(2021年3月19日)
東京の昨日と今日とは、陽光燦々春も本番の趣。天気上々なれば気分も悪かろうはずはない。上野の桜ももうすぐ見頃。ヨウコウは満開、オオシマザクラは五分咲き、そしてソメイヨシノもちらほらと咲き始めている。コロナ禍のさなか、マスクは手放せないが、間もなく庶民の「花見・桜を見る会」の時期。ちょうど符節を合わせたように、安倍晋三の「桜を見る会・前夜祭」疑惑を忘れるな、という検察審査会議決。
本日書留郵便で、東京第五検察審査会からの、被疑者配川博之に対する審査申立に対する議決書が届いた。内容は、末尾に転載のとおり。
この件の審査申立対象の主役は安倍晋三である。起訴・有罪に持ち込むことができれば、彼の議員としての地位は失われる。彼は、それだけの犯罪を犯してきた人物なのだ。配川は、その公設秘書で端役に過ぎない。後援会長とされていただけの人。しかも、既に略式起訴が確定して有罪(罰金100万円)となっている。
東京地検特捜部は昨年12月、安倍晋三後援会の2016?19年分政治資金収支報告書に、桜・前夜祭の会食費に関する収支計約3022万円を記載しなかったとして、政治資金規正法違反罪で後援会代表だった配川を略式起訴した。が、2015年分については起訴の対象としなかった。会計帳簿の原本が失われていたことが理由とされている。検察審査申立は、これを不服としたもの。
検察が起訴しなかった2015年の「桜前夜祭会食費」について、検察審査会議決は「不起訴不当」と判断した。今後、東京地検が再度捜査し、起訴するかどうかを判断することになる。
この議決書、「検察官の不起訴は、一般市民の感覚では納得できない」とし、「収支報告の原本を廃棄しないための法改正・運用改正を求めている」などの点で立派なものとなっている。
実は、配川に対する審査申立は、時効の関係から急ぐ事情があるとして、安倍告発の本体から、切り離して別事件とした経緯がある。理由はともあれ、配川についての「不起訴不当」の議決は、やや物足りない。安倍に対する審査申立本体では、是非とも「起訴相当」の議決がほしいところ。そして…、毎年桜の咲く季節には、桜疑惑を思い出そう。国政を私物化し、選挙民を会食に誘っては飲食の費用を補填していた、とんでもない首相がいたことを。
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令和3年3月18日
令和3年(申立)第4号
審査申立人 澤藤 大河 殿
同 澤藤統一郎 殿
東京第五検察審査会
通 知 書
当検察審査会は,上記審査事件について議決したので,別添のとおり,その要旨を通知します。
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令和3年東京第五検察審査会審査事件(申立)第2号,同第3号,同第4号
申立書記載罪名 政治資金規正法違反
検察官裁定罪名 政治資金規正法違反
議 決 年 月 日 令和3年3月3日
議決書作成年月日 令和3年3月17日
議 決 の 要 旨
審査申立人(第2号事件)
上 脇 博 之
審査申立人(第3号事件)
泉 澤 章 外6名
審査申立人(第4号事件)
澤 藤 大 河 外1名
被疑者 配 川 博 之
不起訴処分をした検察官
東京地方検察庁 検察官検事 田 渕 大 輔
上記被疑者に対する政治資金規正法違反被疑事件(東京地検令和2年検第18326号)につき,令和2年12月24日上記検察官がした不起訴処分の当否に関し,当検察審査会は,上記申立人らの申立てにより審査を行い,次のとおり議決する。
議 決 の 趣 旨
本件不起訴処分は不当である。
議 決 の 理 由
1 本件は,安倍晋三後援会(以下「後援会」という。)の会計責任者であった被疑者が,政治資金規正法により山口県選挙管理委員会に提出すべき後援会の平成27年分の収支報告書に平成27年4月に東京都内のホテルで開催された「安倍晋三後援会桜を見る会前夜祭」(以下「前夜祭」という。)における収支を記載しないで,山ロ県選挙管理委員会に提出したという事案である。
なお,平成28年分から令和元年分までの収支報告書に前夜祭の収支を記載しないで山ロ県選挙管理委員会に提出した事実については,既に略式命令がなされている。
2 本件不起訴処分記録並びに各審査中立書及び審査申立人が提出した資料等を精査し,慎重に審査した結果は次のとおりである。
(1)本件不起訴処分記録及び審査申立人が提出した資料等によると,平成27年度の収支報告書の原本(以下「本件原本」という。)は保管期限の経過により既に廃棄されていること,山口県選挙管理委員会が情報公開により開示をしてインターネットで公表ざれている平成27年度の収支報告書の写し(以下「本件写し」という。)は宴会費等を記載すべき部分を含む支出項目や会計責任者が署名する宣誓書等が欠落している不完全なものであることが認められる。
(2)しかし,本件不起訴処分記録によると,被疑者は,本件原本に平成27年の前夜祭の収支を記載しなかったことを認めている。
(3)また,平成27年の前夜祭の収入については,本件写しには収入に関する部分に欠落がないので,本件原本にも同年の前夜祭の収入が記載されていなかったことが認められる。
(4)そして,平成27年の前夜祭の支出については,仮に本件原本に支出項目の部分が欠落していたとしても,本件写しに記載されている平成27年度の支出総額よりも,証拠上認められる同年の前夜祭の支出額の方が多額であることから,本件原本における支出総額の記載は,同年の前夜祭の支出額を加えた記載でなかったことは明らかである。
(5)そうすると,本件原本が既に廃棄されていたとしても,他の証拠によって事実を認定できるので,本件を不起訴とした検察官の裁定は,一般市民の感覚では納得できない。
よって,上記趣旨のとおり議決する。
3 なお,本件では,本件原本が廃棄されているために原本自体を証拠とすることができないので,他の証拠から不記載罪が認定できるかどうかを検討せざるを得 ないが,当検察審査会としては,このような事態を避けるために,不記載罪の公 訴時効が完成するまでは収支報告書の原本を廃棄しないように,法律や運用を改める必要があると考える。
東京第五検察審査
(2021年3月13日)
忘れてはならない、安倍晋三政権という7年8か月の悪夢を。国政私物化と、ウソとゴマカシで塗り固めた汚れた政権運営を。その汚れた政権が、2020年を「改憲施行の年に」と叫んでいたことを。
心に留めておこう、安倍政権不祥事の数々を。最低限下記の呪文だけは記憶にとどめて、事件を覚えておこう。
