澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

「NHK受信料凍結」運動に刑事事件はあり得ない

本日の朝日の報道によれば、市民団体「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」が、「受信料支払いを半年間凍結するよう視聴者に呼びかける運動」を始めるとのこと。その運動方針に全面的に賛意を表明し支持を惜しまない。

報道内容は以下のとおり。
「就任会見での政治的中立性を疑われる発言などが問題になっているNHKの籾井勝人会長について、市民団体『NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ』は17日、籾井氏が4月中に自ら辞任しない場合、受信料を今後半年間支払わないよう視聴者に呼びかける運動を始める、と発表した。
醍醐聰共同代表によれば、同団体は21日にNHKの担当者と面会する予定。籾井氏に4月中の辞任を求めるとともに、籾井氏と全理事、経営委員会に対し、運動を起こすことを通知する。受信料の不払いではなく、あくまで『支払いの凍結』とし、籾井氏が辞任した場合は支払いを再開するとともに、滞納分も支払うよう呼びかける。」

運動には、なによりも道理が必要だ。多くの人の共感を得るための道理。それなくしては運動として成立する余地がない。運動の目標を達成することもおぼつかない。しかし、運動とは闘いでもある。道理だけでは必ずしも十分ではない。目標達成のための武器が必要だ。人を殺傷する本物の武器は逆効果、要求獲得のための手段・力が必要なのだ。まずは多くの人に問題を正確に知ってもらうこと。そして、運動への共鳴の声をあげてもらうこと。それが力となる。それだけではなく、社会的に許容された範囲での実力行使の武器が欲しい。

労働者は、労働条件改善の要求実現手段として、労働組合を結成して、団体交渉をするだけではない。実力を行使することによって目標を達成する。交渉力は、実力行使を背景とすることを源泉とする。要求は、口達者が交渉で勝ち取るものではない。とどのつまりは、どれだけの争議ができるかが交渉による妥結の水準を決める。団結権・団体交渉権だけではなく争議権を含む労働三権が、労働者自身による労働条件改善のためのワンセットの闘いの武器として憲法28条によって保障されている。

消費者運動では問題企業を糾弾するために、不買運動が呼び掛けられる。企業と闘う強力な武器として、不買運動は有効な実力行使手段である。

NHKの会長や経営委員辞任要求には十分な道理がある。道理だけはなく、受信料支払い凍結という要求獲得手段は、極めて大きなインパクトを持ちうる。受信料支払い凍結は、籾井会長辞任要求の手段としてだけに限定される模様だが、5月以降の半年間にどれだけの視聴者が参加するかが、闘いの成果の分かれ目となる。

この運動の特徴は、「受信料不払い」ではなく「半年間の支払い凍結」としている点にある。籾井会長が辞任すれば、その時点で遡って支払いを回復するとしているわけだ。凍結期間の半年を経過して、籾井会長がまだ居座っている場合にどうするか。報道では、会の方針は明確にされていないが、半年と期間を限定しているのは、運動としてはそれ以上の支払留保の継続を呼び掛けない意向だと忖度される。おそらくは、そこで凍結継続の是非は各人の意思に任される。事実上多くの人が継続することになるだろう。

しかし、運動としては、取りあえず半年の期間だけの受信料の凍結、すなわち支払いの留保の呼びかけなのだ。不払いよりもずっと参加のハードルが低い。「会長辞任までは無期限で凍結継続」と悲壮な覚悟を決めなくても、多くの人の参加を期待しうる。安倍政権による籾井会長人事への不快感や、NHKの公共放送としての在り方に疑念をもつ人は多い。このよう人に、格好の意思表明手段ではないか。なによりも、NHKにダメージを与えることが運動の主目的ではないことが明白とされている。現場スタッフの良心を大切にし、これを励まし、連携した運動を志す運動であることに意味が大きい。

訪問集金の視聴者は、今後半年の訪問による受信料集金への支払いを凍結する。口座引き落としであれば当面半年間の引き落としを止めることになる。その半年の間に、籾井会長辞任となれば、直ちに支払い凍結を解除し未払い分も支払うことにするということになるだろう。運動提起者の認識は、短期決戦ということと推察される。

ところで、「視聴者コミュニティ」のホームページのトラックバックに、次の記事を見つけた。

「今回の騒動で、個人的に不払いという形で抗議の意思を明らかにしてます。しかし、受信料不払い・支払い延期運動を団体が起こした場合、威力業務妨害罪に問われやすいよね。あの馬鹿な長谷川だって2ヶ月後には払ってる訳だし・・。この運動に賛同したいんだけど威力業務妨害罪は刑事事件にあたるから友人知人を誘いづらい。出来れば、法的に一切問題がないとの当局なり弁護士団体なりの御墨付きが欲しいと思います。」

これには、少し驚いた。どこかで、悪質な宣伝活動が行われているのかも知れない。籾井会長の「政府が右といえば左とは言えない」「従軍慰安婦はどこの国にもあったこと」発言を支持する勢力はあるのだから。会長辞任要求などはとんでもない、ましてや不払いの呼びかけなど、という動きがあってもおかしくはない。

当局からの「御墨付き」を得ることは無理である。弁護士団体の御墨付きは、間に合わない。私の言では「御墨付き」にはならないが、法律家の常識を以下のとおり述べておきたい。

NHK受信料の支払い義務は、NHKと視聴者個人との各受信契約締結の効果として生じている。支払い凍結は、受信契約を締結した視聴者についてのものであるから、民事上の債務不履行という状態にはなりうる。本件の場合金額は小さいものの、借金の返済が遅滞している、家賃の支払いが滞っている、キャッシングの決済が未了となっている、などと同じ事態。だから、NHKから民事的な催告があることは予想される。

催告を拒否しても、民事訴訟の判決がない限り強制執行はできない。では、民事訴訟はあり得るか。その可能性はないとは言えない。とはいうものの、訴訟コストを考えれば、半年の期間の支払い凍結に対する提訴は現実的には合理性を欠き可能性は低い。おそらくはあり得ないと考えるのが常識的だろう。

仮に、NHKからの提訴があった場合には、多くの視聴者が共同して応訴することになるだろう。その場合には、視聴者側の言い分を堂々と述べることになる。受信契約は双務契約であるから、NHK側が自分の債務を履行していることが大前提でなくてはならない。放送法に定められた公共放送としての責務をきちんと果たしているかを問題としなければならない。籾井会長や、百田・長谷川などの経営委員の、人選や言動、あるいはその放送内容への影響などが裁判の焦点となるものと考えられる。安倍晋三の女性国際戦犯法廷取材番組への介入の事実も再度問題となろう。大裁判といってよい。到底半年で決着がつくはずもない。凍結期間半年が経過すれば、裁判も終了する。以上が民事の問題。警察や検察が介入する問題ではない。

では、刑事的に問題となりうるか。絶対になり得ないと言ってよい。仮にこの受信料支払い凍結運動で、いささかなりとも警察が動くようなことがあれば、それこそ日本は警察国家と言わねばならない。世も末の全体主義、安倍政権の恐怖政治というほかはない。

おそらく、悪質な税金の不払いが犯罪となりうるという類推から、NHK受信料の滞納も刑事事件となりうるのではと心配の向きがあるのではないか。NHK受信料の不払いは、あくまで民事的な問題で、刑事上の制裁とは一切無縁である。

放送法に、「受信料不払いの罪」があるわけではない。その他NHKの受信料収入を刑事制裁をもって確保する特別の法律はない。受信契約なしでは受信料の請求すらできないのだから、税金の取り立てとはまったく異なるのだ。

では、刑法上の業務妨害となるか。刑法の規定は、以下のとおりである。
第233条: 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
第234条 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

「偽計を用い」た場合が偽計業務妨害、「威力を用い」た場合が威力業務妨害罪となる。偽計とは、「人を欺き(欺罔し)、あるいは人の錯誤・不知を利用したり、人を誘惑するほか、計略や策略を講じるなど、威力以外の不正な手段を用いることをいう」。威力とは、「人の意思を制圧するような勢力をいい、暴行・脅迫はもちろん、それまでに至らないものであっても、社会的、経済的地位・権勢を利用した威迫、多衆・団体の力の誇示、騒音喧噪、物の損壊等およそ人の意思を制圧するに足りる勢力一切を含む」(前田雅英編「条解刑法」)とされている。

本件の受信料凍結運動に、「偽計」の要素がないことは一見明白である。また、上記に明らかなように「威力」とは人の意思の制圧であって、受信料の支払いを留保することがNHKの職員の意思を制圧して放送業務を妨害することにはならない。集団での抗議行動が喧噪状態と捉えられるような場合には、威力業務妨害罪が弾圧法規として働く余地あることを警戒しなけれはならないが、単なる料金不払いが人の意思を制圧する行為にはあたらない。

威力業務妨害罪は粗暴犯的色彩の強いものとされており、判例上の具体例としては、暴行・脅迫、物の損壊・隠匿、多衆・団体の力の誇示(労働争議に関わるもの)、騒音・喧噪によるもの、その他(デパートの食堂に蛇20匹を撒き散らした。猫の死骸を事務机の引出に入れた。国税調査官の車の前に座り込んだ…)などからイメージの把握が可能である。また、その保護法益は、業務の平穏円滑な遂行と理解されており、不払い自体が放送業務の遂行を妨害するものではなく、この点からも犯罪は成立し得ない。

