澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

保険業界に抗う「開業医共済協同組合」の発展を願う。

本日(10月25日)は「開業医共済協同組合」の第6回総代会に出席。縁あって、私はこの組合の顧問となっている。顧問就任の依頼を受けた際に、その理念に共鳴して積極的に承諾をした。

その名が体を表しているとおり、この組合は、開業医を組合員として組合員間の共済事業を目的とした中小企業協同組合法に基づく事業協同組合である。会員数は1750名ほどの規模。

組合のホームページ(http://www.kaigyouikumiai.or.jp/)の冒頭に、「開業医の万が一の休業時に備える開業医共済協同組合」と、保険会社とはひと味違った、やや無骨なキャッチフレーズが掲げられている。

弁護士である私も、開業医と同様、小規模(というよりは零細な)事業者である。数年前に肺がんの手術を受けて休業を余儀なくされた。休業の補償はありがたい、というよりは安定した職業生活には不可欠である。通常の発想では、万一の場合に備えて保険会社が提供する保険商品を選択して保険契約を締結することになる。ところが、この組合に結集した医師たちは、共済事業にこだわって保険契約を拒否しているのだ。

ホームページの「理事長挨拶」の中に次の一文がある。
「開業医には、ひとたび病気やケガで自院の休業を余儀なくされたときに医業再開のための公的休業保障は何もありません。民間保険会社の休業保険商品は保険料が高く医業経営を圧迫し、医院継続が破綻しかねません。そのため、適切な保障制度を開業医の相互扶助で行う必要があることから、開業医共済協同組合を立ち上げ、復業を支援するための『開業医共済休業保障制度』の認可を得ました。」

営利事業としての「民間保険会社の休業保険商品は保険料が高額になる」のは理の当然である。資本出資者への配当も、会社役員・職員の人件費も、広告宣伝費のコストも避けられない。一方、当組合の役員は、これまでのところすべて無報酬だ。配当は無用。宣伝コストも微々たるもの。

本日の総代会の雰囲気が明るい。「開業医のニーズにフィットした運営がなされている」「契約者数・契約口数の伸びはまことに順調」「財務状況はきわめて安定」「会員のために、さらなる利益還元の共済制度充実を」という具合。

本日の議案のひとつが、「入院療養にかかる給付金に関する共済規定(約款)変更の件」。これまでは入院についての傷病給付金の支払いの要件とされていた、「5日以上連続して休業した場合」を撤廃しようというもの。現約款では、入院4日以内の休業は給付の対象とならなかったものが、改正案では1日でも支給されることになる。もちろん、反対意見などあるはずもなく採択された。組織の発展の好循環が見て取れる。

「保険会社の保険金等の支払能力の充実の状況を示す指数」として、ソルベンシーマージン比率なるものが使われる。高いほどのぞましく、200%以下は行政から改善指導を受けることになる。当組合の昨年の総代会報告では、「541%から866%に改善」と誇らしげなものだったが、今年はさらにアップして1026%との報告だった。「制度の運営にあたっては、投資のための株式・債券等のリスク資産での運用は行っておりません。また、役員報酬を無くし会議等も効率的に開催し経費を切り詰め、長期的に安定・安全運営できるよう努力しています。」との成果なのだ。加入者が着実に増加している原因でもあり、結果でもある。

私が顧問就任をお引き受けしたとき、組合の経営内容については、よく把握していなかった。積極的にお引き受けしたのは、むしろ、この組合の理念に共鳴したからである。共鳴した理念のひとつは、この組合が新自由主義的な企業万能主義に反対の立場を明確にしていることである。かつて、共済は保険業とは無関係に種々の相互扶助制度として社会のそこここにあった。ところが、2005年の保険業法の「改正」が、これら共済制度のすべてを保険業法の網の目に入れて規制対象とした。名目は、「共済」を隠れ蓑にしたインチキ保険商品の横行から消費者を守るためである。しかし、当組合の組合員の多くはそうは見ていない。グローバリゼーションとして押し寄せたアメリカの保険企業の日本展開が、日本の相互扶助制度としての共済システムを企業展開の邪魔者と見ての圧力の結果だとの理解である。TPPやFTAに対する警戒心には重いものがある。

新自由主義とは、実は「自由」を本質とするものではない。巨大企業の行動の自由に規制には撤廃・緩和を要求するが、巨大企業に邪魔者となる「自由」は目障りとして新たな規制を創設するものなのだ。

本日の総代会議案書の中にも、「開業医の経営と生活を金融資本の市場に開放しようとする動きと対峙した、自主的、民主的な経営・生活保障である当組合の休業補償制度の存在価値は大きい」とされている。自主的な相互扶助事業を、企業利益に呑み込ませてなるものかというこの気概。その意気やよし、ではないか。

もう一つの私が共鳴した理念とは、意識的に徹底した組織の民主的運営を心掛けるという点である。組合員の思想・良心を制約することはけっしてしない。組合員の組織運営に関する発言の自由、批判の自由を保障するという。それこそが、柔軟で強靱な組織を形成する要諦であるとの発想からである。

民主的組織運営の確保、あるいは徹底。誰もが言うことではあるが、なかなかに実現は困難なことと言わざるを得ない。この組合が、事業内容によっての発展だけでなく、透明性が確保された民主的な運営が評価されて会員の居心地よさとなり、この面からも組合発展の要因となることを願っている。
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「公表された議事録作成の経緯の検証と当該議事録の撤回を求める申し入れ」への賛同署名のお願い

そもそも存在しない安保関連法案の「採決」「可決」を後付けの議事録で存在したかのように偽るのは到底許されません。私たちは、このような姑息なやり方に強く抗議するとともに、当該議事録の撤回を求める申し入れを提出します。ついては多くの皆様に賛同の署名を呼びかけます。

ネット署名:次の署名フォームの所定欄に記入の上、発信下さい。
     http://goo.gl/forms/B44OgjR2f2

賛同者の住所とメッセージを専用サイトに公開します。
     https://bit.ly/1X82GIB

第一次集約日 :10月27日(火)22時とします。なお、詳細は、下記ブログをご覧ください。
       http://sdaigo.cocolog-nifty.com/blog/2015/10/post-fb1b.html
       https://article9.jp/wordpress/?p=5768

(2015年10月25日・連続938回)

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