「本郷・湯島九条の会」の街宣活動
本郷三丁目交差点をご通行中の皆様。素晴らしい秋晴れの昼休みのひとときに、やや不粋な街頭宣伝ですが、少しだけ耳をお貸しください。
私たちは、「本郷・湯島九条の会」の者です。この近所に住んでいる者が、憲法九条を大切にしよう、憲法九条に盛り込まれている平和の理念を守り抜こうと寄り集まって作っている小さな会です。
ご存じのとおり、「九条の会」は全国組織です。ちょうど10年前2004年の7月に、大江健三郎さんや井上ひさしさんなど九人によって結成されました。「九条の会」は、全国の地域、職場、学園、あらゆる場に無数の「九条の会」の結成を呼び掛けました。私たちの会もこれに呼応して、作られた全国7500もの「九条の会」のひとつです。「本郷・湯島九条の会」は、「ご近所九条の会」です。会長は、私が住んでいる町の町会長さんが務めています。
「九条の会」はこの10月を行動月間とすることを申し合わせました。「集団的自衛権行使容認の閣議決定に抗議し、いまこそ主権者の声を全国の草の根から」というスローガンで、10月を集団的自衛権行使容認に反対する行動をおこす「月間」としたのです。
「本郷湯島九条の会」はこの申し合わせに応じて、10月は毎週の火曜日に街頭宣伝活動を重ねてまいりました。今日は、その最後の日となります。来月からは、毎月第2火曜日だけの街宣活動を予定しています。
10月を行動月間と申し合わせたのは、7月1日に「集団的自衛権行使容認の閣議決定」があり、秋の臨時国会において閣議決定に基づく多くの諸法案が提案される危険を考えてのことです。いまのところ、日本を海外で戦争のできる国にするための具体的な法案の提出は行われていません。しかし、事態が好転したわけではありません。安倍政権は、世論の動向を見ながら法案提出を先送りしているだけのことです。来年の通常国会が本格的な決戦の場となるものと考えられます。
戦後69年。私たちは戦争のない世の中を当たり前のものと考えて過ごしてきました。しかし、安倍政権成立以来事態は大きく動いています。安倍政権ができてからろくなことはありません。武器輸出3原則の撤廃、河野談話見直しの動き、特定秘密保護法、靖国参拝、NHK人事、国家安全保障会議の設置、そして集団的自衛権行使容認の閣議決定です。さらに日米ガイドラインを改訂し、道徳教育にまで手を付けようとしています。危なっかしいことこのうえないといわねばなりません。
そのほか、安倍政権がやろうとしていることは、原発再稼働であり、原発輸出であり、派遣労働を恒久化する労働法制の大改悪であり、福祉の切り捨てであり、大企業減税と庶民大増税ではありませんか。庶民にとって良いことは何にもない。これまでは、「アベノミクスの効果は、今のところは大企業と株屋だけに利益をもたらしていますが、いずれ地方にも家計にもおこぼれがまわってきます。それまで我慢してくだい」と言われてきました。それが嘘だということにようやくみんなが気付き始めました。「放射能は完全にブロックされています」という嘘と同様に、この男は自信ありげに嘘を言うのです。最近の世論調査では、軒並み安倍内閣の支持率の低下が報道されています。とりわけ、経済政策の破綻が世論調査に表れています。
憲法九条は、武力による平和を否定する思想に基づくものです。右手に銃を構えながら、左手で握手をしようということではないのです。平和は、何よりも近隣諸国との信頼関係の醸成によって打ち立てられ維持されるべきものです。双方お互いに信頼関係を形成する努力を求められているのですが、私たちは、まずは自分たちの国から、平和のサインを発信すべきものと考えます。
鎌倉時代の元寇を最後に、日本が近隣諸国から侵略される危機を感じた経験は絶えてありません。この500年間の近隣諸国との戦争は、2度にわたる朝鮮侵略、明治維新後の台湾出兵、朝鮮や満蒙を支配するための日清・日露戦争、第一次大戦における山東出兵、シベリア出兵、そして、朝鮮の植民地化、日中15年戦争、そして太平洋戦争‥。私たちの国が、近隣諸国の民衆の足を踏み続けてきたことは覆い隠すことのできない歴史の真実ではありませんか。
近隣諸国との平和のためには、私たちこそが、侵略戦争や植民地支配を真摯に反省していることを近隣諸国の民衆によく分かってもらう努力が必要なのだと思います。まず、足を踏んだ側が、平和・友好の態度を示さねばならないことは当然のことです。
にもかかわらず、日本国内では、民族差別を公然と口にするヘイトスピーチデモが横行し、河野談話見直しの尖兵だった危険な政治家が首相になって靖国神社参拝まで強行し、さらには従軍慰安婦報道に熱心だった朝日新聞に対する嵐の如きバッシングが行われています。このようなことを見せつけられた近隣諸国の民衆は、日本は本当に先の戦争の反省をしているのだろうか。戦争を繰り返さず、平和を大切にしようとする意思があるのだろうか。そう疑念を持たざるを得ないのではないでしょうか。
一点の疑念が、疑念拡大の悪循環の出発点となり得ます。相互の不信の交換は、不信を増幅させ不信に基づく武力拡大のエスカレートを呼ぶことになりかねません。そのような緊張関係が、偶発的に戦争の勃発につながることを危惧せざるを得ません。
安倍政権の動向は、近隣諸国をいたずらに刺激し重大な事態にいたる危うさに満ちていると言わざるを得ません。この暴走内閣を辞めさせ、もう少しマシな、戦争への危険を感じさせないまっとうな政権に取って替わらせるよう、力を合わせようではありませんか。取り返しのつかなくなる前に。
(2014年10月28日)