澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

「李下に冠を正してしまった」政治家の責任のとりかた

昨日(7月24日)、閉会中審査の衆院予算委員会において、安倍晋三はこう述べたという。
「『李下に冠を正さず』という言葉がある。私の友人が関わることで、国民から疑念の目が向けられることはもっともなことだ。私の今までの答弁ではその観点が欠けており、足らざる点があったことは率直に認めなければならない。常に国民目線に立ち、丁寧なうえにも丁寧に説明を重ねる努力を続けていきたい」

殊勝な言葉のつもりなのかも知れないが、なんとも軽く歯が浮く。責任の重さの観点が決定的に欠けている。

「李下に冠を正さず」の成語の出典は、『古楽府』の「君子行」だという。デンデン総理が、「ボクだってこれくらいのことは知っている」とひけらかして見せたわけだ。

出典の原文は、以下の短い文章。
「君子防未然、不處嫌疑間。瓜田不納履、李下不正冠。」
《君子は未然に防ぎ、嫌疑の間に處(お)らず。瓜田に履を納れず、李下に冠を正さず》と読み下すようだ。君子たる者、嫌疑をかけられちゃおしまいよ、ということ。

また、調べて見ると、前漢の「列女伝」に、「経瓜田不納履、過李園不整冠」という成句があるという。
《瓜田を経るも履を納れず、李園をよぎるも冠を整さず》と読むのだろうか。これも同じ意味。

李園に実がたわわに成るころ、なにゆえ、その実の下において冠を正してはならないのか。答は自ずと明らかである。そんなことをする輩は、十中八九は李泥棒だからである。もう少し正確に言えば、「李下に冠を正す」行為は、李泥棒が嫌疑をごまかすための所作と相場が決まっているからである。収穫期の瓜田に入り込めばウリ泥棒。もっとも、必ずそうだと決めつけることは危険で例外の存在を否定できない。しかし、「李下に冠を正す」行為あれば明らかに嫌疑濃厚なのだ。

だから、原典も《君子は未然に防ぎ、嫌疑の間に處らず》と言って、「李下に冠を正す」行為を厳にいましめ、嫌疑の間に陥った場合には言及していない。瓜田でも李園でも、嫌疑をかけられた君子たる身には、みっともない言い訳はそれ自体見苦しい。「いったん疑われたらアウト」ということなのだ。

安倍晋三の言葉は軽すぎる。まだ、自分が国民からアウトの宣告を受けていることに気付いていないようなのだ。彼は、自分に「李下に冠」の行為があったから反省するという。しかし、「李下に冠」の行為を見咎められることは、窃盗の嫌疑をかけられること。そのような恥辱は君子には耐えがたいことのだ。ましてや一国の総理。「李下に冠」の疑惑を自覚すれば、潔く身を引く以外にはない。

安倍晋三は言う。「私の友人が関わることで、国民から疑念の目が向けられることはもっともなことだ」と。しかし、これではごまかしの域を出ない。国民目線に立つというのなら、もっと率直に誠実にこう言うべきなのだ。

「私・安倍晋三は、腹心の友のために、友が経営する学校法人の獣医学部新設の認可に関し、国家戦略特区諮問会議委員長の任にあることを奇貨として、公正であるべき行政をゆがめ、本来認可すべきではない特区認定をしたのではないかと、国民の皆様から重大な疑惑を招きました。

この「えこひいき疑惑」「政治の私物化疑惑」は、信なくば立たない政治の信頼に癒すべくもない深刻な損傷をもたらしたもので、民主主義社会における政治家として万死に値する深い罪を自覚し、自ら相応の責任を取らねばならないと覚悟を固めました。

私は、この責任を取って国会議員としての職を辞すことにいたします。当然に内閣総理大臣としての欠格事由にあたりますので、内閣は総辞職をし、総選挙をしなければなりません。国民の皆様には、再び政治の私物化などという疑惑を招く国会議員や内閣が誕生することのないよう投票にはくれぐれもご注意いただきたく、ふつつかながらせめてもの希望を申しあげます。

また、加計孝太郎さんには、私の不徳によってご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申しあげ、新学部設立は諦めていただくようお願いいたします。そして、今後は慎重に友を選ばれるよう、《己に如かざる者を友とするなかれ》という論語の一節を贈らせていただきます。

以上のとおり、『李下に冠を正してしまった』政治家としての責任をとることを表明する次第です。」
(2017年7月25日)

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Published in 火曜日, 7月 25th, 2017, at 19:25, and filed under 安倍政権, 戦後民主主義.

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