「半年間受信料凍結」運動への参加が刑事事件となることはあり得ない。その点は安心して、籾井NHK会長辞任要求の運動にご参加されたい。

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     カレル・チャペックさん、無い物ねだりはおやめなさい
カレル・チャペックは「園芸家12カ月」で無い物ねだりをしている。
「園芸家は文明によってつくり出された人種であって、自然淘汰の結果ではない。園芸家が、もし自然から進化したとしたら、外観がちがっていたはずだ。第一、しゃがまないですむように、カブトムシのような脚をしていただろう。そして、翅をもっていただろう。そうすれば、見た目もきれいだし、花壇の上を飛ぶことができたからだ。人間の脚などというものは、置き場がないときはどんなに邪魔っけなものか、しゃがまなければならないときには、どんなに不必要に長いものか、また、寄せ植えのしてあるサルヴィアや、アキレシアのシュートをふまずにまたいで、花壇のむこう側にとどかせたいときには、どんなに腹が立つほど短いものか、経験の無いものには想像もできない。・・ところが、園芸家のからだもほかの人間と同じように不完全に作られているので、できるだけの芸当をやる以外に方法がない。ロシアの踊り子のように片脚をあげて、爪さきでバランスをとって宙に浮かんだり、両脚を4メートルも開いて、チョウチョか鶺鴒のように軽く地面の上を歩いたり、1平方インチの場所に全身の重みをかけ、傾斜する物体のあらゆる法則を無視して平衡をたもちながら、あらゆるものを避けて、あらゆるところへ手をとどかせる」

全く同感だ。身体を動かすたびに、やっと出てきたばかりのチゴユリの芽を踏んづけたり、モミジの大切な枝をボキリと折ったりするので、舌打ちをしながら、悔し涙を流しながらそう思う。伸縮自在の腕と指がほしい。園芸家でなくとも、座ったまま電気のスイッチをきったり、開けたままのドアを閉めたりできたら、誰だってうれしいだろう。欲を言えば、物を運ぶとき何回も行ったり来たりしなくてすむように、腕が何本もあったらいい。ワープロ打ちながら、コーヒーを飲みながら、痒いところをかくこともできる。しかし、風呂に入ったときはそんな長い腕を何本も洗うのは大変だ。何本も手があったら、爪を切るのも一仕事だ。そう考えると、腕も指も少ない方がいいかもしれない。欲張りの心は揺れ動く。目は後ろにもあったらいい。でも後ろに眼鏡をかけるのは難しそうだ。コンタクトを入れるのはもつと大変だ。脚だって4本あれば、疲れたときには別の足で歩ける。食いしん坊は口が二つあったらと思うかもしれない。嘘つき政治家は滑らかな舌がもう一枚欲しいだろう。

と、人の欲望は限りを知らない。ところが現実は、年をとるとともに、今もっている能力でさえ日ごとに失われていく。目は遠くも近くも見えなくなる。色もぼんやりしているようだ。耳も低音が聞こえないらしい。少し歩けば、脚だけでなく全身疲れる。すぐにものにつまづく。平衡感覚も悪くなってきたようだ。ただ立っていてさえ、地震がきたのかとまわりを見回したりする。決定的なのは、記憶力の減退だ。アレ、コレ、アノ、ソノで会話しようとする。そんな自分に腹が立つ。新しいことは覚えられない。古いことは思い出せない。そうであるなら、増えた腕や脚の使い方はとうてい覚えられない。古い腕や脚にこんがらがって、イライラするばかりだろう。目が見えなくなったって、記憶のなかのものの方が美しいこともある。耳が聞こえなくたって、どうせたいしたことを言ってるわけじゃない。無い物ねだりはやめておいたほうがいいのかもしれない。
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NHK籾井会長、百田・長谷川両経営委員の辞任・罷免を求める署名運動へのご協力のお願い。

下記URLからどうぞ
http://kgcomshky.cocolog-nifty.com/blog/2014/02/post-3030-1.html
http://chn.ge/1eySG24
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    NHKに対する「安倍首相お友だち人事」への抗議を
☆抗議先は以下のとおり
 ※郵便の場合
  〒150-8001(住所記入不要)NHK放送センター ハートプラザ行
 ※電話の場合 0570?066?066(NHKふれあいセンター)
 ※ファクスの場合 03?5453?4000
 ※メールの場合 下記URLに送信書式のフォーマット
    http://www.nhk.or.jp/css/goiken/mail.html
☆抗議内容の大綱は
  *籾井勝人会長は即刻辞任せよ。
  *経営委員会は、籾井勝人会長を罷免せよ。
  *百田尚樹・長谷川三千子両経営委員は即時辞任せよ。
  *経営委員会は、百田尚樹・長谷川三千子両経営委員に辞任勧告せよ。
以上よろしくお願いします。
(2014年4月18日)

NHK会長と百田・長谷川の両経営委員罷免要求の署名運動にご協力を

NHK経営委員会の定例会合は月2回開催される。3月11日(火)には、通算第1209回の定例会が開催され、経営委員12名のうち病気欠席の百田尚樹委員を除く11名が出席した。この席において、出席者全員の総意として籾井勝人会長の姿勢に関する異例の申し合わせが行われた。

議事録は本日(3月14日)現在未公開。ホームページに掲載されている「経営委員会後の委員長記者ブリーフィング発言要旨」によれば、その内容の主要部分は以下のとおりである。

「本日、経営委員会の委員のみにより、現在のNHKをとりまく状況の確認と今後のあり方等について、意見交換を行った。その結果として、出席した経営委員全員で、以下の申し合わせに合意した。
 籾井会長に対して、経営委員長から二度にわたり注意を行わざるを得なかったことについては、誠に遺憾である。
 経営委員会は、一刻も早い事態の収拾に向けて、自らの責任を自覚した上で、真摯な議論に基づく自律的な運営を引き続き行い、監視、監督機能を十分に果たしていく。」

ホームページでの浜田健一郎委員長自身の記者に対する解説は以下のとおり。
「第1段落は、これまで会長の発言に対する注意は経営委員長として私から行ってきたが、今回は経営委員会の総意としてあらためて確認したという意味である。
 第2段落は、我々経営委員会も、自らの責任を自覚して、執行の監視、監督機能を果たしていくという意思の表明である。」

経営委員会は会長任免の権限をもつ。その権限の適切な行使は責務でもある。この上なく危なっかしい会長に対する厳正な監視・監督を行うことを委員会の総意として確認したということなのだ。

もっとも、この申し合わせは、会長への罷免権を行使せず、籾井体制を存続することの確認でもある。それでよいのか。

籾井会長は、就任記者会見で、「従軍慰安婦は戦争地域にはどこにでもあった」、国際放送について「政府が右ということを左とは言えない」、特定秘密保護法は「とりあえず受けて様子をみるしかない」などと発言して、およそ憲法感覚欠如の醜態をさらした人物である。放送法の精神については無知。権力から独立した公共放送の在り方を理解しているとも到底考えがたい。「政権寄りの姿勢」という評価は甘きに過ぎる。安倍晋三の分身であり、時の政権への忠誠を誓った傀儡というべきであろう。罷免さるべきが当然で、罷免の権限は経営委員会にある。

その経営委員12名のうち既に5名が安倍晋三の「お友だち人事」である。そのうちの2人、百田尚樹と長谷川三千子の両委員はその不適格性が目に余る。本来、経営委員は「公共の福祉に関し公正な判断をすることができる者」から選ぶものとされている。この両名が経営委員失格であることは明らかで、会長とともに罷免に値する。

内閣総理大臣がNHK経営委員を任免し、経営委員会が会長を任免する。大筋の構造はそうなっている。放送法はNHKの経営を行政の監督下におきつつも、時の政権が直接に会長の任免を行うことによる放送への過剰な介入を防御しているのだ。司法の独立や、教育の行政からの独立と似た構造をもって、NHK人事の独立も配慮されている。

そのような放送法の構造に沿った形で、罷免要求を掲げているのが、視聴者・市民7団体が共同して行っている署名運動である。籾井会長と、経営委員の百田尚樹・長谷川三千子両名の罷免を求めるものだが、会長と経営委員とで罷免要求の要請先が異なる。

まず、「放送法の規定に従い、両氏(百田・長谷川の経営委員)を罷免するよう、総理大臣に強く要求します。」と、首相に対して、両経営委員を罷免するよう求めている。経営委員の罷免に関する放送法の規定の関連規定は以下のとおりで、内閣総理大臣に罷免の権限がある。

「第36条1項 内閣総理大臣は、委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認めるとき、又は委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認めるときは、両議院の同意を得て、これを罷免することができる。この場合において、各議院は、その院の定めるところにより、当該委員に弁明の機会を与えなければならない。」

百田・長谷川の両委員に、「職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行がある」と認めるに十分ではないか。放送法の理念に悖る非行を放置していてはならない。権限不行使の不適切が明白で甚だしければ、違法にもなる。首相は、両委員を罷免しなければならない。

一方、会長の罷免権は、経営委員会にあって首相にはない。根拠規定は、以下のとおり。
「第55条1項 経営委員会は、会長、監査委員若しくは会計監査人が職務の執行の任に堪えないと認めるとき、又は会長、監査委員若しくは会計監査人に職務上の義務違反その他会長、監査委員若しくは会計監査人たるに適しない非行があると認めるときは、これを罷免することができる。」

