澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

11月28日《統一教会スラップ・有田訴訟》が結審します。解散命令裁判に重なる立証を積み上げた本件訴訟にご注目ください。そして、ぜひ、最終口頭弁論(15時?)の傍聴と、報告集会(15時30分?)へのご参加を。報告集会では、青木理さん・鈴木エイトさんのトークも予定されています。

(2023年11月22日)
 旧統一教会が、有田芳生さんの口を封じようと提起した《統一教会スラップ・有田訴訟》。11月28日(火)に結審となります。
 この訴訟では、「統一教会は反社会的集団である」ことが立証対象となり、被告有田側は、教会の違法を認めた、これまでの民事・刑事の判例を積み上げました。この立証活動は、統一教会に対する解散命令請求での「悪質性・組織性・継続性の立証」に重なります。
 はからずも、本件有田訴訟は、解散命令裁判を先取りするものとして、注目されることになりました。

 昨年8月19日、日本テレビの「スッキリ」に出演した有田芳生さんが、「(旧統一教会は)霊感商法をやってきた反社会的集団だってのは警察庁も、もう認めている」と発言したところ、統一教会は、これを名誉毀損だとして、有田さんと日本テレビを訴えました。

 その結果、「統一教会は反社会的集団である」(真実性)ことが、立証対象の一つとなり、有田訴訟が、統一教会の解散命令裁判を先取りするものとなっています。

 11月28日午後3時から、東京地裁103号法廷で開かれる、結審の法廷では、有田さんの意見陳述と、被告有田代理人のパワポを使った主張の説明をいたします。

 閉廷後の報告集会は、下記のとおりの予定です。
 11 月 28 日 午後 3 時 30 分〜 法曹会館(法務省の北側)「富士の間」

 弁護団から、訴訟進行・法人解散命令請求事件についての報告
 トークセッション(青木理、鈴木エイト。有田芳生=進行・二木啓孝)
 他に、参加者からの発言 など

              

 《統一教会スラップ・有田訴訟》進行経過

 東京地裁民事第7部(野村武範裁判長)
  R4(ワ)第27243号名誉毀損事件
   原告 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)
   被告 日本テレビ放送網株式会社・有田芳生

(※裁判所、◆原告、◎被告有田、☆被告日テレ、★訴訟外事件)
★22・07・08 安倍元首相銃撃事件
★22・08・19 日テレ「スッキリ」番組放映(萩生田光一批判がテーマ)
◆22・10・27 提訴 訴状と甲1?6
 請求の趣旨
  (1) 被告らは連帯して2200万円(名誉毀損慰謝料と弁護士費用)を支払え
  (2) 日テレは番組で、有田はツィッターで、謝罪せよ
 請求の原因
  (名誉毀損文言を、有田の番組内発言における「霊感商法をやってきた反社会的集団だって言うのは、警察庁ももう認めているわけですから」と特定)
※22・11・10 被告有田宛訴状送達(第1回期日未指定のまま)
※23・01・23 On-line 進行協議
◎23・02・27 被告有田・答弁書提出 証拠説明書(1) 丙1?7提出
  (本件発言は、一般視聴者の認識において全て意見であり、当該意見が原告の社会的評価を低下させるものではない。仮定的に、真実性の抗弁を援用)
☆23・02・27 被告日テレ・答弁書提出 乙1(番組の反訳書)提出  
◆23・03・07 原告準備書面(1) (被告日テレの求釈明に対する回答)提出
◆23・03・14 原告準備書面(2) (被告有田に対する反論) 甲7?12提出
◎23・05・09 被告有田準備書面1 提出
☆23・05・09 被告日テレ・第1準備書面
◎23・05・12 被告有田準備書面2 証拠説明書(2) 丙8?13 提出
※23・05・16 第1回口頭弁論期日(103号法廷) 閉廷後報告集会
   島薗進氏の記念講演、望月衣塑子・佐高信・鈴木エイト各氏らの発言
◆23・06・26 原告準備書面(3) (有田準備書面1に対する反論) 甲13?25
◆23・06・26 原告準備書面(4) (有田準備書面2に対する反論)
◆23・06・26 原告準備書面(5) (日テレに対する反論)
◎23・07・17 被告有田準備書面3 提出
※23・07・18 On-line 進行協議
◆23・07・20 原告甲26(番組全体の録画データ)提出
◎23・08・31 被告有田 証拠説明書(3) 丙14?19
証拠説明書(4) 丙20?23
証拠説明書(5) 丙24?27
証拠説明書(6) 丙28?43
☆23・09・15 被告日テレ・第2準備書面 証拠説明書(2) 乙2?7
◎23・09・22 被告有田準備書面4
   (甲26ビデオを通覧すれば、「警察庁ももう認めているわけですから」は、一般視聴者の印象に残る表現ではない。早期の結審を求める)
◆23・09・22 原告証拠説明書 甲27?29
※23・09・26 第2回口頭弁論期日(103号法廷)
   裁判所 「双方なお主張あれば、10月30日までに」
◎23・10・27 被告有田「早期結審を求める意見」書を提出
        さらなる主張はない。次回で結審を。
◆23・10・30 原告準備書面(6)提出 内容は横田陳述書(甲30)を援用するもの
   証拠申出・証人横田一芳(国際勝共連合) 甲30・横田陳述書提出
◎23・10・31 被告有田、証人(横田)申請を却下し重ねて次回結審を求める意見。
※23・11・07 On-line 進行協議 原告の証人申請却下
        次回結審とし、法廷では15分の被告有田側の意見陳述を認める。
※23・11・28 第3回口頭弁論期日(103号法廷) 結審  閉廷後報告集会 
※判決期日 未定(28日に期日指定あるはず)

