこと。だが、事件に関連して相撲協会のあり方を批判する、週刊朝日に掲載されたこの貴乃花メールの内容には心底驚いた。どうしてこんな人格が育ったのか、不気味でもあり、寒々しい思いに堪えない。

池口恵観とはどこかで聞いた名。朝鮮総連建物の競売事件で顔を出し、落札しようとしたあの正体不明の僧であったか。ウィキペディアなどを見ると、「鹿児島高野山最福寺住職で、安倍晋三など多くの政治家と親交があることから永田町の怪僧の異名がある」という。安倍晋三と親交があるといえば、加計孝太郎・籠池泰典・山口敬之の類であろう。確かに、それだけで十分に「怪しい僧」ではある。

以下その尋常ではないメールの抜粋である。こなれない文章と論理の展開、所々に意味の通らない単語。おそらく、代筆ではなく貴乃花自身の執筆なのだろう。それだけに、実に生々しい。

「“観るものを魅了する”大相撲の起源を取り戻すべくの現世への生まれ変わりの私の天命があると心得ており、毘沙門天(炎)を心にしたため己に克つをを実践しております

国家安泰を目指す角界でなくてはならず“角道の精華”陛下のお言葉をこの胸に国体を担う団体として組織の役割を明確にして参ります

角道の精華とは、入門してから半年間相撲教習所で学びますが力士学徒の教室の上に掲げられております陛下からの賜りしの訓です、力と美しさそれに素手と素足と己と闘う術を錬磨し国士として力人として陛下の御守護をいたすこと力士そこに天命ありと心得ております

角道、報道、日本を取り戻すことのみ私の大義であり大道であります勧進相撲の始まりは全国の神社仏閣を建立するために角界が寄与するために寄進の精神で始まったものです

陛下から命を授かり現在に至っておりますので“失われない未来”を創出し全国民の皆様及び観衆の皆様の本来の幸せを感動という繋ぐ心で思慮深く究明し心動かされる人の心を大切に真摯な姿勢を一貫してこの心の中に角道の精華として樹立させたいと思います」

「国家安泰」「国体を担う団体」「角道の精華」「陛下のお言葉」「陛下から賜りし訓」「国士として力人として陛下の御守護」「日本を取り戻す」「陛下から命を授かり」…って、この語彙の羅列はいったいなんなのだ。

とりわけ見過ごせないのは、「陛下のお言葉をこの胸に国体を担う団体として組織の役割を明確にして参ります」との一文。貴乃花にとっては、現在の相撲協会のあり方は、「陛下のお言葉」を体していない。「国体を担う団体」ともなっていない、というのだ。自分こそが天命を帯びて、「その組織の役割を明確にして参ります」と見当違いの使命感が語られている。

もとより思想は自由だが、その批判も自由。「国体」や「陛下」を振り回す「思想」にはうんざりだ。批判せざるを得ないし、天皇にも定めし迷惑なことになろう。こんなことが重なれば、相撲見物にも足を運びにくくなるだろう。

もう一つ見過ごせないのは、「日本を取り戻すことのみ私の大義であり大道であります」というくだり。「日本を取り戻す」は安倍晋三のスローガンだ。「日本」とは、いったいどんな日本で、取り戻すとは何のことか。具体的には何を言っているのか理解不能だが、安倍晋三自身にもよく分かっていないことだろう。注目すべきは、貴乃花が安倍晋三のキャッチフレーズを口まねしていることなのだ。

しかし、もしかしたら貴乃花は本気で「万世一系の天皇が統治す」る、「富国強兵」の大日本帝国を取り戻そうとしているのかも知れない。軍国主義が跋扈したあの天皇制権力の時代の軍国日本。時代錯誤の貴乃花の脳裏にある、角道の精華とは、陛下のお言葉を体し国士として陛下の御守護することにあるのだ。相撲協会は、そのような国体を担う団体であることを明確にしなければならない、と言っているようにも解せるのだ。

貴乃花メールには、日馬富士の貴の岩に対する傷害事件とは無関係な、相撲協会の理念をめぐるイデオロギー対立が根にあることを読みとれる。しかし、公益財団法人日本相撲協会が、貴乃花が唱導するような極右思想集団になってはならない。大相撲ファンは、そんな国技館に足を運びたくはない。そんな相撲に拍手は送らない。
(2017年12月20日)

カネのちからによる言論介入を許してはならない。 ― 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第116弾

東京メトロポリタンテレビジョン(MXテレビ)が今年(2017年)1月2日放送の「ニュース女子」について、BPOが「重大な放送倫理違反があった」とする意見書を公表した件。これは看過してはならない大きな事件であり問題なのだ。

問題がメディアのあり方に関わる重大事なのに、主要紙の社説が揃わないことに不安が残る。中央紙では、12月16日に朝日と東京が、17日には毎日が、いずれも格調の高い社説を書いた。それぞれに立派なものだ。読み易く分かりやすくもある。しかし、読売・産経は書かない。日経までもだ。メディアの使命に関して、余りにも感度が鈍いのではないか。地方紙では、沖縄の2紙が鋭い論評を書いているが、その余には目立つものが少ない。神戸新聞が目についた程度だが、これも気にかかる。

