澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

共済協同組合に、グローバル保険企業の魔の手が。

私にも、顧問先の企業や団体がある。なんとなく気が合うところということだ。開業医共済協同組合が、その一つ。本日は、その第10回総代会。

これまで、総代会の都度、ブログに記事を書いてきた。下記のとおりである。

保険業界に抗う「開業医共済協同組合」の発展を願う。
http://article9.jp/wordpress/?p=5807(2015年10月25日)

まず恒産を確保して、しかる後に恒心を発揮しよう
http://article9.jp/wordpress/?p=7476(2016年9月25日)

当協同組合の発展に祝意を、そして協同組合運動の発展に期待を。                            http://article9.jp/wordpress/?p=9374 (2017年10月23日)

競争原理ではなく、協同・連帯の精神をこそ ― 開業医共済協同組合祝賀会で
http://article9.jp/wordpress/?p=11328(2018年10月23日)

このタイトルをご覧いただけば、なぜ気が合うというのかお分かりいただけるだろう。私は、協同組合運動の発展を願う立場だ。企業の競争原理ではなく、社会の協同・連帯の精神が大切だと思っているからである。そして、私自身も、小規模自営業者として、共済事業の大切さがよく分かるからでもある。

この団体は開業医を組合員として組合員間の共済事業を目的とした中小企業協同組合法に基づく事業協同組合である。会員数はおよそ2000名。保団連の事業の一部門が独立した形で発足したが、その総代会も第10回を迎えた。役員諸氏の献身性に支えられて、事業は極めて健全に順調に進展していることを喜びたい。

この組合は、新自由主義的な企業万能主義に反対の立場を明確にしている。かつて、共済は保険業とは無関係に種々の相互扶助制度として社会のそこここにあった。ところが、2005年の保険業法の「改正」が、これら共済制度のすべてを保険業法の網の目に入れて規制対象とした。名目は、「共済」を隠れ蓑にしたインチキ保険商品の横行から消費者を守るためということである。しかし、当組合はそうは見ていない。グローバリゼーションとして押し寄せたアメリカの保険企業の日本展開が、日本の相互扶助制度としての共済システムを企業展開の邪魔者と見ての圧力の結果だとの理解である。TPPやFTAに対する警戒は、農業漁業だけではない。共済にも及んでいるのだ。

営利事業としての民間保険会社の「休業保険商品」の保険料が高額になるのは理の当然である。資本出資者への配当も、会社役員・職員の人件費も、広告宣伝費のコストも避けられない。一方、当組合の役員は、これまでのところ常勤役員以外はすべて無報酬だ。資本への配当は無用。宣伝コストも微々たるもの。ところが、アメリカの保険企業にはこのことが面白くない。これを「不当な参入障壁」として、「平等化」を求めるという。

新自由主義とは、実は「自由」を本質とするものではない。巨大企業の行動の自由に対する規制には飽くまで撤廃・緩和を要求するが、巨大企業に邪魔者となる競争の「自由」は目障りとして新たな規制を創設するものなのだ。

本年度(2019年度・第11期)基本方針のタイトルが、「開業医の生活と経営を守り、協同組合の理念に基づく共済制度の発展を」というもの。その第1項に次の一文(抜粋)がある。

「1.当組合は、国民医療向上のために、国民の協同の力で、共済制度の解体を狙うアメリカと日本の金融資本の横暴を阻止し、何よりも人間として平和と自由を希求するものである。その立場を侵そうとする政治の動きに警鐘を鳴らし、開業医の経営と生活を守り、協同の理念を広げる当組合と制度の発展に尽力する。」

「アメリカと日本の金融資本の横暴」とは、実は非常に具体的で差し迫った問題なのだ。

在日米国商工会議所(ACCJ)が「共済等と金融庁監管下の保険会社の間に平等な競争環境の確立を」との意見書を公表している。

そのホームページへの記載が以下のとおり。
https://www.accj.or.jp/viewpoints.html?lang=ja
この意見書は「2020年7月まで有効」とされている。

同会議所は、米国政府の米国通商代表部(USTR)と密接に連携しており、その意見書は米国政府の対日要求といえる。しかも、在日米国商工会議所(ACCJ)の筆頭副会頭が、アフラックから出ている。共済を潰して、その市場を保険企業に、なかんずくアフラックに明け渡せという露骨な要求なのだ。農業分野と同様、安倍政権はこの要求に「ノー」と言えない。

総代会議案書は、「安倍内閣に圧倒的影響力を持っている同会議所によるこの意見書は、JA共済をはじめ、全労済、コープ共済、県民共済、都民共済、中小企業共済すべてについて、保険会社との平等な競争条件が確立されるまでは、共済の事業拡大及び新市場への参入は許さるべきでないと主張している」と指摘している。

彼らにとっては、個人保険分野(年金保険を除く)において約30%のシェアを占めている各種共済が、目障りなのだ。しかし、共済と保険とは元来が、「似て非なるもの」であり、同じテーブルで扱うなどは論外である。わが国の全ての共済制度を維持・発展させるためにも共済団体が一つになって運動していくことが急務となっている。

本日の総代会で確認されたものが、共済団体のすべてが、アメリカの巨大保険企業と対峙せざるを得ない事態であるという認識。「共済制度の解体を狙うアメリカと日本の金融資本の横暴を阻止し、何よりも人間として平和と自由を希求するものである。」というスローガンは切実なもの。農民・漁民だけではなく、共済組合もグローバリゼイションと闘わざるを得ないのだ。

開業医共済協同組合、これからが正念場である。
(2019年10月20日)

ファクトチェックは重要で、厳しい。

このところの各紙のファクトチェックが好評である。とは言うものの、量的にも質的にも、やや物足りなさを禁じえない。もっともっと、権力者の発言に鋭く遠慮のない切り込みに期待したい。

昨日(7月15日)の朝日は、安倍首相が誇る雇用増の実績は本当?」と切り込んだ。さすがに、よいテーマを選んでいる。これは、参院選の論争に必読。

安倍晋三首相 「この6年間、私たちの経済政策によって、働く人、雇用は380万人も増えた。年金の支え手が400万人近く増えたということ。それだけ保険料収入は増えた」(11日、大分県別府市での街頭演説で)

――△(一部不正確)

 総務省の労働力調査(年平均ベース)によると、企業や団体などに雇われている雇用者のうち役員を除いた働き手は、第2次安倍政権発足後の2013年から18年までの6年間で383万人増えた。「380万人増」という主張は正しい。

 ただ、増えた働き手のうち55%はパートやアルバイトなど非正規で働く人々が占める。非正規で働く人の多くは所得が少なく、不安定な生活を送っている。総務省が5年ごとに公表している就業構造基本調査によると、非正規で働く人の75%が年収200万円未満だった。この中には学生バイトや主婦のパートも含まれているが、いわゆるワーキングプアにあたる人も一定数いるとみられる。

 首相はこれまで「この国から非正規という言葉を一掃する」と何度も訴えてきたが、役員を除いた働き手に占める非正規雇用の割合は18年平均で37・9%となり、過去最高の水準になっている。

 非正規雇用が増え続ける一因には、企業が人件費を抑えようと正社員よりもパートやアルバイトを雇ってきたことがある。特に近年目立つのが、非正規で働く高齢者の増加だ。労働力調査によると、この6年間に増えた働き手383万人のうち40%は、パートやアルバイトを中心に非正規で働く65歳以上が占めている。定年後の再雇用でも、賃金など待遇面は現役時代より下がるのが一般的だ。

 加えて、1990年代後半以降、自民党政権が企業の求めに応じて派遣労働などの規制緩和を進めたことも非正規雇用の増加につながった

 秘書や通訳など26業種に限られていた派遣業は、小渕政権下の99年、建設業や製造業などを除き原則自由になった。さらに、安倍首相が政府・与党の中枢にいた小泉政権では、04年3月に施行された改正労働者派遣法によって、派遣期間の上限は1年から3年に延び、製造業への派遣労働も解禁された。

 一方、年金の支え手である加入者数は、保険料の納付期間が終了して加入者でなくなる人と新規加入者を出し入れすると、12年度末が6736万人、17年度末が6733万人で、ほぼ横ばいだ。「年金の支え手が400万人近く増えた」かどうかははっきりしない。

 保険料収入は確かに増加傾向にある。17年度は37兆2687億円で、12年度より7兆1千億円増えた。厚生労働省は理由の一つに、国民年金に比べて保険料が高い厚生年金の加入者が増えたことを挙げる。

 首相は演説で「4月に年金額が増えた」ともアピールする。19年度は公的年金の支給額が前年度より0・1%引き上げられた。引き上げは、15年度以来4年ぶり。国民年金の場合、満額で受け取る人は月67円増えて6万5008円、厚生年金はモデル世帯(夫婦2人分)で月227円増の22万1504円となった。