今回まさしく、「会長が職務の執行の任に堪えない」「会長に職務上の義務違反その他会長たるに適しない非行がある」と認められる事態である。経営委員会は適切に罷免の権限を行使しなければならない。だから、署名文の文言は、「NHK経営委員会に、籾井会長を放送法第55条に従って罷免するよう強く求めます。」となっている。

国民の籾井会長批判の声は高い。報道によれば、「NHKの籾井勝人会長は13日の衆院総務委員会に出席し、会長就任の1月25日から今月12日までの間に、籾井氏に関連した視聴者からの意見や問い合わせが約3万1900件寄せられ、このうち苦情などの批判的意見が約2万600件に上ったことを明らかにした。肯定的意見は5900件だった」(時事)という。批判的意見の中には、相当数の受信料支払い留保の通告もあるという。

署名運動は、2月28日に始まり、「署名は、ネットを含めて5日時点で6000筆を超え、急速に広がっています」(3月10日赤旗)。第1次集計分が10日に経営委員会に届けられている。

「籾井氏に関連した視聴者からの意見や問い合わせが約3万1900件」に比較すれば、まだまだ署名の筆数が少ない。制度の理念を維持するためには、なによりも国民の声、視聴者の声をNHKや政権に直接届けることが肝要である。

署名運動は3月23日で区切りを付ける予定だという。それまでに大きな筆数としたい。まずは、下記のアドレスをクリックして、電子署名をお願いしたい。そして、このアドレスの拡散にご協力いただきたい。メディアの民主主義を擁護するために。危険な安倍政権を掣肘するために。
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NHK籾井会長、百田・長谷川両経営委員の辞任・罷免を求める署名運動へのご協力のお願い

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    NHKに対する「安倍首相お友だち人事」への抗議を
☆抗議先は以下のとおり
 ※郵便の場合
  〒150-8001(住所記入不要)NHK放送センター ハートプラザ行
 ※電話の場合 0570?066?066(NHKふれあいセンター)
 ※ファクスの場合 03?5453?4000
 ※メールの場合 下記URLに送信書式のフォーマット
    http://www.nhk.or.jp/css/goiken/mail.html
☆抗議内容の大綱は
  *籾井勝人会長は即刻辞任せよ。
  *経営委員会は、籾井勝人会長を罷免せよ。
  *百田尚樹・長谷川三千子両経営委員は即時辞任せよ。
  *経営委員会は、百田尚樹・長谷川三千子両経営委員に辞任勧告せよ。
以上よろしくお願いします。
(2014年3月14 日)

籾井勝人NHK会長、百田尚樹・長谷川三千子両NHK経営委員の辞任・罷免を求める署名運動へのご協力のお願い

7つの市民団体の共同で籾井NHK会長と百田尚樹・長谷川三千子両経営委員の罷免、辞任を求める署名運動が始まった。3月3日現在4500筆を超えているそうだ。

用紙による署名とネット署名の両方が可能。下記のURLを参照いただきたい。
「籾井勝人NHK会長、百田尚樹、長谷川三千子両NHK経営委員の辞任・罷免を求める署名運動へのご協力のお願い」
http://kgcomshky.cocolog-nifty.com/blog/2014/02/post-3030-1.html

そこに、ダウンロードして使っていただける署名用紙とネット署名のフォーマット(下記URL)が掲載されている。
http://chn.ge/1eySG24

署名は2月28日から始まった。当初、3月15日を署名の第一次集約日として、その日までに5000筆の署名を集めることを目標に取り組んできたところ、既に本日(3月4日)20時現在で5200筆を超えたとのこと。急遽主催7団体で第一次集約日と目標数の見直しを相談しているところだという。

国民の知る権利を守るため、安倍政権の暴走を阻止するため、是非とも多くの方のご賛同をお願いいたします。

なお、署名の本文は以下のとおり。
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内閣総理大臣 安倍晋三様          
NHK経営委員会委員 各位

私たちは、籾井勝人NHK会長、百田尚樹、長谷川三千子両NHK経営委員の罷免を求めます。

 NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ
 NHK問題大阪連絡会
 NHK問題京都連絡会
 NHK問題を考える会(兵庫)
 「戦争と女性への暴力」リサーチ・アクションセンター(VAWWRAC)
 日本ジャーナリスト会議
 放送を語る会

 NHK籾井会長は、就任記者会見で、「従軍慰安婦は戦争地域にはどこにでもあった」、国際放送について「政府が右ということを左とは言えない」、特定秘密保護法は「とりあえず受けて様子をみるしかない」などと発言し、政権寄りの姿勢だとして、視聴者の厳しい批判を浴びました。
 とくに日本軍「慰安婦」に関する発言は、歴史的事実に反するばかりか、過去の戦争への反省を欠き、国際問題に発展しかねないものです。このような考えを持つ人物は、政府から自立し、不偏不党の精神を守るべき公共的な放送機関のトップにはまったくふさわしくありません。 NHK経営委員会に、籾井会長を放送法第55条に従って罷免するよう強く求めます。

 経営委員の百田尚樹氏は、先の都知事選挙で、自衛隊出身の田母神俊雄氏を応援し、田母神候補以外の候補を「人間のクズ」などと攻撃しました。長谷川三千子氏は、朝日新聞本社でピストル自殺した右翼運動家を礼賛する追悼文を書いたことが明らかになりました。暴力によって言論報道機関を威嚇した人物を褒めたたえる姿勢は異様と言わざるを得ません。
 経営委員は「公共の福祉に関し公正な判断をすることができる者」から選ぶ、とする放送法の規定からいっても、両氏が経営委員失格であることは明らかです。放送法の規定に従い、両氏を罷免するよう、総理大臣に強く要求します。

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    NHKに対する「安倍首相お友だち人事」への抗議を
☆抗議先は以下のとおり
 ※郵便の場合
  〒150-8001(住所記入不要)NHK放送センター ハートプラザ行
 ※電話の場合 0570?066?066(NHKふれあいセンター)
 ※ファクスの場合 03?5453?4000
 ※メールの場合 下記URLに送信書式のフォーマット
    http://www.nhk.or.jp/css/goiken/mail.html
☆抗議内容の大綱は
 *籾井勝人会長は即刻辞任せよ。
 *経営委員会は、籾井勝人会長を罷免せよ。
 *百田尚樹・長谷川三千子両経営委員は即時辞任せよ。
 *経営委員会は、百田尚樹・長谷川三千子両経営委員に辞任を勧告せよ。
よろしくお願いします。

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            プーチンさん ご無体はおやめなさい
太陽が出てくれば、気温は低くても身体がよく動く。老化したと思っていたけれど、この分ならもう少し大丈夫そうだとホッとする。庭のコンポストの生ゴミにシャベルで土を入れて、よくブレンドする。これを丁寧にしないと、悪臭がして、暖かくなった頃ウジがわく。寒いとスコップに触るのも嫌だと思うけれど、冬でもこの作業は欠かせない。

ついでに八百屋まで買い出しに行く。雪が降って、青物が高騰したということだが、この八百屋さんは大変な営業努力をしている。少々遠くて、荷物が重くなるけれど、あれもこれも欲しくなる。ネギは高くなっているけれど、小松菜、ハクサイ、ホウレンソウは一束100円前後。エノキ、ブナシメジのパックは80円ぐらい。モヤシは一袋28円。キャベツ、ブロッコリー、レタスは200円足らず。トマトは3個300円ぐらい。回転が速いので新鮮で、品物も良い。

店先には果物が溢れるばかりに積んである。バナナ、リンゴ、ミカン類、そしてイチゴ。イチゴは1パック300円から600円ぐらい。粒が大きいと高い。驚いたことに、白イチゴがあった。佐賀産。ほんのり赤っぽくなっていて真っ白とはいいがたい。どこかの鉄工場の脇に積もった雪に鉄サビがついたようで、とてもおいしそうには見えない。生産努力は認めるが、「雪うさぎ(佐賀産白イチゴの名前)」になりそこねた「夏毛うさぎ」のようでもある。さすが値段も遠慮してつけている。大玉5個で980円。きっとそのうち純白の「雪うさぎ」が出回るようになるだろう。紅白イチゴのめでたいパック詰めも並ぶかもしれない。

こうした穏やかでめでたい日本の春とくらべると、世界はあちこちできな臭い。新聞を読んでいると、胸が痛くなる。ウクライナをめぐって、また冷戦に逆戻りかと危ぶまれるような、不穏な空気がただよっている。プーチンの緑色の細い目が、獲物を狙う猫のようで不気味だ。ウクライナにはチェルノブイリを除いても、操業中の原発が17基も稼働している(ウィキペディアによる)。 ロシアからEUへ石油を送るパイプラインも通っている。そんな危険な場所で戦闘が起こるはずがないと思ってはいるけれど、軍事展開が早いのでハラハラする。ドイツのメルケル首相は機敏にプーチンに電話をかけている。「ハロー、プーチンおやめなさい」とお姉さんが弟に諭すように言ったのだろうか。自分が国際的に支持されているという自信とEUの盟主としての使命感による行動なのだろう。

ともかく、ここは幡随院長兵衛の出番。
「そのケンカ待った。あっしがお預かりいたしやす。まずはご無体をおやめなさい」
たった今、そのように割ってはいる「時の氏神」が必要だ。ロシアの行為が侵略の定義にあてはまることは明らかなのだから。
(2014年3月4日)