まずは、このような沖縄の基地建設反対運動に関してのデマとヘイトに充ち満ちた劣悪な「報道」が、地上波メディアに垂れ流されていることに戦慄を覚えなければならない。この感覚が大切だと思う。これを見て、「テレビなんぞは、どうせこの程度のもの」と甘く見てはならない。

デマとヘイトは、民衆をあらぬ方向に煽動する力をもちうる。ナチスもそうだった。天皇制政府も同じだった。このような番組の跋扈を芽のうちに摘み、蔓延を押さえ込まなくては、民主主義の基礎が崩される。隣国との協調も地域の安定も危うくなりかねない。視聴者には真実を知る権利がある。デマとヘイトによっての世論操作を許してはならない。この点に、すべてのメディアが敏感になって相互批判をしなければならない。

そして、この事件の構造と問題点を押さえなければならない。
「沖縄の新基地建設反対運動は、在日勢力によって操られた暴力的で恐ろしいもの」というのが、問題番組のコンセプトである。単に事実無根というに止まらず、特定の意図をもって運動への妨害を意図したものと指摘せざるを得ない。これが「デマ」という所以である。このデマは、情報の受け手に民族差別の潜在意識あることを前提に、これを利用し差別感情に訴えようとする企図が生み出したものだ。これを卑劣な「ヘイト」という所以なのだ。

このデマとヘイトの低劣番組を制作したのが、DHCテレビジョン(当時の社名は、DHCシアター、DHCのオーナー吉田嘉明が会長)である。これが、地上波局であるMXテレビに持ち込まれた。DHCテレビジョンの親会社であるDHCの提供番組としてである。MXテレビは、こんな劣悪番組をノーチェックで放送したのだ。この事件が起こってから、「完パケ」という業界用語が有名になった。放送される内容と同様の「番組完成バージョンのパッケージ」という意味のようだ。MXテレビ側は、「完パケ」を見ることすらしていなかった。これが、BPOから重大失態とされている。放送してよい内容かどうか、点検(「考査」)しなければならない立場にあったのに、内容を見てもいなかったというのだ。

なぜ、こんな失態が生じたか。ここが最大の問題点だ。メディアの良心がカネの力に屈しているのだ。もっと正確に言えば、カネを持っているスポンサーが、地上波テレビの番組内容を支配する構造が問題なのだ。

MXテレビといえば東京都お抱え局という印象があるが、最近10年で東京都からの広告料収入がトップだったのは、2011年決算期だけ(東京都11.4%、DHC11.0%)。あとは、DHCがダントツである。DHC1社で、全広告収入の20%を超える年もあるのだ(2013年決算では21.8%、2015年決算では21.0%)。このスポンサーのカネの力には逆らえないというメディアの体質をどう変えるか。メディアの報道内容の資本からの自由や、メディアの良心を制度的にどう保障するのか。そこがロードスなのだ。なんとか、ここで跳ばなければならない。

目についた、各紙の社説の表題だけを紹介しておきたい。

☆朝日社説(12月16日)
BPO意見書 放送の倫理が問われた
http://www.asahi.com/articles/DA3S13275732.html?ref=editorial_backnumber

☆東京新聞社説(12月16日)
沖縄基地番組 事実は曲げられない
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017121602000155.html

☆毎日社説(12月17日)
MXテレビにBPO意見書 放送業界の大きな汚点だ
https://mainichi.jp/articles/20171217/ddm/005/070/019000c

☆日沖縄タイムス 社説(12月16日)
[BPO倫理違反指摘]番組内容自ら再検証を
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/184877

☆琉球新報 社説(12月17日)
BPO意見書 東京MXは直ちに謝罪を
https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-632204.html

☆神戸新聞社説(12月17日)
BPO意見書/放送への危機感がにじむ
https://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201702/0009921688.shtml

結局のところ、MXテレビは、大スポンサーであるDHCにものを言えない立場にあった。そのために、DHCが制作したデマとヘイトの低劣番組を一切の検証なしに垂れ流して、メディアとしての信用を失墜したのだ。もしかしたら、他のメディアにも、同様の事情があるのかも知れない。だから、DHC批判につながる、「ニュース女子」批判の見解を堂々と述べることができないのではないか。そんな心配が杞憂であることを望む。

私自身が被告になったDHCスラップ訴訟を通じて見えてきているものは、DHCとその代表者吉田嘉明が、カネの力による民事訴訟の濫発によって、自分への批判を封殺しようとしていることだ。

「ニュース女子問題」と「DHCスラップ訴訟」。カネの力による言論への介入という点では、同根なのだ。デマやヘイトを駆逐しようという良識が、あるいはこの上ない貴重な表現の自由が、カネの横暴に屈するようなことがあってはならない。
(2017年12月19日)

東京「君が代」裁判(第4次訴訟)控訴理由書完成

弁護団を組んでの大型訴訟は、学ぶところが多いし面白い。弁護士の経験の伝承の場でもある。しかし、弁護団には特有のマネージメントの負担が大きい。これだけで一苦労だ。この苦労を一身に背負うのが弁護団事務局長。誰かが引き受けなければことが進まないが、「車輪の下」で雑務の山の重荷を支えることには、覚悟が必要だ。

