澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

「本郷湯島九条の会」街頭宣伝ー本日は17名で参院選の意義を訴え

(2022年6月14日)
 途中で小雨がぱらつきましたが、きょうは国民救援会中央本部の方も参加していただき、総勢17名の賑やかな街宣になりました。このくらいの人数になると、道行く人の注目度も上がるような気がします。参院選間近で、弁士も、プラスターを持つ人も、署名板を持つ人も、それぞれ元気いっぱいの声が本郷三丁目の交差点に響き渡りました。
 マイクはロシアによるウクライナへの軍事侵略を糾弾し、火事場泥棒の如く軍事力強化を叫ぶ国内の翼賛勢力を弾劾しました。
 ウクライナ侵略に乗じて「敵基地攻撃」「軍事費2倍化」「憲法9条に自衛隊を書き込め」「核共有の議論を」という大合唱を痛烈に批判し、”軍事対軍事”の悪循環は結局日本を戦争に巻き込むことになる。あくまで9条を基軸に、政治・外交の力で平和を築こうと訴えました。
 さらに、これまでも「異次元の金融緩和」により異常円安をつくり出し、物価高騰を招いたアベノミクスの責任を追及しました。国民生活を守ることと戦争を阻止することが深く結びついた課題であることも訴えました。消費税を下げ、年金の切り下げを止め、高齢者医療負担2倍を止めさせ、戦争のための国債発行を止めることが岸田政権に戦争を止めさせることにもなります。
 間近に迫った参院選は日本の行方を決める選挙です。投票に行きましょう。ぜひ、行ってください。このことを強く訴えました。(以上、世話人・石井彰氏)

 [プラスター]★プーチンは人殺しをやめろ。女・子ども・老人を殺すな。★プーチンは核をつかうな、日本は核を持ち込むな。★破壊も人殺しもイヤ、憲法9条で平和を。★戦争できる国9条改悪ストップ。★軍事費増強NO、軍拡は戦争を招く。軍備で平和は生まれない。★まず分配、財源は法人税、株配当税。

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 近所の弁護士です。私が最後の弁士となります。もう少しお耳を貸してください。明日6月15日に通常国会は閉会します。そして、6月22日来週の水曜日に参議院議員選挙の公示となり、7月10日・日曜日の投開票となります。いつにもまして大切な選挙です。

 もしかしたら、その後の3年間、国政選挙はないかも知れません。この参院選に勝てば、政権にとって選挙による制約のない「黄金の3年間」が始まる、という声が聞こえて来ます。政権がなんでもできるという「黄金の3年間」にしてはなりません。

 今度の参院選は、おそらくはロシアのウクライナ侵攻中の選挙です。日本の平和主義、国民の憲法意識が試される選挙になります。そして、とんでもない物価高が押し寄せ、国民の暮らしが押し潰されそうになる状況下での国政選挙でもあります。争点になるテーマは大きくは二つ。一つは何よりも平和をどう作るべきかという課題であり、もう一つは国民生活防衛の課題です。そして、この二つのテーマは深く結びついています。

 ロシアによるウクライナ侵攻は、明らかなプーチン・ロシアの国連憲章違反の武力行使です。私たちは、全力を上げてロシアの違法を糾弾し、戦争を開始したロシアに対して、即時停戦・軍事侵攻の撤退を求める大きな声を上げ続けなければなりません。そして、侵略戦争の被害に苦しんでいるウクライナの人々への人道支援にも力を尽くしたいと思います。

 さらに、私たちの国の、平和主義・国際協調主義を謳う憲法と、その中核にある憲法9条の理念を再確認しなければなりません。今こそ、今だからこそ、日本の平和を願う立場から、しっかりと憲法9条擁護の姿勢を確認しなければなりません。

 憲法9条の理解は、これを擁護する人々の間で、必ずしも一義的なものになっていませんが、少なくとも「専守防衛」に徹するべきで、「攻撃的な武器は持たない」「軍事大国とはならない」ことは、長く保守の政権も含めての国民的な合意であったはずです。

 ところが、予てから軍事大国化を狙っていた右派勢力が、今を好機と大きな声で「軍事費増やせ」「防衛費を5年以内にGDP比2%以上にせよ」「年間10兆円に」「いや12兆円に」と言い出す始末。

 それだけではありません。「敵基地攻撃能力が必要だ」、「それでは足りない。敵の中枢を攻撃する能力がなければならない」「先制攻撃もためらってならない」「非核三原則も見直し」「核共有の議論を」と暴論が繰り返されています。そして、そのような軍事力の増強に邪魔となる「憲法を変えてしまえ」というのです。

 これまで歴史が教えてきたことは、「安全保障のジレンマ」ではありませんか。仮想敵国に対抗しての我が国の軍備増強は、必ず仮想敵国を刺激し軍備増強の口実を与えます。結局は、両国に際限のない軍拡競争の負のスパイラルをもたらすだけではありませんか。このような愚行を断ち切ろうというのが、戦争を違法化してきた国際法の流れであり、その到達点の9条であったことを再確認いたしましょう。
 平和を守り、その礎としての平和憲法を守ることが参院選の争点の一つとならねばなりません。