 ただ、少子高齢化に合わせて年金水準を自動的に引き下げる「マクロ経済スライド」により、物価上昇率(1・0%)や賃金上昇率(0・6%)よりも支給額の伸び率が抑えられている。だから支給額は増えても、実質的な水準は目減りしている。

こちらも選挙戦に使いやすい。東京新聞の《論戦ファクトチェック》野党、具体策示し年金改革公約 自民の主張「対案ない」は言い過ぎ

 参院選で重要争点の年金制度を巡り、自民党は政見放送で「(野党が)具体策を示さず不安をあおっている」と主張している。実際には、野党各党は公約などで現行制度の見直し案を示しており、自民の主張は「言い過ぎ」といえる。

 政見放送で三原じゅん子女性局長は「一部野党は、具体策を示さないまま不安をあおるだけ」と強調。隣の安倍晋三首相(党総裁)も、負担増なしに給付だけ増やせないと同調し「年金を充実する唯一の道は年金原資を確かなものにすること。すなわち、経済を強くすることだ」と話す。

 首相は十一日の福岡市での街頭演説でも「野党は財源も示さず、具体的な提案もしていない」と訴えた。

 しかし、立憲民主党は参院選の政策集で「低所得者の社会保険料の軽減措置」や「低年金受給者に対する追加給付」を掲げる。国民民主党は、低所得の年金生活者に最低月五千円を追加給付する政策を打ち出している。共産党社民党は、物価や賃金の伸びより年金の伸びを低く抑える「マクロ経済スライド」の廃止などを提言。日本維新の会は、年金の「積み立て方式」への移行案を提唱している。

 財源に関しては、年金制度見直し目的の財源を明示していない野党もあるが、共産は公約で、高額所得者の保険料を見直して年金財政収入を増やすと主張。国民も「金融所得課税の強化で捻出できる」(玉木雄一郎代表)と訴える。

 共産の志位和夫委員長はツイッターで「自民の政見放送は根拠のない野党攻撃。安倍さん、(同席した)党首討論で具体案を話したことが聞こえなかったの?」と投稿した。

もう一つ。こちらは、英BBCのニュース。「トランプは無能」という命題のファクトチェックが必要。どこかが、やってくれないだろうか。

 英国のダロック駐米大使が、トランプ米政権について「無能」「頼りにならない」と英首相官邸に報告していたと、英大衆紙メール・オン・サンデーが7日報じた。「米国との『特別な関係』の真価が試されかねない」(英BBC)と波紋を広げている。

トランプ無能の根拠よりは、むしろ、無能と言われてどう反応するかに興味が集まるところ。その態度が、政治家としての器の見せどころではないか。これを見つめる衆目が、ファクトのチェックとなる。

「無能」と言われて意に介さず、平然としていられるのは、ただ者ではないと思わせる。

無能と言われて、余裕綽々ニヤリと笑ってみせてはどうだろうか。何なら、ツィッターで、「無能と言われたよ。図星だね」くらい、言って見てはどうだ。風格が感じられないかね。

猛然と怒るのは、下の下。政治家として無能の極致。その醜態が、自らの無能を証明することになる。ときどき、我が国の首相にも思い当たる節がある。

結局、トランプは自らを無能と証明してみせた。が、このファクト。実は重い。この無能政治家を選んだ有権者の無能をも暴露することになるからだ。ファクトチェックは、厳しい。
(2019年7月16日)

安倍晋三・三原じゅん子出演の「自民党政見放送・本音版」

今次参院選自民党政見放送の評判がすこぶる悪い。そのことが話題となっていることを教えられて、本日(7月12日)初めて、ユーチューブで閲覧した。

16分の我慢というより苦行だったが、なるほどこれはひどい。正視に堪えない。三原じゅん子が、安倍晋三をインタビューする形式だが、考え得る限りでの最悪の人選。このコンビは、これ以上はない最悪の組み合わせ。聞いていて気持ちが悪くなる。異臭漂うがごとき胡散臭さだ。

私が閲覧した時点で、高評価974、低評価5528。率直な感想として、高評価974もあることが信じられない。もっとも、アベと三原の関係者の作為とすれば、諒解可能だが…。シナリオ制作の熱意の不足や技術の拙劣もあろうが、この二人、あまりに国民をバカにしているのだ。まったくのおざなり。真剣さが伝わってこない。

ユーチューブ視聴者からの低評価コメントの書き込みが延々と続いている。せっかくだから、その一部を下記のとおり、書き写しておいた。高評価のコメントは見あたらない。これだけひどいと、アベ親衛隊のネトウヨ諸君も、書きようがないのだろう。

こんな気持ち悪い政見放送、初めて見た
歴代でも最低の黒歴史放送
フェイクだらけの政見放送
恥を知れ、三原じゅん子。
通販番組みたいで胡散臭さがすごい 失敗だね
普通はこんな矛盾することばっかり言うと、馬鹿だと思われるから恥ずかしいと感じるんだけどな
なぁなぁ、知ってる?? こういうの、『茶番』って言うんやで??
どこのカルト宗教の方ですか?? 気持ち悪いんだよ 何演技してんだよ 普通に話せよ
ここまで白々しいセリフを恥ずかしげもなくよく言えるもんだ
自画自賛と嘘の数々に腸が煮えくりかえるわ
拉致被害者家族をダシにするのほんとうに止めてほしい、、、
全く具体的なことを言っていない。自民党も恥を知りなさい。
これに三原じゅん子起用したのはアカンわ。
こういうのはもっとナチュラルにやれる人じゃないと。
恥を知れ!!!!!!!
これはひどい…
国の長がこれでは国民として恥ずかしいです。
いい加減にしてくれ、生ける国難よ。
嘘とごまかし満載の国民をだます言葉でいっぱいです。知性を持ち合わせていない安倍首相と三原じゅんこが互いに相手を褒めちぎるバカバカしさは見ていて恥ずかしいほどです。これが自民党の政見放送であるならば、自民党はもう、ぶっ壊れています。

流石に酷すぎで草。大根役者にも程があるだろwwwwwwwww

大学生です。この動画を見て胸糞悪さしか感じませんでしたが、ここでどれだけ自民党を叩いても何も変わりません。選挙に行きましょう。
政治に関して何も分からなくても政権放送を見れば、誰が本当に本気で日本国民のことを考えてくれているかすぐわかります。

歴代総理の中でもNo.1の○○ それでも自公に投票する○○は同罪。○○につける薬はない。
これを見てもまだ自民党支持する人達って、頭の中どうなってるの?
恥ずかしくて最後まで観ていられませんでした。
この低レベルなシナリオを誰が書いたのか?
毎度お馴染みのレベルの低さだが、今回も官僚が書いたのだとしたら、そヤツは、安倍を陥れようとしているとしか思えない。
茶番大根コント。見てらんない。
選挙にちゃんと行って、ちゃんとした政治家に投票しようね。
この人たちを日本のリーダーにしたのは誰ですか?
過去最高の税収を上げているのに、法人税減税と富裕層減税を行いつつ、「打ち出の小槌はないから増税」で納得できるわけがない。国民の財布は、自民党、政府の打ち出の小槌ではないのですよ。国内の内需を殺して企業の内部留保だけを増やしても外国人投資家に金が流れるだけ。高校無償化や幼児教育無償化は基準が厳しすぎて大半の国民は恩恵に与れない。
これはAIっていう新しい物で作られているのですか?
ああ、これが吉本仕込みの新喜劇か 大したものです
右左関係なく言う。これは単純に政権放送として質が悪いと思う。
見る前は低評価の割合の意味が分からなかったけど、実際に16分間これを見させられ続けるのは例え自民党支持者でもキツいわな。

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三原 NHK視聴者の皆様、このところ話題の三原じゅん子でございます。
あの「八紘一宇」発言で右翼の皆様のアイドルになりましたワタクシ。先の通常国会終盤では、野党を叱りつけて「恥を知れ」、なんてはしたないことを申しあげて存在感を誇示したばかり。本日は、第25回参議院議員通常選挙の政見放送の裏バージョンとして、安倍晋三自民党総裁に思う存分本音を語っていただきたいと存じます。よろしくお願いします。

安倍 表バージョンの政見放送の評判が散々でしたね。「キモい」「お前らこそ恥を知れ」と非難ゴウゴウでしたから、ここはひとつ、裏バージョンで巻き返さなくては。

三原 できが悪かったのは、シナリオとプロンプターに頼りすぎたからだと思うんです。確かに不自然な演技でしたから、今度はシナリオに頼らず、思うとおりに、本音を語ってください。

安倍 本音を語って、国民の信頼を得る自信はありませんが、右翼の皆さんには喝采してもらえるはず。できるだけやってみましょう。どうぞ。

三原 ところで総理。いま国際情勢は、トランプ大統領がこれまでの秩序を掻き回して、文字どおり激動のなかにあります。こうしたなかでGG20大阪サミットの議長を務められました。手応えはどうでしたか?