そもそも大半の者の弁護士志望の動機が、マネージメントは不得手、やりたくない、というものだ。不得手でも、やりたくなくても、必要だから誰かがやらざるを得ない。心ならずも私もそんな役回りをいくつも引き受けてきた。が、もうこの齢では務まらない。

「10・23通達」関連訴訟の中核に位置づけられる東京「君が代」裁判(第4次訴訟)。9月15日に東京地裁民事第11部(佐々木宗啓裁判長)で、一審判決の言い渡しがあり、今日(12月18日)が控訴理由書の提出期限だった。

先ほど、弁護団事務局長の平松真二郎弁護士から、「皆さまお疲れ様でした。控訴理由書無事提出しました。」との報告があった。ご苦労様、という以外に言葉がない。

議論して構成を考え、手分けして執筆し、執筆したものを持ち寄って討論してまた加筆し、ようやく完成した控訴理由書が、397ページの大冊となった。事務局長は、弁護団の校閲担当者とともに最後の調整を担当している。

東京地裁の原判決は、減給以上の全処分を取り消したが、戒告(9名についての12件)については処分取り消し請求を棄却した。不当であり無念というほかない。私たちはこの点を逆転したい。

本控訴理由書は何よりも違憲論を重視している。その違憲の根拠を、「客観違憲論」と「主観違憲論」に大別した。立憲主義に基づく憲法の構造上、そもそも公権力が国民に対して、「国に敬意を表明せよ」などと命令できるはずはない。また、憲法26条や23条は教育の場での価値多様性を重視しており、公権力が過剰に教育の内容に介入することは許容されず、本件はその教育に対する公権力の過剰介入の典型事例である。というのが、客観違憲論。誰に対する関係でも都教委の一連の行為は違憲で、違法となる。

そして、主観的違憲論(思想・良心の自由保障、信教の自由保障違反)では、宗教学の島薗進教授の説示を援用して、新たな主張を展開している。同教授には、宗教学の立場から鑑定意見書を作成していただく予定である。

控訴理由書は、以下の全10章からなる。
序 章 原判決の基本的な問題点
第1章 事実関係に関する問題
第2章 本件通達及び職務命令による国歌の起立斉唱の義務付けが公権力行使の権限の限界を踰越していること
第3章 通達及び職務命令による国歌の起立斉唱の義務付けが教基法16条1項の禁じる「不当な支配」に当たること
第4章 国歌の起立斉唱の義務付けが憲法19条に違反すること
第5章 国歌の起立斉唱の強制は憲法20条2項,20条1項に違反すること
第6章 本件通達及び職務命令による国歌の起立斉唱の義務付けが憲法23条,26条,13条が保障する教師の教育の自由を侵害すること
第7章 卒業式等における国歌の起立斉唱の義務付けが国際条約に違反すること?
第8章 本件各処分は裁量権の逸脱・濫用にあたる
第9章 国賠法1条1項に基づく慰謝料等請求が認められるべきこと

*******************************************************************
本控訴理由書の目次を掲載しておく。この目次をよく読み込めば、控訴理由の大意が把握できるはず。

序章 原判決の基本的な問題点?9
第1 原判決の事実認定の問題点?9
第2 原判決の法的判断の問題点?11
第3 貴裁判所に望むこと?13

第1章 事実関係に関する問題?15
第1 原判決の事実認定の問題点?15
1 原判決の事実認定?15
2 10・23通達発出の真の目的を見極めるために必要な事実の認定が欠落している?15
3 職務命令と10・23通達の関連性についての認定が欠落している?17
4 卒業式等において教師に創意工夫や裁量の余地がなく画一的な儀式を押し付けられたことに関する認定が欠落している?18
5 小括?19
第2 1989年学習指導要領改訂と学校における「日の丸・君が代」の取り扱い?19
1 はじめに?19
2 学習指導要領改訂前の学校の日の丸・君が代実施の状況?19
3 学習指導要領改訂時の議論?22
4 学習指導要領改訂後の運用状況?24
第3 10・23通達発出に至る経過?25
1 学習指導要領改訂後の都教委の指導?25
2 国旗国歌法制定とその立法趣旨?27
3 1999(平成11)年通達?39
4 都教委の方針転換?43
5 教育委員や教育長らの考え?55
6 都議会議員らとの迎合的関係?61
7 対策本部の議論?66
第4 10・23通達から職務命令発出に至る経過?69
1 10・23通達につき校長の独自の権限はなかった?69
2 管理職への事前指導による「職務命令発出」の徹底?70
4 卒業式当日の異常な監視体制?83
5 服務事故報告書,校長への事情聴取?84
6 都教委による10・23通達完全実施体制?85
第5 10・23通達下の卒業式等の実施?89
1 教職員に対する強制?89
2 生徒への強制?94
3 障害児学校での卒業式の変容?107
4 通常学校における卒入学式への影響?121
第6 教育現場の変容?124
1 上意下達の結果?破壊された教育現場?124
2 かつての教育現場?教師集団による闊達な議論?125
3 都教委が10・23通達前後に行った「教育現場改革」と教育現場への介入?126
4 上意下達体制の貫徹による「沈黙の教育現場」?131
5 「お上が望む教育へ」?教育内容への介入?133
第7 小括?139

