澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

良心的番組制作を妨害した森下俊三NHK経営委員長の辞任を求める署名(第1次分)提出

緊急事態宣言が発出された昨日(4月7日)のこと、醍醐聰さんと私と二人で代々木のNHK放送センターに署名簿を提出に出向いた。より正確に言えば、署名者を代表して醍醐さんがNHKに赴き、私が随行した。センターは、コロナ禍にロックダウンのたたずまいの不気味さ。当方も、応接する職員もマスク対マスクである。密着せずに、やや離れて位置をとる。後年、滑稽な場面だったと思い返すことになるのだろうか。

署名は、森下俊三NHK経営委員長の辞任を求める内容の第1次分。そもそも、彼の番組制作への妨害行為は経営委員としての資質に欠けることを物語っているとして、委員長のみならず経営委員の辞任を求めている。その署名内容については、下記URLを参考にされたい。

https://article9.jp/wordpress/?p=14502
https://article9.jp/wordpress/?p=14625

醍醐さんが、森下委員辞任を求める申し入れ書と、下記の賛同署名簿(第一次集約分)ならびに、ネット署名に添えられた賛同者メッセージを提出した。同時に森下経営委員長以下全経営委員12名の銘々に同旨の書類を手渡した。これを受領したのは、経営委員会事務局・松沢明次副部長。

本日持参の署名(4月6日集約第1次分)は、下記のとおりである。

  用紙署名  3,596筆
  ネット署名   435筆
   合 計  4,031筆

また、「クロ現+」のかんぽ番組制作担当者宛に、同旨の書類を用意し、これに署名運動の顛末説明書を添えたものを、同席した視聴者部の藤田、七尾両副部長にお渡しした。

醍醐さんから、あらためて署名内容についての若干の説明があり、その上で、次のような発言も。
「ネット署名に添えられたコメントには、かんぽ生命の不適切な商法の被害者家族からの切実な被害を訴えるものもあり、NHKOBからの現状を深く憂うるものもあります。きちんと意を酌んでいただきたい」「署名運動開始後に、経営委員会から厳重注意を受けた際に、当時の上田良一前会長が『NHKは存亡の危機に立たされることになりかねない』と強く抵抗していたことが判明しました。ところが、このことを国会で追及された森下氏は、事実は認めた上で、開き直って責任を認めようとしていません。経営委員としての不適格ぶりがますます明らかになっています。」

私も一言。
「経営委員会の番組妨害行為の悪質性はとても分かり易い。そのため、国民からのNHKに対する信頼は今地に落ちている。地に落ちた信頼を取り戻すために、今必要な手段は最も分かりやすいものでなくてはならない。そのためには、信頼喪失の責任者である森下さんの辞任以外には考えられない。公共放送への国民の信頼を回復するために、森下さんは辞任すべきだ」

この日の夕方。醍醐さんから連絡のメールが入った。某紙の記者からの問い合わせに報告を返したところ、その記者からこんな挨拶があったという。

「お世話になっております。ご連絡ありがとうございました。自粛の中、これだけの方が問題性を感じているというのは、取材する側としても重いものを感じます。」

民主主義と国民の知る権利を大切とお考えの皆さまに再度のお願いです。署名運動は、4月末まで継続します。
 下記URLを開いて、ネット署名をお願いいたします。
  http://bit.ly/2TM7pGj
 あるいは、http://bit.ly/33gfSETから、署名用紙をダウンロードしていただき、郵送での署名をお願いいたします。

(2020年4月8日)

再度のお願いです。森下俊三NHK経営委員長の辞任を求める署名にご協力を ー (転載・拡散のお願い)

放送法を踏みにじり、NHKの番組制作を妨害した
森下俊三氏のNHK経営委員辞任を求める署名運動
へご協力ください

民主主義と国民の知る権利を大切とお考えの皆さまに再度のお願いです。
下記URLを開いて、ネット署名をお願いいたします。
http://bit.ly/2TM7pGj

あるいは、http://bit.ly/33gfSETから、署名用紙をダウンロードしていただき、郵送での署名をお願いいたします。

 NHKこそは国内最大の影響力を誇るメディアです。かつては、天皇制国家の統制に服する存在として「大本営発表の伝声管」の役割を果たしましたが、戦後は国家や時の政権から独立し、資本の支配も受けないという、「公共放送」となりました。権力ではなく、主権者国民がこれを監視し育ててゆかなければなりません。

 しかし、問題だらけの安倍政権は、一貫して経営委員人事を通じてのNHKへの介入を画策してきました。ご存じのとおり、NHKの最高意思決定機関が経営委員会です。その12名の経営委員全員が安倍首相の任命によるもので、互選による経営委員長が森下俊三氏。NTT出身で阪神高速道路会長だった財界人。これがとんでもない人物。この人の経営委員辞任を求める署名活動を始めています。念のためですが、経営委員長辞任ではおさまらない。経営委員を辞めなさい、ということなのです。

辞任を求める直接の理由は、この人の露骨な番組制作の妨害行為。明らかな、放送法違反の違法行為です。この人の「クローズアップ現代+」の番組潰しが、到底経営委員としての資格を認めがたいのです。

「クローズアップ現代+」は2018年4月に、日本郵政の悪徳商法を番組に取りあげました。日本郵政は、職員に過酷なノルマを課し、詐欺同然のやり方でかんぽ保険等の不正販売を続けてきたのです。NHKの現場スタッフは、これ以上の消費者被害を出さぬよう、視聴者に警告を発する立派な番組を制作し放送しました。そして、その上で続編の制作に向けて取材を続けていました。

ところが、あろうことか、当時NHK経営委員会の委員長代行であった森下俊三氏は、さらなる不正の発覚を恐れた日本郵政の不当な要求を取り次いで、「クロ現+」の番組の取材と編集に露骨に干渉し、続編の制作を妨害する発言をしたのです。信じがたい経営委員としての任務違背の違法行為。彼の頭の中のNHKとは、上命下服の指揮系統だけの存在で、政治的権力や社会的強者、あるいは不正不当を批判するジャーナリズムの神髄への理解は皆無なのです。

そもそも「放送法」は、番組の制作と経営とを分離し、経営委員が個別の番組の編集に関与したり、干渉したりする行為を禁じています。にもかかわらず、森下氏は「クロ現+」が続編制作のための取材を続けていたことを知りながら、経営委員会の席上その取材方法を公然と非難する発言を行い、上田良一会長(当時)への厳重注意決議を成立させるまでして、番組制作を妨害しました。

その森下氏が現在のNHK経営委員長ですが、当時の行為についての反省はありません。事実関係の大筋は認めながら、「放送が終わった番組について感想を述べたまでで、干渉はしていない」と開き直っています。ことここに至っては、森下氏の経営委員としての不適格は明らかであるだけでなく、このような郵政への忖度志向人物が、政権から独立したNHKの姿勢を堅持できるとは、到底考えられません。

以上のとおり、森下氏はNHK経営委員長としてばかりか、NHK経営委員としても不適格であることは明らかですから、私たちは、NHKの自主自律、番組編集の自由を守るために、森下俊三氏に、経営委員の辞任を求めます。

署名運動の要領は、以下のとおりです。
*署名の第一次集約日:2020年月4月5日(日)
第一次集約分を4月7日11時半に経営委員会事務局と面会し提出の予定です。
第二次集約日:4月30日(木)必着
*署名は用紙かネットのいずれかでお送りください。
・用紙の郵送先:
〒285-0858 千葉県佐倉市ユーカリが丘2?1?8
佐倉ユーカリが丘郵便局留
「森下経営委員の辞任を求める署名運動の会 醍醐 聰」宛て
署名用紙のダウンロードは→ http://bit.ly/33gfSET から。
*ネット署名: http://bit.ly/2TM7pGj
<以下はネット署名です>のところに記入して「送信」をクリック。
メッセージもお願いします。
*この署名に関するお問い合わせは、
メール:kikime3025-dame18@yahoo.co.jp へ
**************************************************************************
NHK経営委員長
森下俊三 様

放送法を踏みにじり、NHKの番組制作を妨害した森下俊三氏の
NHK経営委員辞任を求めます

呼びかけ団体
NHKとメディアを考える滋賀連絡会/NHKとメディアを考える東海の会/NHK問題大阪連絡会/NHK・メディアを考える京都の会/NHK問題を考える奈良の会/NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ/「日本郵政と経営委首脳によるNHK攻撃の構図を考える11.5シンポジウム」実行委員会/NHKとメディアを語ろう・福島/NHKとメディアを考える会(兵庫)/表現の自由を市民の手に 全国ネットワーク/NHK問題を考える岡山の会/NHK問題を考える会・さいたま/政府から独立したNHKをめざす広島の会/放送を語る会/時を見つめる会/NHKをただす所沢市民の会/NHKとメディアの今を考える会/NHKを考える福岡の会/NHKを考えるふくい市民の会