安倍 そう。問題はトランプ大統領なんですよ。『公正なルールが必要なんです』と大統領には申しあげたが、聞く耳を持たないからしょうがない。アタクシは精一杯、議長役を務めましたが、現実は厳しかった。とうとう『保護主義と闘う』という首脳宣言を作ることはできなかった。米中対決の構図の中で、日本の存在感が薄れてしまったことを否定しようもない。でもね、アタクシ個人としては、一人前に外交をやっている振りはできたと思うんです。だから、損はしなかった。

三原 そのトランプ大統領を大相撲に招待するなど、総理は蜜月ぶりを世界に存分に発信しておられますね。

安倍 大統領とは、深い関係にあるからこそ、何でも率直に言い合える仲なんです。だから、大統領はアタクシに、遠慮なく、イージス・アショアや、ステルス戦闘機を大量に買ってくれと言える。深い関係ですから、アタクシは断れない。アタクシも彼に、「農産物貿易交渉での裏取引は、参院選が終わるまでは秘密を守って発表しないでくれ」と率直に言える。もちろん快諾してもらいました。とてもよい関係なんです。この次は、日米安保条約の双務化への見直し。日米はさらに深い絆で結ばれるはずです。

三原 総理は、拉致問題にも熱心に取り組んでいらっしゃいますが、解決の見通しはいかがですか。

安倍 ずいぶん進展しました。トランプ大統領だけでなく、習近平主席からも、拉致問題について、金正恩委員長に、伝えていただきました。アタクシごときでは、どうせ直接には相手にしてもらえませんが、米中の首脳に、話を伝えていただけるようになったことは、大きな前進です。アタクシ自身、あらゆるチャンスを逃さないとの、考え方の上に、全力で取り組んでいく、決意です。

三原 政治は、結果責任だと言いますが、結果を出すためには、まず決意が必要ですから、力強い決意の表明、頼もしい限りです。

安倍 これまでもそうですが、外交のことですから、何をやっているか具体的なことはお話しできません。これまで同様、何度でも、力強い決意を語り続けようと思っています。

三原 令和の時代がはじまって2カ月ですが、ずいぶんと世の中に浸透していますね。元号の制定は大変な責任と重圧だったと思いますが、けっこううまくやったのではないですか。

安倍 アタクシも政治家です。改元は、しゃしゃり出るチャンスですよ。温和しく、ただ見ているわけにはいかない。天皇の政治利用だと苦情を言う人もいましたが、このせっかくのチャンスを逃す手はない。明治維新時の長州の先輩と同じ思いで同じことをしただけです。これまで骨折ってきた甲斐あって、マスコミは官邸の言いなりですから、結局はメディアを通じての印象操作の成功ですね。みごとに、国民世論をあたらしい元号を評価・歓迎の方向にもっていくことができて、ホッとしています。

三原 令和の時代にも安心できる、責任ある社会保障制度をつくることは、わたしたち政治家の責任ですが、一部の野党は大切な年金を政争の具にし、具体的な政策も示さないまま、ただただ不安を煽るだけの議論に終始していることは、大変残念に思っています。わたしたちだって、高齢者のみなさまの年金を少しでも増やしたいと思っています。しかし、そんな打ち出の小槌はあるのでしょうか。

安倍 誰もが、年金は増やしたいし負担は減らしたい。でも、そんな打ち出の小槌はありません。できもしないことを言うのは無責任。一番大切なのは、年金制度が破綻なく継続していくことです。そのためには、保険料は上げ、給付額は下げてもやむを得ない。富裕層や大企業から税金を取ればよいという安易な意見もありますが、それではまるで社会主義の政策ではありませんか。そんなことができるはずはありません。何よりも強調したいことは、経済成長が順調である限り、年金は大丈夫だということです。ご存じのとおり、集めた年金積立金は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を通じて、株式市場に投資し、債券を購入して運用していますから、株高が続く限りはご安心ください。もちろん、株式相場が下がったらたいへんなことになるわけですが。

三原 念のために伺いますが、アベノミクスのもとで、経済は順調なんですよね。経済が順調である限りは、株高が続いて運用益も確保されるんですよね。

安倍 もちろんです。経済指標は複雑ですから、素人目で一見しますと、破綻しているようにも見えますが、有能な財務官僚が上手にアベノミクスのもとで経済は順調と説明してくれています。アタクシは、それを受け売りしているだけですが、大丈夫です。皆さん、安心してください。

三原 今のお話しで、すこし心配になったんですが、本当に大丈夫なんですよね。

安倍 本当に大丈夫ですよ。でも、絶対かと言われれば、リスクがゼロとは言えません。株式のことですから、必ず運用益が確保できると断言はできません。

三原 そのときは、いったい誰が責任を取るのですか。

安倍 責任…と言われても、誰も責任の取りようはないわけです。それは国民の皆さんの選挙によって形作られた政府の政策ですから、国民のみんなに、広く薄く責任があるわけです。ですから、あきらめていただくほかありません。戦争について一億総ザンゲだったように。

三原 総理。私、心配になってきました。ホントに、ホントに大丈夫なのかしら。

(2019年7月12日)

福祉の増進も減らない年金も、我々の一票次第なのだ。

国家とは、かつては夜警のためだけのものだった。しかし、今は国民の福祉を増進するための存在と考えられている。国民の福祉を実現するためには経費が必要になる。国家は、その経費を調達しなければならない。さて、問題はその財源をどこに求めるかである。

国家の財源の基本は税収である。国民各階層のどこからどのように徴税して、誰のためにどのような福祉政策を実現するのか。それを決めるのが政治だ。民主主義社会では、主権者国民がこれを決する。主権者国民は議会制民主主義のもとでは、有権者となる。今、われわれは有権者として、この点についての政治選択をしようとしている。

2年前(2017年)の総選挙は、政権が「国難選挙」と名付けた。明日にも、北朝鮮からのミサイルが我が町に落ちてくるやも知れぬと脅しの中の異様な選挙で、安倍自民党が大勝した。今度は、「年金選挙」であり、「消費税選挙」である。年金も税制も、あるべき制度の構想は立場によってまったくことなる。

安倍晋三は、最近の記者会見や党首討論会で、こう繰り返している。
「年金を増やす打ち出の小槌はない。今から年金給付額を調整していくことが必要だ。」「そのためには『マクロ経済スライド』が必要だ」「野党は財源に裏打ちされた具体的な提案はなにもせずに、不安ばかりをあおっている」「福祉政策の財源確保のために消費税増税が必要だ」

いつもながらの「財源の抗弁」である。「何をするにも財源の裏付けがなければできないだろう」「財源ないんだから、これ以上はムリ」「財源の範囲ではできることをやった」「野党のように空理空論は語れない」、という例の弁明。

私は、この「財源の抗弁」を聞くたびに、昔、ノースウェスト航空日本支社長だったジェンキンスという人物の名言を思い出す。今はなき、「赤い尾翼のノースウェスト航空」である。その日本支社長が、カウボーイさながらのジェンキンスという人物だった。その労働組合対策が、絵に描いたような古典的な「力対力」の対応だった。

ジェンキンスは、組合の賃上げ要求に対して「ノースウェストには、金がないわけではない。とれるものなら力で取ってみろ」と言ったことが伝説になっていた。

この航空会社に立派な500人規模の労働組合が結成され、不安定だった労働者の身分を着実に確保し、賃金や退職金などを上げてきた。ジェンキンスが、「団結の力でしか労働条件の改善はできない」ことを教えたのだ。ジェンキンスに鍛えられて、こちらも絵に描いたような立派な労働組合が育った。

組合員は、肌で理解していた。会社は従業員を安く使いたい。そのためには労働組合を弱体化したい。従業員は、賃金を上げたい。労働環境をよくしたい。そのためには労働組合を強くしなければならない。強い組合ができれば、力でベアを勝ち取ることができる。賃上げの原資がないわけはない。要は、それをとれる力があるかないかだけなのだ。

1974年秋のことだが、この労働組合が全面無期限ストを45日間打ち抜いて、ほぼ全面勝利の妥結に至った。組合側弁護士としてこの争議に関わったわたしには人生観を変えるほどの大事件だった。争議の妥結は、会社からの争議差し止め訴訟における法廷での勝利の和解という形式で行われた。1974年12月13日のことである。私が弁護士登録をしてから4年に満たないころのこと。このストのメインの要求は賃上げではなく、団結権に関わるものだったが、この争議は組合をさらに鍛えた。

国家財政も同じだ。財源がないはずはない。要は、とれるだけの力があるか否かなのだ。政権を支えている財界や大金持ちを相手にした、庶民の自覚に基づく力。この力関係は、政党の議席に反映される。この経済社会を支配する大企業とこれを支える保守政権は、大企業や大金持ち優遇を変える意思はない。いつまでも「財源がない」と言い続けるだけなのだ。