第2章 本件通達及び職務命令による国歌の起立斉唱の義務付けが公権力行使の権限の限界を踰越していること?140
第1 「職務命令」と「信念等」との対比では抜け落ちてしまう重要な側面?140
1 原判決では控訴人らの主張が理解されなかったこと?140
2 職務命令と「歴史観・世界観・教育観」との対比?140
3 何が捨象されてしまうのか?141
4 等閑視された「求めること」と「強制」との隔絶した違い?143
第2 「公権力行使の権限踰越」の意味と判例上の位置づけ?145
1 公権力行使の権限踰越が本章の主題?145
2 職務命令が違憲という従前の主張とは異なる?145
3 南九州税理士会事件最高裁判決とそれが依拠した大法廷判決?146
4 アメリカ連邦最高裁のBarnette(バーネット)事件判決?149
5 憲法判断の客観的アプローチ?150
6 「権限がない」の意味についての補足説明?153
7 「権限の限界の踰越」の意味についての補足説明?153
第3 原判決に対する批判?154
1 「公権力行使の権限踰越」の主張に対する原判決の判示?154
2 判示?について?154
3 判示?について?155
第4 「国家シンボルと個人」から画される「公権力行使の限界」?157
1 国家と対峙する個人?157
2 国家シンボルに対する敬意表明の強制は権限を踰越した公権力の行使?157
3 公務員に対しても強制はできない?160
4 根拠とする憲法の条項?162
第5 「生徒の精神的自由」と「教職員の職務」から画される「公権力行使の限界」?163
1 精神的自由の内在的制約?163
2 単に法律に根拠があるだけでは人権の制約はできない?164
3 一連の最高裁判決による制約の正当化?164
4 調整すべき生徒の人権は抽象的で希薄な「学習権」だけではない?166
5 生徒と教職員は別という議論?166
6 「不利益処分の制裁をもって」が重要なのではない?167
7 現に起立斉唱できないという思いをもつ生徒の存在?169
8 教職員による起立斉唱の率先垂範は生徒の自律的な思考と判断を損なう?172
9 教育的配慮として生徒の気持ちに寄り添うことは教職員の職責?173
10 教職員の職責と矛盾する行為を教職員に強制をする権限は行政にない?174
第6 結語?175

第3章 通達及び職務命令による国歌の起立斉唱の義務付けが教基法16条1項の禁じる「不当な支配」に当たること?176
第1 教育委員会が教育内容に関する具体的な命令の発出が許されるとした原判決は,旭川学テ事件最高裁判決の判断に反していること?176
1 原判決の判示?176
2 旭川学テ事件最高裁判決の判断枠組み?177
3 原判決は旭川学テ事件最高裁判決を誤読していること?185
第2 教育委員会は「必要性,合理性が認められる場合には,適正かつ許容される目的のために必要かつ合理的と認められる範囲内において,具体的な命令を発することもできる」と判断した誤り?186
1 原判決の判示?186
2 旭川学テ事件最高裁判決が示した教育委員会の権限行使の限界?187
3 具体的な命令を発しうる「特に必要な場合」はどのような場合か?189
第3 国歌の起立斉唱の義務付けが「適正かつ許容される目的のために必要かつ合理的であると認められるとした原判決の誤り?193
1 原判決の判示?193
2 具体的な命令を発する「必要」性を認めた原判決の誤り?194
3 起立斉唱命令の「合理性」を認めた原判決が判断を誤っていること?199

第4章 国歌の起立斉唱の義務付けが憲法19条に違反すること?205
第1 原判決は事案類型の把握が誤っていること?205
1 原判決の概要?205
2 控訴人らの主張?205
3 控訴人ら「教職員としての職責意識に基づく信条」の内容?207
第2 原判決は,「憲法が宗教儀式ならびにこれに準ずる世俗的儀式等への参加強制を禁じている」ことを看過している?211
1 原判決の違憲判断回避の構造?211
2 「間接制約」論の誤謬?214
3 儀式・儀礼による集団規律と宗教及び全体主義との関わり?216
第3 起立斉唱行為の義務付けの必要性及び合理性がないこと?221
1 原判決の判断?221
2 控訴人らの主張?221
3 そもそも10・23通達発出の必要性及び合理性はなかった?222

第5章 国歌の起立斉唱の強制は憲法20条2項,20条1項に違反すること?227
第1 憲法20条に関する原判決の判断?227
第2 「日の丸・君が代」の宗教性?234
1 「日の丸・君が代」の宗教性?234
2 国旗・国歌(日の丸・君が代)の儀式における役割?236
第3 憲法20条2項違反について?237
1 憲法20条の構造?237
2 強制の契機?238
第4 憲法20条1項違反について?240
1 内心に限定された自由ではない?240
2 「間接制約」論の誤謬?241
3 剣道実技拒否事件最高裁判決の射程?242
第5 教員の信教の自由とその限界?244
1 人権制約における厳格な審査基準?244
2 日の丸・君が代強制と厳格審査基準?245