日本郵政は職員に過酷なノルマを課し、詐欺同然のやり方でかんぽ保険等の不正販売を続けてきました。2018年4月、NHKの「クローズアップ現代+」はこの件を取り上げて視聴者に警鐘を鳴らすとともに続編の制作に向けて取材を続けていました。
ところが、あろうことか、当時NHK経営委員会の委員長代行であった森下俊三氏は、さらなる不正の発覚を恐れた日本郵政の不当な要求を取り次いで、「クロ現+」の番組の取材と編集に露骨に干渉し、続編の制作を妨害する発言をしていた事実が明るみに出ました。
そもそも「放送法」は、番組の制作と経営とを分離し、経営委員が個別の番組の編集に関与したり、干渉したりする行為を禁じています。にもかかわらず、森下氏は「クロ現+」が続編制作のための取材を続けていたことを知りながら、経営委員会の席上その取材方法を公然と非難する発言を行い、上田良一会長(当時)への厳重注意決議を成立させるまでして、番組制作を妨害したのです。
現在、森下氏はNHK経営委員長に就任していますが、当時の行為についての反省はなく、「放送が終わった番組について感想を述べたまでで、干渉はしていない」と強弁し、居直っています。ことここに至っては、森下氏の経営委員としての不適格は明らかと指摘せざるを得ません。
そこで、私たちは森下俊三氏に以下のことを求めます。

森下俊三氏は直ちにNHK経営委員を辞任すること

私は上の求めに賛同し、以下のとおり署名します。
氏  名      住     所

(2020年4月4日)

NHKの良心的番組続編制作を妨害した4悪の面々。署名運動にご協力を。

昨日(3月23日)の毎日新聞朝刊1面に、【NHK問題取材班】の記事。お上の発表を鵜呑みに文字にすることが記者の仕事ではない。精力的にNHKと経営委員会に肉薄してお上の嫌がる真実を記事する、こういう記者の存在は貴重である。

見出しは、「郵政から取材圧力、認識か NHK経営委員長代行『不満は内容』」というもの。これだけでは、事情を追っていない者には分かりにくい。敷衍すればこうなろうか。

「現NHK経営委員長代行が『日本郵政側の不満は番組の内容にある』と発言していた事実が判明した。この発言からみて、(NHK経営委員会は、)日本郵政からNHKに対する申し入れが番組制作の取材に対する圧力であったと認識していたはずである」

一日遅れたが、本日(3月24日)朝日も続いた。こちらの見出しは、「経営委トップ2批判主導 NHKかんぽ報道『極めて稚拙』」。これも敷衍すればこうなろうか。
「NHK経営委員会の『トップ2(当時の委員長と代行)』が、番組制作の責任者であるNHK会長批判を主導して、『NHKかんぽ報道の番組は《極めて稚拙》』とまで発言していた」

この件については、何度か当ブログに取りあげた。最近のものは、以下のとおりである。

森下俊三NHK経営委員長の辞任を求める署名にご協力をー(転載・拡散のお願い)
https://article9.jp/wordpress/?p=14502(2020年3月16日)

事件の概要は、NHK経営委員会が日本郵政の手先となって、NHKの番組制作に干渉するという禁じ手をおかしたというもの。具体的には、日本郵政の「かんぽ生命保険」販売の悪徳商法を暴いた「クローズアップ現代+」の良心的番組に驚き、その続編の制作を妨害したのだ。ことは、報道の自由、国民の知る権利に関わる大問題。

この「クロ現+」の番組制作に対する妨害行為には何人もの悪役が登場する。まずは、経営委員会に抗議して番組の続編制作妨害を働きかけた日本郵政の鈴木康雄・上級副社長。元は総務事務次官で、郵政のドンといわれた実力者。批判されるべき立場でありながら、批判の報道を押さえもうとしたこの人物が元兇。次いで、その意を受けて動いたNHK経営委員会委員長・石原進(当時)。さらに、その配下で実務を担当した森下俊三経営委員会副委員長(当時)。これが3悪である。そのうちの石原と森下は、当時の上田良一NHK会長を厳重注意処分にまでして圧力をかけた。

以上の3悪のうち、鈴木と石原は辞めた。森下だけが残って、いまや経営委員長におさまっている。実は森下の果たした役割と責任は大きく、森下に経営委員の資格はない。そう考えての辞任要求署名活動を展開中なのだ。

そのさなかの毎日記事が、第4の悪役を登場させた。その人の名は、村田晃嗣。同志社大学教授で、2018年当時はヒラの経営委員。現在は、経営委員長代行である。村田の所為について、毎日の記事はこう述べている。

かんぽ生命保険の不正販売を報じた番組を巡り、日本郵政グループの抗議に同調したNHK経営委員会が2018年10月、当時の上田良一会長を厳重注意した会合で、経営委員だった村田晃嗣(こうじ)・現委員長代行(同志社大教授)が、郵政側の抗議について「本来の不満は(取材)内容だが、手続き論の小さな瑕疵(かし)(不備)で言っている」と説明していたことが判明した。その上で、経営委として郵政側に返答すべきだと主張した。郵政側の抗議が言い掛かりで、狙いは取材への圧力と認識しながら郵政側への対応を促したとみられ、関係者は「経営委ナンバー2として資質が疑われる」と批判する。

経営委員会の議事録作成は、放送法の命じるところである。同法第41条は「委員長は、経営委員会の終了後、遅滞なく、経営委員会の定めるところにより、その議事録を作成し、これを公表しなければならない。」と定めている。ところが、問題の2018年10月28日経営委員会で何が起こったか。誰がどのような発言をしたか。公表された簡易な「議事録」には一切記載がない。毎日の取材はここに切り込んだもの。村田の実名を挙げて、「経営委ナンバー2として資質が疑われる」との批判にまで言及したのだ。

「複数の関係者への取材で判明した」という毎日の報道では、「当時委員長代行だった森下俊三・現委員長が『番組の作り方に問題がある』などと番組を批判し、石原進委員長(当時)と共に厳重注意を主導。森下氏は『郵政側が納得していないのは本当は取材内容』と明かしていた。
 こうした発言を受け、村田氏は「郵政側の本来の不満は(取材)内容で、それでは話がつかないから手続き論の小さな瑕疵で言っている」と説明。その上で「文書が来た以上、経営委のメンツとしても返答しないわけにいかない。返事する際に『(NHK内で)ガバナンスが利いている』だけでは火に油を注ぐ」と指摘。経営委として郵政側に対応するよう主張した。会合では『経営委が返答すべきなのか』との反対も出たが、経営委は会合後、郵政側に厳重注意を報告し、理解を求める文書を送った。」という。

一方、朝日の記事の抜粋は下記のとおりである。こちらには、村田晃嗣の名は出て来ないで、「2トップ」の名のみが出てくる。そして、森下俊三委員長代行(現委員長)の悪役ぶりが際立っている。

会長を注意した10月23日の経営委の議事録は、議論の概要を示した議事経過が公開されているだけで、誰がどんな発言をしたかは明らかにされていない。複数の関係者への取材をもとに当日の議論を再現すると、上田氏の面前で森下氏が「クロ現+」について、「郵政に取材を全然していない」と批判の口火を切る。続編に向けて情報提供を呼びかけるネット動画についても「現場を取材していない。ネットを使う情報は極めて偏っている」と批判を続けた。ほかの委員から「若干商品の説明に誤解を与えるような説明がある」「一方的になりすぎているような気がする」などと批判が続き、石原氏も「(かんぽの販売手法について)詐欺とか押し売りとか、非常に抵抗感があります」と述べた。郵政側に会長名の文書で回答することなど、具体的な対応方法についても話していた。

 あらためて、森下俊三氏に辞任を求める署名運動にご協力をお願いいたします。
 森下氏はNHK経営委員長としてばかりか、NHK経営委員としても不適格であることは明らかですから、私たちは、NHKの自主自律、番組編集の自由を守るために、森下俊三氏に、経営委員の辞任を求めます。
 署名運動のあらましは下記のとおりです。
*署名の第一次集約日:2020年月4月5日(日)
 第二次集約日:2020年月4月30日(木) 必着
*署名は用紙かネットのいずれかでお送りください。
・用紙の郵送先:
〒285-0858 千葉県佐倉市ユーカリが丘2?1?8
      佐倉ユーカリが丘郵便局留
 「森下経営委員の辞任を求める署名運動の会 醍醐 聰」宛て
・署名用紙のダウンロードは→ http://bit.ly/33gfSET から。
*ネット署名: http://bit.ly/2TM7pGj
<ネット署名です>のところにご氏名を記入して「送信」をクリック。
 できるだけ、メッセージもお願いします。
*この署名に関するお問い合わせは、
メール:kikime3025-dame18@yahoo.co.jp
(2020年3月24日)

森下俊三NHK経営委員長の辞任を求める署名にご協力を ー (転載・拡散のお願い)

2020年3月16日

放送法を踏みにじり、NHKの番組制作を妨害した

森下俊三氏のNHK経営委員辞任を求める署名運動

へのご協力のお願い

 民主主義と国民の知る権利を大切とお考えの皆さま
NHKこそは国内最大の影響力を誇るメディアです。かつては、大本営発表の伝声管として天皇制国家の統制に服する存在でしたが、戦後は国家や時の政権から独立し、資本の支配も受けないという、「公共放送」となりました。権力ではなく、主権者国民がこれを監視し育てて行かなければなりません。

しかし、問題だらけの安倍政権は、一貫して人事を通じてのNHKへの介入を画策してきました。ご存じのとおり、NHKの最高意思決定機関が経営委員会です。その12名の経営委員全員が安倍首相の任命によるもので、互選による経営委員長が森下俊三氏。NTT出身で阪神高速道路会長だった財界人。これがとんでもない人物。この人の経営委員辞任を求める署名活動を始めます。念のためですが、経営委員長辞任ではおさまらない。経営委員を辞めなさい、ということなのです。