モリ・カケ・さくら、タマゴにカジノ、クロカワイ。
森友学園事件・加計学園事件・桜を見る会私物化・鶏卵大手アキタフーズ農水大臣贈収賄事件、秋元司カジノ収賄事件・官邸の守護神黒川弘務事件・河井夫妻公選法起訴事件…。数え切れない、覚えきれない…。この政権は、アベノマスクに象徴される「無能政権」であったばかりではない。腐敗の政権、改憲指向の政権だった。この政権が国内の右翼を勢いづけ、民主主義や人権を脅かしたことを忘れまい。
「忘れまい」と力まずとも、折々、事件の方から国民に挨拶がある。たまたま昨日(3月12日)には、菅原一秀(元経済産業大臣)議員が話題の人となり、記者のマイクとカメラの標的となった。秘書が選挙区内の有権者に香典などを渡していた、あの香典政治家である。「モリ・カケ・さくら、卵にカジノ、クロカワイ」のどこにも入っていない。脇役でしかないが、歴とした安倍腐敗政権の有力大臣であった人。さすがに安倍政権、腐敗の裾野は広い。
この人、市民から刑事告発されたが、地検は起訴猶予とした。しかし、告発した市民はこの処分に納得せず、検察審査会に審査請求をしていたところ、「起訴相当」の議決となった。この議決のインパクトは大きい。告発人にも、検察審査員にも敬意を表したい。こうして、少しずつでも、政治の腐敗は正されていくのだ。
この人、2019年10月、選挙区内の有権者に、秘書が香典を渡してまわったことが明らかになって、公職選挙法違反の疑いで告発状が提出された。公選法は、「政治家がみずから葬儀や通夜に出席する場合を除いて選挙区内の人に香典を渡すこと」を禁じている。「政治家が選挙区内の人にむやみに香典を渡す名目で票を買う行為を防止するために、みずから葬儀や通夜に出席する場合以外の香典交付が禁じられた」と解すべきだろう。
東京地検特捜部は、捜査の結果、この人が「選挙区内の18人に総額17万5千円相当の枕花を寄付していた」「みずから弔問せずに選挙区内の9人にあわせて12万5千円の香典を寄付していた」と認定したうえで、「法を無視する姿勢が顕著とはいえない」として、起訴猶予処分とした。
しかし、審査請求を受けた東京第4検察審査会(東京には、第1?第6審査会まである)が本年2月24日付で「起訴相当」と議決した。その理由を「香典は個人的な関係だけで渡したものではなく、将来における選挙も念頭に置いたものと考えるのが自然だ。公職選挙法は金がかからない選挙を目指していて、検察は、国会議員はクリーンであってほしいという国民の切なる願いにも十分配慮すべき」と指摘していると報道されている。
「起訴相当」であるから、これを受けて地検は再び捜査を行うことになる。仮に、検察が再び不起訴にした場合には、検察審査会の再度の「起訴相当」議決によって強制起訴となりうる。「起訴相当」の議決には11人中8人以上の賛成が必要なのだから、地検は、国民目線の厳しさを心すべきである。
また、たまたま時を同じくして、話題の主となったのが、元東京高検検事長の黒川弘務。世が世であれば、検事総長として政権の守護神となっていたはずのお人。在職中に担当の新聞記者らと点ピンの賭けマージャンをしていた問題で告発され、この人も不起訴処分となったが、第6検察審査会が「起訴相当」と議決し、再捜査が進行していた。
各紙が一斉に報じている。東京地検は、賭博罪で黒川を略式起訴する方針を固めたという。「取材で分かった」との報道だが、リークがあったのだろう。地検は判断を一転させたことになる。略式ではあっても起訴は起訴。元検事長の起訴なのだから、インパクトは大きい。
実は、これまで表面化しなかったが、官僚や政治家に対する接待疑惑が噴出している。これも、安倍政権腐敗の膿である。「ソンタク」とならぶ「セッタイ」が流行語となりそうな雲行き。
あとからあとから切りがないとあきらめることなく、政治浄化の努力を続けよう。「どうせ告発などしたところで、まともに取りあげてはもらえない」と決めつけていては、事態は変わらない。現実に告発が実を結ぶこともあるのだ。
(2021年2月27日)
私が、いま巷の話題を独占している「時の人」、あの有名キャリア官僚。もと総務審議官で、首相秘書官の経歴もある。今は内閣広報官。有名になったら、ヤメロ、引っ込めという理不尽な声や、「続投はあり得ない」という野党や与党の一部のご意見もあるけど、どこ吹く風ね。私から辞表は考えられないし、なんと言っても内閣総理大臣ご自身が私の続投を望んでいらっしゃる。
育鵬社っていう教科書会社ご存知でしょう。右翼偏向だとか政権ベッタリと言われるけど、私は立派な教科書を出していると思っている。安倍政権支持という教科書も珍しいし、安倍さんと私を載せているんだもの。育鵬社版中学公民教科書に「憲政史上初の女性首相秘書官(2013年)」という光栄な見出しを付けてね、「安倍晋三首相から辞令を受ける山田真貴子氏」という写真が掲載されているのよ。だから、まっとうな教育を受ける機会に恵まれた若い方には、私はお馴染みだと思うの。
自己紹介はここまで。これからの私のお話、若い人たちに、とりわけ女性に聞いていただきたいの。皆さん、よくお勉強なさいね。何のための勉強なんて考える暇があったら勉強すること。成績を上げれば、ちゃんとした大学に行けるわ。ちゃんとした大学で、学業に精を出せば、キャリアの官僚にもなれる。そこからの前途は洋々。いま、官僚志望の若い方が減っているんだけれど、官僚って魅力的な職業ですよ。
でも、官僚としてのやり甲斐は、出世をしてからのことね。官僚は出世しなくちゃあね。出世には官僚としての処世術が肝要なのよ。私のように出世して、2代の総理のおぼえめでたく、高給を食む地位に達するには、幸運を引寄せる力がなければならないの。この力は、勉強だけでは身につかない。青くさい理想を語っていてもだめね。
出世は、誰かに目を留めてもらい、その人に信頼され、引き立ててもらわなければならない。つまり、勉強しただけで出世はできないってこと。出世は、そういう人やチャンスに巡り会わなければならないのね。誰もが、自分にチャンスをくれる人に出会ったり、実績をあげられるプロジェクトにめぐりあったり、そういう幸運に恵まれたいと思うでしょう。そういう、プロジェクトや人にめぐりあう確率が人によってそう違うはずはありません。違いはどれだけ多くの人に出会い、多くのチャンレジをしているか。イベントやプロジェクトに誘われたら、絶対に断らない。まぁ飲み会も断らない。