第6章 本件通達及び職務命令による国歌の起立斉唱の義務付けが憲法23条,26条,13条が保障する教師の教育の自由を侵害すること?246
第1 原判決は教師の教育の自由に関する旭川学テ事件最高裁判決に反していること?246
1 原判決の判断?246
2 普通教育における教師の教育の自由に関する旭川学テ事件最高裁判決?247
3 小括?252
第2 教職員に対する起立斉唱の義務付けが国旗国歌条項の趣旨に沿うとした原判決の判断は誤っていること?252
1 原判決の判示?252
2 教職員全員の起立斉唱が国旗国歌条項の趣旨にかなうものではないこと?253
3 教職員全員の起立斉唱を命じることはできないこと?258
4 教職員全員の起立斉唱は子どもの学習権を侵害すること?262
5 小括?263
第3 本件通達及び本件職務命令は,教育の自由を侵害すること?263
1 原判決の判示?263
2 原判決の判示は事実誤認に基づくこと?264
3 小括 原判決は事実を誤認したものであること?270

第7章 卒業式等における国歌の起立斉唱の義務付けが国際条約に違反すること?272
第1 原判決の判断内容とその基本的問題点?272
1 原判決の判断内容?272
2 原審判断の特徴と問題点?273
第2 原判決が自由権規約18条の解釈を誤ったこと?275
1 自由権規約,児童の権利に関する条約の裁判規範性?275
2 国際条約における一般的意見,総括所見の持つ意味?277
3 条約法条約による解釈規則?277
4 規約人権委員会の人権規約18条に対する一般意見?278
第3 原判決は,自由権規約委員会の日本政府の第6回報告に対する総括所見について誤った位置づけをしたこと?282
1 自由権規約委員会の日本政府の第6回報告に対する総括所見?282
2 第6回総括所見に至るまでの経過とその内容?283
3 第6回総括所見の意義?287
第4 原判決の自由権規約18条の解釈・適用の誤り?289
1 自由権規約18条の解釈の誤り?289
2 第6回総括所見の持つ意味?291
3 原判決の自由権規約18条の適用の誤り?292
第5 児童権利条約違反?301
1 原判決の内容とその問題点?301
2 控訴人らは,児童(子ども)の権利に関する条約違反の主張ができること?302
3 児童権利条約で保障された具体的権利の内容?304
4 10・23通達とそれに基づく卒業式等の実施が児童権利条約違反となること?309

第8章 本件各処分は裁量権の逸脱・濫用にあたる?312
第1 はじめに?312
第2 2012年1月16日最高裁判決は戒告処分の無条件容認ではない?312
第3 戒告処分が取り消されない限り,問題の解決は図られない?315
1 思想・信条,教職員としての職責意識を捨てない限り起立はできない?315
2 都教委は,教育現場で校長が教職員の思想・信条に配慮することを認めない?318
3 不起立による実害はない?320
4 懲戒処分を科すことにより発生する教育現場への弊害?321
5 まとめ?328
第4 本件の各戒告処分は取り消されなければならない?328
1 はじめに?328
2 本件職務命令は不当な動機・目的でなされたものであり違法である?328
3 戒告処分の裁量権の逸脱濫用を認めなかった原判決の誤り?333
4 都教委自身も認める戒告処分に付随する様々な不利益?349
5 標準的な処分量定との比較?364
6 国旗国歌をめぐる全国の懲戒処分の状況と東京都の突出?365
第5 結論?367

第9章 国賠法1条1項に基づく慰謝料等請求が認められるべきこと?368
第1 本件各懲戒処分に行った都教委には国賠法上の過失が認められること?368
1 原判決の判示?368
2 本件通達及び職務命令による起立斉唱の義務付けは違憲・違法であること?369
3 懲戒処分を行ったことにつき都教委に国賠法上の過失が認められること?370
第2 控訴人らに損害が生じていること?383
1 原判決の判示?383
2 処分の取消によっても慰謝されない精神的苦痛が残されること?384
3 懲戒処分による経済的不利益?389
4 結論?391   (付 別表)
(2017/12/18)

全国の消費者に、反省なきDHCへの制裁を呼びかける ― 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第115弾

今回の「ニュース女子」問題でのBPO決定にDHCがどう関与しているか。確認しておきたい。

☆DHCの子会社に、「DHCテレビジョン」という番組制作会社がある。旧商号は、「DHCシアター」。DHCのオーナー吉田嘉明が代表取締役会長となっている。
社歴の概要は、以下のとおり。
株式会社DHCテレビジョン/ DHC Television Co.,Ltd.
1995年11月22日 株式会社シアター・テレビジョン設立
2015年1月1日 株式会社DHCシアターに社名変更
2017年4月1日 株式会社DHCテレビジョンに社名変更
代表取締役会長 : 吉田嘉明