辞任を求める直接の理由は、この人の露骨な番組制作の妨害行為。明らかな、放送法違反の違法行為です。この人の「クローズアップ現代+」の番組潰しが、到底経営委員としての資格を認めがたいのです。

「クローズアップ現代+」は2018年4月に、日本郵政の悪徳商法を番組に取りあげました。日本郵政は、職員に過酷なノルマを課し、詐欺同然のやり方でかんぽ保険等の不正販売を続けてきたのです。NHKの現場スタッフは、これ以上の消費者被害を出さぬよう、視聴者に警告を発する立派な番組を制作し放送しました。そして、その上で続編の制作に向けて取材を続けていました。

ところが、あろうことか、当時NHK経営委員会の委員長代行であった森下俊三氏は、さらなる不正の発覚を恐れた日本郵政の不当な要求を取り次いで、「クロ現+」の番組の取材と編集に露骨に干渉し、続編の制作を妨害する発言をしたのです。

信じがたい経営委員としての任務違背の違法行為。彼の頭の中のNHKとは、上命下服の指揮系統だけの存在で、政治的権力や社会的強者、あるいは不正不当を批判するジャーナリズムの神髄への理解は皆無なのです。

そもそも「放送法」は、番組の制作と経営とを分離し、経営委員が個別の番組の編集に関与したり、干渉したりする行為を禁じています。にもかかわらず、森下氏は「クロ現+」が続編制作のための取材を続けていたことを知りながら、経営委員会の席上その取材方法を公然と非難する発言を行い、上田良一会長(当時)への厳重注意決議を成立させるまでして、番組制作を妨害しました。

その森下氏が現在のNHK経営委員長ですが、当時の行為についての反省はありません。事実関係の大筋は認めながら、「放送が終わった番組について感想を述べたまでで、干渉はしていない」と開き直っています。ことここに至っては、森下氏の経営委員としての不適格は明らかであるだけでなく、このような郵政への忖度志向人物が、政権から独立したNHKの姿勢を堅持できるとは、到底考えられません。

以上のとおり、森下氏はNHK経営委員長としてばかりか、NHK経営委員としても不適格であることは明らかですから、私たちは、NHKの自主自律、番組編集の自由を守るために、森下俊三氏に、経営委員の辞任を求めます。

署名用紙は、下記のとおりです。

*署名の第一次集約日:2020年月4月5日(日)

 第二次集約日:2020年月4月30日(木) 必着
*署名は用紙かネットのいずれかでお送りください。
 ・用紙の郵送先:
  〒285-0858 千葉県佐倉市ユーカリが丘2?1?8
    佐倉ユーカリが丘郵便局留
  「森下経営委員の辞任を求める署名運動の会 醍醐 聰」宛て
 ・署名用紙のダウンロードは→ http://bit.ly/33gfSET から。
*ネット署名: http://bit.ly/2TM7pGj
  <以下はネット署名です>のところに記入して「送信」をクリック。
  メッセージもお願いします。
*この署名に関するお問い合わせは、
メール:kikime3025-dame18@yahoo.co.jp

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2020年3月16日

NHK経営委員長
森下俊三 様

放送法を踏みにじり、NHKの番組制作を妨害した森下俊三氏の
NHK経営委員辞任を求めます

呼びかけ団体 (2020年3月16日、11時現在)

NHKとメディアを考える滋賀連絡会/NHKとメディアを考える東海の会/NHK問題大阪連絡会/NHK・メディアを考える京都の会/NHK問題を考える奈良の会/NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ/「日本郵政と経営委首脳によるNHK攻撃の構図を考える11.5シンポジウム」実行委員会/NHKとメディアを語ろう・福島/NHKとメディアを考える会(兵庫)/表現の自由を市民の手に 全国ネットワーク/NHK問題を考える岡山の会/NHK問題を考える会・さいたま/政府から独立したNHKをめざす広島の会/放送を語る会/時を見つめる会/NHKをただす所沢市民の会/NHKとメディアの今を考える会/NHKを考える福岡の会/NHKを考えるふくい市民の会

日本郵政は職員に過酷なノルマを課し、詐欺同然のやり方でかんぽ保険等の不正販売を続けてきました。2018年4月、NHKの「クローズアップ現代+」はこの件を取り上げて視聴者に警鐘を鳴らすとともに続編の制作に向けて取材を続けていました。
ところが、あろうことか、当時NHK経営委員会の委員長代行であった森下俊三氏は、さらなる不正の発覚を恐れた日本郵政の不当な要求を取り次いで、「クロ現+」の番組の取材と編集に露骨に干渉し、続編の制作を妨害する発言をしていた事実が明るみに出ました。
そもそも「放送法」は、番組の制作と経営とを分離し、経営委員が個別の番組の編集に関与したり、干渉したりする行為を禁じています。にもかかわらず、森下氏は「クロ現+」が続編制作のための取材を続けていたことを知りながら、経営委員会の席上その取材方法を公然と非難する発言を行い、上田良一会長(当時)への厳重注意決議を成立させるまでして、番組制作を妨害したのです。
現在、森下氏はNHK経営委員長に就任していますが、当時の行為についての反省はなく、「放送が終わった番組について感想を述べたまでで、干渉はしていない」と強弁し、居直っています。ことここに至っては、森下氏の経営委員としての不適格は明らかと指摘せざるを得ません。
そこで、私たちは森下俊三氏に以下のことを求めます。

森下俊三氏は直ちにNHK経営委員を辞任すること

私は上の求めに賛同し、以下のとおり署名します。

氏  名      住     所

(2020年3月16日)

NHKの自主自律の破壊者に成り下がった森下俊三氏の経営委員辞任を要求する

私は、何度もここNHK視聴者部に足を運んで、もの申して来た。決して、個人としての主観的見解を述べに来たのではない。主権者国民の一人として、知る権利を共有する者の代表の一人として意見を述べてきたつもりである。しかし、真摯に耳を傾けてもらったという手応えはない。事態は、どんどん悪化してきている。

私たちの見解の基調はNHKに対する攻撃ではない。あるべき公共放送の主体として、自主自律の姿勢を堅持していただきたいということだ。そのような意気込みをもって番組の制作にあたっているスタッフがおり、よい番組も作られてはいる。ところが、その現場の良心を潰そうというNHKの上層部や、経営委員会がある。私たちは、権力と結託したこのNHK上層部や、経営委員会のありかたを強く批判している。

かつて、NHKは大本営発表の伝声管に過ぎなかった。その負の歴史を徹底して反省し、清算するところから戦後のNHKは再発足した。その理念の根幹には、権力からの干渉を排するジャーナリズム本来の精神がある。権力におもねることのない、自主・自律の精神を貫いてこそ、NHKは国民・視聴者の信頼を得ることが可能となり、そうであってこそ公共放送として存立の意味がある。ところが、今NHKに対する国民の信頼は地に落ちている。公共放送として存立の意味が、危うくなっている。

失われた信頼を回復するためには、国民・視聴者の目に見える形での反省が必要だ。そのために必要不可欠で、しかも最も効果的な具体策が、森下俊三・経営委員会委員長の辞任である。委員長辞任だけでは不十分だ。私たちは、主権者国民を代表する者として、直ちに同氏の経営委員辞任を強く求める。

**************************************************************************

2020年3月9日

NHK経営委員長 森下俊三 様
同  経営委員各位

NHKの自主自律の破壊者に成り下がった森下俊三氏の経営委員辞任を要求する

「日本郵政と経営委首脳によるNHK攻撃の構図を考える11. 5 シンポジウム」実行委員会
世話人:小林 緑(国立音楽大学名誉教授・元NHK経営委員)/澤藤統一郎(弁護士)/杉浦ひとみ(弁護士)/醍醐 聰(東京大学名誉教授・「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」共同代表)/田島泰彦(早稲田大学非常勤講師・元上智大学教授)/皆川 学(元NHKプロデューサー) 

 森下俊三NHK経営委員長はNHKの「かんぽ」関連番組の制作をめぐる私たちの度重なる質問に対し、「個別の番組制作について言及したり、干渉したりした事実はない」と言い続けてきた。しかし、全国紙の取材報道等で、このような回答は虚偽であることが明らかになった。
森下氏をはじめ、複数の経営委員は上田良一会長(当時)の面前で「番組の作り方が問題だ、番組の取材は稚拙で、取材行為がない」などと、激しく非難した。しかも、それは事実に反する非難だった。経営委員が個別の番組の編集に干渉することを禁じた「放送法」第32条を、これほどあからさまに踏みにじるのは前代未聞の行為である。
そもそも、高齢者らを食い物にした悪徳商法の当事者からのクレームを取り継ぎ、彼らの意向にそって番組制作に口出しするのは、NHKの自主自律を経営委員長自らが蹂躙する行為である。
さらに、森下委員長は3月5日の衆議院委員会質疑で、前記のような発言をしたことを認めながら、その時のやり取りを記録した経営委員会議事録の公開を拒否した。公開することによって委員会の業務の遂行に支障が出ると委員会が判断した場合は、議事録を非公開にできるという内規を盾にしたものだった。しかし、こうした対応は内規を放送法の上に置き、放送法が義務付けた情報公開を骨抜きにするものであり、とうてい許されない。