 もう一つが、今進行を始めている恐るべき物価高です。6月の統計が発表されれば、前例のないインフレが明らかとなることでしょう。物価が上がりますが、賃金は上がりません。物価は確実に上がりますが、年金のカットは既に決められています。医療費も値上がりします。

 いろんな要因が考えられますが、基本は政権与党の経済政策の失敗です。アベノミクスは、新自由主義的なイデオロギーに基づいて、大企業の活動を自由化し儲けを保障しました。庶民からむしりとった消費税を財源に法人税の大減税までして、優遇したのです。

 まずは大企業を太らせれば、その利益はやがて中小企業や労働者のところにまで、したたり落ちてくるという「トリクルダウン」理論がまことしやかにささやかれました。しかし、結果は惨憺たるものです。大企業の利益は内部留保としてため込まれ、労働者に滴る利益はありません。賃金はまったく上がりません。

 アベノミクスで潤ったのは大企業とその株主の金持ち連中ばかりで、結局庶民には生活苦をもたらしただけ。とりわけ、異次元の金融緩和策が、市場に金余りと円の価値切り下げをもたらしてインフレの原因となってしまいました。インフレは、年金生活者と低所得層に深刻な打撃を与えます。何とかしなければなりません。

 私たちの投票の選択肢は三つあります。一つは政権を構成している自公の与党勢力です。これへの投票は、軍拡と9条破壊そして生活苦の道です。二つ目が、立憲野党です。9条を守り、軍拡を回避して9条を守り、専守防衛からはみ出さない立場。そして、三つ目が、「与党」ではないが「野党」でも「ゆ党」でもない、「悪・党」というべき維新の勢力。そして、労働組合でありながら資本の手先になり下がっている連合と結託した政治家たち。連合の推薦を受けた政治家に投票せぬようお気をつけください。

 ぜひ皆様、大切な選挙にまいりましょう。そして、平和と憲法と暮らしを守るために、立憲野党に投票をしていただくようお願いをして、本郷湯島九条の会からの訴えを終了いたします。

名護市長選挙における民意の反映を妨害する政権、そして今夏の参院選での連合、いずれも民主主義に反する存在。

(2022年1月22日)
 早いもので、名護市長選挙の投開票が明日(1月23日)となった。選挙は、民意反映の手続だが、この民意の何たるかは必ずしも選挙結果のとおりのものではない。名護市民の新基地建設反対世論は、賛成派を圧倒している。これが最大争点である以上、本来はオール沖縄派の岸本ようへい候補の圧勝である。

 ところが、政権は基地負担を地元に押し付ける見返りとして、地元に交付金・助成金をばらまいている。渡具知候補が勝てば、このばらまきで引き続き地元が潤う、岸本が勝てばこのバラマキはストップだという脅しと誘導がかけられている。

 カネで選挙がゆがめられてはならないというのが、民主主義の大原則である。にもかかわらず、名護の選挙は完全に札束で選挙民をひっぱたいての選挙になっている。これでもなお、公正な選挙なのか。カネでゆがめられた投票行動は本当に「民意」反映の機会なのか。

 そのハンディを背負っての選挙戦であり、明日の投開票である。清々しい、「本当の民意」の勝利の報を待ちたい。

 もう一つ、選挙についての話題に触れておきたい。今夏の参院選に対する連合の方針に関しての問題である。昨夕の朝日新聞デジタル記事の見出しが、「『なんて乱暴な』立憲幹部は絶句 連合の野党離れ、なくした政治の軸」という見出し。

 例の芳野友子率いる連合本部が今夏の参院選に向けた方針(案)を出した。支援政党を明記せず、支援しない政党だけを明記した。唯一の非支援政党とは、自民党でも維新でもなく、労働者の党を名乗る日本共産党のことである。日本共産党を支援しないというだけではなく、日本共産党と連携する候補者を一切支援しないとする基本方針案をまとめたという。

 恐るべき反共主義である。共産党を支援しないというだけではなく、露骨に共産党の共闘を妨害しようというのだ。なるほど、連合の新年交歓会に、岸田文雄が招かれるわけだ。連合とは、労働者の組織ではない。資本の手先、財界の犬、政権の回し者でしかない。

 朝日の記事は、「なんて乱暴な……」。「連合の基本方針案を知った立憲幹部は絶句し、『今までのような共産との連携はできなくなり、新しい方法を考えないといけない。これで得をするのは自民党だけだ』とこぼした」というもの。

 とはいうものの、連合には、傘下の労働者の投票行動を左右するだけの力量があるのだろうか。連合の推薦の有無が選挙結果を左右するほどの影響力を持つものだろうか。大政翼賛の時代でもあるまいし、労組組合の連合体が、こんな露骨に反共主義を剥き出しにして、組織がもつのだろうか。むしろ、分裂の気運が盛り上がることになるのではなかろうか。

 読売の報道では、「連合、参院選の支援政党明示せず…基本方針案『目的が異なる政党等と連携する候補者は推薦しない』」となっている。

 もしかしたら連合は、日本共産党を買いかぶって、「連合は資本主義体制を大前提に組合員の労働条件向上だけを目的とするが、日本共産党は政治闘争至上主義の革命を目的とする集団として相容れない」と説明するのかも知れない。