断る人は二度と誘われません。幸運に巡り合うそういう機会も減っていきます。私自身、仕事ももちろんなんですけど、飲み会を絶対に断らない女としてやってきました。お高くとまっていてはだめなのよ。ポッキーゲームだってやったのよ。楽しそうなフリをして。勉強、プロジェクト、人、多くのものに出会うチャンスを愚直に広げていってほしいと思います。
こうして出会いのチャンスを広げることで、自分を引き立ててくれる人が見つかる。そういう人を見つければ、その人に対する忖度一直線。それこそが、出世の秘訣ね。
総務省を牛耳っていた菅さんが官房長官になり、首相になった。菅さんが、私に出世のチャンスをくれた。その菅さんの長男を、出世のためのアンテナを張り続けていた私が意識しなかったはずはないでしょう。菅さんは私に出世のチャンスをくれた。私は、自分の権限の範囲内で菅さんの喜ぶことをして恩を返し、さらなる出世を確実なものとする。これって、麗しいウィンウィンの関係じゃないですか。
電波行政の責任者だった私ですよ。菅さんの長男が衛星放送事業者の幹部社員になっていたことを知らないはずはないじゃないですか。放送事業者の幹部から接待を受ければ当然に公務員倫理に違反する。そんなことは分かっていますよ。それでも、「東北新社」側から接待を持ちかけられれば、菅さんのご長男が接待役なのですから断れるわけがない。1人あたり7万4203円の接待だったと言いますが、そのくらいの金額、大袈裟にいうほどのことでもないでしょう。
この接待が、たまたま公になったのは誤算でしたが、少ししおらしく、「心の緩みであって、利害関係者かどうかのチェックが十分でなかった」くらい言っておけば、大丈夫なんですよ。
そして、会席に菅さんの息子がいたことを明確には言わない。ぼかしてみせるのが、出世する官僚のマナー。国会で、「5人の会食で、首相の息子がいたかどうか分からないのか」と聞かれて、「私にとって大きな事実だったかというと、必ずしもそうではない」と少し笑いながら答えたのは、首相2人の身近に仕えた自分の大物ぶりをアピールしただけではなく、私を引き立ててくれた菅さんの恩義への報い方なのですよ。
つまり、憲法15条を本気で信じて「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」なんて、融通のきかないのは出世をしない人。出世をしようと思ったら、引き立ててくれる上司や政治家を見極めて奉仕する心構えが必要なのね。しっかりとこう心得て、菅さんや安倍さんに引き立ててもらい、恩を返してながら、出世の階段を昇ってきたのが話題の私です。是非、若い皆さんも、参考にしてくださいね。
おや、どうしたの? 少し白けた雰囲気ではないですか。皆さん、気色ばんで何か言いたそうな面もち。そんな態度では出世はできそうにありませんね。ご質問は受け付けますが、一人一問に限らせていただきます。業界では「更問(さらとい)」と言いますが、重ねて質問を畳み込むような無作法なことはやめてくださいね。
(2021年2月27日)
私が総理の器ではないというご指摘…。そりゃあ、私には、あのう、なんて言うんですか、高邁な理想も政治哲学もありませんよ。国民の心に響くような語るべき言葉を持っていない。でも、前任者をよく見てきましたが、あの人だって理想や哲学を持っていなかったというのが事実ではないでしょうか。それでも、7年8か月も総理が務まった。器なんて、誰にでもあるといえばある、ないと言えばない。そんなもんではないでしょうか。
えっ? 一国の総理たるものが、落ち着きなくイライラしてどうしたんだ、と言うんですか。総理だろうと、天皇だろうと、人間ですよ。面白くないことが重なれば、イライラするのは当然でしょう。そういうことも事実ではないでしょうか。
よくご存知でしょう。面白くないことだらけですよ。内閣支持率は下がりっぱなし。コロナ対策はうまく行かない。この頃、専門家が政治家の言うことを聞かなくなってきた。ワクチンの供給がどうなるか私も不安でたまらない。東京五輪は風前の灯だし、私の長男の総務官僚接待問題で話題持ちきりだし、首相広報官の7万4000円接待問題が庶民感情をいたく傷つけている。うまく行ってることは一つもない、こんな状態で選挙も近い。世論にもメディにもトゲがある。みんな遠慮をしなくなっている。それでも、国会で野党の質問に答弁しなければならないし、意地悪な記者の取材にも応じなければならない。イライラして当然というのは、これも事実ではないでしょうか。
昨日(2月26日)、新型コロナ緊急事態宣言の首都圏以外は先行解除をようやく決めた。当然国民の多くが記者会見を行うと思ったでしょうが、そんなこと、できるわけがないでしょう。内閣記者会から会見を開くよう申し入れを受けたが、これを断って、「ぶら下がり取材」とした。立ったまま記者からの質問に答えたんですけど、これが特別にイライラのイヤイヤでした。
官邸の記者会見では、広報官が作成したペーパーを読んでりゃいいんだし、嫌な質問は広報官がブロックし、広報官が「次の日程がありますので」などと適当な口実で切り上げてくれる。でも「ぶら下がり」では、その広報官がいない。山田広報官、会見に出てこれないんだ。出て来りゃ、私の話よりも「一食7万4000円ごちそう問題」に質問が集中するのは目に見えている。そのことも事実ではないでしょうか。
それでも、案の定礼儀を弁えぬ記者からは「緊急事態宣言の6府県解除をしたのに、なぜ記者会見を行わなかったのか? 高額接待を受けた山田内閣広報官の問題が影響したのか」という質問。ああいう記者の顔と名前はよく覚えておかなくては。
用意していたとおり、「山田広報官のことはまったく関係ありません。昨日、国会で答弁されてきたことも事実じゃないでしょうか」と言ってはみたけど、我ながら迫力に欠ける。ついつい、イライラが声に表れる。
その後も記者たちは遠慮がない。「山田広報官から接待の詳細は聞いたのか」「山田広報官を続投させる方針に変わりないか」「政治責任をどう考えるか」と矢継ぎ早の質問だ。イライラは募るばかり。
さらには「会見を行わずに(コロナ対策に)国民の協力が得られると思うか?」と聞かれて、「だから今日こうして、ぶら下がり会見を行っているんじゃないでしょうか」という声が震えた。これが、「総理キレた」とか、「気色ばんだ」とか、あるいは「台本ないとダメだね」「素の菅さんはこんな感じなのか」と、意地悪く報道されてしまった。支持率70%のころにはこんなことはなかったのに。
最後の質問は、「今度の会見では最後まで質問を打ち切らずにお答えいただけるのか?」だというんだ。もう、総理に対するイジメじゃないか。「いや、私も時間がありますから。みなさん、出尽くしてるんじゃないですか。先ほどから、同じような質問ばっかりじゃないでしょうか」とようやく終わることができた。
