澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

N国の興亡が教えるもの

思いもかけない現実の出来が、認識を変え意見を変える。「NHKから国民を守る党」なるものの出現が、私には衝撃だった。そして、自分の公共放送に対する見解が、このような人びとと似通って見られることに大いに戸惑い、かつ恥じた。私とN国、どこがどのように意見が違うのだろうか。どのようにすれば、理念の相違を押し出せるのだろうか。

この党の自らの定義が、「NHKにお金を支払わない方を全力で応援・サポートする政党」であり、それがメインのキャッチフレーズにもなっている。「NHKをぶっ壊す!」とともに、これが一定の国民の胸に響いたのだ。

立花孝志は、ホームページの「党首あいさつ」において、「NHKから国民を守る党は、文字通りNHKから国民をお守りする為の党です。NHKが行っている戸別訪問は、勝手にNHKの電波を各世帯に送りつけて、NHKを見ていなくても集金する送りつけ商法です。…」などと言っている。

結局、N国とは「NHK受信料の不当な集金から国民の経済的利益を守る党」である。けっして、「政権の走狗としてのNHKの本質をぶっ壊す」とは言わない。「権力に従順なNHKの基本体質を批判する」とも、「大本営発表放送の偏頗から民主主義と国民を守る」ともいうものではないのだ。

私は、宗旨を変えた。NHKを一塊の均質の組織として見ることを止めよう。そのような批判の仕方を止めよう。NHKを二層の対立物として捉えなければならない。「権力に操作され、権力を忖度し、権力と癒着するNHK上層部」と、「上層部との軋轢の中で、良質の番組を制作しようと努力している現場フタッフ」との二層の構造。上層部を批判し、現場を励まさなければならない。

本年7月の参院選におけるN国の得票は、NHKの受信料徴収に国民の根深い反感があることを教えた。NHKは、そのことに対する反省はすべきだろう。だが、所詮は右翼の別働隊に過ぎないN国の攻撃に萎縮する必要はない。そもそも、N国の賞味期限が長いはずはない。

立花は、売名目的での立候補を繰り返している。最近のものが、今月(12月)8日投票の小金井市長選挙。開票結果は以下のとおり。N国・立花の惨敗である。

1 当 西岡真一郎 無所属 18,579
2 落 かわの律子 無所属 10,759
3 落 森戸よう子 無所属 10,399
4 落 立花 孝志 N国    678

市区長選挙における供託金の金額は100万円で、供託金没収点は有効投票総数の10分の1。今回市長選の投票総数は40,904だったから、その10%は4,090票である。立花は、供託金没収点の6分の1の得票もできなかった。

この選挙における立花を、典型的な「売名目的の泡沫候補」と呼んで差し支えなかろう。立花のごとき泡沫候補にも立候補の権利は保障されている。100万円で公営選挙を利用した宣伝売名行為ができれば安いものである。それでも得票はわずか678。先の長くないことを示唆している。

ところで、こんな裁判例があることを初めて知った。

一昨年(2017年)7月19共同配信の記事。

NHK提訴は「業務妨害」 受信料訴訟原告に賠償命令
受信料の徴収を巡り勝訴の見込みがない裁判を女性に起こさせたとして、NHKが政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志代表らに弁護士費用相当額の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は19日、請求通り54万円の支払いを命じた。

山田真紀裁判長は判決理由で「NHKの業務を妨害するため訴訟に関与しており、裁判制度を不当に利用する目的があった」と指摘した。

立花氏は元NHK職員。判決によると、2015年8月、NHKが受信料徴収業務を委託した業者の従業員が千葉県内の女性宅を訪問。女性は立花氏に電話で相談し、2日後に慰謝料10万円の支払いをNHKに求め松戸簡裁に提訴した。訴訟は千葉地裁松戸支部に移送され、女性が敗訴した。

千葉県内の女性がNHKからの受信料請求を受けて立花に電話で相談したところ、立花のアドバイスは提訴だった。女性は、立花の指示のとおりに、NHKを被告として10万円の慰謝料支払いを求める損害賠償請求訴訟を提起して敗訴した。ところが、ことはこれで終わらなかった。NHKは、この女性と立花を逆に訴えたのだ。今度の舞台は東京地方裁判所。前訴10万円の請求の棄却を求める応訴の費用として、NHKが委任した弁護士に支払った弁護士費用54万円を支払えという請求。なんと、地裁は、その満額を認めたという記事である。

この裁判は上級審で逆転せずに、確定した。実は、もう一つ同様の裁判があり、NHKは立花に108万円の強制執行が可能だという。NHKは近々執行に踏み切るとも言っている。

繰り返すが、10万円の慰謝料請求という前訴の提起を違法として、提訴者に54万円の応訴費用の損害の賠償を認めたのだ。DHCスラップ「反撃」訴訟の認容額は110万円であるが、応訴費用(弁護士費用)として認められたのは、そのうちの10万円に過ぎない。これが、常識的な水準。N国訴訟の理由には「(立花は)NHKの業務を妨害するため訴訟に関与しており、裁判制度を不当に利用する目的があった」と指摘しているという。

軽々にするスラップの提訴は、ブーメラン効果を伴う。うっかり提訴・いい加減提訴は、損害賠償責任の原因となる。そのやばさを、立花が身をもって教えてくれている。最近では、出資法違反疑惑の金集めまでも。また、教訓を積み重ねてくれることになるにちがいない。それにしても、こんな事態では、N国の明日はなかろう。
(2019年12月13日)

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Published in 金曜日, 12月 13th, 2019, at 23:08, and filed under 司法制度, NHK問題.

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