澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

岸田流 「分配重視」の竜頭蛇尾

(2021年10月24日)
 第49回総選挙まで、あと1週間。選挙情勢は混沌としてよく見えない。各政党の政策もよく見えてこない。最大の論争テーマして、岸田さんが設定した「新しい資本主義」「いわゆる新しい日本型資本主義」なるものがよく分からない。正確には、さっぱり分からない。

 「ネオリベ」も「ネオコン」も、頗るイメージは悪い。「新自由主義経済」ではなく、「新しい資本主義」とは、いったい何なのだ。これまでのどのような資本主義に比較して、どこがどう「新しい」と言うのだろうか。分かりにくさの原因はいくつもあるが、何よりも、岸田さん自身がはっきりものを言えない立場にあることが根本原因と言ってよいのだろう。

 アベノミクスの9年は、成長重視で格差貧困をほったらかしの「新自由主義経済政策」であり、その惨憺たる失敗であった。結局、成長もできず格差貧困を大きく拡大しただけ。一方に極端な富裕層を更に肥大化させ、他方で実質賃金を減じてしまった。安倍や麻生の失政に対して、国民的な怨嗟の声が巻きおこらないのが不思議でならない。

 アベノミクスの失敗を素直に認めて、「アベノミクス=新自由主義政策」からの脱却を目指すとすれば、岸田政策はとても分かり易いものになる。アベノミクスの成長重視政策から、格差貧困をなくす経済政策に転換するのだと明言すればよいだけのことだ。だが、ご存知の事情あって、それができない。

 「成長と分配」にかかわる論争を「卵が先かニワトリが先か」論争と同視して、どっちもどっちなどとしてはならない。また、「生産と分配」の論争と混同させてもならない。「成長と分配の好循環」と言っても、あるいは「官民協働で成長も分配も」と唱えても、具体的なイメージは湧かず、何を言っているのか、さっぱり分からない。

 アベノミクスを転換して、「まず配分」を重視の政策でなくてはならない。所得の再分配も、富の再分配も必要なのだ。具体的には、消費税を撤廃ないし半減する。金融所得の分離課税方式を撤廃する。所得税の累進化率を高める。新たな富裕税を創設する。そして、最低賃金を底上げする。具体的にやるべきことはいくつもある。野党が政権を取れば、その格差と貧困の解消が現実化される。

 しかし、岸田さんは、そんなことは言えないのだ。本日(10月24日)の毎日朝刊に、興味深い記事がある。「岸田氏演説、消えた『分配』 野党と差別化『成長』重視」というタイトル。

 「岸田文雄首相が衆院選の街頭演説で「経済成長」に軸足を置いた訴えを続けている。一方で、自身が掲げる「新しい資本主義」で重視する「分配」への言及は抑制気味だ。野党との差別化を狙う自民党が「成長」を前面に出すよう要請したためだが、野党は「アベノミクスと何ら変わらない」などと批判している。

 首相は23日、佐賀県武雄市の街頭演説で「成長」という表現を7回使いつつ、…「分配」の文言は、現地での第一声としては選挙戦5日目にして初めて消え、力点の違いは明らかだった。

 首相は9月の自民党総裁選で格差是正に取り組む考えを強調し、成長重視のアベノミクスの修正とも受け取れる「新しい資本主義」を掲げた。8日に衆参の本会議で行われた所信表明演説では「新しい資本主義」への言及は7回に達した。「成長」(15回)と「分配」(12回)をほぼ同じ回数使った。

 だが衆院選に入りこのバランスが崩れている。19日の福島市の街頭演説で「成長」は8回に対し、「分配」は3回にとどまった。20日以降は「成長」への偏重が加速し、「分配」の文言を使わない演説も増えた。「新しい資本主義」に触れるのも0回か1回が続いている。」

 「首相周辺は「首相の主張が変わったわけではない。自民党側から選挙戦術の進言があった」と明かす。

 やっぱり、「岸田自民党」ではなく、「安倍・麻生・甘利・高市 自民党」なのだ。来週日曜(10月31日)の投票日には、「安倍・甘利 自民党」に大敗北の審判を下さなければならない。 

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