☆「東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)」は、2017年1月2日に沖縄の基地反対運動について特集した番組「ニュース女子」を放送した。これは「DHCテレビジョン」(当時は、「DHCシアター」)の持ち込み番組で、スポンサーはDHCであった。

☆この番組に放送倫理上の問題があるとして、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会が2017年2月に調査を開始し、同年12月14日に下記の意見書公表に至った。
なお、BPOの放送人権委員会には辛淑玉氏が同番組によって人権を侵害されたとして救済の申立をし審理中だが、まだ結論に至ってない。

☆東京メトロポリタンテレビジョン『ニュース女子』沖縄基地問題の特集に関する意見

2017年12月14日 放送局:東京メトロポリタンテレビジョン

放送倫理検証委員会は、「東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)『ニュース女子』が2017年1月2日に放送した沖縄基地問題の特集を審議してきたが、このたび委員会決定第27号として意見書をまとめ公表した。
当該番組はTOKYO MXが制作に関与していない“持ち込み番組”のため、放送責任のあるTOKYO MXが番組を適正に考査したかどうかを中心に審議した。

委員会は、
(1)抗議活動を行う側に対する取材の欠如を問題としなかった、
(2)「救急車を止めた」との放送内容の裏付けを制作会社に確認しなかった、
(3)「日当」という表現の裏付けの確認をしなかった、
(4)「基地の外の」とのスーパーを放置した、
(5)侮蔑的表現のチェックを怠った、
(6)完パケでの考査を行わなかった、
の6点を挙げ、TOKYO MXの考査が適正に行われたとは言えないと指摘した。そして、複数の放送倫理上の問題が含まれた番組を、適正な考査を行うことなく放送した点において、TOKYO MXには重大な放送倫理違反があったと判断した。

☆これに対して、TOKYO MXは、次の反省のコメントを発表している。

BPO放送倫理検証委員会決定について
1. 本日、BPO放送倫理検証委員会より、番組「ニュース女子」沖縄基地問題の特集に関し、審議の結果、委員会の判断として、以下の委員会決定が通知されました。
【BPO放送倫理検証委員会 決定内容(概要)】
本件放送には複数の放送倫理上の問題が含まれており、そのような番組を適正な考査を行うことなく放送した点において、TOKYO MXには重大な放送倫理違反があったと委員会は判断する。
2. 上記、BPO放送倫理検証委員会決定に対する当社のコメントは以下の通りです。
本日、BPO放送倫理検証委員会より、当社が本年1月2日に放送した情報バラエティ番組「ニュース女子」沖縄基地問題の特集について、審議の結果、重大な放送倫理違反があったとの意見を受けました。
当社は、本件に関し、審議が開始されて以降、社内の考査体制の見直しを含め、改善に着手しております。改めて、今回の意見を真摯に受け止め、全社を挙げて再発防止に努めてまいります。

☆ところが、DHCテレビジョンには、反省の色がまったく見られない。

朝日の報道では、
「DHCテレビジョン(旧・DHCシアター)」は14日、朝日新聞の取材に対し、「1月に出した見解と相違ございません」と回答した。
1月の見解では「(日当について)断定するものではなく、疑問として投げかけており、表現上問題があったとは考えておりません」「(基地反対派の取材をしないのは不公平との批判について)言い分を聞く必要はないと考えます」「今後も誹謗(ひぼう)中傷に屈すること無く、日本の自由な言論空間を守るため、良質な番組を製作して参ります」などとしていた。

毎日の報道では
DHCテレビジョンは以前から、公式サイトで「数々の犯罪や不法行為を行っている集団を内包し、容認している基地反対派の言い分を(取材で)聞く必要はないと考える」「今後も誹謗(ひぼう)中傷に屈すること無く、日本の自由な言論空間を守るため、良質な番組を製作していく」などの見解を公表。同社は14日の取材に「見解に変わりはない」と答えた。

☆ 最大取引先のDHCに疑義を唱えにくい環境
毎日新聞12月15日朝刊は、東京MXの本件不祥事の原因について、次のとおりの指摘をしている。

沖縄県の米軍基地反対運動を取り上げたバラエティー・情報番組「ニュース女子」に「誤解や偏見をあおる」などの批判が出ている問題で、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会(委員長・川端和治弁護士)が14日公表した、東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)への意見書。BPO検証委の意見書によると、放送前に番組をチェックしたMXの考査担当者は、抗議活動をする側への取材がないことに疑問を全く感じず、内容をインターネットなどで確認しただけ。「反対派の連中」など、からかう表現にも意見をつけなかった。確認したのは制作中の段階のみで、完成品は見なかったという。

MXは検証委が審議入りを決めた2月、番組の「事実関係において捏造、虚偽があったとは認められない」とする見解を発表。検証委の一部委員からは「放送の自律の放棄じゃないか」との声まで上がったという。自社の放送番組審議会の要請を受ける形で、沖縄の基地問題の「報道特別番組」を制作、放送したが、今回の問題について検証する番組を「制作する予定はない」としている。

「ニュース女子」はスポンサーによる持ち込み番組で、しかもDHCはMXの売上額の11.5%(2016年度の有価証券報告書)を占める最大の取引先だ。関係者は「DHCに疑義を唱えにくい環境があるのでは」と指摘する。

