澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

これで共謀罪が成立することになるのかー学習会寸劇

本日は、我が澤藤法律事務所の澤藤大河弁護士が、埼玉県川口市で「共謀罪」学習会の講師を務めた。パワポを駆使した学習会だったようだが、好評だったのは、冒頭披露した寸劇だったとのこと。

主催者側の総選挙埼玉県2区の候補者が法務委員会の質問者役を、大河が法務大臣役を演じて議論が白熱したという。以下に、その台本を掲載しておく。

犯罪が成立するためには、構成要件に該当する実行行為がなければならない。「人を殺す」「火を放つ」「人の身体を傷害する」「他人の財物を窃取する」などが実行行為である。その着手がなければ未遂罪も成立しない。ところが、例外的にもせよ予備や準備や共謀を処罰するとなると、構成要件的行為としての定型性を持たない日常行為が処罰の対象となってしまう。寸劇は、そのあたりの問題点を描いている。  **************************************************************************

ある日の法務委員会審議にて(架空の質疑)

Q 大臣、なぜ,今,共謀罪を新設するのですか。共謀罪は、犯罪の実行行為がなくとも刑罰を科する、極めて広汎な処罰範囲を持つことになります。過去にも多くの懸念があり、国民の強い反対で廃案に持ち込まれてきたではありませんか。
A 今、委員のご質問でございますが、共謀罪ではなく、「テロ等準備罪」でございます。国際組織犯罪防止条約の批准のために必要な法案であると考えております。
国際組織犯罪防止条約、一層効果的に国際的な組織犯罪を防止し,これと戦うための協力を促進することを目的とする国連条約です。
平成15年9月に発効しています。この条約については,同年5月にその締結について国会の承認を得ており,我が国としても,早期に締結することが重要です。
そこで,我が国も,国際社会の一員として,この条約を早期に締結し,国際社会と協力して,一層効果的に国際的な組織犯罪を防止するため,この条約が義務付けるところに従い,「テロ等準備罪」を新設する必要があります。

Q パレルモ条約は、テロ関係ないでしょう。大体何年に締結されたんですか。
A 平成12年です。

Q それじゃ、2000年じゃないですか。2001年の9・11の前じゃないですか。テロが国際的な関心事になる前の条約ですよ。だいたい、パレルモという都市で締結されて、パレルモ条約とも呼ばれるわけですが、パレルモとは、イタリア、シチリア島の都市です。つまり、マフィア、ヤクザ、そういう組織犯罪を対象にした条約じゃないですか。テロを対象にした条約ではなくて、経済的なマネーロンダリングを主たる対象にした条約じゃないですか。
A 委員は、よく勉強なさっているようですが、組織的な犯罪に対する対応は、テロでもテロ以外でも待ったなしなのであります。

Q 新たな刑罰法規を作ろうというのだから、やはり差し迫った必要性がなくてはならないわけです。では、どうして、テロが差し迫っているというのですか。日本がテロの脅威にさらされているという事ですか?
A 世界中で、不安定な地域がたくさんあります。これだけ安全保障体制が揺らいでおるわけでありまして、先進諸国、たとえばアメリカでの9・11事件、イギリス・ロンドンでの連続爆破テロ、フランス・パリでの出版社襲撃事件などが起こっているわけです。
日本だけが、これらの事件に目を背けていていいのでしょうか。自由と民主主義・人権という共通の価値を守るために、憎むべきテロリストとの戦いに、日本だけが安穏としていることはできないのです。

Q 立法事実として、日本でのテロの危険があるかとお聞きしている。
A それはいろいろな評価がありうる。日本人が、イラクやシリアで誘拐され、殺害される事件も起こっている。

Q 日本でのテロが差し迫っている状況にあるのかと聞いている。
A 我々は、テロの脅威から、国民を守るべき責務を負っております。常に備えなければならないのです。オリンピックも迫っております。安全なオリンピックを開催するためにも、どうしてもテロ等準備罪は必要なのです。

Q 具体的に、日本にテロが迫っていると、あなたですら断言できないようでは、どうして、テロ対策が必要なんですか。では、そのような共謀罪、もし成立してしまったら、犯罪を実行することを話し合っただけで処罰されてしまうのではないか。
A そんなことは、絶対にないのであります。準備行為がなければ、処罰されることはありません。
共謀が成立しただけ、つまり計画しただけでは、犯罪が成立しないことは、法文上明らかであります。一般の方が話しているだけで犯罪者になるなど、絶対にあり得ません。