 しかし、ホンネのところはこうであろう。
 「連合は恵まれた大企業正規労働者と公務員労働者の組織だ。だから、現自民党政権にベッタリくっついて楽に甘い汁を吸うことを目的としている。だから、政権にも資本にも最も厳しく敵対している日本共産党は、けっして連合の目的と相容れない存在なのだ」

 自民党の元政調会長の亀井静香がこう批判しているという(『月刊日本』12月号)。これを、常識というべきであろう。

 「立憲の支持母体の連合というのは、革新の仮面をかぶってるけど中身は自民党なんだよ。労使協調と言ってるだろう。経営者は自民党支持なんだから、結局自民党が勝つほうが今の労使協調体制を維持するのには都合がいいんだ。本当の労働者政党が政権を取ったら困ると思ってるんだよ」

 連合は、労働者のために闘わないというだけではない。反共を唱えて、労働者のために闘おうという政党の足を引っ張って、積極的な妨害を企てているのだ。

 連合も、今夏の参院選での「民意」反映を意識的にゆがめようという存在。民主主義に敵対する組織と言ってよい。このままの方針であれば、先は長くない。

「一人ひとりは微力だが無力ではない」のか、「無力ではないとしても、微力に過ぎない」のか。

(2022年1月10日)
 本日は「成人の日」だそうな。いつの間にか、どうして今日が「成人の日」になったのか。その所以はよく知らない。かつては、1月15日が成人の日だった。この日が小正月で、武家では元服の儀式が行われていた慣わしによるものと聞かされてきた。天皇制とは無関係な祝日だが、武家社会の男子だけの通過儀礼を起源としたわけだ。

 自分の成人のころを思い出す。私は学生だったが、アルバイトで自活していた。いつから成人したというような意識も自覚もなかった。強いて言えば、田舎の高校を卒業して学生として上京した18歳の春だったろう。成人式の案内というものを、区役所からもらった記憶があるが、バカバカしくってそんなことに費やす時間はないと無視した。若者を集めて、したり顔の年寄りの説教など聞きたくもなかった。

 人類最古の文字による記録は、シュメール文明の粘土板に書き付けられたものだというが、その最古の文章が「近頃の若いモンは…」「実に嘆かわしい」という内容であるという。また、パピルスに書かれたヒエログラフの最古の文書もまた、「近頃の若いモンは…」という嘆きだとか。本当のところは知らないが、年寄りの若者に対する説教の歴史には、人類の歴史とともに年季が入っているのだ。

 年寄りの説教好きとともに、年寄りが作った社会に対する若者の反抗心も年季が入ったもの…と思っていた。私は長く、「若者とは、常に社会への抵抗者である。齢をとるにつれて抵抗をあきらめ、既存の社会秩序に迎合して保守化し、やがて、次代の若者の抵抗の姿勢を嘆くのだ」と思ってきた。あるいは、「若者とは、常に理想を追い求める者、しかし、齢を重ねるにつれて現実に絡めとられ理想を失って妥協し、保守化し、やがて、次代の若者の理想を力なく嗤うことになるのだ」とも。

 このことが永遠の法則かと思っていたら、昨今はどうも様相を異にするようだ。若者ほど自民党の支持率が高いという。「そんなバカな…」と絶句するしかない。

 おそらくは、粘土板に書かれた楔形文字の文章は、「近頃の若い者は、私たちが苦労して作りあげたこの社会の秩序や道徳に反抗的である」「慎みなく新しい秩序を作ろうなどと攻撃的で実に嘆かわしい」というものであったろう。ところが、今やこの社会では、年寄りがこう言わざるを得ない。「近頃の若いモンは、私たちが苦労してぶち壊そうとしてもう一歩で成功しなかった旧社会の秩序に安住して抵抗も反抗もしようとしない」「理想をもって新しい秩序を作りだそうというエネルギーに欠けて実に嘆かわしい」

 本日の東京新聞社説が、「成人の日に考える 『関係ない』と言わぬ人」というタイトル。至学館大学(愛知県大府市)の越智久美子准教授による「主権者教育」への取り組みを紹介している。その中に次の一節がある。

 戦争を生き延びたある先輩の証言が、主権者教育に取り組むきっかけになりました。
 「軍需工場といえば空襲の標的です。そんなところにいることは、恐ろしくなかったですか」と越智さんが尋ねると、その人は言いました。
 「はじめはちっとも怖くなかった。何も知らなかったから。自分には関係ないと思ってた。家を焼かれ、家族を失い、ようやく震えが来ましたよ。その時にはもう手遅れでした」
 越智さんは考えます。
 「温暖化も原発事故もコロナ禍も、知らなかった、関係ないでは済まされない。今を生きる若い人には、過去に学び、今にかかわり、未来を創造する人になってほしい。それが主権者。そのための一票です。一票は微力かもしれません。でも決して無力ではありません」
 無関心といわれる若い人たちに、選挙の内側に入ってもらい、一票の力を感じてもらうのが、演習の狙いです。