中に、こんな質問があって驚いた。
― 先ほど東北新社が社長の退任と幹部の処分を発表した。総理の長男も役職を解任され、人事部付となりました。受け止めは。
「私は承知していません。会社としてのけじめだと思います」と答えるしかなった。しかし、長男解任を「けじめ」と言ってよかったのか、長男の責任を認めたことになるのかな。
いずれにせよ不愉快極まる。なんだ、手のひらを返したような、この東北新社の態度は。目を掛けてやった恩を忘れたのか。それが、総理の長男に対する処遇だというのか。「人事部付き」って何もやることがないってことではないのか。総務省接待以外には、使いようがないということなのか。それよりも、総理の権威はどうなった。もう誰も総理の意向を忖度しないというのか。だれも私を恐れないというのか。
これじゃ、世も末ではないでしょうか。あ?あ、「総理なんかになるんじゃなかった」と愚痴をこぼすにも一理あるのではないでしょうか。だから、私がイライラしてることも、事実なのではないでしょうか。
(2021年2月5日)
菅内閣は、安倍後継を以て任じている。菅義偉は、ウソとゴマカシの安倍政治の大半に官房長官として関わっていたのだから、負の遺産の承継における「後継内閣」の資格はもとより十分である。だが、それにとどまらないようだ。
何よりも、真似をしがたい近親者の公私混同についても、菅は安倍に負けない。アベにおける昭恵(妻)に当たる存在が、スガでは正剛(長男)のごとくである。
菅の長男・菅正剛が、総務省幹部を違法接待していたことを昨日(2月4日)発売の「週刊文春」が記事にして話題となっている。これは、安倍晋三にとって、妻の安倍昭恵が籠池夫妻と関わって森友学園事件を引き起こしたごとく、菅義偉にとっての痛恨事となりかねない。が、本日のメディアの報道は、オリンピックに関連した森喜朗の「女性差別発言」一色となり、スガ長男の総務省高級官僚接待はやや霞んでしまったことが惜しい。
以下、文春On-lineからの抜粋引用である。
総務省の幹部らが、同省が許認可にかかわる衛星放送関連会社(東北新社)に勤める菅義偉首相の長男から、国家公務員倫理法に抵触する違法な接待を繰り返し受けていた疑いがあることが「週刊文春」の取材で分かった。
接待を受けたのは、今夏の総務事務次官就任が確実視されている谷脇康彦総務審議官、吉田眞人総務審議官(国際担当)、衛星放送等の許認可にかかわる情報流通行政局の秋本芳徳局長、その部下で同局官房審議官の湯本博信氏の計4名。昨年の10月から12月にかけてそれぞれが株式会社東北新社の呼びかけに応じ、都内の1人4万円を超す料亭や割烹、寿司屋で接待を受けていた。また、手土産やタクシーチケットを受け取っていた。
コロナ禍のさなかに総務省幹部らはなぜ接待に応じたのか。菅首相は、総務大臣を務め、総務省でアメと鞭の人事を行い、人事に強い影響力を持つとされる。また、東北新社の創業者父子は、過去、菅首相に合計500万円の政治献金を行っているが、その影響はなかったのか。東北新社に勤める長男が行った総務官僚への違法接待について、菅政権が今後どのような対応をするのか、注目される。
さっそく、昨日(2月4日)菅は衆院予算委員会で立憲民主党の黒岩宇洋議員の質問の矢面に立った。菅の釈明はこんなものだった。
「公的立場にない一民間人に関するもの(問題)だ。プライバシーに関わることであり、本来このような場でお答えすべきことではない」「(長男とは)普段ほとんど会っていない。完全に別人格だ。そこはご理解いただきたい」。
おいおい、それはないだろう。「ご理解いただきたい」という言葉は、そっくりお返ししなければならない。責任を追及されているのは一民間人に過ぎない菅正剛ではなく、内閣総理大臣たる菅義偉、あなたご自身なのだよ。内閣総理大臣たるあなたの影響力が、一民間人に過ぎない長男を通じて総務省の官僚に伝播し、公正な行政を曲げて東北新社という民間企業に不当な利益をもたらしているのではないかという疑惑が掛けられている。そのことをしっかりと自覚していただきたい。
行政の廉潔性や、廉潔性に対する国民の信頼に疑惑を生じさせたのは、直接にはあなたの長男だ。しかし、その疑惑はあなたという国政の最高権力者のバックがあればこそのことだ。つまりは、内閣総理大臣たるあなたと、一民間人たるあなたの長男との二人で疑惑を生じさせたのだ。責任の軽重は、もちろん内閣総理大臣たるあなたの方が限りなく重いが、一民間人の長男も、その疑惑に関わる限りは、プライバシー保護に逃げ込むことは許されない。
夫婦も親子も、別人格であることは当然だ。だが、別人格ながらも親密な関係にあることも、第三者から親密な関係と見られることも至極当然なのだ。総務省の官僚の側から見れば、菅義偉と菅正剛という別人格が、極めて親密な関係にあると忖度せざるを得ないのだ。うっかり正剛に不愉快な思いをさせると、義偉の機嫌を損ねて不利益を被ることになりはしまいか。そのように官僚を思わせているのが、スガさん、あなたの不徳の至り、自業自得なのではないか。そうは思わないかね。
黒岩宇洋は菅の答弁に対して「この疑念、疑惑は私人にかけられたものではなくて、菅政権そのものの疑念、疑惑だ」と批判。まったくそのとおりなのだ。
問題は、「実際に行政の廉潔性が傷つけられたか否か」というだけではない。首相の長男による高級官僚の接待があったというだけで、「行政の廉潔性に対する国民の信頼が傷つけられた」ということでもある。首相の不祥事である。徹底して追及しなければならない。
しかも、周知のとおり、昔も今も菅義偉は総務省とのつながりが深い。メディアの取材に、「同省関係者は『首相の息子に誘われたら、断れないだろう』と漏らす」というコメントがあった。さあ、菅義偉よ、この官僚の声をどのように聞く。
(2021年1月31日)
1月28日発行の「法と民主主義」1月号が、通算555号となった。毎年10号の発刊を、1号の欠落もなく50年余にわたって積み上げての555号である。編集に参加してきた者の一人として、いささかの感慨を禁じえない。
自らの画に自ら讃の趣ではあるが、最近の本誌は充実していると思う。本号も<第51回司法制度研究集会>特集を中心に読み応えあるものになっていると思う。
51回目となる司研集会のテーマは、「今の司法に求めるもの ─ 特に、最高裁判事任命手続きと冤罪防止の制度について」である。その趣旨は、以下のとおり。