                    

《有田さんのメッセージ》

▼教団が韓国で生まれて68年目。統一教会=家庭連合は組織内外に多くの被害者を生んできました。まさに反社会的集団です。私は元信者はもちろん現役信者とも交流してきて思ったものです。日本史に埋め込まれた朝鮮半島への贖罪意識を巧みに利用して真面目な信者を違法行為に駆り立ててきた統一教会の犯罪的行為の数々は絶対に許すわけにはいきません。
▼安倍晋三元総理銃撃事件をきっかけに、自民党との癒着など「戦後史の闇」の蓋が開きはじめました。私は信頼する弁護団と、社会課題についてはたとえ立場が異なれども教団に立ち向かう一点で集ってくれた「有田さんと闘う会」の高い志を抱きしめて、みなさんとともに、統一教会と徹底的に本気で闘っていきます。

                      

《何が争われているか》

?本訴訟の主要なテーマは、「統一教会の反社会的集団としての性格」をめぐる攻防です。「統一教会を、反社会的集団と言ってはならない」というのが原告(統一教会)の主張。「統一教会が霊感商法や高額献金勧誘をしてきた反社会的集団であることは厳然たる事実。これを指摘できないようでは、言論の自由の保障が泣く」というのが有田側の反論。
?「霊感商法をやってきた反社会的集団だって言うのは、警察庁ももう認めているわけですから」というのが、番組の中での有田さんの発言。その「霊感商法をやってきた」「反社会的集団である」「警察庁も認めている」のすべてが真実ではない、と原告は主張。被告有田は、これに全面的に反論し、証拠を積み上げています。
?有田さんの発言を、原告は自分の「名誉」を侵害した違法行為とし、被告は「表現の自由」の保障を享受すべき適法かつ有用な言論とする立場です。《人を批判する表現の自由》と、《批判される人の名誉権》との衝突を、どのように調整するかの問題ですが、訴訟実務の枠組みは概ね次のとおりです。
?言論全般を、《事実の摘示》と《意見ないし論評》との2種の構成部分からなるものと考えます。このうち、《事実の摘示》部分に、(人の社会的評価を低下させる)名誉毀損表現があれば原則違法とされ、発言者は、自分の事実摘示の言論が、公共の利害にかかり、もっぱら公益目的によるもので、しかも真実であることを立証すれば、損害賠償の責めを免れることになるという構造です。実務では「公共性」「公益性」のハードルは低く、重要なのは『真実性』です。
?《意見ないし論評》によっても名誉毀損が成立しうるというのが判例の立場です。しかし、通例、公共性・公益性ある限り、《意見ないし論評》こそは、最大限に表現の自由が保障されなければならない場面として、人格的攻撃などの逸脱ない限り、原則違法性はないものとされます。
 もっとも、《意見ないし論評》は、何らかの《事実の指摘》を前提とすることが多く、その意見・論評の根拠とされた前提事実については、やはり真実性が要求されることになります。

          

《当事者の主張と立証活動は》

?原告・統一教会の主張の骨格と立証
 有田発言の名誉毀損文言を、「(原告が)霊感商法をやってきた反社会的集団だっていうのは警察庁ももう認めているわけですから」と特定して、これは事実摘示である。少なくも、「警察庁ももう認めている」という表現部分は、事実摘示による名誉毀損文言であると主張。
 そのうえで、「原告は組織として霊感商法をしたことがない」「原告自身が反社会的行為をしたと認定された判決はない」「警察庁が原告を反社会的集団と認定した事実はない」から、有田発言の事実摘示は真実性を欠くと言います。
?被告有田の主張の骨格と立証
 テレビ放映におけるある発言が名誉毀損となりうるか否かは、《一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方を基準》として判断するというのが、判例の立場。ビデオを再現して視聴してみると、この番組は萩生田光一批判をテーマにするもので、有田発言も萩生田批判の発言のごく一部。一般視聴者にとって統一教会批判の文言として印象に残るものではなく、そもそも名誉毀損にあたらない。仮に、有田発言が統一教会の社会的評価を低下させるものであったとしても、発言の全てが意見ないし論評である。また、その前提とする事実は公知の事実である。「反社会性」というキーワードを支える判例は、これまで数多く言い渡され、確定している。「警察庁も認めている」も国会答弁などから真実である。被告有田の提出した書証の多くは、統一教会の霊感商法や高額献金勧誘を違法としたこれまでの判決例です。

              

《本件は統一教会によるスラップである》

?統一教会は、自身への批判の言論を嫌って、名誉毀損訴訟を濫発しています。
下記のすべてが、統一教会批判言論の萎縮を狙ったスラップ訴訟です。
  被告 紀藤正樹・讀賣テレビ (請求額2200万円)9月29日提訴
  被告 本村健太郎・讀賣テレビ(請求額2200万円)9月29日提訴
  被告 八代英輝・TBSテレビ(請求額2200万円)9月29日提訴
  被告 紀藤正樹・TBSラジオ(請求額1100万円)10月27日提訴
  被告 有田芳生・日本テレビ (請求額2200万円)10月27日提訴
 統一教会スラップ5事件のトップを切って、八代英輝事件での東京地裁判決がありました。当然のことながら統一教会の敗訴、請求棄却判決でした。有田事件も、これに続きたいと思います。

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