 「一票は微力かもしれません。でも決して無力ではありません」「無関心といわれる若い人たちに一票の力を感じてもらいたい」がキーセンテンス。昔から言われてきた「一人ひとりは微力だが決して無力ではない。連帯し団結することによって社会を動かす力となる」という文脈の一部。ゼロをいくつ重ねても総和はゼロにしかならないが、「ゼロではない微力なら、票を増やし、仲間を増やせば確実に力となる」という理屈。

 そうとも言えるが、実は「一人ひとりは決して無力ではないにしても、まことに微力に過ぎない。だから、自分の投票行動で社会が変わるとも思えないし、連帯し団結することによって社会を動かす力になるとの実感をもてない」ことが問題なのだ。その発想の転換をどうすればよいのか。

 何よりも、意識的な家庭教育、学校教育の成果に待ちたいところだが、自分の体験で言えば、社会との関わりをもち、何らかの能動的な行動を経験するところが出発点だ。などと、私も、いまどきの若いモンに説教する側にまわったようだ。無駄なこととは知りつつも、である。 

今年も暮れに被告発人安倍晋三を不起訴処分とする通知

(2021年12月29日)
 午過ぎに、伊藤文規という差出人からの簡易書留郵便を受領した。「ハテ、伊藤文規さん、お名前に覚えのあるようなないような」。封を切ってみると、東京地検特捜部からの処分通知書。下記のとおりのなんとも味気なく、つまらない文面。検察審査会の議決に基づいて捜査をしてはみたが、またまた安倍晋三を不起訴にしたというだけのこと。

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東京都文京区×××
 澤藤 統一郎 殿

処 分 通 知 書

令和3年12月28日

東京地方検察庁        
検察官検事  伊 藤 文 規


 貴殿から令和2年5月7日付け及び同年12月22日付けで告発のあった次の被疑事件は,再検査の結果,下記のとおり処分したので通知します。

1 披 疑 者  (1) 安倍晋三
         (2) 配川博之
         (3) 西山 猛
2 罪名 (1),(2)につき,公職選挙法違反
     (1),(3)につき,政治資金規正法違反
3 事件番号 (1) 令和3年検第18083号
       (2) 同      18084号
       (3) 同      18085号
4 処分年月日  令和3年12月28日
5 処分区分  不起訴

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 被告発人安倍晋三が告発の標的。主敵であり、巨悪でもある。あとの二人は、脇役であり、小悪である。配川博之は安倍晋三の公設第1秘書。安倍晋三とともに政治資金規正法違反で告発されたが、配川のみが略式起訴となり政治資金規正法違反(収支報告書不記載)罪で100万円の罰金刑に処せられて納付した。が、尻尾を切った安倍は、しぶとく起訴を免れた。

 また、西山猛は、安倍晋三の資金管理団体である晋和会の会計責任者。安倍晋三が主催した「桜を見る会」前夜祭の経費の支払いは、晋和会の名義でなされていた。にもかかわらず、その経費は安倍晋三後援会も晋和会も収支報告書に届けていない。そして、このことを指摘されるや、明らかに辻褄の合わない操作をして報告書を訂正したのだ。みっともない、汚い、安倍晋三のやり方。これでも、またまたの不起訴だという。

 この通知には、既視感がある。私の昨年末のブログをたどってみる。年末になると検察が安倍告発に、幕引きしようとするのだ。安倍こそ、国政私物化の権化、民主主義の敵、改憲の尖兵。安倍を倒さでおくべきや。検察は、その安倍を最も打撃の少ない時期を見計らって、処分しようとする。検察の矜持と威信はどこに行った。

2020年12月19日 「安倍晋三年内不起訴へ」の報道には、とうてい納得し得ない。
2020年12月21日 「桜・前夜祭収支疑惑」で、安倍晋三を第2次告発
2020年12月23日 「秘書がやったこと」という弁明を許さない
2020年12月26日 「安倍晋三告発に対する処分通知書」

下記のような記事もある。
2021年7月31日 「検察はその威信をかけて、安倍晋三を徹底捜査し起訴せよ ー 国民世論は安倍晋三不起訴に納得していない。」
2021年3月19日 「桜を見る度に思い起こそう。そして語り継ごう。桜を見る会を私物化した、とんでもない首相がいたことを。」

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昨日、「桜を見る会」を追及する法律家の会が、以下のとおりの緊急声明を発表した。

2021年12月28日

「桜を見る会」を追及する法律家の会
事務局長 弁護士 小野寺 義 象 
世話人  弁護士 米 倉 洋 子 
世話人  弁護士 泉 澤   章

               外

 私たち「『桜を見る会』を追及する法律家の会」(以下「法律家の会」という)は、本日、東京地検特捜部が、安倍晋三元首相らを再び不起訴処分にしたことについて、下記の声明を発表する。

1 法律家の会は、安倍元首相がその在任中、「桜を見る会」の前夜祭を都内一流ホテルで催した際、参加した後援会員らに対して公職選挙法で禁止されている寄附行為を行ない、その収支について政治資金規正法所定の収支報告をしなかったことは、明白な犯罪行為であるとして、2020年5月21日、東京地検特捜部に第1次刑事告発を行った。この告発は、過去に例を見ない977名もの法律家による大規模告発となった。さらに、法律家の会は、同年12月21日、検察の捜査によって新たに判明した安倍元首相が代表である資金管理団体「晋和会」の補填金の関与を追及するため、第2次告発を行った。