財源は、直接税の累進率を高めて、担税能力に応じた負担を求めればよいだけのこと。大金持ちからは累進率を高めた所得税として、大企業からもまずは、租税特別措置の優遇を廃止し、法人税を累進化して負担を求めればよい。

逆進性顕著な消費税を増税するとは、経済的な弱者からさらに税をむしりとろうということだ。弱者からむしりとった税収を福祉にまわす? 福祉にまわすために、弱者から消費税をさらにむしりとる? それはいったいどういうことだ。

有権者の意思次第、力量次第で、財源などはどうにでもなるのだ。もしあなたが、大金持ちではなかったら、そして、年金を減らしたくなかったら、福祉行政の恩恵を享受したければ、アベ自民党には票を投じてはならない。そして、その取り巻きの公明・維新にも。
(2019年7月11日)

全国の漁民の皆さん、安倍自民党に票を投ずることは、自分の首を絞めることですぞ。

またまた、法と民主主義」6月号《特集・アベノミクス崩壊と国民生活のお薦めである。本日は、アベノミクスと漁業… 加瀬和俊」論文のご紹介。

「特集にあたって」と標題するリードでは、南典男編集委員が、加瀬論文をこう要約して紹介記事を書いている。

 「加瀬和俊氏(帝京大学教授)は、安倍内閣による漁業・農業の『成長産業化』方針の下で、漁業法が大幅に改変され、企業的経営体が優良漁場を優先的に確保し、免許された海面を私有地のように排他的に占有し続ける仕組みが作られ、
①小規模漁業者を排除し、
②都道府県行政を国の付属物とみなし、
③現場の実情を軽視している
と指摘している。
アベノミクスによって、漁業のみならず地域経済全体が壊されようとしている。」

加瀬さんは、長く東大社研の助教授・教授だった方。専門は、日本近代経済史(雇用・失業問題、農漁業問題)だという。今次の漁業法改正問題では、その新自由主義的本質を追及して、政府に果敢な論戦の先頭に立った。

アベノミクスとは何か、どんな特徴をもっているのか、4頁の論文によく表れている。さらに、そもそも経済とはあるいは経済政策とは、いったい何を目指すものなのかが、鋭く問われているとも思う。いったい、今の政権は、何を大義として、誰のためにどのような経済社会を作ろうとしているのだろうか。そのような問題意識が、この論文の最後の次のまとめの一文に鮮明である。

 以上のように、今回の漁業法の改訂の経緯には、資本力を有する企業的経営に最大限の便宜を図り、それが当該産業内の大多数の経営体にマイナスに作用するものであっても、それこそが「成長産業化」なのだという思い込みと、それを強権的な方法で実現するという手法とが鮮明に表れており、アベノミクスの典型例とみなすことができる。

 アベノミクスが推進するものは、「資本力を有する企業的経営に最大限の便宜」を実現することである。そのことによって、「当該産業内の大多数の経営体へのマイナスの作用」が強行される。大義は、「成長産業化」である。

もう少し砕いて端的に言えば、こういうことだ。
今のまま零細漁民に小規模な漁業をやらせていたのでは、漁業はいつまでも成長産業にはならない。今の零細漁民保護制度を抜本的に改変して、漁業界外部からの大資本を呼び寄せて漁業を企業的経営の対象とすることが肝要なのだ。そのための、最大限の企業誘致策を講じることが喫緊の課題で、零細漁民の切り捨て強行もやむを得ない。

具体的な内容は、およそ以下のとおりである。

新制度の意図するところは在来型の各種の管理方式を撤廃して漁船規模を大型化し、操業を自由に行いたいという企業の主張を受け入れていることにほかならない。

今回の漁業法「改正」は、「規制改革推進会議等の官邸主導の諸会合で水産政策審議会等にはかることもなく、仲間内だけで作った方針の提示を通じて、一気苛成に漁業法の全面改訂(2018年12月成立)に至った」のである。

 漁業法はその章別編成を含めて全文改訂といって良い大幅な変更がなされた。
 その特徴の第1は、法律の目的から「漁村の民主化」(旧法第1条)を削除し、法全体をそれに対応させて改変した。
 第2は、家族経営は遅れた存在であり、「成長産業化」のためには企業経営の優遇とともに、家族経営を企業的レベルに引き上げる必要があり、そのレベルに到達した者だけが存続する資格があるという発想」である。(以下略)

私は思う。いま、アベノミクスが強行しようとしている漁業政策は、漁民と漁村を根こそぎ破壊しようとするものなのだ。アベノミクス推進派にとっては、現在の沿岸漁業とその保護政策は、資本の自由な操業にとっての障害物でしかない。
企業的漁業に桎梏となっている零細漁民による沿岸漁業を清算して、その後に大資本による企業的漁業が行われようとしている。これは、国際的潮流である「小規模農業者・小規模漁業者の重視」とは大きく異なる特異な経済政策に外ならない。

かつては、農漁村が、保守政治の金城湯池といわれた。今や、まったく、事情は異なるのだ。アベノミクスに、新自由主義に、生業とコミュニティを奪われようとしている農民・漁民は、反安倍の立場に立たざるを得ない。

 全国の漁民の皆さんに、警鐘を鳴らさねばならない。漁民が、安倍自民党に一票を投ずることは、おのれの首を絞めることなのだ。農業においても同様である。君、欺されて与党に票を投ずることなかれ。

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「法と民主主義」(略称「法民」)は、日民協の活動の基幹となる月刊の法律雑誌です(2/3月号と8/9月号は合併号なので発行は年10回)。毎月、編集委員会を開き、全て会員の手で作っています。憲法、原発、司法、天皇制など、情勢に即応したテーマで、法理論と法律家運動の実践を結合した内容を発信し、法律家だけでなく、広くジャーナリストや市民の方々からもご好評をいただいています。定期購読も、1冊からのご購入も可能です(1冊1000円)。

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よろしくお願いします。
(2019年7月10日)

この参院選を、《年金一揆》に、《税制一揆》に。

普段はご無沙汰ばかりで、選挙になると、とたんに親しげな顔をして折り入ってのお願い。評判の悪いことは承知ですが、やっぱり今回も恒例の「折り入ってのお願い」です。

今回の参院選挙は、いつもの選挙とはひと味違う大事な選挙なんです。ええ、もしかしたらこの前も同じことを言ったかも知れませんが、今度こそ、本当に大切な選挙。日本国憲法の命運がかかっています。

もしこの選挙で、安倍自民党とその下駄の雪や取り巻きの連中が勝って、参議院の3分の2の議席を占め続けるようなことになると、本当に憲法があぶない。憲法改悪の手続が始まってしまうことになりかねません。

74年前に、310万人もの日本人が犠牲になった、あの忌まわしい戦争が終わりました。その戦場は海外でした。日本の侵略戦争だったのですら、当然といえば当然のこと。侵略軍である日本軍によって殺された近隣諸国の死者は日本人犠牲者よりも遙かに多数で、2000万人に及ぶとされています。

この戦争の惨禍を経て、日本人は決意しました。「勝とうと負けようと、二度とこの戦争の悲惨を繰り返してはならない」。新生日本は、「けっして再び、戦争はしない」と世界に誓い、この誓いを平和憲法として確定しました。日本国憲法は戦後日本の世界に対する平和の公約であり宣誓でした。これをなし崩しに変えてしまうことは、世界の歴史に対する裏切りというべきではありませんか。

自民党という保守政党は本来幅の広い国民政党でした。そのなかには、けっして戦争を繰り返してはならないとする大きな潮流があったはずです。ところが、いつしか自民党は変わってしまいました。どういうわけか、安倍晋三という右翼の政治家が、自民党を取り仕切るご時世になり、平和憲法を危うくしています。憲法9条の改悪に手を付けようというのが、安倍自民党の公約。けっして、これを許してはなりません。

もう一つ、今回の選挙は年金消費増税をめぐる選挙にもなっています。
私は、税制や社会保障政策というものは、富の再分配のあり方をどう決めるかに尽きるものと考えています。だから、立場によってあるべき政策が違ってきます。言わば、国民が所得や富の再分配をめぐって綱引きをしているのです。大きな綱の片方の端を少数の大企業と大金持ちが持ち、もう片方の端を無数の年金生活者・労働者・中小企業者が握っている。こうして、壮大な全国民的綱引きが行われているのですが、どうもいま、大企業・大金持ち派の勢いが強い。この綱引きのバランスを、年金生活者・労働者・中小企業者の側に戻さなくてはなりません。そのための選挙でもあります。