長谷川三千子NHK経営委員の「NHKが回心するまで不払ひをつづけるつもりでをります」の実践に学ぼう

本日の毎日朝刊社会面に思いもかけない記事。正確には、有益で学ぶに値する行為についての記事。長谷川三千子NHK経営委員が、かつてNHKの報道姿勢を不満として、「NHKが回心するまでの不払ひ」を実行していたというのだ。この姿勢を見倣おう。遠慮することはない。「長谷川三千子辞任によってNHKの回心確認までは受信料支払い留保」という運動を巻き起こそうではないか。

長谷川三千子こそ、安倍晋三の分身の一人として、安倍のメディア乗っ取り作戦の尖兵。安倍晋三の首相再任を要望した「民間人有志の会」の代表幹事として名を連ね、現在も安倍応援団を自認している。そして、憲法の個人の尊厳を攻撃し、男女の役割固定に固執し、公共放送の経営陣に最もふさわしからぬ人。右翼による朝日新聞社襲撃に関連して、「彼の行為によって我が国の今上陛下は人間宣言が何と言おうが憲法に何と書かれていようが再び現御神となられた」と宣うて話題となったお人。

これまで、「この人が辞めるまでは受信料支払いを留保を」という検討の対象とされていたその当人が、「NHKの姿勢に不満なら受信料不払いを」、という戦術の実践者だった。その姿勢、その果敢さを、大いに見倣わねばならない。

右翼誌「正論」(05年7月号)に引用された長谷川の手紙は2通あるそうだ。最初のものが、「『クローズアップ現代』 国旗国歌・卒業式で何が起きているのか」の放映に関して、「本当に酷うございましたね。…ちやうど自動振替が切れましたので、NHKが回心するまで不払ひをつづけるつもりでをります」というもの。そして、都教委側がNHKに抗議し、NHK側は「公平、公正な番組内容」と反論すると、これを受けて、長谷川は2通目の手紙で「受信料支払ひはまだまだ先のことになりさうでございます」と不満を示している。

長谷川が問題視した番組が「日の丸・君が代」強制問題だったということ、しかもその報道姿勢が必ずしも強制を是とする立ち場ではなかったということが、大きな問題である。長谷川が経営委員である限り、NHKは国旗国歌問題を同様の姿勢で取りあげることができなくなるであろう。

その番組はビデオで私も観ている。確かに、都教委の言い分をそのまま是とする報道姿勢ではない。客観的な姿勢で、「日の丸・君が代」を強制する側、強制される側の両者に目配りした取材態度だった。ジャーナリズムの在り方としては至極当然のこと。この真っ当さが、長谷川の目には、「本当に酷うございましたね。」となる。やっぱりこの人、経営委員としてはアウトだ。どうしてもNHKに留めておくことはできない。

クローズアップ現代のこの番組放映の前に、東京新聞の世論調査の興味深い結果が出ていた。日の丸・君が代を国旗国歌と認めるという回答は4分の3を超えていた。しかし、国旗国歌を強制することに反対という意見が、ほぼ3分の2に達するものとなっていた。世論の大勢は、「日の丸・君が代を国旗国歌と認めるが、強制はよくない」というものだったろう。今も、大きくは変わらないと思う。

NHKの「『クローズアップ現代』 国旗国歌・卒業式で何が起きているのか」の報道姿勢は、まさしくこのような世論の大勢に則ったものでもあった。これをしも、許せないというのが長谷川の心性。籾井といい、百田といい、そして長谷川といい、どうして、こんなに極端な体制派をよりもよって、不偏不党、公正中立を旨とする公共放送の経営陣に送り込んだのだろう。

不払いの助長は長谷川自身の責任。不払いの戦術は、長谷川にはじめて教えられたという人もあるだろう。世の中には、かつての長谷川のように不払いを試みたいという人が多かろう。声を大にして、深い決意とともに、長谷川を見倣おうと申し上げたい。
***********************************************************************
      NHKに対する「安倍首相お友だち人事」への抗議を
☆抗議先は以下のとおり
 ※郵便の場合
  〒150-8001(住所記入不要)NHK放送センター ハートプラザ行
 ※電話の場合 0570?066?066(NHKふれあいセンター)
 ※ファクスの場合 03?5453?4000
 ※メールの場合 http://www.nhk.or.jp/css/goiken/mail.htmlに送信書式
☆抗議内容の大綱は
 *籾井勝人会長は即刻辞任せよ。
 *経営委員会は、籾井勝人会長を罷免せよ。
 *百田尚樹・長谷川三千子両経営委員は即時辞任せよ。
 *経営委員会は、百田尚樹・長谷川三千子両経営委員に辞任を勧告せよ。
よろしくお願いします。
(2014年2月27日)

会長辞職までNHK受信料支払い凍結論議のお勧め

2月22日(土)に、「緊急集会NHKの危機ー今、何が必要か?籾井会長発言が問いかけるもの」を主催したのは、「放送を語る会」。

同会のホームページには、その成り立ちを次のとおり説明している。
「『放送を語る会』は、視聴者市民、放送研究者、放送労働者の三つの立場の人びとが、放送について語り合い、研究し、発言する場を作ろうという趣旨で、1990年8月に発足した団体です。
 会が生まれたきっかけは、1988年の「天皇報道」でした。この業務に従事した労働者の中から、放送メディアのあり方や、放送現場の状況について批判的に検討しようという動きが生まれ、翌1989年に、NHKで働く放送労働者有志が研究と実践のためのサークルを立ち上げたのが会の始まりです。
 1990年、有志は、視聴者市民、メディア研究者、民放関係者、ジャーナリストに呼びかけて第1回の市民集会を開催しました。この集会以降、『放送を語る会』という名で活動を開始、現在では、さまざまな立場の人びとが放送について考え、研究、発言する視聴者団体の一つとなっています。」

2月22日緊急集会に、主催者側が用意していた運動提起案は、次の3点だった。
 ※ 「籾井会長辞任せよ」の声を緊急にNHKに集約すること
 ※ 短期的な会長辞任・会長罷免要求の統一署名運動
 ※ 長期展望のNHK機構改革(放送法改正)運動と署名活動

「放送を語る会」の集会としては、受信料支払い停止や留保の提案の用意はしていなかった。その始まりが「NHKで働く放送労働者有志が研究と実践のためのサークルとして立ち上げた会」であれば、当然のことだろう。NHK内部の良心的な現場職員と連携し励ますという観点からは、受信料不払いという方針は出てこない。

パネラーの報告では、現場の番組制作スタッフの良心が傷つけられながらも、いかに頑張っているかが語られた。資本の論理や権力の論理とは異なる次元での公共放送を求める立ち場が大きな前提となる。東電や三菱重工に対して不買運動を提起するなどとは、明らかに事情が異なるのだ。

しかし、パネラーの一人である、元NHKディレクターからも、あり得る有効な運動形態として受信料支払いの一時的な凍結が話題に上った。また、会場から、「個人的な受信料支払い拒絶はあり得る。既に実行している人もいる」という発言もあった。籾井が辞めるまでの間の、一時的な受信料支払い凍結や留保という形の運動提起はあり得るのではないだろうか。

スローガンは、「籾井・百田・長谷川の3名に辞任を要求する。その要求が実現するまでは、受信料の支払いを拒否する」ということになろう。これを広く呼び掛ける運動形態は大いに魅力的ではないか。大きなひろがりをもちうるし、現実的な有効性をもった運動として成立しうる。成立しうるとは、世論やNHK現場の支持を得て、この3人を辞めさせる展望を持ち得る、ということ。

仮に運動として取り組むとした場合。辞任要求対象は籾井一人に絞るか、それも百田・長谷川を含む3名にするか。「受信料支払い拒否」の具体的内容は、単に支払いを停止ないしは凍結して辞任の目的達成の時点で未払い分は遡って支払うとするのか。あるいは、その間の分はそもそも請求権がなかったものとして、支払いはしないとするのか。

また、運動としてやるとすれば、NHKは中心メンバーを狙い撃ちに提訴してくるだろう。その応訴の体制も備えておかねばならない。その体制が組めるか。

安倍の「お友だち人事」によるNHK支配とは、安倍が自らの分身を使っての公共放送乗っ取りにほかならない。安倍政権による国家主義的メディア統制を許すのか、有効な抵抗運動をどう作るかのせめぎ合いである。

いたるところでの、籾井らの辞任を求める運動の有効な対抗策の工夫があってしかるべきだ。会長辞任までの受信料拒否も凍結も当然に検討されなければならない。その戦術について、煮詰めた議論とその発表とを歓迎したい。
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      NHKに対する「安倍首相お友だち人事」への抗議を
☆抗議先は以下のとおり
 ※郵便の場合
  〒150-8001(住所記入不要)NHK放送センター ハートプラザ行
 ※電話の場合 0570?066?066(NHKふれあいセンター)
 ※ファクスの場合 03?5453?4000
 ※メールの場合 http://www.nhk.or.jp/css/goiken/mail.htmlに送信書式
☆抗議内容の大綱は
 *籾井勝人会長は即刻辞任せよ。
 *経営委員会は、籾井勝人会長を罷免せよ。
 *百田尚樹・長谷川三千子両経営委員は即時辞任せよ。
 *経営委員会は、百田尚樹・長谷川三千子両経営委員に辞任を勧告せよ。
よろしくお願いします。
(2014年2月25日)