しかし、これらの告発に対して東京地検特捜部は、同年12月24日、後援会責任者1名を政治資金規正法収支報告不記載罪で略式起訴するのみで、安倍元首相については不起訴処分とした

  そこで、法律家の会は、この不起訴処分を不服として、21年2月2日、東京検察審査会に審査申出を行い、これを受けて、同年7月15日、東京第一検察審査会は、安倍元首相らを「不起訴不当」とする議決を行った。法律家の会は、この議決後の同年8月27日、後援会による収支報告書訂正もつじつま合わせの虚偽記載であるとして、第3次刑事告発を行った。

 今回の東京地検特捜部による不起訴処分は、東京第一検察審査会による上記「不起訴不当」の議決と、第3次告発に対してなされたものである。

2 昨年末の12月24日になされた東京地検特捜部による安倍元首相の不起訴処分は、首相(当時)の違法行為への関与という重大な問題に踏み込むことなく、問題を矮小化して幕引きしようとした政治的な判断であり、安倍元首相も、これで政治生命の危機は乗り切れたと考えたに違いない。

しかし、東京第一検察審査会は、検察の幕引きを容認しなかった。

東京第一検察審査会は、安倍元首相の公職選挙法違反(寄附)及び政治資金規正法違反(晋和会会計責任者に対する選任監督責任)について不起訴は不当とし、さらに、晋和会会計責任者の政治資金規正法(収支報告不記載)についても、不起訴は不当と議決した。

議決は、「総理大臣であった者が、秘書がやったことだと言って関知しない姿勢は国民感情として納得できない。国民の代表である自覚を持ち、清廉潔癖な政治活動を行い、疑義が生じた際には、きちんと説明責任を果たすべきである。」と、安倍元首相の政治家としての資質の欠如を痛烈に批判した。

また、前夜祭参加者の寄附の認識について「寄附の成否は個々に判断されるべきであり、一部の参加者の供述をもって参加者全体の認識の目安をつけるのは不十分である。単純に提供された飲食物の内容だけで認識を判断するのは相当でない。」とした。

さらに、安倍元首相の犯意について、「秘書らと安倍の供述だけでなく、メール等の客観的資料も入手した上で、安倍の犯意の有無を判断すべきである。」とし、晋和会の収支報告不記載については、「前夜祭開催に西山は主体的、実質的に関与していた。領収書は、一般的には宛名に記載された者(晋和会)が領収書記載の金額(前夜祭の不足分)を支払ったことの証憑とされ、宛名となっていない者が支払ったという場合は、積極的な説明や資料提出を求めるべきであり、十分な捜査が尽くされていない。」と、検察捜査の生ぬるさを具体的に指摘して厳しく批判した。

このような議決に基づいて再捜査をするのであれば、東京地検特捜部は、捜査対象者を拡大したうえで事情聴取を継続し、さらに強制捜査を実施してメール等の客観的資料の検討を徹底して行うなどの捜査を遂げる必要があった。しかし、議決後、東京地検特捜部が、強制捜査を含む大規模かつ徹底的な捜査を行ったなどという情報に接したことはない。今回の東京地検特捜部による不起訴処分は、おざなりな再捜査による結果と言わざるを得ない。

3 さらに、第3次告発は、安倍元首相の秘書を略式起訴する際に「訂正」された後援会の収集報告書の虚偽性を突くものであり、違法な寄付金の原資がどこから来たのかに関わる重要な告発である。収支報告書の「訂正」がつじつま合わせの虚偽記載であることが明白である以上、不起訴処分が妥当であるとは到底言い難い。森友学園問題の国賠訴訟で被告となった国は、本年12月15日に、請求を「認諾」することで訴訟を強制的に終了させ、真相を闇に葬ろうとして、世論の強い批判を浴びている。本日の東京地検特捜部による不起訴処分も、政権を忖度して真相究明に蓋をするものであり、検察の存在価値自体が厳しく問われることになる。

4 今回の東京地検特捜部の不起訴処分により、第1次・第2告発は終了したが、第3次告発については、今後、東京検察審査会への審査申し出をする予定である。

私たち法律家は、わが国で法の支配が徹底され、「桜を見る会」と前夜祭問題における法的責任の所在が明確になるまで、これからも追及の手を緩めることはない。
以上

本降りの雨のなか、本郷三丁目交差点「かねやす」前で

(2021年11月9日)
 (本郷湯島九条の会・石井 彰)
 本降りの雨のなか、本郷三丁目交差点「かねやす」前で、7人の会員がプラスターを掲げ、「9条改憲許さず」の声を上げました。

 衆議院総選挙の結果について3人の弁士はそれぞれ「9条改憲の危機」を訴えました。自公維新が改憲に必要な310議席を大幅に上回る334議席を獲得し、「野党共通政策」を掲げた立憲民主党・日本共産党・社会民主党・れいわ新撰組は110議席と改憲勢力の33%に終わったことに警鐘を鳴らしました。