Q 労働組合や、市民団体が犯罪集団に当たることはないのですか。
A 組織的犯罪集団だけしか、対象とならないことは、明文で規定しております。
適法な活動をしている労働組合や、その他の団体は、その目的が犯罪はないのですから、当然対象とはなりません。

Q そんなことを言っているが、では、更にお尋ねします。既に存在する適法な団体の目的が、ある時点から犯罪目的に変化したと認定することはあり得ないのか。
A 一般論としてお答えすると、一般人が対象となることはないのです。組織的犯罪集団だけしか、対象とならないことは、明文で規定しております。
もし、犯罪を企む集団であるのなら、すでにその集団の構成員は一般人ではないのです。

Q 今、大変な答弁が出た。つまり、「この法律が罰するのは、一般国民ではない」という意味は、「この法律が罰するときには、既に一般人ではないからだ」と、こういうことではないか。論理が逆転している。
A 委員の解釈は、あまりに一方的で偏っているのではないでしょうか。重大犯罪を目的とする団体に、それと知って属しているということは、一般国民の目から見て、一般人とは呼べないことは通常の感覚ではないですか。

Q そんなことはない。企業でも、市民団体・労働組合、サークルでも、適法な通常の団体が、ある時点から犯罪目的だと認定されることはありうるのだから、国民誰でも、共謀罪の犯罪者になり得るじゃないですか。
A 重大な犯罪を計画している団体に属して、具体的な重大犯罪を計画していたら、罰せられるべきは当然ではありませんか。

Q ついに、誰もが対象になりうることが分かりました。しかも、犯罪目的があるかどうか、計画があるかどうか、捜査段階では、判断するのは、裁判所ではなく、捜査機関、大体は警察になるわけです。
その結果、警察が、国民生活に監視の目を光らせ、あらゆる団体が犯罪目的をもっていないかを調べる。これは、まさに現在の治安維持法ではないか。
A 全くそうではございません。
治安維持法は、私有財産制を否定し、国体を変革しようとするという、思想そのもの、つまり、犯罪とは切り離して、特定思想を有する団体を結成すること、加入することを処罰する法律でございます。
今回の、テロ等準備罪は、思想のみを処罰するのものではありません。準備行為という行為を要求しています。
また、団体も重大犯罪を目的とするという、犯罪集団に限って対象とするものですから、ご指摘はあたりません。
捜査についても、捜査機関は、刑事訴訟法、その他関連法令を遵守し、裁判所の令状審査を経て、適法な捜査を行うことになりますので、委員のご指摘はあたらないものと思います。

Q 結局は捜査機関が、最初の判断をする。しかも、政府に批判的な活動をしていると、犯罪を行っているとして、捜査の対象とされかねない。しかも、計画と準備で犯罪が成立するのだから、団体監視を常に行うことが主たる捜査方法になることは明白ではないか。団体に対する警察の監視、団体内部でも密告を恐れて活動が萎縮する。これこそ治安維持法そのものではないですか。
A 委員は、少し感情的になっておられる。お答えしたとおり、一般人が処罰されることはないのです。まあ、治安維持法も一般人は処罰されることはなかったわけですが。

Q 処罰範囲が拡大しすぎる危険がある。
以下の具体例でお聞きします。共謀罪は成立するのか。
米軍基地の建設に反対している市民団体。ついに本格的工事着手が3日後に迫ってきた。メンバーのXYは、今度は工事現場のゲートに座り込んででも、美しい自然を守ろうと話し合った。
翌日、Yはゴザを購入した。
2日後、台風のせいで、海が荒れ、とりあえず工事は延期になった。
どうですか。
A 細かい点がわからないため、お答えしかねる。

Q どこがわからないのか。
A 共謀が成立したといえるのか、議論の様子や、ゴザの購入目的なども検討しなくては、犯罪成否は軽々に答えられない。

Q つまり、犯罪が成立しうるから検討が必要だということですか。
A 犯罪が成立するか否かは、常に微妙な事実の問題を含んでいるのであります。
最終的には裁判官が判断するわけでありまして、今、この事例についてどうかということは、大変難しく、私の頭脳ではお答えしかねる。

Q 結局、どちらの事案も共謀罪が成立しうること、少なくとも、絶対に共謀罪が成立しないわけではないという答弁だった。
共謀罪は、国民の自由な団体活動のみならず、表現の大幅な萎縮を生み出し、思想・信条の自由を侵害する、違憲なものであることが明白になりました。絶対に成立させるわけにはいきません。

(2017年2月16日)

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