澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

「敵の敵は味方」なのか、そうではないのか。

春。暖かい風が心地よい。しかも、この上ない好天。早朝、不忍池をめぐる。万物が蘇生している。花は紅柳は緑だ。上野の桜は五分咲きというところか。

1963年ちょうど今頃の春の盛りに、私は目黒区駒場にある学生寮の住人となった。北寮と名付けられた棟の3階の壁のペンキの匂いを今も覚えている。完全自治制のその寮の6人定員の各部屋は、部活動の単位で割り当てられていた。私が所属したのは中国研究会。略して「中研」だった。東西対立の厳しい時代、西側陣営には英国以外に新中国を承認する国のなかった当時のことだが、社会主義革命をなし遂げた中国に関心もあり、ここに明るい未来があるように見てもいた。

私は熱心な会のメンバーではなかったが、一通りは中国の近代史を学んだ。そのなかで興味をそそられたのは、国共合作である。誰かがこう言った。「抗争の相手と手を結んで間違わない、中国共産党の戦略と判断力はすごい」「いや、誰が考えても当時はそうするしか選択の余地がなかっんだろう」。さて、どうなんだろうか。

また、誰かが言った。「敵の敵は味方なんだ。そう考えなければ、味方はやせ細るばかり。国民党だって味方と考えなければ、大きな力にはなれない」。うん、そうかも知れない。「いや、敵の敵は味方なんて言っていると、敵と味方の境界が分からなくなる。何のために闘っているのかぼやけてしまわないか」。なるほど、そうなのかも知れない。

私には戦略・戦術の是非はよく分からなかったが、第2次国共合作においては、日本という侵略者が主たる敵であることが明らかで、国民党も共産党もこの主敵と闘うためには協力せざるを得ない歴史的状況があった。その少し前にはフランスで、反ファシズム、反帝国主義、反戦を統一スローガンとして掲げる人民戦線政府が誕生している。

敵の敵は味方というテーゼの一般化は難しい。先日、本郷三丁目で「NHKから国民を守る党」を名乗る人物が旗を立てビラを配っていた。この政党は、明らかに「NHK」を敵としている。私も、NHKを敵とみる立場。では、「NHKから国民を守る党」は、敵の敵として私の味方か。どうもそうではなさそうだ。この政党とお友達とみられたくはない。

このワンイシュー政党、どう見ても胡散くさい。この党の党首は、立花孝志という人物。この人のホームページを見ると、「私はNHKから被害を受けている視聴者・国民を全力で、命がけで、お守り致します」と威勢がよい。その具体的に被害の内容は3類型あるというが、なかなか理解が難しい。
①経済的被害者【受信料支払い者 約50%】
 支払い者【不払い者の分まで支払わされている】
②精神的被害者【受信料不払い者 約50%】
 24時間体制でやって来るNHK集金人【反社会勢力関係者も多数在籍】からの脅迫行為や裁判の被告になってしまうかも?という不安による精神的被害

たった一つよく分かるののは、「③情報的被害者」なる類型の中の、「反日的な報道をされている」という一項目。立花らの立ち位置から見ると、NHKの報道姿勢は「反日」であり、「左に偏向している」ことで、国民に被害を与えている。このNHKの反日・偏向報道被害から国民を全力で守るというのだ。これには驚ろかざるを得ない。

NHKの報道姿勢は、その総体的傾向において政権ベッタリ、対米追随、皇室礼賛というほかはない。その権力批判を忘れさったNHKを、「反日」「偏向」というのがこの政党。「敵の敵」ではあるか、こんな政党を味方と見るわけにはいかない。

また、大阪府・大阪市を牛耳っている大阪維新。私は、維新を民主主義に危険な敵と見続けてきた。ところが今、維新を敵とする主たる勢力は自民である。いうまでもなく、自民党も、私にとっての敵である。改憲を目論む勢力として敵リストの筆頭に位置する。

敵の敵は味方」という公式は、「維新と敵対している自民は味方」とも、「自民と敵対している維新は味方」とも言いうる。さて、今行われているクロス選挙戦どう対応すべきか。

「敵の敵は味方」という一般論は、実は何の指針にもならない。そのときどきで、何が主要なテーマであるかを考え、各勢力の力関係に鑑みて、方針を決するしかない。大阪では、知事・市長を押さえて、大阪都構想を打ち出している維新が主敵。自民大阪と組んでも、維新を倒さねばならない。この判断においては、一般論的公式はなんの役にも立たない。

思えば戦国の昔、七雄は合従連衡を繰り返した。各国の目的は、自国の安泰・他国の併呑という単純さだったが、誰が味方かは、情勢次第で複雑に変化した。

今、改憲阻止が最大の政治課題であり獲得目標である。明文改憲阻止は、現実的に可能な課題であり、万が一にも明文改憲を許すと、取り返しのつかないことになる。そのためには、アベ改憲推進勢力の敵はすべて味方とするしかない。

9条改憲を推し進めようとする者が敵、これを阻止する者が味方。改憲を阻止するためには、味方を増やして敵を孤立させるしか方法はない。ここでは、「敵の敵はすべて味方」だ。国共合作もよし、統一戦線でも人民戦線でもまたよし。肝要なのは、「安倍政権下での改憲阻止」の一点で結集した味方を増やすことに専念するすることだ。

こうして、改憲勢力を孤立させ、7月参院選で改憲勢力から議席を奪うことができれば、しずかな心で、来年の桜を観ることができるだろう。
(2019年3月27日)

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Published in 水曜日, 3月 27th, 2019, at 21:54, and filed under 安倍政権, 明文改憲.

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