第49回司研集会のテーマは、「国策に加担する司法を問う」。そして昨年の第50回は「いま、あらためて司法と裁判官の独立を考える、ー 司法の危機の時代から50年」であった。この両シンポジウムで、安倍政権になってからの最高裁の重要判決の中に、国の政策に積極的に加担するものが散見されると指摘され、共通認識となった。これにともなって、安倍政権下での最高裁判事任命の恣意性がクローズアップされてきた。
こうした流れを受けて今回は、最高裁判事任命のありかたを中心に、司法の独立や司法の人権保障機能強化のための提言ができないかという問題意識をもって集会を準備した。結局は、今回の実行委員会で具体的な政策提言などを作ることは困難として、集会の中で方向性が見いだせればということになった。
そこに10月1日菅首相が日本学術会議会員候補者6名の任命を拒否するという前代未聞の事態が起きた。この政権の問題性は今回の司研集会に色濃く反映され、非常に緊張感のある充実した集会になった。
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法と民主主義2021年1月号【555号】(目次と記事)
●特集のリード(PDF) ●時評(PDF) ●ひろば(PDF)
特集●今の司法に求めるもの ─ 特に、最高裁判事任命手続きと冤罪防止の制度について<第51回司法制度研究集会から>
◆特集にあたって … 日本民主法律家協会事務局長・米倉洋子
◆基調報告・今の司法、何が問題か ── 新聞記者の視点から … 豊 秀一
◆報告?・最高裁判事任命の問題点
── その基本構造及び安倍政権下の問題、改革の方向性 … 梓澤和幸
◆報告?・冤罪防止のための制度の実現を … 周防正行
◆質疑応答・発言
… 近藤ゆり子/明賀英樹/岡田正則/晴山一穂/西川伸一/森野俊彦
平松真二郎/澤藤統一郎/毛利正道/瑞慶覧淳/白取祐司
◆集会のまとめと閉会の挨拶 … 新屋達之
◆連続企画●憲法9条実現のために〈33〉
日本学術会議会員任命拒否と「科学技術・イノベーション基本法」… 南典男
◆司法をめぐる動き〈62〉
・大飯原発設置許可取消判決の意義と展望──大阪地裁2020・12・4判決 … 冠木克彦
・11/12月の動き … 司法制度委員会
◆メディアウオッチ2021●《政治とことば》
問われる政治家、リーダーの資質 「迷走」の要因はどこにあるのか? … 丸山重威
◆とっておきの一枚 ─シリーズ2─〈№1〉
被爆者として、被爆者によりそって … 田中熙巳さん×佐藤むつみ
◆改憲動向レポート〈No.30〉
「ずさんな議論」で改正改憲手続法案の早期採決を求める自民・公明・維新・国民民主党 … 飯島滋明
◆BOOK REVIEW●ティモシー・ジック著、田島泰彦監訳、森口千弘ほか訳
『異論排除に向かう社会─トランプ時代の負の遺産』(日本評論社) … 澤藤統一郎
◆インフォメーション
新型インフルエンザ等対策特措法等の一部を改正する法律案に反対する法律家団体の声明
◆時評●沖縄の米軍基地撤去は日本の歴史的責務 … 加藤 裕
◆ひろば●カジノ関連法の廃止を … 新里宏二
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集会でのメインの各報告は、本誌をお読みいただくとして、「フロア発言」の2件の抜粋をご紹介させていただく。森野俊彦さんと私のもの。
学術会議任命拒否と重なる裁判官の任命拒否
森野俊彦(弁護士・大阪弁護士会)
私は、いまは弁護士ですが、40年間裁判官をしていた者です。今回、日本学術会議の被推薦者6名の方が任命拒否をされましたが、私はそれを聞いて、50年前に私たちが経験した「任官拒否」を思い出しました。私たち60数名の任官希望者のうち7名が裁判官任官を拒否されました。私はその方たちと一緒に修習し、いかなる裁判官になっていくかを真剣に考え、任官し得たあかつきには、ともに少数者の権利を擁護する司法権の担い手として頑張っていこうと誓い合っておりました。
その方たちは、裁判官になって当然とも言うべき人で、裁判官にふさわしい人でありました。こうした人たちが拒否されたことは、本当に驚きでありました。せめてその拒否理由を明らかにすべきであると考えて、裁判官内定者55名のうち45名の不採用理由開示を求める要望書を最高裁に持っていきました。
拒否された人のうち六名が青法協に入っており、また経歴や人柄から推測しますと、おそらく最高裁はそういう方たちが裁判官として存在し活動することを絶対に避けたいと考えたのだと思います。つまり最高裁判所は、裁判所にとって都合が悪くなる可能性がある人は基本的には入れない。特に任官拒否は採用の問題ですから、入場門に立って入場を拒否すれば足りると考えたのです。
その年、私たちの10期上の13期の宮本裁判官の再任拒否もありました。私は紛れもなく思想信条を理由とする差別であったと考えます。その後、再任問題については、下級裁判官指名諮問委員会が設けられて一定の改善を見たのですが、それで裁判所の中が良くなったかというと、そうは言えないところがあるのです。残念なことに、裁判所内の民主化をめざす運動は、いまは風前の灯火です。われわれの時代には任官者の中にも結構骨太な、あるいは少数者の権利擁護こそ司法権の任務だと力説する方がいたのですが、現在そういった方が裁判官として入ってこれるかというと、それが難しい。採用の段階で選別されてしまうわけです。
最高裁判所の判事の任命は、まだ弁護士出身などいろいろなところから入ってくる部分があるのですが、国民の権利を擁護する、あるいは政府にノーと言える裁判官がどれだけ最高裁の判事になれるかということになると、これは極めて否定的なのですね。裁判官時代はともかく面従腹背して、それなりに出世をしないとだめなのです。だいたい現職で最高裁判所の判事になろうと思ったら、最高裁事務総局経験者、司法研修所の教官、最高裁の調査官などにならなければならない。それには、言いたいことも言わずに、しかし時々はこれはという判決も書かなければならない。残念ながら、今の裁判官にそんなことができるはずがない。
私の場合で言えば、青法協の会員でもありましたし、全国裁判官懇話会にも入りました。日本裁判官ネットワークを一緒にやって、そういう問題を市民とともに考えようと頑張ったのですが、残念ながら、裁判所自体を根本から変えるということにはなり得なかったのです。