申し入れ

以上から、私たちは、次の3点を森下俊三経営委員長ならびに経営委員会に要求する。

1.複数の経営委員が個別の番組の編集に干渉する発言をしたと言われている2018年10月23日の経営委員会の議事録(議事概要ではなく発言者の氏名、発言の内容を記した議事録)を
全面公開すること。
2.NHKの自主自律、番組編集の自由、NHKの経営を透明なものにするための情報公開の趣旨を定めた「放送法」を理解する意思と能力を持ち合わせていないと判断するほかない森下俊三氏は、経営委員長はもとより、経営委員の職も自ら、直ちに辞すること。
3.経営委員会は上田良一会長(当時)に対する謂れのない厳重注意を直ちに取り消すこと。

以上

**************************************************************************

2020年3月9日

NHK監査委員会 御中

森下経営委員長ほか経営委員会のコンプライアンス違反の疑義について厳正な監査と対処を要請します

「日本郵政と経営委首脳によるNHK攻撃の構図を考える11. 5 シンポジウム」実行委員会

世話人:小林 緑(国立音楽大学名誉教授・元NHK経営委員)/澤藤統一郎(弁護士)/杉浦ひとみ(弁護士)/醍醐 聰(東京大学名誉教授・「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」共同代表)/田島泰彦(早稲田大学非常勤講師・元上智大学教授)/皆川 学(元NHKプロデューサー) 

目下、森下俊三NHK経営委員長ほか数名の経営委員が、NHKの「かんぽ」関連番組をめぐって「放送法」に違反する疑いが濃厚な発言をしていたことが報道や国会で大きく取り上げられています。
私たちもこの問題を重視し、二度にわたって経営委員会に質問書を提出しましたが、その都度、経営委員会からは、「個別の番組制作について言及したり、干渉したりした事実はない」という、誠意のない全面否定の回答が届きました。
ところが、3月5日の国会質疑の場で、森下氏は「放送法」に違反する疑いが濃厚な発言をした事実を認めました。これは私たちへの回答が虚偽であったことを意味します。
また、経営委員会は2018年10月23日開催の経営委員会会合において、上田良一会長(当時。以下、同じ)にガバナンス上の重大な問題があったとして「厳重注意」をしました。
しかし、経営委員会が約1年経ってから公表したその日の会合の「議事概要」には、会長陪席の下、監査委員会から、協会の対応に組織の危機管理上の瑕疵があったとは認められない旨の報告があったと記され、上田会長は、こうした監査委員会の報告も引いて、当初は厳重注意に異議を唱えていた、と伝えられています。私たちは、こうした経過にも重大な関心を持っています。
そこで、私たちは本日、森下経営委員長ならびに経営委員会宛てに改めて同封別紙のような質問書を提出しますが、それとあわせて、貴委員会に対し、以下のような申し入れをいたします。
貴委員会がこの申し入れに応えて、真摯な監査をされ、その結果をNHK内外に公表されることによって、失墜したNHKの信頼回復に尽力くださるよう強く要望します。

申し入れ

1.「放送法」第43条?第46条、「日本放送協会定款」第26条?第28条、「監査委員会規程」第4条第2項の定めにもとづき、NHKのかんぽ報道をめぐる森下経営委員長ほか経営
委員の言動に、法令・定款(注)に違反する点がなかったかどうかを厳正に調査して、その結果を公表すること。
(注) ここでは、「放送法」第4条(放送番組編集に対する法的権限を持たない者の干渉の禁止)、第32条(個別の放送番組の編集その他の協会の業務に対する経営委員の関与の禁止)、第41条(議事録の公表)ならびに「経営委員会委員の服務に関する準則」第2条(服務基準)、第4条(忠実義務)、第5条(信用失墜行為の禁止)

2.経営委員会が上田会長に対して「厳重注意」をした際の委員会の手続きは適正だったか、「厳重注意」は合理的な根拠にもとづくものだったかどうかを監査し、その結果を公表すること。

以上

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各 位

「本郷・湯島九条の会」石井 彰

不思議な空模様のもとでの昼街宣になりました。朝から降っていた雨がわたしたちが街宣をおこなっている間は止んでしまい、終わって暫くするとまた降ってきました。こんなことがあるのですね。

8人の結集で、署名は9筆、チラシは60枚でした。署名していると話がはずみ、どうしてみんな関心をもってくれないのか、選挙に行くといいのにね、といったことを署名をしながらはなしてくれました。こんな方もいました。「わたしたちはがんばります、って、上から目線の言い方は良くないね」といったご婦人がいました。以て瞑すべしです。

カミユの『ペスト』が売れています。新型コロナウイルス感染症に恐怖・不安を抱いているヒトが多くいることの証拠です。安倍政権はあてにできません。いち日も早く「わたしたちの政府」を樹立しなければなりません。

(2020年3月10日)

 

新体制のNHK経営委員会に、再度の意見と質問を申しあげる。

去る1月10日、NHK経営委員会に赴き、「新体制のNHK経営委員会に対する意見と質問」書を提出してきた。同書面は、同日付けの当ブログに掲載した。当然に、深い反省が求められる新体制のNHK経営委員会に、反省の姿勢が見られないのではないか、という危惧にもとづいてのことである。

「クローズアップ現代+」の制作フタッフは、郵政グループによるかんぽ生命不正販売の事実を生々しく暴いた。これを日本郵政の上級副社長鈴木康雄が、元総務次官の肩書にものを言わせてもみ消しに動いた。情けないことに、NHK経営委員会がこれに同調し、NHK会長がこれに屈した。この事件の後、かんぽ生命不正販売の事実は「クロ現+」の報道の通りであったことが確認され、2019年暮れに、日本郵政グル―プ3社の社長が引責辞任することとなり、更に鈴木康雄の辞任も発表された。また、NHK経営委員会も、石原経営委員長から森下俊三新委員長に交替した。この新体制の真摯な反省の有無が問題なのだ。

この質問に対して、1月29日付で、「回答」が寄せられた。しかし、その形式も内容も、およそ「回答」の名に値するものてははない。具体的な質問項目には「無回答」。「不真面目、不誠実な貴委員会の態度に失望と憤りを感じざるを得ません」と再質問せざるを得ない内容である。国会における安倍首相のはぐらかし答弁を彷彿とさせるもの。

昨日(2月15日)付で、あらためて最質問書を提出した。われわれは、主権者国民や視聴者を代表して、NHK経営委員会にその姿勢を問い、質問をしている。是非とも、誠実にこれに答えていただきたいと思う。公共放送事業の健全性は、国民の知る権利にも、日本の民主主義にも関わる重大問題なのだから。

以下に、本年1月10日付「質問書」、同月29日付「回答」、2月15日付「最質問書」を各掲載する。

なお、私は、「経営」と「制作」の分離は当然と考えている。分離とは、「制作」が「経営」の意向を気にすることなく、思う存分活動できること。そのためには、「経営」は、外部から制作への圧力を受けとめる防波堤でなければならない。
NHKにおけるコンプライアンスとは憲法と一体となった放送法の理念を忠実に守って、国民の知る権利に奉仕すること。ガバナンスとは、そのために必要な制度の運営に幹部が責任を果すべきことにほかならない。上命下服の経営秩序をコンプライアンスと言い、あるいはガバナンスと言って現場を締めつけているのなら、明らかに、そんなものはメディア本来のありかたには有害というしかない。
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2020年1月10日

NHK経営委員長 森下俊三 様
同経営委員各位

「日本郵政と経営委首脳によるNHK攻撃の構図を考える
11. 5 シンポジウム」実行委員会

世話人:小林 緑(国立音楽大学名誉教授・元NHK経営委員)/澤藤統一郎(弁護士)/杉浦ひとみ(弁護士)/醍醐 聰(東京大学名誉教授・「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」共同代表)/田島泰彦(早稲田大学非常勤講師・元上智大学教授)/皆川 学(元NHKプロデューサー) 

新体制のNHK経営委員会に対する意見と質問

2019年12月27日、日本郵政グル―プ三社長が引責辞任し、更に鈴木康雄日本郵政上級副社長の辞任も発表されました。私たちは、鈴木副社長がNHK「クローズアップ現代+」の「かんぽ不正問題」続編放送に対し不当な圧力を掛け続けたことを批判してきましたが、それとともにNHK経営委員会が、副社長の「かんぽ不正」もみ消しに加担した責任は重いと考えます。
ところが、2018年9月25日、鈴木副社長と面会し、日本郵政からの抗議を経営委員会に取り次ぐなど続編の放送中止に加担した森下俊三氏が、あろうことか新しい経営委員長に選ばれました。しかも森下氏は、反省するどころか、今なお筋違いな「ガバナンス論」を盾に、上田NHK会長への厳重注意を正当化し続けています。森下氏は、12月24日の経営委員長就任記者会見で、次のように発言しました。「現場が”経営と制作は分離している”と認識しているとしたら、ガバナンス上の大変な問題である」。私たちはこの発言は重大な誤りであり、NHK経営委員長としての資格に欠けた認識であると考えます。
以下、私たちの見解を述べ、貴職と経営委員会の回答を求めます。