民放テレビ局の幹部は「公共の電波を預かる放送責任を自覚してほしい」と語気を強める。7月に「考査部」を設置し、体制強化に努めているというMXだが、今後の再発防止策について、視聴者が納得できる説明をする責務があるはずだ。

☆MXのDHCからの広告収入額と全収入額に占める割合と順位の推移は、以下のとおり。

2009年.3月決算 1,458(百万円)18.4%? 1位
2010年3 月決算 1,044(百万円)13.9%? 1位
2011年3月決算  824(百万円) 11.0%?? 2位(1位は東京都の11.4%)
2012年3 月決算 1,803(百万円)19.2%? 1位
2013年3月決算 2,636(百万円)21.8%? 1位
2014年3月決算 1,592(百万円)12.5%? 1位
2015年3 月決算 3,303(百万円)21.0%? 1位
2016年3 月決算 2,359(百万円)14.3%? 1位

☆12月16日に朝日と東京新聞が、17日には毎日が社説で取り上げた。いずれも、きちんとした内容になっている。読み易く、分かりやすくもある。

☆問題放送を繰り返させないために。
*なによりも、DHCへの批判が必要だ。MXテレビは、曲がりなりにも反省の姿勢を示している。「今回の意見を真摯に受け止め、全社を挙げて再発防止に努めてまいります。」と言っている。しかし、DHCにもDHCテレビにも、反省の色はない。

MXテレビが反省しても、反省しないDHCの持ち込み番組を切ることができるか。大スポンサーの金の力が絡んでいるだけに、容易なことではない。これは、世論の風向き次第だ。

ところで、DHCは、脈絡もなく反日批判、在日批判を始める不思議な会社。
同社の公式ホームページに、「会長メッセージ」が2通掲載されている。下記のURLを開いて、ぜひ多くの人にお読みいただきたい。私(澤藤)も、「反日の徒」とされている模様である。また、恥ずかしげもなく民族差別を公にしている。DHC・吉田嘉明の人格をよく表している。
https://top.dhc.co.jp/company/image/cp/message1.pdf
https://top.dhc.co.jp/company/image/cp/message2.pdf
以下は、その一部である。

本物、偽物、似非ものを語るとき在日の問題は避けて通れません。この場合の在日は広義の意味の在日です。いわゆる三、四代前までに先祖が日本にやってきた帰化人のことです。
そういう意味では、いま日本に驚くほどの数の在日が住んでいます。同じ在日でも日本人になりきって日本のために頑張っている人は何の問題もありません。立派な人たちです。問題なのは日本人として帰化しているのに日本の悪口ばっかり言っていたり、徒党を組んで在日集団を作ろうとしている輩です。いわゆる、似非日本人、なんちやって日本人です。政界(特に民主党)、マスコミ(特に朝日新聞、NHK、TBS)、法曹界(裁判官、弁護士、特に東大出身)、官僚(ほとんど東大出身)、芸能界、スポーツ界には特に多いようです。芸能界やスポーツ界は在日だらけになっていてもさして問題ではありません。
影響力はほとんどないからです。問題は政界、官僚、マスコミ、法曹界です。国民の生活に深刻な影響を与えます。私どもの会社も大企業のー員として多岐にわたる活動から法廷闘争になるときが多々ありますが、裁判官が在日、被告側も在日の時は、提訴したこちら側が100%の敗訴になります。裁判を始める前から結果がわかっているのです。
似非日本人はいりません。母国に帰っていただきましょう。

*DHC批判の手段としては、消費者がDHC商品を買い控えることが一番だ。
消費者運動は、消費生活における商品選択行動を通じて、よりよい社会を作ろうとする。単に、安くて品質性能のよい商品を求めるだけでなく、もっと広く民主主義的な選択を実践する。武器製造業者への牽制、環境の保護、ブラック企業の排除、歴史修正主義加担企業への制裁など…。
DHCがスポンサーとなり、その子会社が作った沖縄差別・民族差別丸出しのこんな放送を許さないためには、制裁のためにDHCの商品を買わなければ良いのだ。化粧品もサプリも、代替商品はいくらでもある。スラップ常習企業でもあるDHCへの制裁を、全国の消費者に呼びかけたい。
(2017年12月17日)

学術会議の「元号廃止 西暦採用について(申入)」決議の紹介

なんとなく、ものを言いにくい雰囲気ができつつある。安保条約批判、自衛隊批判、天皇制批判が典型3テーマ。現天皇の生前退位希望による法改正批判などは、その最たるものだろう。批判の言論の萎縮は、ものを言いにくい雰囲気醸成の悪循環を招くことになる。いうべきことを自己抑制してはならないと思う。

特に気になるのは、共闘に支障が生じるからと共闘相手の主張に媚びた言論萎縮、世論に支持を得られないからと無用に世論に諂った形での言論萎縮。堂々と自説を述べるべきだろう。でないと、言論の重心がいよいよ右に傾いていくことになる。