 メディアは野党共闘の「失敗」を喧伝し、何とか野党共闘の分断を図っていることを訴えました。一方、野党統一候補は62議席を獲得し、惜敗率80%以上の選挙区は54選挙区に上り、合わせると116選挙区になり、289選挙区の40%で接戦、大接戦になっていたことを知らせました。この接戦区で競り勝つことでできていれば、自民党は確実に過半数を割っていたのです。

 岸田文雄首相は、11月1日、「党是である憲法改正を積極的に進めたい」と発言し、30議席増の維新の松井一郎代表は「来年の参議院選挙は改憲の国民投票」をおこないたいと力説しました。私たちは、衆参両院の憲法審査会をこれ以上動かしてはいけない、そう訴えました。

 さらに今こそ立憲主義、憲法に基づいた政治、民主主義を貫くことの重要性を訴えました。戦後一貫して憲法9条を守り、ふたたび戦争しないことを世界に宣言した日本の約束を果たさなければならない。それはまさに戦前のような「ものをいえない社会」に戻してはいけないことだ、そう訴えました。

 [プラスター] ★人類の理想戦争放棄の9条、★9条改憲、戦争できる国ストップ ★改憲論議は不要不急 ★戦争の泥沼を忘れたのか ★私たちは憲法9条を守ります。★格差・貧困をなくせ、税源は金持ちから 大企業から

○ みなさま本当にご苦労様でした。衆議院総選挙の結果、ますます日本の支配層は頭に乗って国民を蔑ろにする政治をおこなうことになるでしょう。負けてはいられません。多くの国民とともに9条を守り、温暖化をはじめとした地球的課題解決のためのたたかいを一層強めなければなりません。頑張りましょう。

 次回は12月14日、赤穂浪士の討ち入りの日です。多くのかたがたのご参加をお待ちしております。


(以下、澤藤)

 マイク代わります。雨の中ですが、ほんの少しの時間、お耳貸してください。

 この度の総選挙は、8年9か月に及んだ安倍・菅政権の国政私物化に対する審判のはずでした。ところが、その対策として、自民党は直前に表紙になる顔を取り換え、看板を付け替えました。看板代えたところで自民党商店の売ってる商品は同じじゃないか、国民はそんな姑息な小手先に欺されるほど愚かではない、というのが私たちの思いでした。…が、結果を全体としてみれば、もののみごとに騙されてしまったようです。

 自民党が議席を減らしたにせよ過半数を確保し、そして改憲・反共「ゆ党」の維新にも勢いづかせてしまいました。この選挙結果は、無念で重いと言わねばなりません。
 
 岸田自民党は、安倍・菅政権とは別物なのでしょうか。岸田さんは、「新しい資本主義」を掲げ、「成長と分配の好循環」を謳っています。これ、なんだか、お分かりですか。イメージだけが目新しく、何かやってくれそうで、実は空っぽ。これ、悪徳商法の手口です。気をつけなくてはなりません。

 岸田さんの言うことは、「資本主義」とも「古い資本主義」でもない、「新しい資本主義」。「新自由主義」ではない「新しい資本主義」。そりゃいったい何じゃ?その言葉、とうてい自分でも分かって使っているとは思えません。

 無内容なことをもっともらしく語って聞かせることこそが、悪徳商法の手口の基本。皆さん、騙されちゃいけない。

 もう一つの岸田キャッチフレーズが、「成長と分配の好循環」。なんという無内容。これまで9年近くもどちらもできなかったから、看板を掛け替えざるを得なくなったのです。問題はどうしたら、成長や分配を実現できるかなのに、具体策ないままに両方やりますでは悪徳商法の、「実現性のない甘い投資勧誘」。こんな初歩的詐欺に引っかかってはいけません。

 古くも新しくも資本主義は資本主義。資本による利潤の追求を認め、必然的に富の偏在と貧富の格差を生み出し、むしろ貧富の格差を積極的に容認する社会。さまざまな矛盾が噴出するのは当然のことです。その矛盾は、この社会に生きている人間の尊厳を傷付けます。それをどう克服するのか。産業革命以後人類が直面している大きな課題です。

 資本主義の生み出す諸矛盾を平和的に解決する手段として議会制民主主義を意識し、これを活用しなければならないのではありませんか。選挙を通じて、格差や貧困にあえぐ人々の政府をつくることが目標です。

 その方向を指向して、少なくとも公助の手を広く差し伸べる政府でなくてはなりません。「成長」か「分配」かを問われれば、「成長」は資本の自己責任で結構、「分配」こそが公助を責務とする政府の取り組むべき課題です。

 資本主義が必然的に生み出した富の偏在を、議会制民主主義が可能とする作用で大胆に再配分して真の公正を実現すること。労働運動や多様な社会運動と連携しあるいは支えられつつ、議会内に、そのことをなし得る勢力を形作ること。それこそが、この社会に生を受けたすべての個人の尊厳を擁護するすべではありませんか。