別の市民団体が2019年10月15日に、石原NHK経営委員長(当時。以下、同じ)、森下委員長職務代行者(同上)、経営委員各位に提出した質問書、「日本郵政によるNHKの番組制作への介入に係る経営委員会の対応に関する質問」に対して、石原経営委員長と貴委員会は10月29日、回答をされました。そこでは、経営委員会は、NHKの自主自律を損なった事実はないとして、次のように表明されています。
「去年9月25日に森下委員長職務代行者が鈴木副社長と面会した後、経営委員会は、昨年10月に郵政3社から書状を受理し、10月9日、23日に経営委員で情報共有および意見交換を行った結果、経営委員会の総意として、ガバナンスの観点から、会長に注意を申し入れました。 なお、放送法第32条の規定のとおり、経営委員会が番組の編集に関与できないことは十分認識しており、自主自律や番組の編集の自由を損なう事実はございません。」
この回答に対する私たちの見解は以下のとおりです。

森下職務代行者は、日本郵政三社の社長が連名で経営委員会あてに文書を送った10日前に日本郵政鈴木康雄上級副社長と個別に面会し、NHKへの不信を聞き取り、正式に経営委員会に申し入れるよう伝えたとされています。こうした行為は、経営委員が、自社商品の不正販売が社会的に大きな問題となり、当該問題を取り上げたNHK番組の取材対象となった法人の首脳と非公式に面会し、そこで聞き取ったクレームを経営委員会に取り次ぎ、続編の放送計画に影響を与えた行為ですから、「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることはない」と定めた「放送法」第3条に抵触します。また、NHKの全役職員は「放送の自主・自律の堅持が信頼される公共放送の生命線であるとの認識に基づき、全ての業務にあたる」と定めた「NHK放送ガイドライン2015」に明確に違反しています。
「ガバナンスの観点」とは、当初当該番組幹部が郵政に出向いて「番組制作と経営は分離し、会長は番組制作に関与しない」と発言したことを批判してのことと思われますが、放送法第51条は、「会長は協会を代表し、・・・業務を総理する」とあって、これはいわゆる「編集権」が意味する番組内容に関する決定権が会長にあることは意味していません。実際の業務の運営は、放送総局長に分掌され、その上で個別の番組については、番組担当セクションが責任を持って取材・編集に当たっています。
「経営と制作の分離」とは、個別の番組に対して経営者が介入し、政治的判断でゆがめることのないよう、長い言論の歴史の中で培われてきた不文律で、一部の独裁的国家を除いて、世界のジャーナリズムではスタンダードのシステムです。経営委員会が放送法で個別番組への介入を禁じられているのも同様の所以です。
森下俊三新経営委員長は、職務代行者時代、「ガバナンスの強化」を理由とすれば、行政や企業が経営委員会を通して放送に介入できる回路を作ってしまいました。また経営委員会は「総意」としてそれを追認してしまいました、「コンプライアンスの徹底」が求められるのは、経営委員会自身だと考えます。そこで質問です。

[質問―1] 今後も、個別の番組について、「ガバナンスの問題」として申し入れることはあり得ますか?

[質問―2] 森下氏は、経営委員会の席上で、「ネットで情報を集める取材方法がそもそもおかしい。非はNHKにある」と発言しました。しかし、ネットで情報提供を呼び掛けることは「オープンジャーナリズム」の名で放送業界では広く定着している手法です。森下氏は今も「非はNHKにある」と考えていますか。
 また、取材も番組編集の一環ですから、上記のような森下氏の言動は、「放送法」が禁じたNHKの番組編集への経営委員の干渉に当たると私たちは考えます。森下氏の見解をお聞かせ下さい。

[質問―3] 今回経営委員として異例ともいえる三選をされた長谷川三千子氏は、「2012年安倍晋三総理大臣を求める民間人有志の会」の代表幹事に名前を連ね、経営委員就任時に自らを「安倍氏の応援団」と公言されました。政治的公平が求められる経営委員として、真に適格性があるとお考えですか。
「経営委員会委員の服務に関する準則」は不偏不党の立場に立つことを謳い(第2条)、「経営委員会委員は、日本放送協会の信用を損なうような行為をしてはならない」(第5条)と定めていますが、上記のような発言を公開の場で行うのはNHKの不偏不党、政治からの自律に対する視聴者の信頼を失墜させるものだと私たちは考えます。長谷川委員の見解をお聞かせ下さい。

以上の質問に別紙住所宛に、1月23日までに各項目に沿ってご回答下さるようお願いします。誠実な回答をお待ちします。

以上

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2020年1月29日

 貴会より、経営委員長、経営委員宛てにいただいた質問書に対し、森下経営委員長の指示を受け、以下のとおり回答させていただきます。
 本件は、郵政3社からの書状に、「クローズアップ現代+」のチーフ・プロデューサーの発言として「番組制作と経営は分離しているため番組制作について会長は関与しない」とあり、ガバナンスの問題についての指摘があったため、あくまでガバナンスの問題として検討、対応したものです。放送法32条の規定のとおり、経営委員会が番組の編集に関与できないことは十分認識しており、自主自律や番組の編集の自由を損なう事実はありません。
 なお、経営委員は、放送法31条で、「公共の福祉に関し公正な判断をすることができ」ることが、その資質として求められており、経営委員会は、放送が公正、不偏不党な立場に立って国民文化の向上と健全な民主主義の発達に資するべきであるという考えにおいて一致しており、各委員ともさまざまな課題に対して、公正に判断していると認識しております。

以上

日本放送協会経営委員会事務局

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2020年2月15日

NHK経営委員長 森下俊三 様
同経営委員各位

「日本郵政と経営委首脳によるNHK攻撃の構図を考える
11. 5 シンポジウム」実行委員会

世話人:小林 緑(国立音楽大学名誉教授・元NHK経営委員)/澤藤統一郎(弁護士)/杉浦ひとみ(弁護士)/醍醐 聰(東京大学名誉教授・「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」共同代表)/田島泰彦(早稲田大学非常勤講師・元上智大学教授)/皆川 学(元NHKプロデューサー)

1月29日回答への私たちの意見表明と再質問

1月29日付けの貴委員会からの回答を拝見しましたが、私たちが提出した3項目の質問には「無回答」です。こうした不真面目、不誠実な貴委員会の態度に失望と憤りを感じざるを得ません。

私たちは、1月10日付の「意見と質問」で、「経営と番組制作の分離」は、長い言論の歴史の中で培われてきた不文律で、世界のジャーナリズムではスタンダードの原理であることを指摘しました。さらに、貴委員会が「ガバナンスの強化」を理由に「制作」に介入できる前例を作ったことを批判しました。
ところが貴委員会の回答では、「経営と制作の分離」原則は認めていながら、貴委員会の森下職務代行者(当時)が、「クローズアップ現代+」の取材対象者である日本郵政副社長(当時)の鈴木康雄副社長の求めに応じて同氏と個別に面会し、鈴木氏の意向を取り次いで、当該放送番組の続編放送の見合わせを図った行為に対して、「ガバナンスの問題として検討、対応したもの」と論点をすり替えています。これは「ガバナンス」を口実にした制作現場への介入行為を追認したものです。

私たちは、現実に起きた続編番組の「放送見合わせ」が、貴経営委員会が「ガバナンスの問題として検討」した結果で起きたことと回答されたことに注目します。
「ガバナンス」とは、株主や経営者による企業統治の手法です。自主・自律を旨とする放送事業体に適用するものでは本来ありません。2006年8月3日、貴委員会が公表された「NHKのガバナンスの在り方」についての見解でも、「民間営利企業と公共放送事業を同列に位置付けて論じることには違和感がある」と記されています。ジャーナリズムの現場では、その記事や放送が、時には「社論」や「経営方針」と対立することがしばしば起こりえます。その時に優先されるものこそ、現場の記事や放送なのです(1970年山陽新聞地位保全仮処分訴訟)。公共放送としての使命を託されているNHKでは、政権や行政との距離を保つため、特にこのことが求められます。

「経営と制作の分離」でいえば、「経営」こそが、外部からの「制作」への圧力を受け止める防波堤でなければなりません。あえてNHKにとっての「コンプライアンス」とは何かといえば、「憲法と一体である放送法の理念を忠実に守り、国民の知る権利に奉仕すること」、ガバナンスとは「そのために必要な制度の運営に、幹部が責任を果たすこと」です。上命下服の民間営利企業の経営秩序をコンプライアンスといい、ガバナンスと称して番組制作現場を締め付けるのなら、そのような統治・統制はメディアの世界では有害以外の何ものでもありません。
戦前の社団法人日本放送協会が大本営放送局として、どれほどの日本人とアジアの人々を無惨な死に追いやったか。その反省の上に戦後のNHKは特殊法人としてスタートを切ったことをNHK経営委員会は肝に銘ずべきと考えます。

2019年12月9日の記者会見で、石原進経営委員長(当時)は、NHK会長を上田良一氏から前田晃伸氏に交代させる理由として「かんぽ報道」についての「ガバナンス問題」があったことをあげ、次期会長には「ガバナンス強化に期待が持てる」と述べました。私たちは、5代続けて財界出身者がNHK会長に就任するという事態に危惧を覚えます。「ガバナンス強化」を名目に、放送現場を監視し、「ボルトとナットで締め付ける」ことを期待されるような営利企業出身の会長、経営委員長は公共放送にとって有害でしかありません。
昨年、貴委員会は、「かんぽ不正問題」をいち早く報道した番組について、郵政三社の意を受け、続編放送の見送りを図るという戦後放送史上恥ずべき背信行為を行いました。私たちの「意見と質問」に対しても、「経営と制作の分離」原則を認めながら、「ガバナンス」を理由とした介入行為を追認しています。2重基準です。

改めてそれぞれの質問項目(下記)を提出しますので、誠実な回答を求めます。
書面によるご回答の締め切り日は3月5日でお願いいたします。

<記>

【質問?1】「ガバナンスの問題」の共通理解について
公共放送としてのNHKは、「憲法と一体である放送法の理念を忠実に守り、国民の知る権利に奉仕すること」こそがその使命であり、ガバナンスとは「そのために必要な制度の運営に、幹部が責任を果たすこと」、つまり、外部からの「制作」への圧力を受け止め3
る防波堤であることがその中心であると考えますが、貴委員会のお考えは異なりますか。異なる場合にはどう異なるのかをお答えください。

【質問―2】今後も、本件同様の個別の番組について、「ガバナンスの問題」として申し入れることはあり得ますか?