 今、私たちは、資本主義の世に生きています。資本主義社会は、身分制度の不合理を克服しましたが、けっして人を幸福にする制度でも社会でもありません。むしろ、冷徹な資本の論理が生身の人を搾取し収奪して、大きな格差や貧困を生み出す不条理な制度と言わねばなりません。この資本主義という暴れ馬を制御して乗りこなせるようにしようというのが、福祉国家思想と言ってよいと思います。

制御のない裸の資本主義とは、資本の衝動のままに資本の横暴の振る舞いを許す社会です。所得と富は、限りなく一極に集中し、その対極に非人間的な貧困が積み重なる社会。誰にも明らかなこの資本主義の矛盾を制御する手段が、政治的民主主義なのです。

国家という権力機構を、社会的強者の手から解放し、社会的弱者を有権者として構成される立法機関を中心とした民主的な権力機構を通じて、裸の資本の横暴を統御しようということです。

資本の横暴は、労働法規として、あるいは消費者保護法制として、あるいは公正取引ルールとして、規制の対象となりますが、今問題となっているのは、税や年金を通じての所得と富の再分配のありかたです。

安倍晋三は、大企業や大金持ちの代弁者として、最近よくこう口にします。
「年金制度の批判は簡単だが打出の小槌はない。具体的対案もなく不安を煽る無責任議論はいけない」「野党の皆さんは、『保険料は減らせ、受給額は増やせ』とおっしゃるが、そんな財源はない。消費税を上げてしっかり財源を作らなければならない」

打ち出の小槌でも手品でもない。財源の多寡は、所得と富の再分配をどこまでやるのかということできまります。これは政治的民主主義の制度においては、有権者が決めること。大企業優遇の租税特別措置法で、実効税率を下げてやる必要はない。累進度を緩和し続けてきた所得税率を元に戻す。方法はいくらでもあるではありませんか。要は、大企業と大金持ち優遇の税制にどこまで切り込むかの政治的決断なのです。

資本の論理に対抗するのは、人間の尊厳の論理です。人権の論理と言ってもよい。もともと、資本の論理を貫徹させた所得も、その集積としての富も、公正なものではありません。改めて、人権の論理に基づいて、公正に所得と富の再配分を実行させようではありませんか。その手段が、税と社会保障の制度の徹底した見直しです。どこまで徹底するか、それは有権者の意思次第。あなたの投票が決めます。

安倍政権が続く限り、抜本的な年金改革も、税制改革もあり得ません。どうでしょうか。今度の選挙を、年金一揆、税制改革一揆としませんか。
それなら、ふつふつと投票の意欲も、選挙運動の意欲も湧くことになりませんか。
(2019年7月7日)

安倍政権で年金支給額は月額で9436円減っている ー 恥を知るべき愚か者? そりゃあなたのことでしょう。

三原じゅん子という参議院議員がいることは、その「八紘一宇発言」で初めて知った。「八紘一宇という根本原理の中にですね、現在のグローバル資本主義の中で日本がどう立ち居振る舞うべきかというのが示されているのだと私は思えてならないんです!」
これには、仰天せざるを得ない。こんなレベルの人物が、アベの取り巻きとして、その機嫌をとりながら、議員でいられるのだ。恐るべし、アベ自民。

またこの人、神武天皇の建国のそのときからの歴史というもの、全てを受け入れた憲法を作りたい」とテレビで言ってのけたことでも有名となった。さらに驚いたのは、神武天皇は実在の人物だったという認識」でよいと言いきったこと。アベ政権とは、日本の社会と政治が劣化したことの象徴である。その劣化のありさまを、三原のような議員が如実に示している。

その三原じゅん子が、参院本会議で、安倍晋三首相問責決議の反対討論に立った。品のよいメディアでは、「やや乱暴で品位に欠ける発言ではないか―」と、ひんしゅくを買う程度の評価だが、そんな批判で済まされる発言ではない。問責決議案を提出するなど全くの常識外れ。愚か者の所業とのそしりは免れません。野党のみなさん、恥を知りなさい!」とまで言ったのだ。

その「演説」の主要部分を抜き書きしてみよう。

「野党の皆さん、国民にとって大切な年金を政争の具にしないでいただきたい」
「民主党政権のあの3年間、年金の支給額は、増えるどころか、何と引き下げられていたのです。自民党は全く違います。今年、年金支給額はプラスになりました」
「年金積立金も、アベノミクスの効果によって44兆円の運用益が出たのであります。かたや民主党政権時代、年金積立金の運用益は10分の1」
「民主党政権の負の遺産の尻ぬぐいをしてきた安倍総理に感謝こそすれ、問責決議案を提出するなど全くの常識外れ。愚か者の所業とのそしりは免れません」
「野党のみなさん、恥を知りなさい!」

論述は、「事実の叙述」「意見の表明」の2要素から成り立っている。そのうち、叙述されている事実の真偽は検証が可能である。「神武天皇の建国のそのときからの歴史というもの、全てを受け入れた憲法を作りたい」は、愚かではあっても意見の表明で、真偽の検証にはなじまないが、「神武天皇は実在の人物」は、事実の叙述で真偽の検証がなされなければならない。

問題は、「神武天皇は実在の人物」という事実の叙述が虚偽であることは容易に誰にでも分かることだが、「野党のみなさん、恥を知りなさい!」演説の内容の真偽はすぐには分からない。「首相に近い国会議員が、本会議の議場で、堂々とああ言い切っているのだから、まさかウソではないだろう」と思う人もいるのではないか。詐欺や悪徳商法に欺され易いタイプの人は、けっして少なくないのだ。

すぐには分からない真偽の検証を、信頼できる誰かがやってくれると、とてもありがたい。これを買って出ているのが、新聞各紙のファクトチェックだ。各紙は、競ってファクトチェックを充実させるべきだ。あらゆる権力、あらゆる権威による言論の真偽を検証してその結果を読者に提供していただきたい。その真なる事実に基づいて、人々はものを考え意見を形作る。今、政権の発する言葉が、「ウソとごまかし」に、充ち満ちているフェイクの時代。ポストトゥルースの時代という言葉がピッタリ。ファクトチェックが、ことさらに重要なのだ。

昨日(6月30日)、毎日新聞デジタルが「年金支給額は増えたのか 三原じゅん子議員の演説をファクトチェック」という記事を掲載した。これが、面白い。よくできている。

https://mainichi.jp/articles/20190629/k00/00m/010/255000c

リードの中でこう言っている。
「参院選の争点でもある年金問題を巡り、気になる発言があった。『民主党政権の3年間、年金支給額は、何と引き下げられていた。安倍政権は全く違います』。これは本当か? 演説のハイライトをファクトチェックすると、妙なことになってきた。」

以下、要点を摘記する。

「安倍政権で支給額は増えたのか。事実を確認しよう。
 厚生労働省年金課によると、民主党政権が発足した2009年度の標準的な厚生年金受給世帯(夫が40年間勤め、妻が専業主婦の2人世帯が年金を受け取り始める時)の受給月額は23万2592円だったが、政権最後の年、12年度は23万940円。つまり3年間で1652円の引き下げである。平均して1年で約551円の減額だ。
ならば「(民主党政権と)全く違います」と三原氏が胸を張った安倍政権はどうか。23万940円の受給額が、現在はいくらに増えたのか?
 増えるどころか、何と22万1504円(19年度)にまで引き下げられているのである。マイナス9436円、1年平均で1348円の減額は、民主党政権時の倍である。三原氏の言う通り、今年度は4年ぶりに月額227円のプラスになったが、「全く違います」は全く違う。

民主党政権の運用益は「10分の1」?
 もう一つ「安倍政権の年金積立金の運用益は44兆円、民主党政権はこの10分の1」はどうか。安倍首相も6月19日の党首討論で、同じことを言っていた。
 厚労省と年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は毎年度、3カ月(四半期)ごとの年金積立金の運用実績を公表している。インターネット上でだれでも見られる。読者も電卓片手に計算していただきたい。おかしなことに気付くだろう。
 民主党政権発足直後の09年10月から、政権が終わった12年12月(12年度第3四半期)の運用益は、約9兆円である。これに対し、安倍政権発足直後の13年1月(12年度第4四半期)から最新の18年12月(18年第3四半期)までの運用益は約39兆円である。三原氏や首相が言う「44兆円」「10分の1」と違うのだ。

驚くべき「計算式」
 どういうことか? 厚労省資金運用課は、驚くべき「計算式」を披露した。
 それによると、安倍政権が発足したのは12年12月26日、つまり12年10~12月の第3四半期のぎりぎり範囲内だ。この時期「12年秋にはすでに政権交代の兆しがあり、株価が好転していた」(14年10月3日、衆院予算委での安倍首相の答弁)から、この四半期の運用益約5兆円は、すべて安倍政権の功績として「総取り」する。つまり39兆円プラス5兆円で44兆円である、と。
 逆に、民主党政権時代の運用益からは、5兆円を取り上げ、約4兆円に減らす。だから10分の1になるのだ、という「論理」である。 