これから、2019年の天皇代わりまで、天皇制の存続や代替わり儀式のあり方、元号、祝日、そして政教分離原則についての議論が続くことになる。一人ひとりが、主権者として自覚をもって発言しなければならない。天皇やその親族に畏れいってはならないのだ。一言の遠慮することは、一歩の後退を意味する。一歩の後退が、その分だけ自分を発言の抑制に追い込むことになる。

まずは繰りかえし、元号問題を語りたい。「日の丸・君が代」・祝日・叙勲・元号が、天皇制護持の小道具4点セットである。中でも、国民生活に最も浸透しているのが、元号であろう。一世一元となって以来、元号は天皇の代替わりと連動してきた。元号こそは、天皇制を国民に刷り込む手段として、最有効な働きを果たしている。
その元号について、日本学術会議が、「元号廃止 西暦採用について(申入)」の総会決議を採択したことがある。1950年5月6日付。衆参両院議長と内閣総理大臣に当てたもの。新憲法制定3年後のことである。

これが、民主主義国家として再生した、戦後日本の知性のあり方というべきだろう。その後に元号法の成立(1979年6月)をみて、その限りでの事情の変化はあるが、そのほかはまったく変わらない。

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衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣

日本学術会議会長 亀山直人

元号廃止 西暦採用について(申入)

本会議は,4月26日第6回総会において左記の決議をいたしました。
右お知らせいたします。

?日本学術会議は,学術上の立場から,元号を廃止し,西暦を採用することを適当と認め,これを決議する。

理 由

1. 科学と文化の立場から見て,元号は不合理であり,西暦を採用することが適当である。
年を算える方法は,もつとも簡単であり,明瞭であり,かつ世界共通であることが最善である。
これらの点で,西暦はもつとも優れているといえる。それは何年前または何年後ということが一目してわかる上に,現在世界の文明国のほとんど全部において使用されている。元号を用いているのは、たんに日本だけにすぎない。われわれば,元号を用いるために,日本の歴史上の事実でも,今から何年前であるかを容易に知ることができず,世界の歴史上の事実が日本の歴史上でいつ頃に当るのかをほとんど知ることができない。しかも元号はなんらの科学的意味がなく,天文,気象などは外国との連絡が緊密で,世界的な暦によらなくてはならない。したがって,能率の上からいっても,文化の交流の上からいっても,速かに西暦を採用することか適当である。

2. 法律上から見ても、元号を維持することは理由がない。
元号は,いままで皇室典範において規定され,法律上の根拠をもっていたが,終戦後における皇室典範の改正によって,右の規定が削除されたから,現在では法律上の根拠がない。もし現在の天皇がなくなれば,「昭和」の元号は自然に消滅し,その後はいかなる元号もなくなるであろう。今もなお元号が用いられているのは,全く事実上の堕性によるもので,法律上では理由のないことである。

3.新しい民主国家立場からいっても元号は適当といえない。
元号は天皇主権の1つのあらわれであり,天皇統治を端的にあらわしたものである。天皇が主権を有し,統治者であってはじめて,天皇とともに元号を設け,天皇のかわるごとに元号を改めるととは意味かあった。新憲法の下に,天皇主権から人民主権にかわり日本が新しく民主国家として発足した現在では,元号を維持することは意味がなく,民主国家の観念にもふさわしくない。

4.あるいは,西暦はキリスト教と関係があるとか,西暦に改めると今までの年がわからなくなるという反対論があるが,これはいずれも十分な理由のないものである。
西暦は起源においては,キリスト教と関係かあったにしても,現在では,これと関係なく用いられている。ソヴイエトや中国などが西暦を採用していることによっても,それは明白であろう。西暦に改めるとしても,本年までは昭和の元号により、来年から西暦を使用することにすれば,あたかも本年末に改元があったと同じであって,今までの年にはかわりがないから,それがわからなくなるということはない。

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蛇足だが、第1項は極めて分かり易く、説得力がある。学術振興の立場を前提とするする限り、反論は困難だろう。

第2項は、元号法制定によって事情が変わった。このことは、元号法制定の意図や法制定ない場合の保守派の危機感をあぶり出しているともいえるだろう。

第3項は、「新憲法の下に,天皇主権から人民主権にかわり日本が新しく民主国家として発足した現在では,元号を維持することは意味がなく,民主国家の観念にもふさわしくない」。この結論に私は大賛成だ。

第4項は、言わずもがなというところ。「アンチ西暦派」への反論だが、いま「アンチ西暦派」はほとんど絶滅している。今対決しているのは、「西暦派」対「西暦・元号併存派」なのだ。もっと正確に言えば、「元号廃止の是非」が問題となっている。

不便で不合理な元号使用の押しつけは、まっぴらご免だ。後期高齢者に近い年齢で、どうでもよいようなものだが、自分の年齢を計算することに元号では煩瑣で混乱を避けられない。

学術関係者だけでなく、ビジネスマンも同じ意見だろう。「西暦・元号の併存」によって、どれだけのビジネス効率の低下を招いていることか。私は、天皇制ナショナリズムよりも、学術会議的で資本主義的な科学的合理性に与する。
(2017年12月16日)

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