どうしたらいいかということは、本当に難しい問題なのですが、ある日突然、いい裁判所ができるはずはないですね。時々いい裁判官が出るときがある。そういう裁判官を盛り立てるということも私は大切ではないかなと思っています。あとは、弁護士からの最高裁判事、少数意見がちゃんと書ける裁判官にもっともっと入っていってもらうとか、いろいろな方策が考えられます。どれも、けっこう厳しいこととは思いますが。(拍手)
50年前の苦い経験を繰りかえさないために
澤藤統一郎(弁護士・東京弁護士会)
私も森野さんと同じ23期で、50年前に同期の裁判官志望者7名が任官を拒否された事件に立ち会いました。このときの衝撃は非常に大きかった。
当時私たちは、私たちなりの常識的な裁判官像、あるいは裁判所、司法像を描いていました。憲法の理念を厳格に守る裁判所、これが当然のありかただと考えていたのが、どうもおかしい。そうではない権力の意のままになる裁判所がつくられてしまうのではないかという違和感と衝撃です。私たちが理解していた、三権分立とか司法の独立とか、あるいは裁判官の独立などとはまったく異質のものが、いま目の前に立ち上がろうとしている。そういう恐怖心を、50年前に感じたことを思い出します。
その同じ悪夢が、また今年の10月1日に繰り返され、現実の出来事として受け止めざるを得なくなりました。さきほど森野さんが発言されたとおり、50年前に私たちがいったい何を考えて何をし、それがどうしてうまくいかなかったのか。その教訓をもう一度きちんと整理すべきなのだと、あらためて思います。
50年前の苦い総括ですが、私は最高裁が成功体験を積み上げたのだと思っています。つまり最高裁は、判事補採用の段階で数名の任官志望者を拒否することによって、自らの思惑は公にせずとも、誰にでも忖度可能な状況をつくり出した。そして人事の問題だからと言う理屈で、決して採用を拒否をした理由を明らかにしない。それでいて、自分の組織の隅々にまで、トップが何を考えているか、トップに忖度をせず逆らえばどうなるのかを見せつける。そういうやり方で、巧妙に組織全体を動かしたのです。採用人事を梃子にして、全裁判官を統制し、裁判の内容まで変えてしまった。それをいま司法官僚ではなく、内閣総理大臣、行政のトップが真似てやろうとしている。
私たちは50年前の苦い経験から、その轍を踏まないように、いまの学術会議問題について、発言を継続していかなければならない。それが私たちの使命であろうと思っています。
(2021年1月23日)
<うあー、NHK、勝手にワクチン接種のスケジュールを作らないでくれ。デタラメだぞ>
これが、河野太郎(行革担当相)の1月20日朝のツイートだという。ツイートとは言え、国会議員の国民に対するメッセージである。この乱暴なものの言い方には驚くしかない。しかも、新ワクチン担当大臣が、公共放送NHKのワクチン接種報道に<デタラメだぞ>というのだから穏やかでない。
河野太郎は、NHKのどんな放送内容を、<勝手で、デタラメ>と言ったのだろうか。興味をもってそのツィッターを検索してみてまた驚いた。<うあー、NHK、勝手にワクチン接種のスケジュールを作らないでくれ。デタラメだぞ>が、全文である。NHKが、いつ放送した、どのような報道内容の、どこがどうデタラメなのか、何の説明もない。NHKの報道を訂正して真実を国民に伝えようという真摯さはカケラほども見受けられず、NHKに無責任な悪罵を投げつけているだけとしか評しようがない。口をとんがらした、幼稚園児の口ゲンカを想起させる。
その動機に思い当たる節がないわけではない。毎日の記事が、上手にまとめている。
「河野氏とNHKには因縁がある。NHKは昨年(2020年)5月6日、防衛省が陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の秋田市内への配備を事実上断念したと報じた。ところが、当時、防衛相だった河野氏は翌7日に「フェイクニュース。朝からフェイクニュースだと伝えているのに、夜のニュースでも平気で流す。先方にも失礼だ」とツイートした。この時もNHK批判が相次いだが、その後、事態は次第にNHKの報じた方向に傾き、河野氏は6月15日に自ら配備停止を表明している。」
同じ、毎日の記事(「ファクトチェック 本当にデタラメなのか 河野太郎行革相が批判したNHKワクチン報道を検証した」)によると、河野の<デタラメ>批判の対象は、どうやら一般人に対するワクチン接種の時期をめぐるNHKの報道内容のようなのだ。
「NHKは、20日朝の「おはよう日本」の中で、「早ければ5月ごろから一般の人への接種を開始する案も出ている」と伝えた。この部分は午前6時4分と午前7時7分の2回、全く同じ内容が放送されていた。河野氏の「デタラメ」ツイートは2回目の放送直後の午前7時8分。反射的にツイートした可能性がある。」
毎日記事は、「厚生労働省の公表資料に類似スケジュールが出ていた」「主要メディアが軒並みNHKと同様の報道をしている」ことを説得的に説明している。しかし、仮にそのような資料や同様の報道がなかったとしても、それなりの取材に基づく報道を<デタラメ>とは言えまい。しかも、NHKの報道は決してスケジュールを断定するものではない。
事態を傍目で眺めれば、河野は「オレの承認していないことを勝手に報道するな」と恫喝しているだけのことである。いや、恫喝は不正確かも知れない。駄々を捏ねている、というのが適切な表現であろうか。NHKや、同じ報道をしたメディアには、いささかの萎縮もあってはならないと思う。
河野は、自らが権力の側にあるという自覚と、その自覚に基づく謙虚さに欠けている。メディアへの統制の危険に無頓着なこの政治家、未熟で危険と指摘せざるを得ない。これ以上、権力の中枢に近づかせてはならない。
さらに問題なのは、この「〈デタラメ〉・ツィート」に対する社会の反応である。「このツイートは9万回以上リツイートされ、23万の「いいね」がついている。リプライ(返信)にはNHK批判と河野氏批判がせめぎ合っている。」という。これは、身震いするほど恐ろしいことではないか。ネットの世界には、こんな愚かなツイートを真に受けて、NHK批判に飛躍する多くの、煽動されやすい人々が現実に存在するのだ。
毎日が報じている例では、<えぇ…国民から受信料徴収して間違った情報流してるんですかNHKは…><受信料徴収してる『公共放送』 大臣がTwitterで情報発信しなければデタラメだと気付けず情報混乱しますよね…>などという反応。NHKが、何を、どう間違えたかの特定もないままの付和雷同。これが河野太郎支持者たちなのだ。
