嗚呼、中国よ。その大地には民主主義の芽は育たないのか。
(2020年11月11日)
新華社電は、本日、中国の全国人民代表大会常務委員会会議が、香港立法会の議員資格として「中国や香港政府への忠誠心を求める」ことを決定した、と伝えた。「香港独立を宣伝したり、外国勢力に香港への介入を求めたりすれば、議員資格を失う」と明示したという。
その決定を受け、香港政府は即日、香港民主派議員4人の資格を剥奪した。北京の指示に香港政府が忠実に従った。北京は、香港の民衆の全てに、同様の忠誠を求めているのだ。
この中国の蛮行の犠牲となって議員資格を剥奪された、香港民主派4人の氏名を、畏敬の念をもって記しておこう。
楊岳橋(Alvin Yeung)氏
郭栄鏗(Dennis Kwok)氏
郭家麒(Kwok Ka-ki)氏
梁継昌(Kenneth Leung)氏
【AFP=時事】は、「今回の措置は、中国全人代の常務委員会が、地方政府は国家安全保障上の脅威とみなす議員の資格を剥奪できると決定したことを受けてのもの」と伝えている。
共同は、「香港への統制を強める習近平指導部は、中国に批判的な香港の民主派議員を「忠誠心に欠ける」と見なして排除を進めるとみられる。香港に「高度の自治」を約束した「一国二制度」の形骸化が一段と鮮明になった。」と報じている。
昨日の毎日の記事には、「民主派議員19人は9日夜に記者会見し、議員資格の剥奪が決まれば、集団辞職して抗議する方針を表明した。民主派は「反対派の存在を許さない中央政府のやり方は1国2制度に反している」と強く反発した。」とされている。
「決定前の立法会の議席は親中派が41、民主派が21、欠員が8。民主派が4人欠けることで、重要法案を否決できる3分の1を大きく下回り、影響力が大きく後退するのは必至だ。さらに残りの民主派議員も辞職すれば、立法会はほぼ親中派議員だけとなり、異例の事態となる。」(朝日)
朝日によれば、「(資格を剥奪された)議員4人は7月、国安法に反対し、立法会選で民主派が過半数をとれば政府提案の法案を否決すると表明したことなどが問題視されていた。また10月以降も議事妨害をしているとして、全人代常務委メンバーの譚耀宗氏は、常務委員会が開かれるのを前に「香港の特別区に忠誠を誓い、基本法を守るという原則に反している」と語った。」という。
なるほど、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が語ったとおり、「6月末に香港国家安全維持法(国安法)が施行された後、香港に三権分立は存在しない」のだ。三権分立だけではない。民主主義もない。立憲主義もない。そもそも法の支配すらないのだ。
中国には、思想・良心の自由が存在しない。表現の自由もない。政治的活動の自由もない。つまりは、中国においては、国家権力は万能なのだ。意に沿わない議員の資格を剥奪することが自由にできる。権力が恣になんでもできるというこの中国のありかたを「独裁」と言い、野蛮という。
菅政権が、学術会議が推薦した6名の新会員候補の任命を拒否して、その理由を語ろうとしない。これも、野蛮な権力の行使である。決して、中国を嗤う資格はないが、この超大国の大地には民主主義の芽は育たないのだろうか。暗澹たる思いを禁じえない。