籾井勝人NHK会長の辞職を要求する

本日午後「放送を語る会」が主催した「緊急集会NHKの危機 今、何が必要か?籾井会長発言が問いかけるもの」に参加した。立錐の余地のない盛会。最高のパネラー5氏を得て、実に充実した有益な集会だった。もっとも、集会の盛会も、参加者の熱気も、時代の危機感の表れ。喜んでよいのやら。

現状認識ではほぼ共通の危機意識が確認できるが、さて、どう対応するか。やや長期的には公共放送についての制度的な改革の国民運動の提起が必要であり、短期的には籾井会長辞任を求める要請運動が必要。多くの運動や団体を横に連ねた連帯をつくっての署名運動が提起されたが、それ以外でもできることから手を付けようと語られた。また、最も影響の大きな視聴者の対抗手段として、「受信料支払いの留保」の提案について複数の発言者があった。

まずは、直ちに誰にでもできる正攻法の手段として、NHKに意見を寄せよう。NHKの人事や報道姿勢についての意見の申立は、郵便・電話・メール・ファクスの4方法で可能。つぎのURLを開くと、意見申立先の一覧が表示されている。
http://www.nhk.or.jp/css/communication/heartplaza.html

※郵便の場合 〒150-8001(住所記入不要)NHK放送センター ハートプラザ行
※電話の場合 0570?066?066(NHKふれあいセンター)
 あるいは、 050?3786?5000
※ファクスの場合 03?5453?4000
※メールの場合 http://www.nhk.or.jp/css/goiken/mail.html に送信書式

これを存分に使って、NHKに、国民の声を届けよう。当面大切な意見の内容は、
  籾井勝人会長は即刻辞任せよ。
  経営委員会は籾井勝人会長を罷免せよ。
  百田尚樹・長谷川三千子両経営委員は即時辞任せよ。
  経営委員会は、百田尚樹・長谷川三千子両経営委員に辞任を勧告せよ。
という4点でよいのではないか。

私は、本日下記の意見を送信した。メールの書式では「400字まで」とされているので、冒頭部分だけとなった。改めて全文をファクス送信した。長文は郵便かファクスでということになる。
なお、下記の内容は、「放送を語る会」のアピール文モデルに従ったものであることをお断りして、参考にしていただきたい。

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私は、以下の4点を強く要請いたします。
(1) 籾井勝人会長に対して、即時その職を辞任することを求めます。
(2) 経営委員会に対して、籾井勝人会長を罷免することを求めます。
(3) 経営委員である百田尚樹・長谷川三千子両氏に対して、即時その職を辞任することを求めます。
(4) 経営委員会にたいして、百田尚樹・長谷川三千子両経営委員に辞任勧告することを求めます。

その理由は以下のとおりです。
安倍晋三政権が、日本国憲法を強く嫌悪する立ち場から、軍事・外交・教育などの諸分野で、これまでの保守政権とは明らかに異なる国家主義的な統制色を露わにしていることを憂慮せざるをえません。その安倍政権が、マスメディアの国家主義的統制に乗り出したと考えざるを得ないできごとが、昨年の特定秘密保護法の制定であり、そしてNHK経営陣に対する「お友だち人事」にほかなりません。

安倍政権の露骨な「お友だち人事」の中で、その不適切さにおいて際立っているのが、籾井勝人氏の会長人事と、百田尚樹・長谷川三千子両氏の経営委員人事です。この3名については、不適切人事であることが明確である以上、速やかに職を辞していただくよう、強く要請いたします。

大きく話題となったとおり、籾井勝人NHK新会長は、1月25日の就任記者会見で、「従軍慰安婦は戦争地域にはどこにでもあった」「韓国は日本だけが強制連行したみたいなことを言うからややこしい」など、問題発言を繰り返しました。その見識の不足に、呆れはてるとともに、怒りを感じないではいられません。
この籾井発言は、放送に不偏不党を保障するとした放送法の精神に違反しています。籾井氏の日本軍『慰安婦』に関する発言は、「狭義の強制はなかった」として、河野談話の見直しを目指す安倍政権の主張と軌を一にしています。安倍首相が賛同者だった米国での意見広告は、日本軍「慰安婦」は公娼制度のもとで行われたもの、と主張しましたが、籾井発言はこの主張とも重なります。籾井氏の会長就任は、安倍政権の意を受けての人事と考えざるをえません。

また、同じ会見で、籾井氏は、「政府が右と言うことを左と言うわけにいかない」「(NHKの姿勢が)日本政府とかけ離れたものであってはならない」とも述ぺています。しかし、NHKは、国営報道機関でも、国策報道機関でもありません。政府から自立した公共放送機関として、本来「政府がなんと言おうと影響を受けることなく、NHKは真実を語る」と言わなければならないはずではありませんか。

さらに、同会見では、「現場の制作報道で会長の意見と食い違う意見が出た場合、どう対応するか」という質問を受けて、籾井氏は「最終的に会長が決めるわけですから、私の了解を取ってもらわなくては困る」と回答しています。結局は、安倍政権の考え方を代弁する人物が、その姿勢でNHKの番組を統制することを公言したのです。本来あるべき、NHKの自主自立・不偏不党のあり方を突き崩す恐るべき事態というほかはありません。このような会長の姿勢は、多様な思想信条に基づく番組制作を抑圧し、現場を委縮させその活力を奪う危険を持っています。

あまりにも不見識な発言をした人物が、NHKのトップにとどまることは、NHKで働く人ぴとによって積み重ねられた視聴者の信頼を掘り崩すものとならざるを得ません。一刻も早い、自主的な辞任を求めます。

不適切極まりない会長を任命したことについては、経営委員会の責任も問われることが当然です。会長への注意だけで済まそうとする経営委員会の姿勢には、とうてい納得できません。

放送法第55条では、経営委員会において、「会長がその職務の執行の任に堪えないと認めるとき」、または「会長たるに適しない非行があると認めるとき」には、罷免することができると規定しています。もし籾井氏が自ら辞任しないときは、この規定にしたがって、経営委員会は会長を罷免すべきだと考え、このことを強く要請いたします。

百田尚樹氏は、先の都知事選挙で、自衛隊出身の田母神俊雄氏を応援し、『南京虐殺はなかった』などと演説しました。また田母神候補以外の候補を『人間のクズ』などと攻撃しました。氏の発言は、過去の戦争でアジア諸国に多大な犠牲と痛苦を与えた、とする大多数の日本人の認識と異なり、アジア諸国の強い反発を招くものです。すでに、在日米国大使館は百田氏の一連の発言を『非常識』だとして、NHKの取材に難色を示したと伝えられています。百田氏が経営委員にとどまることで、NHKの内外での業務に支障が出る恐れがあることは重大です。

長谷川三千子氏は、朝日新聞本社でピストル自殺した右翼運動家をたたえる追悼文を書いたことが明らかになりました。この姿勢は異様と言わざるを得ません。氏は、天皇が統治する「国体」を称揚し、主権在民を定めた現行憲法を攻撃することでも知られています。1月22日、参議院内で開かれた集会で、「私は安倍首相の応援団」と公言しました。

こうした二人の経営委員の言動は、放送に不偏不党を保障し、放送による表現の自由を確保する、という放送法の精神に抵触し、国民のNHKに対する信頼を損なう行為です。両氏が経営委員であること自体が、放送の不偏不党にとって脅威となるものです。

このことは、経営委員にも思想信条の自由があるかどうか、という問題ではありません。経営委員はNHKの役員であり、その地位にある間は、定められた規範に従わねばなりません。放送法に基く、「経営委員会委員の服務に関する準則」は、「委員は、放送が公正、不偏不党な立場に立って国民文化の向上と健全な民主主義の発達に資するとともに、国民に最大の効用と福祉とをもたらすべき使命を負うものであることを自覚し、誠実にその職責を果たさなければならない」としています。両氏はこの服務準則に明らかに違反しています。

また、経営委員は「公共の福祉に関し公正な判断をすることができ、広い経験と知識を有する者」から選ぶとする放送法の規定から言っても、適格な人物とは言えないことは明らかです。

以上の理由から、百田尚樹氏、長谷川三千子の両氏は自ら、その職を辞するべきですし、仮にその意向がなければ、NHK経営委員会において両氏に辞任を勧告するよう強く要請いたします。

(2014年2月22日)

NHK会長と経営委員           ーこの度し難き面々

権力が国民を支配する手段は、本質的には暴力による強制である。しかし、現代社会において立憲主義が確立してくると、剥き出しに権力の意図を国民に対する暴力で貫徹することは困難となってくる。後景に退いた暴力に代わる国民支配の最重要手段は、法は措くとして、情報の統制と教育の管理である。

権力は、できることならメディアのすべてを統制下に置きたい、総体としての教育を政権の伝声管としたい、と願望する。その内的衝動はすべての権力に通有のものではあるが、安倍晋三政権においては、とりわけ露骨なものとして突出している。

国民の側から見て、権力による言論の統制と教育の管理ほど危険なものはない。だから、国民の知る権利の重要性が喧伝され、まともなジャーナリズムには権力からの独立が不可欠とされる。また、真っ当な社会においては、権力の管理から独立した教育の自由が重んじられなければならない。

