澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

スラップ受任弁護士には遠慮なく懲戒請求を ― 「DHCスラップ訴訟」を許さない・第146弾

日弁連機関誌「自由と正義」(月刊)には、巻末に全国52単位会の弁護士懲戒全例が掲載される。弁護士会の会員に対する懲戒権は弁護士自治の根幹を支えているものだから、その行使の適切に関心をもたねばならない。もちろん、我が身にまったく無縁なことでもない。読むに気の重いことではあるが、他山の石としても目を通さざるをえない。

数日前に届いた「自由と正義」1月号の、以下の記事が目にとまった。私にとって、これは注目に値する。

懲戒処分の公告

東京弁護士会がなした懲戒の処分について同会から以下の通り通知を受けたので、懲戒処分の公告及び公表等に関する規定第3条第1号の規定により公告する。
1 処分を受けた弁護士
  氏 名      吉岡一誠   
  登録番号     51064
  事務所      東京都豊島区東池袋3-1-1 サンシャイン60
           弁護士法人アデイーレ法律事務所    
2 処分の内容  業務停止1月
3 処分の理由の要旨  
被懲戒者は、2016年8月頃に被懲戒者の所属する弁護士法人AがBから受任した、懲戒請求者とBの夫Cとの不貞行為についての懲戒請求者に対する慰謝料請求事件についてその担当となった。被懲戒者はBとCとの婚姻関係が破綻に至っておらず、不貞行為を裏付ける証拠が弁護士法人Aが作成した定型的な書式に概括的に記入されたC名義の文書のみであり、懲戒請求者に否認されたときには慰謝料請求権の存否が問われかねないものであったところ、およそ判決では認容され難い500万円もの慰謝料を請求する目的で住民票上懲戒請求者が単身で居住していることを知りながらあえて受任通知を送付せず、同年9月15日から同月19日まで多数回懲戒請求者の携帯電話に電話して不安をあおり、さらに同月20日には懲戒請求者の勤務先に電話してその不安を高め、携帯電話の履歴から電話をしてきた懲戒請求者に対し、500万円もの高額の慰謝料を請求し、その交渉材料として懲戒請求者の人事等に関する権限を有する機関への通告を検討していることを伝えて畏怖困惑させ、これにより相当な慰謝料額よりも高い賠償金を支払わせようとした。
被懲戒者の上記行為は弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
4 処分が効力を生じた日 2018年10月15日
    2019年1月1日 日本弁護士連合会

 処分理由の要旨を読むには少し骨が折れるが、この弁護士は女性の依頼者(B)からの相談を受け、その夫(C)の浮気相手と思われる女性(懲戒請求者)を相手に何度も電話をかけて慰謝料の請求をした。この女性(懲戒請求者)は教員だった。交渉材料としたというのは、「教育委員会に通告を検討している」旨伝えたということ。請求金額は500万円だった。

東京弁護士会がこの弁護士を「業務停止1月」の懲戒とした理由を整理してみよう。
この弁護士の受任事務は、依頼者の夫(C)と相手方女性との不貞行為にもとづく、慰謝料請求である。それ自体に、違法も不当も、弁護士としての非行もない。
弁護士としての非行があったとされたのは、次の理由だ
 (1) 慰謝料請求の根拠は薄弱だった。
 (2) にもかかわらず、およそ判決では容認されがたい500万円もの高額の慰謝料を請求した。
 (3) 何度も相手側に電話を掛け、「教育委員会への通告を検討している」とまで言って脅した。

(1)と(2)とは相関関係にある。まとめれば、「当該の具体的状況においては、およそ判決では容認されがたい過大な金額の慰謝料を請求した。」ことが、弁護士としての非行の根拠とされている。

そして、もう一つの非行の根拠として、(3)の請求や交渉の態様の悪質さがある。

私(澤藤)は、DHCの会長である吉田嘉明から、慰謝料6000万円の請求を受けた。請求は、訴訟という形でのことだった。吉田嘉明からこの件を受任して提訴したのは、第二東京弁護士会の今村憲外2名の弁護士である。

同弁護士らが受任した件は、
 (1) 慰謝料請求の根拠は極めて薄弱だった(後に、敗訴が確定している)。
 (2) にもかかわらず、およそ判決では容認されがたい6000万円もの高額の慰謝料を請求した。
 (3) しかも、事前の交渉はまったくなく、いきなりの2000万円請求の提訴だった。これを被告(澤藤)が、当該の提訴自体がスラップ訴訟として違法なものだとブログで反撃を始めるや、今村憲らは直ちに2000万円の請求を6000万円に増額した。

どうだろうか。今村憲らのスラップ受任は、「弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。」と十分に言えるのではないだろうか。本来、躊躇なく、今村憲らを所属弁護士会に懲戒請求すべきだったのだと今にして思う。

スラップ訴訟とは、言論の自由を封殺しようという社会悪である。私が、吉田嘉明を批判したのは、典型的な政治的言論だつた。吉田嘉明が、渡辺喜美という政治家に、8億円もの巨額の裏金を渡して、金の力で政治を動かそうとしたことを批判したものだ。この批判を嫌って、言論を封殺しようとしたのが、DHCスラップ訴訟である。

吉田嘉明だけでは提訴はできない。こんな事件でも受任してくれる弁護士が必要なのだ。慰謝料請求の根拠は極めて薄弱で、勝訴の見込みがゼロに近いことは普通の弁護士なら分かることだ。いささかなりとも憲法感覚のある弁護士ならば、「吉田さん、およしなさい」「裁判なんかやったら、かえってあなたの立場が悪くなる」と諫めるべきだった。

にもかかわらず、今村憲外2名は、私を被告として提訴した。当初は2000万円の請求額、そしてその後には6000万円への請求の拡張。およそ判決では容認されがたいことが客観的に明らかな高額の慰謝料請求である。私の件を含め、同様のスラップは少なくとも10件あった。すべて、今村憲らが代理人として受任している。

スラップ防止の立法が困難だとすれば、スラップの提訴自体を違法とする損害賠償認容判決の積み重ねが有効だと考えてきた。しかし、スラップ受任弁護士の懲戒請求も有効ではないだろうか。結局のところ、スラップを違法という根拠は、民主主義社会における言論・表現の自由の価値に対する格別の尊重にある。それは、少なくとも弁護士会内では、十分に理解してもらえるものではないか。

裁判所にも、弁護士会にも問題を提起しつつ、商品市場ではスラップを常套とするDHCに不買運動で対応することが必要だと思う。
(2019年1月18日)

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