「民主党政権のあの3年間、年金の支給額は、増えるどころか、何と引き下げられていたのです。自民党は全く違います」と聞かされれば、誰でも、「自民党政権下では年金の支給額は増えた」と思うしかない。ところが、それが真っ赤なウソなのだ。

こういうウソやごまかしにこそ、「愚か者」「恥を知れ」と言うべきではないか。
(2019年7月1日)

「法と民主主義」6月号《特集・アベノミクス崩壊と国民生活》のお薦め

梅雨空ぐずつく中、本日で6月が終わる。天皇交替とそれに伴う新元号騒ぎはやや落ち着き、通常国会が会期の延長なく閉幕し、鳴り物入りの大阪G20もさしたる話題なくスケジュールを消化した。

ところで、大阪に集まった各国首脳の顔ぶれ。知性ある人の影は薄く、知性の欠けた人物ばかりが我が物顔の振る舞い。およそ人類の理想とは無縁で、人権や民主主義、格差の是正などになんの関心もなさそうなトランプ、習近平、プーチン、そしてトランプにものが言えない安倍晋三。もうひとり、カショギ殺害の犯人と名指しされているサウジの皇太子など。なるほど、これが今の世界の縮図なのだ。

週明けの明日、7月1日からは本格的な参院選挙戦。日本国憲法の命運にかかわる選挙だが、自ずと焦点はアベノミクスの評価となり、具体的には「消費増税」の可否と「年金問題」が争点となる。憲法改悪阻止のために、政権与党の経済政策の失敗を論じなければならない。

このほど発刊となった、日本民主法律家協会の機関誌「法と民主主義」6月号は、そのような問題意識から、「アベノミクス崩壊と国民生活」を特集した。
https://www.jdla.jp/houmin/index.html

下記のとおり、緊急の特集に素晴らしい執筆者を得ることができた。

特集★アベノミクス崩壊と国民生活
◆特集にあたって … 編集委員会・南 典男
◆今、一番心配すべきことは何か グローバル経済と日本 … 浜 矩子
◆アベノミクスを歴史の文脈でとらえる … 山本義彦
◆安倍政権による「全世代型社会保障」への軌跡 … 二宮厚美
◆アベノミクスと増税・消費税 … 浦野広明
◆アベノミクスと漁業… 加瀬和俊
◆アベノミクスと日本の財政 … 醍醐 聡

■連続企画●憲法9条実現のために〈23〉
安倍改憲を吹っ飛ばせ!自民党改憲Q&A徹底批判
(改憲問題対策法律家6団体連絡会・安倍9条改憲NO!全国市民アクション主催 院内集会より)
・集会で明らかにされた「自民党改憲Q&A」の嘘とごまかし … 大山勇一
◆司法をめぐる動き
・冤罪救済と誤判の防止に向けて … 高見澤昭治
・5月の動き … 司法制度委員会
◆メディアウオッチ2019●《選択の季節に》
トランプ、年金、イージスはつながっている 政府がウソを言うのは当たり前か? … 丸山重威
◆あなたとランチを〈№46〉
さあこれから飛ぶぞ … ランチメイト・大久保賢一先生×佐藤むつみ
◆改憲動向レポート〈№15〉
「憲法9条改正など私たちにはありえない。世界の真珠だ」(国文学者・中西進先生) … 飯島滋明
◆トピックス●いまなぜ西暦併用アピールなのか … 稲 正樹
◆時評●「裁判所にだけは行きたくない!」「弁護士のお世話にはなりたくない!」 … 今 瞭美
◆ひろば●不便にして、かつ有害。日常生活からの元号排除を … 澤藤統一郎

「法と民主主義」(略称「法民」)は、日民協の活動の基幹となる月刊の法律雑誌です(2/3月号と8/9月号は合併号なので発行は年10回)。毎月、編集委員会を開き、全て会員の手で作っています。憲法、原発、司法、天皇制など、情勢に即応したテーマで、法理論と法律家運動の実践を結合した内容を発信し、法律家だけでなく、広くジャーナリストや市民の方々からもご好評をいただいています。定期購読も、1冊からのご購入も可能です(1冊1000円)。

お申し込みは、下記のURLを開いて、所定のフォームに書き込みをお願いいたします。なお、2019年6月号は、通算539号になります。

https://www.jdla.jp/houmin/form.html

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◆特集にあたって

 内閣支持率を支えてきたアベノミクスは、崩壊する過程に入ったと思う。
 内閣府が公表する景気動向指数が2019年1~3月期、4月期と連続して「悪化(景気後退の可能性が高い)」になった。株価や不動産価格が高かったのは、日本銀行が莫大な国債を買って金融緩和を続け、株、不動産信託を購入して買い支えてきたからだ。国の借金は鰻登りに増加したが、成長戦略は失敗し、名目GDPは停滞したままである。膨大な財政負担だけが残った。
他方、アベノミクスは国民生活に深刻な危機をもたらしている。
老後の資金形成で「およそ2000万円必要になる」などとした金融庁の審議会がまとめた報告書が国民に大きな不安をもたらしている。
 社会保障制度だけでなく、実質賃金及び家計消費の低下、地域経済の衰退、地銀・信金の経営悪化、内需の衰退、貿易収支の赤字化など、国民生活全般に深刻な危機が生じている。戦後憲法のもと築かれてきた社会保障制度、雇用・賃金を保障する労働基本権制度、所得再分配機能を持った税制度、地域を活性化させる地方自治制度などが、アベノミクスによって加速度的に壊されている。

 本特集は、本年7月に予定されている参議院議員選挙を前にして、アベノミクスが日本経済と国民生活の深刻な危機をもたらしていることを明らかにし、アベノミクスから抜本的に転換する経済政策を展望しようというものである。

 浜矩子氏(同志社大学教授)は、グローバル経済の中でのアベノミクスの特異性として、①国家主義を標榜する最もたちの悪い「ディグローバル」(国境を越えた人々のつながりの破壊)であること、②キャッシュレス化(実は、物理的現金から電子的現金に現金決済の形態を切り替えること)を推進し、権力が市民の現金取引を捕捉しようとしていること、③ギグエコノミー化(フリースタイルで働くこと)と称して、働く人々の人権を蔑ろにし、生産性向上のために使おうとしていること、そしてこの三つが関連し合っていることを指摘している。
 山本義彦氏(静岡大学名誉教授)は、ナチスが経済を安定させてナチズム体制を構築したのと同様に、第二次安倍政権が経済の浮揚によって改憲を実行しようとしていることを喝破した上で、アベノミクスの6年間が給与水準の低下、消費税増税や年金給付の低下をもたらして国内市場を制約していると指摘し、給与条件の向上、正規労働力の本体化、中小企業の生産活動の強化、法人税の適切な負担、介助労働の条件向上など、アベノミクスと真反対の方向に舵を切ることを展望している。
 二宮厚美氏(神戸大学教授)は、安倍政権7年間で社会保障費の削減が4兆2720億円に及び、圧縮されたのが医療・年金・介護の高齢者向けの福祉(「高齢者三経費」)であること、削減の理由として「高齢者三経費」の対応に消費税率10%への引き上げが必要(「社会保障・税一体改革」)と述べていたことを明らかにした上で、安倍政権はその後「一体改革」に代えて「全世代型社会保障」のキャッチフレーズを持ち出し、消費税増税後も高齢者三経費に回さないで済まし、社会保障費削減を基調とする政策を続けるとしており、ペテンであると鋭く問題を指摘している
 浦野広明氏(立正大学法学部客員教授)は、安倍政権の消費増税8%によって、①消費支出が減って今に続く深刻な不況を引き起こしたこと、②消費税収入の大部分が法人税減税の穴埋めと軍事費に消えたこと、③消費税は企業の(利益+賃金)にかかるので、企業の外注化を促してリストラを促進したことなどを指摘した上、消費税増税を中止して人権を基軸とした税制(応能負担の原則・税金を福祉に使う)に転換することを展望する。
 加瀬和俊氏(帝京大学教授)は、安倍内閣による漁業・農業の「成長産業化」方針の下で、漁業法が大幅に改変され、企業的経営体が優良漁場を優先的に確保し、免許された海面を私有地のように排他的に占有し続ける仕組みが作られ、①小規模漁業者を排除し、②都道府県行政を国の付属物とみなし、③現場の実情を軽視していると指摘している。アベノミクスによって、漁業のみならず地域経済全体が壊されようとしている。
 醍醐聡氏(東京大学名誉教授)は、アベノミクスにおける財政について、防衛関係費の後年度負担残高の伸びが大きいこと、装備品の価格や納期は米政府が主導しており、米側の納品書と精算書の記載に食い違いがあったこと、その一方で、市民生活に直結する社会保障関係費と地方交付税ののびが大幅に抑制されてきたことなどを指摘している。

