澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

宮城県民は、県議選共産党議席倍増で安倍ビリケン内閣を批判した。さあ、次は参院選だ。

昨日(10月25日)の宮城県議選で、「共産党 議席倍増」が大きな話題となっている。産経の見出しが、「共産が8議席に倍増し第2会派に 自民27議席 民主はわずか5議席」というもの。

共産党は、今回9人立候補して8人当選、前回議席の4を倍増させた。仙台市内の全5区で当選。最中心部の青葉区では、12600票を獲得して堂々のトップ当選だった。前回が同じ候補者で、9319票3位だったのだから、躍進と言ってよいだろう。

地元紙河北新報は次のように伝えている。
「自民は34人を公認。東京電力福島第1原発事故で発生した指定廃棄物の処分場問題で揺れた加美選挙区は、5選を目指した現職が敗れた。9人を擁立した民主は青葉、宮城野、太白で現職が議席を確保。党分裂問題を抱える維新は気仙沼の現職1人にとどまり、仙台市内の2人は落選。公明は強固な組織戦で仙台市内の4議席を維持した。共産は仙台市内5選挙区全てで議席を獲得。石巻・牡鹿と塩釜の現職、大崎の新人も当選し、前回の4議席から8に躍進した。」

この選挙結果の原因は何か。毎日の報道が「共産、反安保票で躍進 反TPP、農協職員も歓迎」という見出し。これが常識的なところだろう。
「共産党が改選前の4議席から8議席と倍増させた25日の宮城県議選。自民党は前回選から1議席減の27議席と、単独過半数を割った。安全保障関連法成立や環太平洋パートナーシップ協定(TPP)大筋合意後の初の都道府県議選で、共産党が幅広い批判票の受け皿となった。」「共産は…県内有数の稲作地を抱える大崎選挙区(定数4、大崎市)では、これまで自民候補を支援した旧鹿島台町長や元市議会議長らが新人の支持に回り、初議席を得た。」「大崎市の農協役員は『TPPは米どころの大崎から反対の声を上げなければいけないと思った』と歓迎。仙台市青葉区の無職男性(66)は『(共産党は)安保法反対で主張が一貫している』と話し、同党が提唱する野党連合にも期待する。」「自民候補に1票を投じた太白区の2児の母(32)は『投票率が低く、共産党が当選しやすくなっていると感じる。安保法が結果に影響したのでは』と話した。」

今、選挙で問われるべきテーマは数ある。まずは、何よりも戦争法に対する国民的な批判である。立憲主義・民主主義・平和主義の総体が問われている。これに次ぐ大きなテーマが原発。補償問題というだけでも再稼働問題というだけでもない。われわれの文明の危うさを象徴する大事件への対応が問題なのだ。さらに、産業や経済のあり方をめぐってのTPP交渉問題がある。安倍内閣の経済政策の行き詰まりと閣僚人事の身体検査問題もある。本来は、これらの諸問題が臨時国会で議論の対象となっていなければならない。ところが臨時国会は開かれない。国民には、やり場のない憤りが鬱積せざるを得ない。宮城県議選には、これが噴出したとみて間違いがない。マグマ溜まりの小爆発といったところ。

ところで、「民主、維新、共産、社民、生活の野党5党は21日、憲法規定に基づいて臨時国会召集を要求する手続きを衆参両院で行った。…『逃げていると言わざるを得ない。1カ月以内に召集しないなら、憲法無視の違憲内閣だ」。民主党の枝野幸男幹事長は21日、仙台市内で記者団にこう語り、政府・与党の姿勢を非難した。」
「憲法53条は、衆参いずれかの4分の1以上の議員から要求があれば、内閣は召集を決定しなければならないと規定しており、野党の要求はこの要件を満たしている。ただ、53条は召集の期限を定めておらず、事実上拘束力がない。昨年秋の臨時国会では、内閣改造で就任したばかりの小渕優子経済産業相、松島みどり法相(いずれも当時)が辞任に追い込まれており、同じ轍(てつ)は踏みたくないのが政権の本音だ。」(
時事通信)と報道されている。 