【質問―3】森下氏は、経営委員会の席上で、「ネットで情報を集める取材方法がそもそもおかしい。非はNHKにある」と発言しました。しかし、ネットで情報提供を呼び掛けることは「オープンジャーナリズム」の名で放送業界では広く定着している手法です。森下氏は今も「非はNHKにある」とのご発言を維持されていますか。
また、取材も番組編集の一環ですから、上記のような森下氏の言動は、「放送法」が禁じたNHKの番組編集への経営委員の干渉に当たると私たちは考えます。森下氏の見解をお聞かせ下さい。

【質問―4】今回経営委員として異例ともいえる三選をされた長谷川三千子氏は、「2012年安倍晋三総理大臣を求める民間人有志の会」の代表幹事に名前を連ね、経営委員就任時に自らを「安倍氏の応援団」と公言されました。
政治の各分野の人事で首相との距離が問われていますが、政治的公平が求められる経営委員として、真に適格性があるとお考えですか。

以上

(2020/02/16)

 

新体制のNHK経営委員会に意見と質問を申しあげる。

本日(1月10日)、NHK経営委員会に赴き、下記の「新体制のNHK経営委員会に対する意見と質問」書を提出してきた。この意見をご覧いただけたら、申し入れの趣旨がお分かりいただけようが、新体制のNHK経営委員会に反省の姿勢が見られないのではないか、ということである。

「クローズアップ現代+」の制作フタッフは、郵政グループによるかんぽ生命不正販売の事実を生々しく暴いた。これを日本郵政の上級副社長鈴木康雄が、元総務次官の肩書にものを言わせてもみ消しに動いた。情けないことに、NHK経営委員会がこれに同調し、NHK会長がこれに屈した。この事件の後、かんぽ生命不正販売の事実は「クロ現代+」の報道の通りであったことが確認され、昨年暮れに、日本郵政グル―プ3社の社長が引責辞任することとなり、更に鈴木康雄の辞任も発表された。また、NHK経営委員会も、石原経営委員長から森下俊三新委員長に交替した。この新体制の真摯な反省の有無が問題なのだ。

本日、提出に出向いたのは醍醐聰さん、小田桐誠さん、渡辺真知子と私の4人。応接されたのは、経営委員会事務局副部長以下3名の事務職員。1時間に近い口頭でのやり取りがあった。

最初に醍醐さんが各経営委員に対する「意見と質問」書を提出し、そのコピーを配布して「意見」の趣旨を詳細に説明した。「質問」個所は全文を読み上げた。

次いで、小田切さんが自己紹介の後、ジャーナリズム本来のありかたからみてのNHK経営委員会のありかたの批判をし、渡辺さんも短く国民の意見を代表するものとの立場からの短い意見を述べた。

本日の私の発言の大要は以下のとおり。このように整理された形でしゃべったわけではないが、まとめればこう言うこと。

私は、これまでNHKのあり方には厳しい批判をしてきた。しかし、けっして一面的に批判だけをしてきたつもりはない。実は、NHKには親近感をもっている。本来あるべきNHKになっていただきたいのだ。
 私は、中退ではあるが東大文学部社会学科の出身。当時の学科の同級生は圧倒的にジャーナリズム志望で、中でもNHK就職希望者が多かった。もしかしたら正確でないかも知れないが、私の記憶では31名の級友の内9名がNHKに就職した。私がそのうちの1人だった可能性もある。当時、ジャーナリスト志望の若者には、NHKは輝く存在だった。
 しかし、今、どうだろうか。NHKは若者にとっての輝きを失っているのではないだろうか。政権との距離が近く、財界との関係のみ深い。ジャーナリズム本来の仕事ができる環境と言えるだろうか。とりわけ、今回のかんぽ不正問題を、現場スタッフが見事な取材をし報道をしたことに対して、取材先の圧力を受けて経営委員会とNHK会長が現場を押さえ込んだ。国民のNHKに対する信頼は地に落ちている。これを回復するための、真摯な反省の弁を聞きたい。
 私は、優れた現場スタッフが、存分に働けるNHKであって欲しいと願っている。けっして、どんな回答でも揚げ足をとってやろうなどと思っているわけではない。国民世論を代表する立場で、経営委員諸氏の真摯な回答をお待ちしている。

? なお、私は、「経営」と「制作」の分離は当然と考えている。分離とは、「制作」が「経営」の意向を気にすることなく、思う存分活動できること。そのためには、「経営」は、外部から制作への圧力を受けとめる防波堤でなければならない。
 NHKにおけるコンプライアンスとは憲法と一体となった放送法の理念を忠実に守って、国民の知る権利に奉仕すること。ガバナンスとは、そのために必要な制度の運営に幹部が責任を果すべきこと。上命下服の経営秩序をコンプライアンスと言いガバナンスと言って現場を締めつけているのなら、明らかに、そんなものはメディアには有害というしかない。

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?2020年1月10日

NHK経営委員長 森下俊三 様
同経営委員各位

「日本郵政と経営委首脳によるNHK攻撃の構図を考える
11. 5 シンポジウム」実行委員会

世話人:小林 緑(国立音楽大学名誉教授・元NHK経営委員)/澤藤統一郎(弁護士)/杉浦ひとみ(弁護士)/醍醐 聰(東京大学名誉教授・「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」共同代表)/田島泰彦(早稲田大学非常勤講師・元上智大学教授)/皆川 学(元NHKプロデューサー) 

新体制のNHK経営委員会に対する意見と質問

2019年12月27日、日本郵政グル―プ三社長が引責辞任し、更に鈴木康雄日本郵政上級副社長の辞任も発表されました。私たちは、鈴木副社長がNHK「クローズアップ現代+」の「かんぽ不正問題」続編放送に対し不当な圧力を掛け続けたことを批判してきましたが、それとともにNHK経営委員会が、副社長の「かんぽ不正」もみ消しに加担した責任は重いと考えます。
ところが、2018年9月25日、鈴木副社長と面会し、日本郵政からの抗議を経営委員会に取り次ぐなど続編の放送中止に加担した森下俊三氏が、あろうことか新しい経営委員長に選ばれました。しかも森下氏は、反省するどころか、今なお筋違いな「ガバナンス論」を盾に、上田NHK会長への厳重注意を正当化し続けています。森下氏は、12月24日の経営委員長就任記者会見で、次のように発言しました。「現場が”経営と制作は分離している”と認識しているとしたら、ガバナンス上の大変な問題である」。私たちはこの発言は重大な誤りであり、NHK経営委員長としての資格に欠けた認識であると考えます。
以下、私たちの見解を述べ、貴職と経営委員会の回答を求めます。

別の市民団体が2019年10月15日に、石原NHK経営委員長(当時。以下、同じ)、森下委員長職務代行者(同上)、経営委員各位に提出した質問書、「日本郵政によるNHKの番組制作への介入に係る経営委員会の対応に関する質問」に対して、石原経営委員長と貴委員会は10月29日、回答をされました。そこでは、経営委員会は、NHKの自主自律を損なった事実はないとして、次のように表明されています。
「去年9月25日に森下委員長職務代行者が鈴木副社長と面会した後、経営委員会は、昨年10月に郵政3社から書状を受理し、10月9日、23日に経営委員で情報共有および意見交換を行った結果、経営委員会の総意として、ガバナンスの観点から、会長に注意を申し入れました。 なお、放送法第32条の規定のとおり、経営委員会が番組の編集に関与できないことは十分認識しており、自主自律や番組の編集の自由を損なう事実はございません。」
この回答に対する私たちの見解は以下のとおりです。

