澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

都教委は、国連機関からの複数勧告を真摯に受けとめ、「10・23通達」を撤回せよ。

(2022年11月16日)
 東京都内の公立校教職員のすべてが、卒業式や入学式において、国歌斉唱の式次第の際には、「国旗に向かって起立し、国歌を斉唱せよ」という職務命令を受ける。違反者には懲戒処分が科せられる。懲戒処分には、諸々の不利益が附随して生じる。個人の尊厳や自由、多様な考え方の尊重を軽視し、国家が重要で愛国心を育む教育が重要とする、時代錯誤の教育を象徴する風景である。

 もちろん、昔からこうであったわけではない。とりわけ、都立高校は、「都立の自由」を誇っていた。卒業式には、日の丸も君が代もなかった。ごく一部の「ヘンな校長」が、式次第に「国歌斉唱」を盛り込むことはあっても、大部分の教職員が起立斉唱をすることはなかった。強制などは思いもよらぬこと。

 この事態を一変させたのが、「10・23通達」である。日の丸・君が代に対する起立斉唱を強制し、違反者には懲戒処分を科すとするもの。これを強行したのは、右翼にして国家主義者の、石原慎太郎という知事だった。石原は既に亡い。しかし、「10・23通達」は生き続けて今日に至っている。何とかして、東京都の教育に自由を取り戻さねばならない。

 その手立ての一つとして、国際機関への訴えが、今、功を奏しつつある。国連の機関が、人権後進国の日本に「日の丸・君が代強制」の是正を勧告しているのだ。

 一昨日(11月14日)の午後、《「日の丸・君が代」ILO/ユネスコ勧告実施市民会議》と、《アイム’89東京教育労働者組合》は、合同で東京都教育委員会(教育長)に申し入れを行う機会を得た。冒頭に、私が以下のように申し入れの趣旨を述べた。

 「セアート第14会期最終報告」ならびに「自由権規約委員会第7回 対日審査総括所見」に基づく申入を行います。

 まず、「申し入れの趣旨」を申しあげます。
 「東京都教育委員会は、国際機関の是正勧告を真摯に受け止め、直ちに10・23通達を廃し、国歌の起立斉唱の強制をやめることを求めます」

 「申し入れの理由」をお聞きいただきたい。
 教員に対する国歌起立斉唱の強制に対し、2つの国際機関が是正を求める勧告を行っています。いずれも、形式上は国に対する勧告ですが、実質は都教委宛のものです。都教委が、国際機関から、叱責を受けているのです。

 セアート(ILO/ュネスコ教職員勧告適用合同専門家委員会)第13会期最終報告は、東京都で教員に対して行われている国旗の起立斉唱の強制が市民的権利を侵害しているとして、是正を求める勧告を行った。これに対し、日本政府及び東京都教育委員会は、是正をしないまま、起立斉唱の強制を続けている。

 セアートは2021年10月第14回委員会において、再度の勧告を行うことを採択し、2022年6月にはILOがこの勧告を承認・公表した。

 セアートは、第14会期最終報告において、「加盟国が全員一致で採択した規範的文書という地位は、1966年勧告に重要な政治的道徳的迫力を与えている。」とし、教員の地位勧告の重要性を示している。そして、加盟国でありながら、国歌起立斉唱の強制を是正しない日本政府に対し、強制の是正に向けた具体的措置をとることを求めたのです。

 さらに、11月3日には国連自由権規約委員会第7回対日審査総括所見が出されています。
  「締約国(日本)は、思想及び良心の自由の効果的な行使を保障し、また、規約第18条により許容される、限定的に解釈される制限事由を超えて当該自由を制限することのあるいかなる行動も控えるべきである。締約国は、自国の法令及び実務を規約第18条に適合させるべきである。」と明言しています。

 その過程の2022年10月14日自由権規約第7回審査において、スペインのゴメス委員から日本政府代表に、要旨以下の質問が出されています。
  「2003年以降、東京都教育委員会は毎年都立学校の教員が国旗掲揚の際、起立し国歌を斉唱することを通達している。起立斉唱しなかった484人の教員に対して処罰が科される。 規約18条で保障されている思想・良心の自由とどのような整合性があるのか伺いたい。」

 以上のとおり、東京都教育委員会が行っている、国旗起立国歌斉唱の強制について2つの国際機関から3度の是正勧告が出されています。東京都教育委員会は、これらの国際勧告を真摯に受け止め、直ちに10・23通達を廃し、国歌の起立斉唱の強制をやめなければなりません。そのことを厳重に申し入れます。

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