われわれは、トランプのTwitterによる情報発信を冷ややかに眺めてきた。トランプのツィートは、〈理由もなくメディアのニュースをフェイクと断じ〉、実は〈自らがフェイクを発信するもの〉だった。そのトランプの発信に無条件に耳を傾け、これを信じることによって、トランプを支えた人々の存在が、フェイク・ツィートを可能にした。
あれは、対岸の火事ではない。侮って批判を怠ると、我が国にもトランプ亜流を誕生させることになりかねない。河野太郎も、要警戒の一人である。もっとも、毎日が次のような理性にもとづく適切な批判のリプライを紹介していることに、救われた思いである。
<(NHKの報道は)きちんと厚生労働省の発表を踏まえての報道です。ご自身が厚生労働省の発表を把握していなかったからのご発言ではないでしょうか。しっかり各省庁の動向を把握された上で、公人としてデラタメ発言はデタラメでしたと謝罪するか、Twitterをお取り消しされた方がよいと思います>
なお河野は、1月23日までに、デタラメでしたとの謝罪も、Twitterの取り消しも、実行していない。
(2021年1月19日)
各紙世論調査における内閣支持率が軒並み急落している。とりわけ、一昨日(1月17日)発表の毎日新聞調査「菅内閣を支持しない・57%」という数字が衝撃である。こうなると、菅義偉が何を言っても国民の耳に届かない。耳に届いても心には響かない。さぞかし辛い立場だろう。それでもめげた表情を見せないのは、強靱な精神力と称賛すべきか、厚い面の皮と感嘆すべきか、はたまた単なる鈍感と揶揄すべきか。
そんな状況下で、昨日(1月18日)第204通常国会が開会となり、本日の各紙朝刊には菅内閣総理大臣施政方針演説が掲載されている。
もちろん、総じて評判が悪い。いや、最悪と言ってよい。各紙の社説、以下のタイトルである。
朝日社説 施政方針演説 首相の覚悟が見えない
毎日社説 菅首相の施政方針演説 不安に全く応えていない
東京社説 首相施政方針 危機克服の決意見えぬ
道新社説 首相の施政方針 コロナ対策 方向見えぬ
福井論説 菅首相の施政方針演説 「安心」「希望」には程遠い
信濃毎日 施政方針演説 対話する姿勢に欠ける
神戸社説 施政方針演説/空虚に響く「安心と希望」
中國社説 首相の施政方針演説 国民に言葉が響いたか
熊本日日 施政方針演説 展望見えず心に届かない
沖縄タイムス [施政方針演説]これでは心に響かない
施政方針演説の内容について私にはこう聞こえたという2個所を摘記しておきたい。
(国民の負担と引き換えに、命と健康を守り抜く)
国民の命と健康を守り抜きます。まずは「安心」を取り戻すため、世界で猛威をふるい、我が国でも前政権の無為無策から深刻な状況にある新型コロナウィルス感染症を一日も早く収束させます。
しかし、その実現のためには、それ相応の国民への負担をお願いする政策が必要となるというのが私の政治信条です。国民は決してただ乗りはできません。負担に耐えていただかなくてはなりません。その必要性を国民に説明し、理解してもらわなければならない。それなくして、新型コロナウィルス感染症の収束はないものと覚悟が必要なのです。つまり、命と健康は負担と引き換えだとご承知おき願います。
(国民監視と管理のためのデジタル改革)
この秋、国民全ての監視と管理の徹底を目指してデジタル庁が始動します。
デジタル庁の創設は、学術会議会員任命拒否とならぶ菅政権の強権的政治改革の象徴であります。デジタル庁は、組織の縦割りを排して、全国民のプライバシー剥奪のための強力な権能と厖大な予算を持った司令塔として、国全体の権威主義社会化を主導します。今後5年間で自治体のシステムも統一、標準化を進め、業務の効率化と全住民の個人情報国家取得を徹底してまいります。
是が非でもマイナンバーカードの普及に務め、マイナポイントの期限も半年間延長します。この3月には健康保険証との一体化をスタートし、4年後には運転免許証との一体化を開始します。これで、国民のプライバシーの大半は国家権力が入手可能と考えています。
行政機関が保有する法人などの登録データをシステム上の、いわゆるベースレジストリとして整備し、政権に協力的な大企業と一体となって、政府は国民の、企業はその従業員や消費者の支配に不可欠なデータの利活用を進めてまいります。
教育のデジタル化も一挙に進めます。小中学生に一人一台のIT端末を揃え、9000人のデジタル専門家がサポートします。子どもたちの希望や発達段階に応じたオンライン教育を早期に実行することで、国民をデジタルによる支配構造に慣れさせ、抵抗感なく支配に服従する心情を育成してまいります。
あらゆる手続が役所に行かなくてもオンラインでできる、引っ越した場合の住所変更がワンストップでできる、そうした仕組みを宣伝することで、国民には政府に対するあらゆる情報の提供についての違和感を払拭させ、何よりも主権者としての矜持の覚醒を防止いたします。
高齢者や障害者、デジタルツールに不慣れな方々もしっかりサポートし、誰をも、デジタル化の支配の仕組みの中に組み込む社会をつくり上げてまいります。
民間企業においても、社内ソフトウェアから生産、流通、販売に至るまで、企業全体で取り組むデジタル投資を支援し、政府の力で企業の従業員支配を促進するとともに、きめ細かな国民統合のためにその情報を政府において一元化いたします。
さらに、身近な情報通信の利用環境を、国民監視と管理の目線に立って変えていきます。携帯電話料金については、大手が相次いで、従来の半額以下となる大容量プランを発表し、本格的な競争に向けて、大きな節目を迎えました。
国民は、身近な利益には近視眼的な敏感さをもっていますから、このような小さな利益を供与することで容易に政府に対する信頼を醸成することが可能と考えています。携帯料金を値下げする程度のことで、国民監視と管理のシステムの設定が可能なのですから気楽なものではありますが、飽くまで気を引き締めて、完璧な国民統治のための監視・管理社会の構築に邁進する所存です。
(2021年1月11日)
一朝有事の際には、一国の政治的指導者の求心力が格段に強まる。典型的には戦時の国民が、強力なリーダーシップを求めるからだ。指導者と国民とは、一丸とならなければ敗戦の憂き目をみることになるという共通の心理のもと、蜜月の関係となる。
戦時に限らず、災害の克服が一国の重要課題となるとき、同じことが起きる。無用な足の引っ張り合いや内部抗争はやめて、政府と国民一体となって効率的に課題を克服しなければならないとする圧力が生じる。こういうときの政府批判者や非協力者は、「非国民」と非難される。