森下職務代行者は、日本郵政三社の社長が連名で経営委員会あてに文書を送った10日前に日本郵政鈴木康雄上級副社長と個別に面会し、NHKへの不信を聞き取り、正式に経営委員会に申し入れるよう伝えたとされています。こうした行為は、経営委員が、自社商品の不正販売が社会的に大きな問題となり、当該問題を取り上げたNHK番組の取材対象となった法人の首脳と非公式に面会し、そこで聞き取ったクレームを経営委員会に取り次ぎ、続編の放送計画に影響を与えた行為ですから、「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることはない」と定めた「放送法」第3条に抵触します。また、NHKの全役職員は「放送の自主・自律の堅持が信頼される公共放送の生命線であるとの認識に基づき、全ての業務にあたる」と定めた「NHK放送ガイドライン2015」に明確に違反しています。
「ガバナンスの観点」とは、当初当該番組幹部が郵政に出向いて「番組制作と経営は分離し、会長は番組制作に関与しない」と発言したことを批判してのことと思われますが、放送法第51条は、「会長は協会を代表し、・・・業務を総理する」とあって、これはいわゆる「編集権」が意味する番組内容に関する決定権が会長にあることは意味していません。実際の業務の運営は、放送総局長に分掌され、その上で個別の番組については、番組担当セクションが責任を持って取材・編集に当たっています。
「経営と制作の分離」とは、個別の番組に対して経営者が介入し、政治的判断でゆがめることのないよう、長い言論の歴史の中で培われてきた不文律で、一部の独裁的国家を除いて、世界のジャーナリズムではスタンダードのシステムです。経営委員会が放送法で個別番組への介入を禁じられているのも同様の所以です。
森下俊三新経営委員長は、職務代行者時代、「ガバナンスの強化」を理由とすれば、行政や企業が経営委員会を通して放送に介入できる回路を作ってしまいました。また経営委員会は「総意」としてそれを追認してしまいました、「コンプライアンスの徹底」が求められるのは、経営委員会自身だと考えます。そこで質問です。

[質問―1] 今後も、個別の番組について、「ガバナンスの問題」として申し入れることはあり得ますか?

[質問―2] 森下氏は、経営委員会の席上で、「ネットで情報を集める取材方法がそもそもおかしい。非はNHKにある」と発言しました。しかし、ネットで情報提供を呼び掛けることは「オープンジャーナリズム」の名で放送業界では広く定着している手法です。森下氏は今も「非はNHKにある」と考えていますか。
 また、取材も番組編集の一環ですから、上記のような森下氏の言動は、「放送法」が禁じたNHKの番組編集への経営委員の干渉に当たると私たちは考えます。森下氏の見解をお聞かせ下さい。

[質問―3] 今回経営委員として異例ともいえる三選をされた長谷川三千子氏は、「2012年安倍晋三総理大臣を求める民間人有志の会」の代表幹事に名前を連ね、経営委員就任時に自らを「安倍氏の応援団」と公言されました。政治的公平が求められる経営委員として、真に適格性があるとお考えですか。
「経営委員会委員の服務に関する準則」は不偏不党の立場に立つことを謳い(第2条、) 「経営委員会委員は、日本放送協会の信用を損なうような行為をしてはならない」(第5条)と定めていますが、上記のような発言を公開の場で行うのはNHKの不偏不党、政治からの自律に対する視聴者の信頼を失墜させるものだと私たちは考えます。長谷川委員の見解をお聞かせ下さい。

以上の質問に別紙住所宛に、1月23日までに各項目に沿ってご回答下さるようお願いします。誠実な回答をお待ちします。

以上
(2020年1月10日)

N国の興亡が教えるもの

思いもかけない現実の出来が、認識を変え意見を変える。「NHKから国民を守る党」なるものの出現が、私には衝撃だった。そして、自分の公共放送に対する見解が、このような人びとと似通って見られることに大いに戸惑い、かつ恥じた。私とN国、どこがどのように意見が違うのだろうか。どのようにすれば、理念の相違を押し出せるのだろうか。

この党の自らの定義が、「NHKにお金を支払わない方を全力で応援・サポートする政党」であり、それがメインのキャッチフレーズにもなっている。「NHKをぶっ壊す!」とともに、これが一定の国民の胸に響いたのだ。

立花孝志は、ホームページの「党首あいさつ」において、「NHKから国民を守る党は、文字通りNHKから国民をお守りする為の党です。NHKが行っている戸別訪問は、勝手にNHKの電波を各世帯に送りつけて、NHKを見ていなくても集金する送りつけ商法です。…」などと言っている。

結局、N国とは「NHK受信料の不当な集金から国民の経済的利益を守る党」である。けっして、「政権の走狗としてのNHKの本質をぶっ壊す」とは言わない。「権力に従順なNHKの基本体質を批判する」とも、「大本営発表放送の偏頗から民主主義と国民を守る」ともいうものではないのだ。

私は、宗旨を変えた。NHKを一塊の均質の組織として見ることを止めよう。そのような批判の仕方を止めよう。NHKを二層の対立物として捉えなければならない。「権力に操作され、権力を忖度し、権力と癒着するNHK上層部」と、「上層部との軋轢の中で、良質の番組を制作しようと努力している現場フタッフ」との二層の構造。上層部を批判し、現場を励まさなければならない。

本年7月の参院選におけるN国の得票は、NHKの受信料徴収に国民の根深い反感があることを教えた。NHKは、そのことに対する反省はすべきだろう。だが、所詮は右翼の別働隊に過ぎないN国の攻撃に萎縮する必要はない。そもそも、N国の賞味期限が長いはずはない。

立花は、売名目的での立候補を繰り返している。最近のものが、今月(12月)8日投票の小金井市長選挙。開票結果は以下のとおり。N国・立花の惨敗である。

1 当 西岡真一郎 無所属 18,579
2 落 かわの律子 無所属 10,759
3 落 森戸よう子 無所属 10,399
4 落 立花 孝志 N国    678

市区長選挙における供託金の金額は100万円で、供託金没収点は有効投票総数の10分の1。今回市長選の投票総数は40,904だったから、その10%は4,090票である。立花は、供託金没収点の6分の1の得票もできなかった。

この選挙における立花を、典型的な「売名目的の泡沫候補」と呼んで差し支えなかろう。立花のごとき泡沫候補にも立候補の権利は保障されている。100万円で公営選挙を利用した宣伝売名行為ができれば安いものである。それでも得票はわずか678。先の長くないことを示唆している。

ところで、こんな裁判例があることを初めて知った。

一昨年(2017年)7月19共同配信の記事。

NHK提訴は「業務妨害」 受信料訴訟原告に賠償命令
受信料の徴収を巡り勝訴の見込みがない裁判を女性に起こさせたとして、NHKが政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志代表らに弁護士費用相当額の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は19日、請求通り54万円の支払いを命じた。

山田真紀裁判長は判決理由で「NHKの業務を妨害するため訴訟に関与しており、裁判制度を不当に利用する目的があった」と指摘した。

立花氏は元NHK職員。判決によると、2015年8月、NHKが受信料徴収業務を委託した業者の従業員が千葉県内の女性宅を訪問。女性は立花氏に電話で相談し、2日後に慰謝料10万円の支払いをNHKに求め松戸簡裁に提訴した。訴訟は千葉地裁松戸支部に移送され、女性が敗訴した。

千葉県内の女性がNHKからの受信料請求を受けて立花に電話で相談したところ、立花のアドバイスは提訴だった。女性は、立花の指示のとおりに、NHKを被告として10万円の慰謝料支払いを求める損害賠償請求訴訟を提起して敗訴した。ところが、ことはこれで終わらなかった。NHKは、この女性と立花を逆に訴えたのだ。今度の舞台は東京地方裁判所。前訴10万円の請求の棄却を求める応訴の費用として、NHKが委任した弁護士に支払った弁護士費用54万円を支払えという請求。なんと、地裁は、その満額を認めたという記事である。

この裁判は上級審で逆転せずに、確定した。実は、もう一つ同様の裁判があり、NHKは立花に108万円の強制執行が可能だという。NHKは近々執行に踏み切るとも言っている。

繰り返すが、10万円の慰謝料請求という前訴の提起を違法として、提訴者に54万円の応訴費用の損害の賠償を認めたのだ。DHCスラップ「反撃」訴訟の認容額は110万円であるが、応訴費用(弁護士費用)として認められたのは、そのうちの10万円に過ぎない。これが、常識的な水準。N国訴訟の理由には「(立花は)NHKの業務を妨害するため訴訟に関与しており、裁判制度を不当に利用する目的があった」と指摘しているという。

軽々にするスラップの提訴は、ブーメラン効果を伴う。うっかり提訴・いい加減提訴は、損害賠償責任の原因となる。そのやばさを、立花が身をもって教えてくれている。最近では、出資法違反疑惑の金集めまでも。また、教訓を積み重ねてくれることになるにちがいない。それにしても、こんな事態では、N国の明日はなかろう。
(2019年12月13日)

次期NHK会長は、政治権力に毅然と対峙できる人物を。

NHK経営委員会御中

「次期NHK会長選考にあたり
独立した公共放送に相応しい会長の選任を求める緊急要請」

2019年12月4日

呼びかけ人(五十音順。*印は世話人)      
梓澤和幸(弁護士)               
浮田 哲(羽衣国際大学教授)          
岡本 厚(元『世界』編集長)          
小林 緑(国立音楽大学名誉教授/元NHK経営委員)
澤藤統一郎(弁護士)              
杉浦ひとみ(弁護士)              
醍醐聡(東大名誉教授)

*田島泰彦(早稲田大学非常勤講師/元上智大学教授)
*服部孝章(立教大学名誉教授)  