安倍政権は、情報の統制にも教育の管理にも既に手をつけている。情報の統制はまずはNHKから。「新聞の統制も民放の統制もなかなかに難しい。しかし、NHKならなんとかなる。ここからなんとかしよう」と思ったに違いない。幹部人事を通じてNHKを統制しようとの決意は、まずは経営委員会に自分の息のかかった人物を送り込むことによって実行に移され、ついで今回の会長人事となった。

かつて、石原慎太郎という右翼政治家が都知事になって、都民から308万票を得た傲りで教育委員を自らの提灯持ちで固めた。こうして、東京都の公立校全体に「日の丸・君が代」強制を持ち込んで、いまだに教育現場は混乱と衰退の爪痕を残している。あの悪しき前例とよく似ている。安倍晋三は、NHKをコントロールして完全にブロックしておきたいのだ。

昨年11月、安倍がNHKの経営委員に送り込んだ、「安倍ダミー」は次の5名である。
百田尚樹、長谷川三千子、本田勝彦、中島尚正、石原進。

このなかで本田勝彦は知られていないが、安倍の小学生時代の家庭教師を務めた人物だという。この全員が、「不偏不党、公正中立」を旨とするNHKにおいて、そのコンプライアンスに責任をもつべき立場に不適切であることは一目瞭然ではないか。なお、経営委員は12人。任期は3年である。安倍の息のかかった委員は、このままでは直ぐに過半数になる。NHKは、安倍政権の操り人形にならざるを得ない。

NHKは国営放送局ではない。国家や政権のためではなく、国民のための公共放送である以上は、権力からの独立が不可欠である。本来、安倍晋三が意気投合した人物や安倍が信頼する人物であってはならない。政権から独立した人物、しかも独立していることについて国民の信頼を勝ち得る人物が望ましく、ふさわしい。

既に百田尚樹は都知事選においてかの田母神俊雄を応援し、「南京大虐殺はなかった」などと歴史修正主義者としての発言で物議を醸している。そして、今度は長谷川三千子だ。

長谷川三千子は、これまで数々の極右的言論で顰蹙を買ってきたが、今回報道された「野村秋介追悼二十年 群青忌」なる文集に掲載された追悼文は凄まじい。
野村は、朝日新聞社に押しかけて抗議の意思表示として拳銃自殺した右翼である。朝日というメディアへの狂気の圧力には全く触れず、これを礼賛している。しかも、その礼賛のしかたが今どき信じがたい時代錯誤。

「人間が自らの命をもつて神と対話することができるなどといふことを露ほども信じてゐない連中の目の前で、野村秋介は神にその死をささげたのである」「『すめらみこと いやさか』と彼が唱えたとき、わが国の今上陛下は『人間宣言』が何と言はうと、日本国憲法が何と言はうと、ふたたび現御神となられたのである」というのだ。また、朝日新聞について「彼らほど、人の死を受け取る資格に欠けた人々はゐない」と貶めている。

かつて神であった天皇の神性を否定するところに、現行憲法の核心のひとつがある。天皇を再び神とする思想をもつことは、憲法(19条)が保障するところではあるが、そのようなことを公言する人物はあらゆる公職にふさわしくない。NHK経営委員の資質を問うというレベルの問題ではない。

菅義偉官房長官は本日(5日)の記者会見で「経営委員は思想、信条、表現の自由を妨げられない。放送法に違反するものではない」と述べ、問題ないとの認識を示した、と報じられている。

これが、安倍政権だ。「南京虐殺はなかった」「天皇は再び神になった」「政府が右といえば、左というわけにはいかない」という、政権に親和的な言論は「思想・信条・表現の自由」として徹底して擁護するのだ。安倍政権が、このような極右勢力とどれほど緊密に一体化しているか、右翼言論人をして安倍の本音を語らせているか、しっかりと見極めようではないか。

政権の傀儡たるべく極右勢力に乗っ取られたNHK。このままでは、信頼回復の展望は見出しがたい。
(2014年2月5日)

NHK受信料の支払いは強制できるのか

     
本日の東京新聞に、「NHK、脱原発論に難色 『都知事選中はやめて』」と見出しを付けた下記の記事がある。

「NHKラジオ第一放送で30日朝に放送する番組で、中北徹東洋大教授(62)が『経済学の視点からリスクをゼロにできるのは原発を止めること』などとコメントする予定だったことにNHK側が難色を示し、中北教授が出演を拒否したことが29日、分かった。NHK側は中北教授に『東京都知事選の最中は、原発問題はやめてほしい』と求めたという。」

「中北教授の予定原稿はNHK側に29日午後に提出。原稿では『安全確保の対策や保険の費用など、原発再稼働コストの世界的上昇や損害が巨額になること、事前に積み上げるべき廃炉費用が、電力会社の貸借対照表に計上されていないこと』を指摘。『廃炉費用が将来の国民が負担する、見えない大きな費用になる可能性がある』として、『即時脱原発か穏やかに原発依存を減らしていくのか』との費用の選択になると総括している。」

「中北教授によると、NHKの担当ディレクターは『絶対にやめてほしい』と言い、中北教授は『趣旨を変えることはできない』などと拒否したという。」

「中北教授は『特定の立場に立っていない内容だ。NHKの対応が誠実でなく、問題意識が感じられない』として、約二十年間出演してきた『ビジネス展望』をこの日から降板することを明らかにした。」

東京新聞は、「公平公正 裏切る行為」と題する解説を書いている。
「NHKが、再稼働を進める安倍晋三政権の意向をくんで放送内容を変えようとした可能性は否定できない。」「選挙期間中であっても、報道の自由は保障されている。」「NHK側が問題視した中北教授の原稿は、都知事選で特定の候補者を支援する内容でもないし、特定の立場を擁護してもいない。」「原発再稼働を強く打ち出している安倍政権の意向を忖度し、中北教授のコメントは不適切だと判断したとも推測できる。」としたうえ、「原発政策の是非にかかわらず受信料を払って、政府広報ではない公平公正な報道や番組を期待している国民・視聴者の信頼を裏切る行為と言えるのではないか」と結んでいる。常識で考えれば、この解説のとおりだ。

オリンピックは、都知事選の焦点のひとつのテーマだ。「最高のオリンピックを成功させよう」という政権に近い候補者もいれば、「オリンピックは中止」「東京五輪返上」という候補者もいる。「オリンピックに金をかけるのは止めよう」という公約もある。NHKが都知事選の公平に配慮して、オリンピックの話題に関しては放送を遠慮しているとは聞かない。明らかに、原発問題だから、政権側の候補者に不利になるから、発言を規制しているのだ。新会長のもとでの、「忖度効果」が早くも現実化していると指摘せざるを得ない。

会長も会長なら、ディレクターもディレクター。現場で真摯な努力を積み上げている人もいるのだろうが、「原発再稼働を強く打ち出している安倍政権の意向を忖度し」て、出演依頼者のコメント内容に介入しているのがNHKの実態なのだ。

多くの視聴者が、「受信料を払って、政府広報ではない公平公正な報道や番組を期待しているのに、信頼を裏切られた」と思うに違いない。信頼を裏切られたと思う人のうちの一定数が、受信料を支払いたくないと考えることは自然の成り行きで、支払い率の低下は免れない。安倍政権が任命した籾井新会長と、新しいアベトモの経営委員、そして『ビジネス展望』担当デイレクターの功績である。

現在の所帯数あたりの受信料支払率は、最高が秋田県の94.6%,最低は沖縄県の42.0%と幅が広い。全国平均は72.5%。この数値の低下が、国民のNHK批判のメルクマールとなる。

放送法第32条1項(受信契約及び受信料)は、不思議な規定だ。噛み砕いて表現すると次のとおり。
「NHKの放送を受信することのできるテレビを設置した者は、NHKと放送の受信についての契約をしなければならない」

NHKチャンネルのないテレビを売り出せば、えらく売れるだろうと思うのだが、今、巷にそのような商品はない。新品でも中古でも、テレビを備え付けると、「オレは、NHKの番組は嫌いだ。絶対に見ていない」と言っても通らない。「受信契約の締結」を強制されることになっている。契約自由が大原則なのに、どうして、契約の締結が強制できるのか、よくは分からないが、契約の締結と受信料支払いが強制されることになっている。しかし、それはNHKが、放送法に則ったまともな組織であって、まともな放送業務を行っている限りでのことではないか。

「NHKの親安倍政権的偏向は、放送法が予定する『不偏不党』、『公正中立』の姿勢から著しく逸脱している。だから、受信料を支払わない」という、視聴者側の理屈が通らねばおかしい。NHKは自らは放送法の精神を投げ捨て、法が要求する政権から独立した放送をなすべき義務を怠っておきながら、一方的に視聴者からは受信料徴収を強制できるとすることには納得しがたい。受信料を原資とする籾井会長の年間報酬額が3000万円を越すと聞けば、なおさらのことである。

憲法の次元でものを考えてみたい。視聴者の一人が、籾井会長が就任記者会見で発言した、政権との一体性や歴史認識の反憲法性に深く憤って、「NHKの現状は自分の思想に照らして到底容認できない」との動機から、受信料の支払いを拒絶できるか、という問題設定が成立する。

自分の金が、自分の意に反して、自分の思想において容認し得ない組織に強制的に徴収されることはない。たとえば、最高裁は南九州税理士会臨時会費強制徴収事件判決(1996年3月19日)において、この問題を憲法19条から考察して、次のとおりに述べている。事案は、政治団体への寄付に充てるための税理士会の臨時会費徴収が許されるか、という問題である。