だから、戦時も有事も自然災害も、為政者にとっては、権力拡大のチャンスとしてほくそ笑むべき事態である。新型コロナ蔓延も、その恰好のチャンス。安倍晋三の国政私物化政権を見限った国民の支持を再構築するために、なんと美味しいお膳立て。そう、菅義偉はほくそ笑んだに違いない。実際、台湾やニュージーランドを筆頭に、多くの国の有能な指導者が政治的求心力の高揚に成功している。
ところが、どうだ。菅義偉、このチャンスを生かせていない。いや、こんなチャンスに大きな失敗をやらかしている。政治指導者にとっての「チャンス」は、実は国民にとっては、生きるか死ぬか、生活や生業を継続できるか否かの切実な瀬戸際である。リーダーの舵取りの失敗は、厳しい批判とならざるを得ない。
最新(1月9・10日調査)のJNN(TBS系)世論調査において、「内閣支持と不支持が逆転 コロナ対応で軒並み厳しい評価」との結論が出た。菅内閣、政権支持率を浮揚して、求心力高揚のチャンスに大失態である。この政権の前途は多難だ。国民からの強い批判がもう始まっている。
菅内閣の支持率は先月より14.3ポイント下落して41.0%となり、支持と不支持が逆転しました。政府の新型コロナ対応にも厳しい評価が出ています。
菅内閣を支持できるという人は、先月の調査結果より14.3ポイント減って41.0%でした。一方、支持できないという人は14.8ポイント増加し55.9%と、支持と不支持が初めて逆転しました。
新型コロナウイルスの感染防止に向けた政府のこれまでの取り組みについて聞いたところ「評価しない」が63%と、「評価する」を上回っています。
政府が1都3県に緊急事態宣言を出したことについて聞きました。
宣言発表を「評価する」人は65%、「評価しない」人は30%でしたが、タイミングについて尋ねたところ、「遅すぎる」が83%に達しました。
新型コロナ特措法の改正について聞きました。
飲食店などが時短要請に応じない場合に罰則を設けることの是非を尋ねたところ、「賛成」は35%、「反対」は55%でした。
今年夏に予定される東京オリンピック・パラリンピックについて、「開催できると思う」と答えた人は13%、「開催できると思わない」と答えた人は81%でした。
「桜を見る会」の前夜祭をめぐる事件で、これまでの安倍前総理の説明に「納得できる」と答えた人は12%にとどまり、「納得できない」が80%にのぼりました。
最後の3問が興味深い。コロナの蔓延を押さえ込むために特措法の緊急事態宣言に罰則を盛り込むことは、憲法を改正して政権の恣意を許す緊急事態条項創設への地ならしにほかならない。油断はできないが、反対世論が過半数であることに安堵の思いである。
東京五輪について「開催できると思わない」が81%(!)。これは、衝撃の数字だ。「金食い虫の五輪は早々とやめて、コロナ対策に専念せよ」が世論なのだ。政権がこれを軽視すると、取り返しのつかないことになる。
そして、世論は安倍晋三の旧悪について手厳しい。安倍晋三の「桜・前夜祭」のカネの流れについての認識如何は「総理の犯罪」の成否に関わる。その説明「納得できない」が80%(!)。これまた、世論の健全さを物語っている。なお、共同通信の同時期の調査も、ほぼ同じ傾向となっている。
衆院解散・総選挙の日程を間近にした今の時期、コロナの渦中でのアベ・スガ政権への国民の審判の厳しさは想像以上である。
(2021年1月4日)
正月三が日の明けには、三余という言葉を思い出す。冬(年の余り)と、夜(日の余り)と、陰雨(時の余)を指して、このときにこそ書を読み思索して学問をせよということらしい。「余」という語感が面白い。原義とは離れるかも知れないが、はみ出した自由なひととき、というニュアンスがある。ならば、昨日までの正月三が日が、まさしく「三余」であった。その三が日がなすこともなく終わって、せわしい日常が戻ってきた。しかも今日は月曜日。
事情は下々だけでなく首相も同様のごとくである。本日の年頭の記者会見が、彼の仕事始め。予め用意された原稿をまずは読み上げた。下記は、その後半の一節(官邸ホームページから)。
コロナ危機は、国際社会の連帯の必要性を想起させました。我が国は、多国間主義を重視しながら、「団結した世界」の実現を目指し、ポストコロナの秩序づくりを主導してまいります。
そして、今年の夏、世界の団結の象徴となる東京オリンピック・パラリンピック競技大会を開催いたします。安全・安心な大会を実現すべく、しっかりと準備を進めてまいります。
本年も、国民の皆様にとって何が「当たり前のこと」なのかをしっかりと見極め、「国民のために働く内閣」として、全力を尽くしてまいります。国民の皆様の御理解と御協力を賜りますよう、お願い申し上げます。
客観的に見て、頗る出来の悪い文章というほかない。何を言いたいのか、言っているのか、皆目分からない。言質を取られないように、ことさら何を言っているのか分からない、具体性のない言葉を連ねているだけなのだろう。聴く人の心に響くところがない。訴える力もない。
伝わってきたのは、「東京オリパラはやりたい」という願望のみ。それも「やれたらいいな」という程度のもの。コロナ対策とどう折り合いを付けるのかという、具体策は語られない。何よりも、情熱に欠ける。
わずか15分間だが、記者からの質問に答弁した。幹事社からの質問には答弁の原稿が準備されているものの、それ以外の記者との質疑は首相にとっての恐るべき試練であり、避くべき鬼門である。
その鬼門に待ち構えていたのが、フリーランスの江川紹子。質問が聴かせた。
「外交関係になるんですが、中国の問題です。リンゴ日報の創業者の人が勾留されたり、あるいは周庭さんが重大犯罪を収容する刑務所に移送されたというような報道がありました。天安門事件の時の日本政府の融和的な方針も明らかになって、議論も招いているところであります。菅首相はこの一連の問題についてどのように考えるのかお聞かせください」
これに対する菅答弁は以下のとおり。
「中国問題については、多くの日本国民が同じ思いだと思っています。民主国家であって欲しい。そうしたことについて日本政府としても折あるところに、しっかり発信をしていきたいと思ってます」
率直で、悪くない答弁ではないか。スガ君、原稿見ないでもしゃべれるじゃないか。おっしゃるとおりだよ。中国に民主主義が根付くことは、日本国民圧倒的多数の共通の願いだ。世界の良識が「当たり前のこと」とする、人権尊重も中国に望みたいところ。
まずは、このことを口に出したことについて評価したい。その上で、今後はその言葉のとおり、「そうしたことについて、日本政府としては折あるごとに、しっかりと明瞭に発信をしていくよう」期待したい。