 私は確信しています。人権や民主主義尊重の思想が社会的に力をえて、まっとうで公正な議会と行政府を構成することによって資本の横暴を克服することが可能であることを。

 今、その途上で逆流に遭遇していますが、決して本流を変えることはできません。  

さあ、やせ我慢でも元気を出そう。

(2021年11月1日)
あ?あ、なんという選挙結果だ。なんという有権者だ。なんという民主主義だ。なんという日本の将来だ。元気が出ない。憂鬱だ。

市民と野党の共闘成立に大きな期待をしたのだ。安倍・菅政権の酷さに、みんなが憤ったたはずじぁないか。みんな、不正は許さない、透明性の高い社会ををつくろうと考えたはずじゃなかったのか。しかし、自民党の看板かけ替えの術は大成功だった。そんなに簡単に許してよいというのか。嗚呼、結果は惨敗というほかはない。安倍菅政権への批判は、届かなかった。

多少は利いた自公への批判も、その受け皿となったのは維新だった。なんたることだ。自民を叩いて、維新を太らせたのだ。もしかしたら、自民よりもはるかに危険な維新の連中を。

とはいうものの、あらためて思う。選挙で負けたからといって、首を取られるわけではない。身柄を持って行かれるわけでもない。テロが大手を振る社会になったわけでもない。これが文明社会だ。まだまだ、この社会の文明は失われていない。

次の選挙を待てばよいのだ。次の選挙で勝てばよいのだ。そのための策を練り、民意を結集する努力をすればよいのだ。それしか方法はない。

来年夏の参院選、その次に来たるべき統一地方選挙、そしてまたくる解散・総選挙。社会を変えるには、少しずつの毎日の努力を積み重ね、その成果を議会に反映させるしかない。

それが、議会制民主主義というものだ。多数者の住みやすい世の中をつくろうという営みが最終的には、選挙で多数派になれないはずはない。そう思いつつ、自分を励まそう。

総選挙あす投票 あなたの1票で政権は代わる ー 「比例は共産党」に

(2021年10月30日)
 いよいよ明日(1月31日)が、総選挙の投票日。主権者国民が自ら政権を選択する機会。投票箱の閉まるまでが、国民が主権者なのかも知れない。

 下記のスローガンをご紹介したい。すべて、赤旗に掲載されたものである。

 総選挙あす投票 あなたの1票で政権は代えられる
 他党派から市民から「比例は共産党」
 政権交代、政治を変える 比例の1票、必ず共産党へ
 続々 拡散10倍化作戦 「#比例は日本共産党」

 ジェンダー平等・気候危機打開/若者の熱い反応
 福祉優先社会を
 地球の未来守れ
 声届く政治つくろう
 苦しむ人支える国に
 賃上げで経済再建を
 気候対策 世界水準へ
 1票で未来が変わる
 政治の力で格差正す
 最賃一律1500円実現へ
 命・地球・未来を守る
 自公に厳しい審判を
 誰一人 取り残さない
 希望の日本へ政権交代必ず 
 市民も「比例は共産党」
 政権交代実現しよう
 ゆがんだ社会変える
 「比例は共産党」広げよう
 党躍進 共闘の推進力
 沖縄1区 市民の力で必ず国政に/デニー知事、あかみね候補応援
 京都1区 「自公政権は腐ってる」/前川氏、こくた候補応援
 4つのチェンジで希望ある日本を

 ジェンダー平等の日本/働くルール整えます
 語ろう日本共産党 総選挙
 1区あかみね候補 横一線の大接戦
 沖縄の心 託して/「オール沖縄」全員勝利 何としても
 アベノマスク 3割お蔵/118億円分 保管費毎月7500万円
 政治変えよう 響く女性の声/市民と野党が街宣
 コメ危機 農民動く/自公農政 転換のとき
 共産党の躍進で科学的コロナ対策へ
 比例ブロックすべて大激戦/「投票先決めてない」3割超
 あなたの1票で変わる 
 維新「自民と一緒」告白
 東京12区 池内さおり候補/カラフル共同 熱い期待
 京都1区 こくた恵二候補/広がる支援 自民を猛追
 小沢・安住両氏/「野党共闘の要」「盟友中の盟友」 こくた氏勝利へ
 1票の力で政権交代を 
 横一線の大激戦 あかみねさんの「宝の議席」必ず押し上げを
 新基地阻止へ勝利必ず/沖縄1区 あかみね候補と応援弁士訴え
 政権交代へ本気/「比例は共産党」
 気候危機打開へ提案
 野党共闘つらぬく
 共闘の心張り棒を

 ブレない党を

 自公を終わりに

 「あなたの1票で政権は代えられる」は真実だ。その劇的で典型的な実例が、2009年の第45回総選挙。このとき、民主党が政権を奪取した。選挙前議席115を、193増加させて308議席を獲得したのだ。ということは、自民の惨敗を意味する。300議席を181減らして119議席となり、政権を明け渡した。

 この結果をもたらしたのは、69.28%という高い投票率だった。普段よりもほぼ10%高い投票率があれば、自民を惨敗させることができるのだ。

 だが、その3年後の2012年末の第46回総選挙では、69.28%の投票率が59.32%と10ポイントも下落し、その結果形勢は逆転して自民が政権の座に返り咲いた。ここから、「腐敗した悪夢の」安倍政権が始まる。悪夢の安倍政権を誕生させたのは、自民党への国民の支持の回復ではなく、民主党への国民の支持離れであった。