「税理士会が前記のとおり強制加入の団体であり、その会員である税理士に実質的には脱退の自由が保障されていないことからすると、その目的の範囲を判断するに当たっては、会員の思想・信条の自由との関係で、次のような考慮が必要である。

法が税理士会を強制加入の法人としている以上、その構成員である会員には、様々の思想・信条及び主義・主張を有する者が存在することが当然に予定されている。したがって、税理士会が右の方式により決定した意思に基づいてする活動にも、そのために会員に要請される協力義務にも、おのずから限界がある。

特に、政党など規正法上の政治団体に対して金員の寄付をするかどうかは、選挙における投票の自由と表裏を成すものとして、会員各人が市民としての個人的な政治的思想、見解、判断等に基づいて自主的に決定すべき事柄であるというべきである。

そうすると、前記のような公的な性格を有する税理士会が、このような事柄を多数決原理によって団体の意思として決定し、構成員にその協力を義務付けることはできないというべきであり、税理士会がそのような活動をすることは、法の全く予定していないところである。税理士会が政党など規正法上の政治団体に対して金員の寄付をすることは、たとい税理士に係る法令の制定改廃に関する要求を実現するためであっても、税理士会の目的の範囲外の行為といわざるを得ない。

以上の判断に照らして本件をみると、本件決議は、被上告人が規正法上の政治団体へ金員を寄付するために、上告人を含む会員から特別会費として5000円を徴収する旨の決議であり、税理士会の目的の範囲外の行為を目的とするものとして無効であると解するほかはない。」

これは、NHKの受信料強制徴収を否定する法理として、次のとおり応用可能である。

「NHK受信契約が、すべてのテレビ設置者に強制されており、テレビ設置者には実質的に契約からの脱退の自由が保障されていないことからすると、受信契約における受信料支払い強制の可否を判断するに当たっては、視聴者である国民の思想・信条の自由との関係で、次のような考慮が必要である。

視聴者は、NHKとの間に、放送法と所定の約款にしたがった受信契約の締結を強制される結果、受信料支払いの義務を負う。しかし、法がすべての視聴者を契約強制の対象としている以上、視聴者には様々の思想・信条及び主義・主張を有する者が存在することが当然に予定されている。したがって、NHKが契約と約款に基づいてする活動の在り方にも、そのために視聴者に要請される支払い義務にも、おのずから限界がある。

特に、NHKが、双務契約の履行として歴史観や政治観に関わるテーマに関して番組を作成する基本姿勢において公平・中立、不偏不党であること、並びに会長や経営委員等の人的構成において政権への独立性に疑問を抱かしめるようなことがあってはならない。NHKが放送法の精神を十分に体現しているものとして、その信頼の下に受信料を支払えるに足りるものと判断するか否かは、政治参加の自由と表裏を成すものとして、視聴者各人が市民としての個人的な政治的思想、見解、判断等に基づいて自主的に決定すべき事柄であるというべきである。なぜなら、NHKの在り方は、戦前の大本営発表に象徴される戦争協力の苦い歴史に対する痛苦の反省から、放送法が規定したもので、法からの逸脱は厳に戒められなければならない。
したがって、NHKが厳格に放送法に準拠した放送業務を実行することこそ、法の予定するところであって、内閣総理大臣の私的な友人や、歴史観を同じくする者を充てる偏頗な人事や、政権与党の選挙に有利になるような番組の編成によって、その権力からの独立性に世人からの疑義を生ぜしめることなどは、法の全く予定していないところである。NHKが、そのような法に背馳する現状を放置しながら、視聴者に対して受信料の請求をすることは、たとい外形的に契約が成立しているとしても、憲法19条の理念に鑑み信義則に反する行為といわざるを得ない。

以上の判断に照らして本件をみると、NHKから各視聴者に対する請求は棄却すべきものと解するほかはない。」

現実に訴訟になった場合に、司法の現状に鑑みて政権寄りの判決になる可能性の高いことは否定し得ないにせよ、上記の法理は基本的に成立しうる。

なお、土屋英雄筑波大学大学院教授に「NHK受信料は拒否できるのかー受信料制度の憲法問題」(2008年明石書店)の著作がある。是非参照されたい。
(2014年1月30日)

大本営発表とNHK

「営」の旧字は營。その冠はかがり火の象形なのだそうだ。篝火を焚いた軍隊の所在地を指す。兵営、陣営、野営、入営、営倉などの熟語に本来の意味が表れている。総司令官が所在する営が「本営」。これに大を付けた大仰な造語が「大本営」。大元帥である天皇が所在する陣営、くらいの意味であったろう。

平凡社の世界大百科事典によると、大本営とは「戦時または事変において天皇の隷下に設置された第2次大戦前の最高統帥機関。最初に法令化されたのは1893年5月の〈戦時大本営条例〉で,1年後の日清戦争時に初めて設置された」という。

太平洋戦争開始以来戦況に関する情報は一元的に管理され、「大本営発表」としてNHKから放送された。それ以外の情報は流言飛語とされて、厳重な取り締まりの対象となった。

第1回の大本営発表は、1941年12月8日午前6時の対米英開戦を告げるもの。同7時に、NHKラジオによって以下のとおり報道された。

「臨時ニュースを申し上げます。臨時ニュースを申し上げます。大本営陸海軍部、12月8日午前6時発表。帝国陸海軍は今8日未明西太平洋においてアメリカ、イギリス軍と戦闘状態に入れり」

この日、NHKは「ラジオのスイッチを切らないでください」と国民に呼び掛け、9回の定時ニュースと11回の臨時ニュースを大戦果の報で埋めつくした。そのほかに、「宣戦の詔書」や、東条首相の「大詔を拝し奉りて」などが放送された。こうして「東条内閣と軍部はマスコミ(NHK)を最大限に利用し、巧みな演出によって国民の熱狂的な戦争支持熱をあおり立てた」(木坂順一郎「太平洋戦争」)。

その後、NHKの大本営発表は846回行われたという。発表の形式はアナウンサーが読み上げるものと、陸海軍の報道部長が読み上げるものとの2種類があった。いずれにせよ、戦争遂行にNHKはなくてはならぬものとなり、NHKと大本営発表との親密な関係は、戦時下の日本国民の意識に深く刻みこまれた。

大本営発表は、今は「インチキ情報」の代名詞。主権者としての国民に対する真実の情報提供ではない。戦争遂行に国民を鼓舞する目的のプロパガンダであった。情報を握る地位にある者は、そのすべてをそのまま伝達すべき時に、他の方法をとりうる。握りつぶす、改変する、誇張する、取捨選択して一部だけを出す。自分に都合のよいように操作が可能なのだ。権力を持つ者に情報が集中し、集中した情報を操作することによって権力は維持され強化される。

特定秘密保護法反対運動の中で再確認したとおりである。権力が、情報操作を行うことによるプロパガンダを行ってはならない。権力に不都合な情報を、刑罰をもって秘匿するようなことがあってはならない。国民は、正確な情報を知る権利がある。

民主的な運動が、権力の大本営発表的プロパガンダを指弾し、再びこのようなことがあってはならないとするのは、主権者たる国民を対象とした情報操作が民主主義の拠って立つ土台を揺るがすからである。戦前のNHKも、その積極的共犯者として指弾されざるを得ない。

戦前のNHKは、形式は国営放送ではなく社団法人日本放送協会ではあったが、国策遂行の役割を担った事実上の国営放送局であった。大本営発表に象徴される戦争加担の責任は免れない。その反省から、1950年成立の放送法は、NHKを国策追従から独立した公共放送と位置づけた。

敗戦を挟んで、戦前と戦後との比較において、権力の集中から分立へという視点が重要だ。富国強兵がスローガンだった時代、あらゆる局面での権力の集中が国策に合致するものであった。戦後は、議会も行政も司法も天皇大権から独立した存在となった。教育も国家の統制を排する建前の制度となった。放送もそうだ。公共放送は、国営放送でない。国家との一体性を否定し、国家からの統制に服することなく、戦前大本営発表の垂れ流し機関であった愚を繰り返してはならないとするのが、放送法の精神である。

1月25日の籾井勝人新会長の就任記者会見における「政府が右というときに、左というわけにはいかない」という発言は、NHKの戦前戦後の歴史や教訓に学ばず、再びの大本営発表の時代を招きかねない危険を露呈したものである。今後は口を慎めばよいという類の問題ではない。籾井氏が、およそNHKの会長職にふさわしからぬ人物と判明した以上は、辞職していただく以外にはない。この重責は、それにふさわしい人格が担うべきなのだから。
(2014年1月29日)

国営放送協会会長就任会見所感

ボク、新米の国営放送協会の会長。今まであまり知られていなかったけど、三井物産から、日本ユニシス、そしてとうとうNHKの会長になっちゃった。嬉しくってしょうがない。隠そう隠そうとはしたんだけども、就任記者会見でついつい地金を出しちゃった。失敗しちゃったとは思うけど、ボクは思いっきり政権におもねってみせたんだ。だから、まさか政権がボクを見殺しにすることはないはず…だよね。