 アベノミクスからの政策転換を、広く訴え、安倍内閣を追いつめ、日本国憲法がかがげる人間らしい生活を取り戻す闘いのために、ともに頑張りましょう。
〈「法と民主主義」編集委員会・南典男(弁護士)〉

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「ひろば」(執行部関係者の巻末コラム)欄は、私(澤藤)が書いた。「不便にして、かつ有害。日常生活からの元号排除を」という標題。

4月1日に新元号が発表され、5月1日新天皇就任となった。だからといって世は何も変わらず、また変わってはならない。にもかかわらず、メディアは浮き足立ち、これに乗せられた人々の「代替りフィーバー」「令和フィーバー」現象である。政権の思惑どおりであったろう。
30年前は下血報道が長く続いた後の天皇の死に伴う交替劇だった。国民に前天皇の死に対する弔意が求められ、日本社会の少なからぬ部分が唯々諾々とこれに従った。歌舞音曲の自粛が申し合わされ、大きな社会的同調圧力が可視化された。
あのとき、よく分かった。天皇を「国民統合の象徴」としている憲法規定は、ナショナリズム喚起の有用な道具なのだ。対内的・対外的な国民統合の道具は、政権にとって便利な統治の装置なのだ。
今回の新天皇就任には、天皇の死が伴っていない。国民主権原理を逸脱した前天皇のメッセージが生前退位容認の特例法となったからだ。そのために、今度は祝意強制の圧力が蔓延した。新天皇就任祝意一色のメディアの垂れ流し、前天皇礼賛の提灯記事・提灯番組の羅列が大きな役割を果たした。その提灯メディアに乗せられて、戦前・戦中を彷彿とされる提灯行列までが行われたという。
「住民たちがちょうちんを振ったり万歳三唱をしたりして歓迎の気持ちをあらわすと、両陛下は、上下左右にちょうちんを振ってこたえられました。…… 両陛下の姿が見えると住民から歓声があがり、両陛下は、何度も手を振ってこたえられていました。」というのが、NHKの報道である。ここに、主権者の姿はなく、臣民の残滓が見えるのみ。
あらためて、象徴天皇制礼賛ないし受容のイデオロギーとの対峙が課題となっているが、その課題は、象徴天皇制を支える小道具との日常生活での対決として具体化する。その中で最重要のテーマが、「日の丸・君が代」強制への抵抗と、元号使用の拒否であろう。
元号という紀年法は、天皇の在任期間と緊密に結びつけられた天皇制の付属制度であることから、その表記が通用する地域は限定され、存続期間も有限である。明らかな欠陥紀年法。ビジネスには、不便極まりなく、国民生活にも元号は廃れつつある。先年、ある皇族女子の婚約記者会見での発言が、すべて西暦で語られていたことが話題となった。
ところが、裁判所は5月1日以後文書の日付に新元号を使い始めた。当然に、事件番号もである。訴状や準備書面の主張部分はすべて西暦を用いても、固有名詞である事件番号は元号を用いるしかない。そこで、裁判所を孤立させたい。弁護士はすべからく、西暦を使おうではないか。そうすれば、やがては法律文書も、判例検索もすべて西暦表記に統一せざるを得なくなる。
もっとも、現状は楽観できない。人権派と思しき弁護士の元号使用に愕然とすることがある。本誌への寄稿にも、時に元号表記があって戸惑わざるをえない。
時代遅れの元号表記、不便というだけではない。国民の主権意識覚醒の障害として有害なのだ。日常性から排除しなければと思う。(弁護士 澤藤統一郎)

(2019年6月30日)

「マクロ経済スライド」を廃止して、減らない年金とすることがバカげた提案か。これを続けることがバカげた政策か。

昨日(6月19日)の党首討論。正確には、「国家基本政策委員会合同審査会」というそうだ。メディアは注目しなかったが、志位和夫(共産党委員長)と安倍晋三との「討論」を振り返ってみたい。
以下が、その「討論」の議事速報(未定稿)からの引用である。本日の赤旗紙面には、おそらく発言のとおりの、もっと詳細な文字起こしが掲載されている。これによれば、安倍晋三の発言は、この議事速報のように滑らかなものではない。つっかえ、つっかえのよれよれ発言。

○志位和夫君
 金融庁が、夫婦の老後資金として公的年金以外に三十年で二千万円が必要との報告書を公表したことが年金への不安を広げております。年金への不安は、これにとどまるものではありません。マクロ経済スライドによる給付水準の引下げという大問題があります。
 直近の公的年金の財政見通しによれば、マクロ経済スライドは、現在四十一歳の人が六十五歳で年金を受け取れるようになるまで続き、これによって、受け取れる年金の水準は、平均的な高齢夫婦世帯で月額四万三千円、三十年間で約一千六百万円も減らされます。
 先日の参院決算委員会で、我が党の小池晃議員がマクロ経済スライドはやめるべきだと求めたのに対し、総理は、年金は給付と負担のバランスで成り立っている、やめてしまうというのは無責任でばかげた政策と言いました。
 しかし、今でさえ老後の生活を支えられない貧しい年金を、マクロ経済スライドを続けて更に貧しい年金にしてしまうことこそ、私は無責任でばかげた政策と言わなければなりません。
 マクロ経済スライドを中止しても、給付と負担のバランスをとる手だては幾つもあります。私は、その手だての一つとして、高額所得者優遇の保険料のあり方を正すことを、きょうは具体的に提案いたします。
 今の年金保険料は、月収六十二万円、ボーナスを含め年収で約一千万円を超えますと、保険料負担がふえない仕組みになっています。年収が約一千万円の上限額を超えますと、二千万円の人も、一億円の人も、みんな保険料は同じ、年間九十五万五千円です。
 そこで、提案でありますが、約一千万円のこの上限額を、健康保険と同じ約二千万円まで引き上げる。そのことによって、約一・六兆円の保険料収入がふえます。その際、アメリカでやっているように、高額所得者の年金給付の伸びを抑制する仕組みを入れる。そうすれば、それによる給付増分を差し引いても、毎年約一兆円の保険料収入をふやすことができます。この一兆円を、マクロ経済スライドをやめ、減らない年金にする財源に充てる、これが私たちの提案であります。
 総理に端的に伺います。
 年収一千万円を超えますと、保険料がふえなくなる高額所得者優遇の保険料のあり方、これは正すべきではないですか。端的にお答えください、正すかどうか。

 問題点の指摘、制度改正の提案、そして質問の内容。すべて、明瞭で具体的である。要約すれば、「給付額不十分な年金制度をさらに切り下げるのがマクロ経済スライド。これを廃止して金額が下がらない年金給付とすべきだ。マクロ経済スライドの廃止に代わる財源確保措置として、現行の高額所得者優遇の保険料のあり方について見直しを提案する。(高額所得者優遇の保険料のあり方)を正すか、どうか。」ということ。時間がない中で「質問に、端的にお答えください」は当然のこと。

保険料を納付し給付を受ける立場の全国民が、こぞって耳を傾けたくなる質問ではないか。これに対する安倍の回答は、いく通りか考えられる。

想定回答その1は、「現行の高額所得者優遇の保険料のあり方は、やはり問題があると思いますので、正します」というもの。こうすれば、安倍政権の人気は急上昇の可能性があった。別に、高額所得者に犠牲を強いるという策ではない。高額所得者優遇措置を改めるというだけ。その結果として「非高額所得者層」の年金給付額を増やす(あるいは減らさない)ことができるのだ。

想定回答その2は、「現行の高額所得者優遇の保険料のあり方は変更することなく維持します」というもの。こうすれば、安倍内閣の人気は落ちるが、自ずと、政治姿勢や基本理念の対決点が明らかになる。ここを議論の出発点として、意見交換が始まることになる。

あるいは、どちらとも明確にせず、曖昧なままとする想定回答その3もありうる。たとえば、「政策の理念には賛同しますが、階層間の利害の調整は容易なことではありません。今後の課題として検討させていただきます」など。いわゆる、リップサービスだけの実質ゼロ回答。