メデイアの言う、「53条は召集の期限を定めておらず、事実上拘束力がない。」との言い方には、誰しも納得しがたいだろう。憲法は、政権は憲法を遵守するとの当然の大前提でできている。期限の定めがあろうとなかろうと、誠実に憲法の定めには従わねばならない。もっとも、今回の安倍内閣のごとく、日本国憲法大嫌い(大日本帝国憲法大好き)で憲法無視のビリケン(非立憲)内閣が、憲法に従わないという態度を露わにした場合、憲法に従うよう強制が可能かはなかなかに難しい問題となる。

法は、その規範内容を実現する強制力を持つことによって、道徳や倫理あるいは政治的宣言等と区別される。しばしば、そのように説かれる。法の強制力として分かり易いのは、刑事法における刑罰権の執行や、民事法における強制執行など、公権力の実力作用による直接・間接の強制措置である。しかし、すべての法的規範に強制措置が伴っているわけではない。憲法に関しても、その規範を実現するためにいくつかの方策が予定されているが、そのすべてに実効性を担保する強制措置が用意されているわけではない。

憲法とは公権力を名宛て人として主権者が発した文書、その内容は公権力を規律する規範である。公権力の行使の規制に関し、その実効性確保に関する中心的な制度が、裁判所による違憲審査制である。憲法81条が、「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」と定めるとおりである。

しかし、三権分立のバランスのとりかたの理解には微妙なものがあり、公権力のすべての違憲行為に訴訟が可能というわけではない。違憲を根拠に提訴可能なのは、公権力の違憲な行使によって国民の人権が侵害された場合に限るという制度運用が定着している。歯がゆいかも知れないが、裁判所にすべてをお任せというわけにはいかない。主権者たる国民が公権力を監視し、批判し、安倍政権のごとき憲法違反の政権には、国民自身が退場命令を出さねばならないのだ。

野党の要請に対して安倍内閣が臨時国会を召集しないことは、明白な憲法53条違反である。しかし、この違憲行為が国民の権利侵害をもたらすとはなかなかに難しく、従って訴訟でこの政府の違憲行為を是正することはきわめて困難というほかはない。

むしろ、このような憲法を守ろうとしない安倍政権への国民こぞっての批判の方が重要なのだ。私は、宮城県議選の結果は、安倍内閣の憲法軽視の姿勢に対する国民の側からの批判の意思表示とみるべきだと思う。なにせ、安倍政権への批判のバロメータは、何よりも共産党票と共産党議席の伸び如何にあるのだから。

宮城県民に続いて、安倍ビリケン(非立憲)内閣を、徹底して批判しよう。次は来年7月の参院選だ。安倍のビリケン度を、参院選の票と議席に反映させようではないか。

なお、戦争法案審議の最終盤、参院安保特別委員会での採決不存在の議事録改ざん問題に抗議し、経緯の検証と撤回を求める申し入れへの賛同署名は明日が締め切りです。改めて、下記のメール署名をお願いいたします。
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「公表された特別委員会議事録作成の経緯の検証と当該議事録の撤回を求める申し入れ」への賛同署名のお願い

そもそも存在しない安保関連法案の「採決」「可決」を後付けの議事録で存在したかのように偽るのは到底許されません。私たちは、このような姑息なやり方に強く抗議するとともに、当該議事録の撤回を求める申し入れを提出します。ついては多くの皆様に賛同の署名を呼びかけます。

ネット署名:次の署名フォームの所定欄に記入の上、発信下さい。
     http://goo.gl/forms/B44OgjR2f2

賛同者の住所とメッセージを専用サイトに公開します。
     https://bit.ly/1X82GIB

第一次集約日 :10月27日(火)22時とします。なお、詳細は、下記ブログをご覧ください。
       http://sdaigo.cocolog-nifty.com/blog/2015/10/post-fb1b.html
       https://article9.jp/wordpress/?p=5768

(2015年10月26日・連続939回)

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