安倍政権が、ボクを国営放送の会長にしてくれたんじゃないか。だから、ボクが安倍政権を擁護して、政権の意向を忖度した放送内容の実現に邁進してお返しする。これが美しい人の道というものだろう。信義といっても仁義といってもよい。ボクは九州男児だ。筑豊の出なんだから、義理人情には厚い。だから、精いっぱい政権に感謝の気持ちでおもねってみせたんだ。だからって、ボクを切るとしたら、そりゃ人としての道にはずれるってもんだ。幸い、安倍さんも、官房長官も、人情の分かる人のようで胸をなでおろしている。閣僚や連立与党の中には、物わかりの悪い連中もいるようだけどね。

えっ、NHKは、国営放送ではありません? そんな、揚げ足を取るようなことを言うなってこと。公共放送であろうと国営放送であろうと、実際たいした違いはないじゃないか。どちらにしたって、「政府が右ということを、左というわけにはいかない」だろう。

ボクだって、まったくものを考えない訳じゃない。就任記者会見は、「放送法遵守」の一本でやり過ごすつもりだったんだ。これなら無難で文句の付けようがないだろう。だから、やたらにこの言葉を繰り返した。だけど、「放送法遵守」の具体的な中身を聞かれると、ついついホンネが出ちゃう。それはしょうがない。もちろん、ボクが考えている「放送法遵守」っていうのは、安倍政権が私に期待しているとおりに、NHK内部のタガを締め直すことなんだから。

「タガを締める」じゃ古くさいから、「ボルトとナットを締め直す」と言ってみたんだ。そしたら、生意気などこかの記者が、「会長から見て、どこがゆるんで、どこを締めなければならないとお考えですか」と聞いてきた。あすこから調子が狂ったね。今どき、政府や国営放送の会長にたてつくような記者がいるとは思わなかったものね。まさかNHKの記者じゃなかろうが、ここは確認をして、もしそうなら特別にきっちりと「締め上げて」おかなきゃならない。人事権は我が手にあるのだから。

ボクは、会見前に「放送法」ってものに一応は目を通してみた。その第1条3項には、本法の目的を「放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること」と書いてある。だから、タチの悪い記者が、「安倍政権の思惑に沿うことを重視するのか、それとも健全な民主主義の発達に資することに重きをおくのか」などという意地悪な質問をするんだ。法律を盾にとっていやな奴だ。ボクのホンネが「安倍政権の思惑に沿うことを重視する」って知っているくせに。もう少しで、ホンネのとおりを口にするところだった。危ない。危ない。

それから、放送法の第4条は「放送事業者は、…放送番組の編集に当たつては、政治的に公平であること」と定めている。ボクが言いたいのはこのことだ。NHKは、政治的に中立で不偏不党でなくてはならない。いささかも偏向していてはいけないのだ。そう言って、文句のつけようはなかろう。だから、NHKスペシャルでも、クローズアップ現代でも特定秘密保護法について取りあげることはしていない。これが正しい在り方だ。うっかり取りあげたら、安倍政権批判になっちゃうものね。安倍政権批判は、偏向報道に決まっている。また、取りあげたところで、賛否両論あるのだから混乱するだけじゃないか。

ところが、秘密保護法をもっと取りあげて報道・論評すべきではないかと質問した記者がいたな。あいつは、明らかに偏向している。政治的に中立で、不偏不党というのは、時の政権の意向を尊重することに決まっているじゃないか。民主主義の世の中だ。民意が政権をつくっているんだ。安倍自民からみて、もっと右もあり、もっと左もある。政権にあるものこそが中正なんだ。だから政権の意向に沿うことがNHKの役目ではないか。安倍政権から委託を受けたボクにとっては、安倍政権へのご奉公こそが大切。それこそが、政治的に中立で不偏不党ということなのさ。

僕があまりうまくないのはね、若干その、自分の考えまで言っちゃうもんだから話がコンフューズしちゃうんだ。整理して言えば、国営放送会長としては、歴史認識や従軍慰安婦問題については、村山談話や河野談話の線でNHK内部をまとめなければならないのが本来だろう。こちらが政府の公式見解なんだものね。でも、ボクは安倍政権から委託されたんだから、政府公式見解ではなく、安倍政権の歴史観にしたがって頑張らなければならない。それこそがボクの役割なんだ。

国家や政権の側に顔を向けるのではなく、国民や視聴者の側を向けって言われるが、ボクには理解できない。国家と国民は別物かね。国民なんててんでんばらばらじゃないか。そちらを向けって言われても、どこを見たらよいのやら。ばらばらの国民を束ねているのが、政権であり国家なんだろう。だから、国家を代表する人の言うことを聞いておけば間違いがないのさ。

それにだ。「会長としての職はさておいてって」って、記者会見で言ったろう。私にも、個人としての表現の自由はあるはずじゃないか。なぜ、従軍慰安婦や靖国について、あの程度のことを喋ってこんなに叩かれなけりゃならないのかね。

えっ、表現の自由の問題ではないって? ボクの、NHK会長としての資質の問題だって? でもね。国営放送協会の会長は、時の政府の信任があって初めて務まるんだから、ボクが適任だと思うよ。「ボクが政府に近いと思われるのは、それはまあみなさんのご自由」でございますし、安倍さんも、「ぼくを右翼の軍国主義者と呼びたければそう呼べ」と言っているでしょう。要するに、似た者どおしで気が合い、コンビを組むにぴったりなんだ。

えっ? それがいけない? ジャーナリズムの本領は、権力からの独立にあるって? そんな考え方からすれば、ボクは会長として不適格だよ。素直にそれは認める。

だけどね、NHKってジャーナリズムなの? 国営放送に権力からの独立なんてあり得るの? それに、今ごろ「権力からの独立」なんて偏った考え方ははやらないとおもうよ。絶対に…。
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         チューリップ・バブル(チューリップ狂時代)
チューリップ150球を植えたことについて、スペースと必要経費についてつけ加えます。チューリップは品種改良が早くからすすんで、八重咲きや花弁の縁がギザギザに裂けたパロット系など、形や色も多岐にわたり、2,000種の園芸種があるといわれています。珍しい新種は高価だけれど、12月になってホームセンターなどでバーゲン品を求めれば、一球20円ぐらいで入手できます。そんな球根でも、じゅうぶん立派な花が咲き、お散歩途中の保育園児が立ち止まって、「咲いた咲いたチューリップの花が」と可愛らしい唄を歌ってくれます。スペースは、150球植えても、せいぜい一坪でしょうか。間をあけず植えつけた方が、咲いたときの見栄えがいいものです。プランターや鉢植えを並べてもすてきです。

チューリップといえば17世紀のオランダでおきた、世界最初のバブル・投機で有名です。チューリップは16世紀にトルコからヨーロッパに異国情緒溢れる花として伝えられました。特にオランダの気候が栽培に適しており、希少価値もあって人気が出ました。当時ヨーロッパの混乱のなかで、スペインから独立したオランダのアムステルダムには商取引が集中して、金持ちも貧乏人も一攫千金を夢見ていました。
そんな時、突然変異で、美しい斑入りの花が咲きました。後の20世紀になって、ウィルスによるモザイク病が原因だと解りました。しかしそんなこととは知らない、当時の人々はその球根を手に入れようと、狂ったように投機に走りました。金持ちだけでなく、貧しい者も参加して、先物取引が盛んに行われました。その球根一つと邸宅一軒が交換される始末でした。
ところが1637年2月3日、3年あまり続いたバブルは突然はじけてしまいました。球根の買い手がパタリといなくなったのです。チューリップ狂時代の終わりです。

そんな植物バブルは日本にも繰り返し起こっています。日本では、花ではなく、葉の形や色の変異に興味が集中したようです。斑入りであるとか葉の縁にフリルがついているとか、そうした渋めの点が競われたようです。特にオモト(万年青)は一芽百両で取引され、天保の改革の引き金になったといわれています。明治の初めには一鉢千円、今の値段にすれば一億円の記録もあるそうです。

そうした流れとは別に、キク、アサガオ、サクラソウなどは「連」ができて、優雅な花合わせ(品評会)の伝統もあります。本草書、図譜、番付などが盛んに出版されました。
こうした植物愛も高ずると、心穏やかにとはいかなくなるようです。先日、ロンドンのキューガーデンから世界最小のスイレンの株が盗まれたと伝えられています。葉も花も直径わずか一センチ、絶滅危惧の希少種のようです。もともとが英帝国のプラントハンター(地球規模植物窃盗団)により成り立っているキューガーデンでも、自分が盗まれるのは悔しいのかと思われます。盗んだ者は責任をもって、たくさん増やしてキューガーデンに返すべきだとは思いますが。

日本でも、藤原定家の花盗人が有名です。紫宸殿の前の八重桜の一枝をつぎ木にしようと切りとって、袍に隠して持ち帰ったと「古今著聞集」に記されています。土御門帝に知られて、「暮ると明くと 君に仕うる 九重の 八重さく花の 陰をしぞ思う」(朝に晩にお仕えする宮中の八重桜の見事な花陰をしのんでいます)と詠んで、お詫びしたそうです。(小川和佑「桜と日本人」)

もうすぐ、永遠に巡り来る花の季節をむかえます。心を放って、憂きを忘れて春を楽しみましょう。

石ばしる垂水の上のさ蕨の萌え出づる春になりにけるかも (志貴皇子)
梅の花今盛りなり百鳥(ももどり)の声の恋しき春来るらし (田氏肥人)

(2014年1月28日)

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