さて、安倍の回答は、以上の想定回答のどのパターンだったか。驚くべし。どれでもないのだ。聞かれたことに答えない、いつもの不誠実極まる安倍晋三流。

内閣総理大臣(安倍晋三君) この議論で大変残念なのは、先ほどの党首の議論で、年金のいわば積立金が枯渇するというときに拍手が起こったことであります。
私は、そういう議論はすべきではないですし…
…(発言する者あり)
○会長(佐藤勉君) お静かにお願いします。
内閣総理大臣(安倍晋三君) テレビを見ている方々がおられますから……(発言する者あり)
○会長(佐藤勉君) 静かにしてください。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 大切なことも述べなければいけないわけでありまして、基礎年金の運用については、四十四兆円プラスになっているということははっきりと申し上げておきたいと思いますし、マクロ経済スライドについての御質問でございますが、マクロ経済スライドについても、先ほど来お話をさせていただいておりますように、これは平均寿命が延びていきますから、給付はふえていく。そして、生産年齢人口が、ふえていきますから、当然、これは被保険者は減っていく。その分を調整していく、そうしたファクターを調整していく数字によって、将来の受給者の所得代替率を五割を確保していくというものでありまして、それが今発動されて、しかも、それが〇・九から〇・二になったということは、まさに改善したということを申し上げているわけでありまして、先ほどさんざん毀損されましたが、そのことをはっきりと申し上げておきたいと思います。
その上において、共産党の主張は、マクロ経済スライドを廃止して、その上で、なおかつ将来の受給者の給付が減らないようにする上においては、これは七兆円の財源が必要でございます。皆さんはその財源がある、こうおっしゃっています。七兆円というのは巨大な財源であります。巨大な財源があるというのは、これはかつて聞いたことがあるような話でございますが、それはそう簡単には出てこないわけでございます。
いずれにいたしましても、私たちは、このマクロ経済スライドという形において、今の形で、マクロ経済スライドの形において、それを発動させていくことによって今の受給者と将来の受給者のバランスを図っていく、あるいは将来の給付と負担のバランスを図っていきたい、こう考えておりますが、今、志位委員がおっしゃった御提案については、これはまずはちゃんと検証しなければ、その数字は明らかでないわけでありますし、一兆数千億円で賄えるものではなくて、七兆円という、全く枠が違うわけでありますから。
いずれにいたしましても、マクロ経済スライドをやめてしまうという考え方は、もう一度申し上げますが、これはばかげた案だと思います。
会長(佐藤勉君) 時間が参っておりますので、簡潔にお願いいたします。

こりゃなんじゃ。「端的にお答えください」とされた質問は、「高額所得者優遇の保険料のあり方を正すのか、どうか」ということ。これにはまったく答えようとせずに、他党党首との論争を持ち込み、「マクロ経済スライドをやめてしまうという考え方は、これはばかげた案だと思います。」と締めている。あ~あ。議論するのが虚しくなる手合いなのだ。時間がない。最後の志位発言は次のとおりである。

志位和夫君  私は、減らない年金にするための具体的提案をやった。それに対するお答えは一切ありません。七兆円というのは、私たちの暮らしを応援する政策のパッケージでやる財源の問題なんです。この問題……
○会長(佐藤勉君) 時間が参っておりますので、終わりにしてください。
志位和夫君 マクロ経済スライドをやるということは、今の年金の水準を六割から五割に、現役世代との所得代替率を減らすわけでしょう。これは減っていくんですよ。
○会長(佐藤勉君) 時間です。
○志位和夫君 私は、今政治に求められているのは、貧しい年金の現実を直視して、安心の年金に変えるための責任を果たすことだ、報告書を隠蔽することじゃないということを申し上げて、終わります。
会長(佐藤勉君) これにて志位君の発言は終了いたしました。

安倍晋三という人物。まともな議論をする能力のないことを、政治家としての強みとしているのだ。

それでも、短い時間に、これだけは浮き彫りになった。

「今でさえ老後の生活を支えられない貧しい年金を、マクロ経済スライドを続けて更に貧しい年金にしてしまうことこそ、私は無責任でばかげた政策」というのが、志位和夫の共産党。

「自動的に年金給付額を減らす『マクロ経済スライド』を廃止せよ。そのための財源を真剣に検討せよ」という提案を「もう一度申し上げますが、これはばかげた案だと思います。」というのが安倍晋三。

これが、一握りの「高額所得者層」と、圧倒的多数の「非高額所得者層」との、それぞれの利益代表の「討論」なのだ。どちらに軍配を上げるべきかは、有権者の選択となる。自分に不利な政党選択をすることのなきよう、お間違えなく。
(2019年6月20日)

年金制度は、自己責任・自助努力が前提なのさ。甘ったれちゃいけないよ。

君ら、人生設計を考えるときに100まで生きる前提で退職金って計算してみたことあるか? 普通の人はないよ。でも、今のうちから考えておかないかんのですよ。

年金はね、人生設計のうちの生涯収入の一部だ。まさか、年金だけで老後の生活が安泰なんて、君たち本気で思い込んではおるまいね。年金で100年安心と思っているなんて、冗談だろう。

君ら誤解していないか。「年金100年安心」って、文字どおり「年金の制度維持は100年安心」ということで、「人生100年時代の年金生活が安心」ということではない。2004年の年金改革は「持続可能な年金制度」作りが目的で、老後の暮らしの保証じゃなかったんだよ。この辺の勉強がしっかりできているかね。

君らの勝手な誤解は、政府の責任じゃない。世の中そんなに甘いもんじゃない。知ってるだろう。「自己責任」、「自助努力」だよ。私なんか、年金なんて当てにしていない。受給しているかどうかも自分じゃ知らない。

でもお分かりだろう。老後の暮らしの安心のために、気前よく年金の支払いを振る舞っていたら、たちまち年金制度そのものが成り立たなくなる。年金制度の維持が100年は安全のためには、「入るを量って出ずるを制す」が肝要なんだ。分かり易く言えば、「保険料を増額して、給付額を減額する」「負担増、受益減」ってことだ。

とどのつまりは、高齢者の生活を犠牲にして年金制度を守ろうということ。これって常識だろう。誰が考えても分かることだし、それ以外に、年金制度維持の方法があったら教えてくれ。

今の時勢を考えて見たまえ。保険料負担の現役世代がどんどん減っているのが現実じゃないか。「入るを量る」はたいへん困難だ。ならば、「出ずるを制す」に徹するしか方法はなかろう。

ところが、年金受給者世代が際限なく増えている。平均余命がどんどん延びているんだから、「出ずるを制す」の政策は一人あたりの年金支給額を減らという方法に落ちつくことになる。それだけの単純なロジックじゃないか。

手品じゃあるまいし、「保険料は減らせ」「年金給付は増やせ」なんて、身勝手なことができるわけはない。安倍晋三が、決算委員会で言ったとおり、そりゃ「バカげた政策」だ。「年金100年安心」のためには、「保険料は増やす」「年金給付は減らす」しかないんだよ。

マクロ経済スライドは、そのためのシステム。このご時世、マクロ経済が年金受給者に厳しく推移することは、誰の目にも明らかではないか。安閑と年金受給額を現状維持としていたら、年金制度が崩壊することは目に見えている。だから、経済の悪化にしたがって、年金額を自動的に減額するのが、マクロ経済スライドだ。合理的だろう。年金生活者の生活をカットして、年金制度を維持しようという優れものだ。

2004年は、小泉内閣のときだ。あのとき、安倍晋三は確か自民党幹事長。自公で、「年金100年安心」を吹聴した。でも、あのときから、今のご時世は見通せていた。問題は財源の確保だったんだ。なんと言っても、国庫負担の問題だ。

ここは、基本的な考え方の相違だ。もちろん、「税制による所得再分配機能を最大限発揮せよ」という野党の皆さんの、いつもながらの主張はあるだろう。決まり切ったフレーズとして、「大企業や富裕層への優遇税制を見直せ。負担増を求めよ」「軍事費削って、福祉にまわせ」ってね。

でも、もう、やれることはやった。給付財源の国庫負担分を、段階的に引き上げて3分の1から2分の1までにした。これで十分だろう。これ以上、国庫負担部分を増やすことは、財界がウンと言わない。何よりも、企業や富裕層の経営意欲に水を差すことになり、経済の活性化が失われる。だから、財源は、消費増税しかない。

金融庁金融審議会の報告書が「年金だけでは老後の資金を賄うことができないため、95歳まで生きるには夫婦で2000万円の蓄えが必要」と言って非難囂囂だ。非難の声が高いから、臭い物に蓋をした。政治家として、当然のことじゃないか。

ところがだ。自公政権の国家的詐欺」だの、国民に対する年金詐欺」だのとまことに評判が悪い。こんな悪口雑言が言論の自由として許されてよいもんかね。まあ、フランスや韓国や香港とは違って、日本人は行儀がよくて温和しいから安心はしているが、年金問題は選挙に響くところが頭が痛い。

ホンネのところ、言いたいのは次のことだ。
国民諸君よ、年金だけでは暮らせるはずがない。貯金も利息はないに等しい。だから、株に投資したまえ。さすれば、国民こぞっての株式市場参入が実現して、株価が大いに上がる。株価が上がっている限り、政権は安泰なのだ。

えっ? 株式投資のリスクが現実化したらどうなるか? 前にも言ったろう。そりゃ、自己判断・自己責任・自助努力の大原則だ。誰も、責任とってはくれない。世の中けっこう厳しいんだよ。甘えてくれるな。
(2019年6月17日)

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