 来年1月に上田良一会長の任期が満了するのに伴い、経営委員会は次期NHK会長の選考を進めています。
 現在の上田会長、石原進経営委員会委員長の体制の下で、かんぽ生命保険不正販売を報じた「クローズアップ現代+」(2018年4月24日)に対して、日本郵政からの理不尽異様な抗議を受け入れて、経営委員会が会長を厳重注意し、会長も日本郵政に謝罪することになりました。こうしたなかで、肝心の続編の放送は1年数か月も延期され(2019年7月31日)、情報提供のための2種4本(更新版も含む)の動画も削除されました(その後、1年以上過ぎた2019年10月18日から公開に)。
経営委員会や会長のこうした行動は、番組編集の自由をないがしろにし、ひいては視聴者・市民の知る権利を損なう深刻な事態に他なりません。この点で、石原委員長率いる経営委員会とともに、上田会長の責任も重大です。
 籾井勝人前会長も、「国際報道については政府が右ということを左とは言えない」、「原発報道はむやみに不安をあおらないよう、公式発表をベースに」など、NHKをまるで政府の広報機関とみなすような暴言を繰り返し、視聴者・市民の厳しい批判を浴びてきたことは、まだ記憶に新しいところです。

報道機関や公共放送の観点からすれば、先に記した現会長や前会長に窺われる姿勢や言動および資質を、私たちは断じて是認するわけにはいきません。以上のことなども踏まえて、次期会長の選考にあたって、私たちは次の諸点を強く求め、望みます。

1 ジャーナリズム精神を備え、政治権力や社会的強者に毅然と対峙できる資質をもつ人物を選任すること。
2 憲法と放送法に示される放送の自由、権力からの独立・自立、および公共放送の理念を深く理解し、それを実現できる能力・見識のある人物を選考すること。
3 選考について、透明な手続きと自由闊達な論議が確保されること、また、会長候補の推薦・公募制も含めて、視聴者・市民の意思を広く反映できるような回路と方法を用意すること。

[賛同者名簿 117名(略)]

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本日(12月4日)、上記の緊急申入書を代表者がNHK経営委員会に持参して提出し、その後衆議院第2議員会館で記者会見を行った。
記者会見出席は、田島泰彦・醍醐聡・小林緑・小田桐誠の各氏と私の5名。それぞれが自由発言して異例の長時間会見となった。

NHK会長の任期は3年である。現在の上田良一会長の任期は、来月(2020年1月)24日で切れる。その後任人事は、経営委員12名が決める。単純多数ではなく、9人以上の賛成が必要。

放送法(第3章)が公共放送NHKの設立と運営の根拠法である。その法は、経営委員の選任を最重要事としている。「第31条 委員は、公共の福祉に関し公正な判断をすることができ、広い経験と知識を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。この場合において、その選任については、教育、文化、科学、産業その他の各分野及び全国各地方が公平に代表されることを考慮しなければならない。

会長の資格については何の定めもない。政府も議会も関与しない。本当は、会長を選出する権限をもつ経営委員の選任にこそ、人を得なければならない。これが、「元安倍晋三の家庭教師」だったり、「安倍晋三応援団」を自称する長谷川三千子だったり。とうてい、公正・公平な選任となってはいない。

12名のうち6名が財界から出ている。労働界からは一人もない。ジャーナリストも、市民運動活動家も、弁護士もない。反権力・在野の立場で知られる人は、一人もいない。

現経営委員会委員長は、石原進。元九州旅客鉄道相談役・元日本会議名誉顧問で、籾井勝人前会長を推薦した人物として知られる。NHKの「クローズアップ現代+」による「かんぽ生命不正販売」報道が問題とされるや、加害者日本郵政の側に立って、こともあろうにNHK会長を厳重注意とした元兇。

経営委員の選任に目を光らせなければならない。石原進や長谷川三千子などを経営委員にしてはならないのだ。

その石原の任期が、今月10日である。その前日、9日に経営委員会の会長指名部会が開かれるという。誰が、会長候補にあがっているのか。どんな選考の議論が進展しているのか、まったくの闇の中である。

NHKこそは,国内で影響力最大のメディアである。その放送番組の内容の傾向や質はけっして一色ではない。しかし、これまでNHKは総体として民意を操作し誘導して腐敗した安倍政権を支えてきた。政権とNHKとの関係は、NHK上層部が政権におもねっているだけではない。官邸が積極的に経営委員会人事に介入することで、支配・被支配の関係を作っている。さらには、総務省による監督・指導を通じての日常の締めつけが存在する。

そのような政権とNHKの腐れ縁であればこそ、会長人事は「ジャーナリズム精神を備え、政治権力や社会的強者に毅然と対峙できる資質をもつ人物」でなくてはならない。憲法と放送法に示される放送の自由、権力からの独立・自立、および公共放送の理念を深く理解し、それを実現できる能力・見識のある人物」でなくてはならない。しかも、その選任過程は、「透明な手続きと自由闊達な論議が確保されること、また、会長候補の推薦・公募制も含めて、視聴者・市民の意思を広く反映できるような回路と方法を用意すること」が必要なのだ。

(2019年12月4日)

NHK番組制作現場への不当介入の責任を追及する

本日のシンポジウムは、「日本郵政と経営委首脳によるNHK攻撃の構図を考える」というもの。「NHK攻撃」とは、「クローズアップ現代+」の「かんぽ生命」不正販売事件追及報道に対する介入のことです。NHKに、かんぽ生命不正販売の報道をされた郵政グループは、報道されて反省するのではなく、「報道が怪しからん」、「NHKが怪しからん」と逆ギレしました。そして、経営委員会を巻き込んで、番組作成現場のスタッフに対する圧力を掛けたのです。

日本郵政と経営委員会が、NHKにイチャモンを付けたキーワードが、ガバナンス。つまりは、NHK会長が「クローズアップ現代+」の現場を掌握していなかったことが、コーポレートガバナンスの不備に当たるということです。実は、このことが本件の本質的な問題点となっています。

経営委員会が言うガバナンスは、二つの命題を含んでいます。一つは、NHKの番組制作現場の自律性は認めない。番組制作は一元的にNHK会長の統制に服して当然だということ。そして、もう一つは、NHK会長たる者は、総務省や政権を忖度すべき立場にある、ということです。この二つが合わさって、NHKの番組は、すべからく政権の意向に沿うものでなければならないというわけです。何のことはない、NHKに欠けているものは、ガバナンスではなく、忖度だというだけのことなのです。

これは、重大事件です。報道の自由一般の問題としても看過できませんが、この上なく影響力の大きな公共放送NHKの番組編成に直接関わる事件。NHKを通じての国民の知る権利の脆弱性が誰の目にも明らかになったのですから。しかも、この「逆ギレ・NHK攻撃」は、一定の成果をおさめました。不正を報道された事業者が、NHKの押さえ込みに、一定の成功をおさめたのです。こんなことが許されてはなりません。今のままでは、NHKは忖度放送局ではありませんか。

今回のNHK番組制作現場に対する攻撃の「構図」は次のとおりです。
官邸⇒総務省⇒日本郵政⇒経営委員会⇒NHK会長⇒現場スタッフ

放送番組を制作しているのは現場スタッフ。その現場の上にこれだけの多重圧力の重みがかかっているのです。直接接するのは、NHK会長を頂点とする上層部。その会長に意見を言える立場にあって、今回会長に「厳重注意」をしたのが経営委員会。経営委員会に働きかけたのが、逆ギレの日本郵政グループ。そして、日本郵政グループは総務省をバックとし、上級副社長は元総務次官という肩書で経営委員会とNHKに圧力を掛けました。

さらにその日本郵政グループの上に、総務省があります。そのトップが、高市早苗総務大臣。かつての総務大臣時代に、停波の恫喝で、日本の表現の自由度ランキングを一挙に押し下げた実績の持ち主。そして、その上に、官邸の意向が大きく働いてていると考えざるを得ません。何しろ官邸のトップが、20年前に、NHK・Eテレの「戦時性暴力問題」の番組に直接介入した張本人なのです。どのような忖度を望んでいるのか、明らかではありませんか。

本来、NHK上層部は、外部圧力からの防波堤とならねばなりません。しかし、上田良一・NHK会長の毅然たらざる姿勢は、公共放送トップにふさわしくありません。
経営委員会は個別番組に介入してはなりません。敢えて、これをした石原進・経営委員長の責任は重大でと言わねばなりません。
日本郵政グループは不正を指摘された報道対象者でありながら、逆ギレしての個別番組へ介入はもってのほか。総務省の威を借りた鈴木康雄・日本郵政上級副社長の番組介入は、明らかに違法といわねばなりません。
さらに、高市早苗・総務大臣には、明るみに出た事態の重大性に鑑み、日本郵政・経営委員会に、適切な行政指導をして報道に対する干渉を止めさせなければなりません。
最後に、官邸もこの事態を傍観していてはなりません。高市総務大臣の任命責任を自覚して事態を適切に収拾する責任を免れません。

この事件の重大性にふさわしい、世論と、メディアと、野党の追及が必要だと思います。憲法と放送法の理念に乗っ取って、上田良一・石原進・鈴木康雄・高市早苗、さらに安倍晋三らのそれぞれの責任を追及していこうではありませんか。
(2019年11月5日)

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