 44・45・46回の自・民の比例代表の得票推移は以下のとおりである。
  自民  2600万→1900万→1660万
  民主  2100万→3000万→ 930万

2009年選挙で民主党を政権党とした3000万票は、2012年選挙では自民党にまわったのではなく、1000万の棄権票になった。安倍政権を誕生させ長期政権とさせたのは、実は大量の棄権票であり、低投票率であった。あなたが、投票所に足を運べば、政権は確実に劇的に代わるのだ。

第45回総選挙(2009年)
        民主   自民
前回選挙    113    296
選挙前議席   115    300
獲得議     308    119
増減     増 193   減 181
得票数 33,475,334(小)  27,301,982(小)
    29,844,799(比)  18,810,217(比)
得票率   47.43%(小)    38.68%(小)
     42.41%(比)    26.73%(比)
得票率増減 増10.99%(小)  減9.09%(小)
      増11.39%(比)  減11.45%(比)

第46回総選挙(2012年)
       自民     民主
獲得議席   294      57
増減    増 176     減 173
得票数  25,643,309(小) 13,598,773(小)
    16,624,457(比) 9,268,653(比)
得票率   43.02%(小)  27.79%(比)
      22.81%(小)  15.49%(比)

投票率推移 44回  67.51%(増加7.65%) 2005年
      45回  69.28%(増加1.77%) 2009年
      46回  59.32%(減少9.96%) 2012年

自民党の選挙公約は、安倍菅政権への反省にもとづくものになっていない。

(2021年10月29日)
 第49回総選挙の投票日が明後日に迫っている。今回の選挙は、何よりも7年8か月に及んだ安倍・菅政権への審判である。これからも漫然とその腐敗と失政の継続を容認するのか、それとも転換するのか。その判断は、主権者国民、つまりは私たち自身の投票にかかっている。

 安倍・菅政権の腐敗について多くを語る必要はない。「モリ・カケ・桜・クロカワイ、カジノに卵に息子の会食」と並べるだけで、十分だろう。かくも、国政を私物化した政権はミゾユウであろう。しかも、国政私物化には、行政文書の隠匿・廃棄・改竄がつきまとい、今なおその全容が解明されていない。これ以上の自民党政権の継続は、アベノフハイを闇に葬ることにつながりかねない。

 安倍・菅政権の失政の第1がアベノミクス、無能の象徴がアベノマスク、そしてその壊憲政治の最大のものが戦争法制定の強行であろう。政権運営のスタイルは、決定的な説明不足。異なる意見には耳を貸さず、国会では「数の力」で押し通す独善性。これで国民からの信頼を得られるはずはない。

 掛け替えられた看板となった岸田自民党は、率直に安倍・菅政権の失敗を認め、そのどこをどう立て直すかを語らなければならない。それなくして、国民からの信頼を取り戻すことなどできようはずもない。が、岸田にはそれができない。アベ・アソウ・アマリの援助での現在の地位なのだから。

 そのような岸田自民党の選挙公約。自民党の選挙パンフレットは、内容希薄な美辞麗句の羅列だが、私には、その合間合間に次のように聞こえる。太宰治の「トカトントン」のごとくに。

【前文】
 新しい経済のかたちを生み出す「成長」と「分配」を柱とした政策を。少子化問題解消のために、子育てへの不安に応える抜本的な政策を。国民の生命と財産を守り抜くために、毅然と対応する外交を。信頼と共感。それこそが政治を前に進める原動力だ。国民の声をしっかりと受け止め、寄り添い、全力で挑む。新しい時代を皆さんとともに。
 ⇒とはいうものの、「国民」も「皆さん」も、あなたのことではない。

【新型コロナ対策】
・人流抑制や医療提供体制確保のための方策について、行政がより強い権限を持てるための法改正を行う。
 ⇒その権限は強けりゃ強いほどよい。常に、強すぎるほどの権限が欲しいんだ。

【新しい資本主義】
・究極のクリーン・エネルギーである核融合開発を国を挙げて推進し、次世代の安定供給電源の柱として実用化を目指す
 ⇒とはいうものの、これがたいへんな金食い虫。そして完成できれば、自前の核抑止力。

【農林水産業】
・2030年5兆円の輸出額目標の達成に向け、輸出産地・事業者の育成、品目団体の組織化、戦略的サプライチェーンの構築、加工食品輸出に取り組む中小事業者への支援を行う
 ⇒そりゃ、現行の家族農業・家族漁業を潰そうということじゃないか。

【経済対策】
・マイナンバーカード機能のスマートフォン搭載、健康保険証としての利用や運転免許証・在留カードとの一体化、社会保障・税・災害の3分野以外への情報連携を拡大し、マイナンバー利活用を推進する
 ⇒デジタル技術で徹底した管理化社会の実現。これこそ長年の権力の夢の現実化だ。

【復興】
・福島については国が前面に立ち、2020年代をかけて、帰還希望者が全員帰還できるよう取り組む
 ⇒いつまでも補償の継続は負担だから、打ち切るってだけのこと。

【経済安全保障】
・戦略技術・物資の特定と技術流出の防止に資する「経済安全保障推進法」を策定する
 ⇒それって、戦争準備の常套手段だよね。

【外交】
・北朝鮮に対しては、首脳会談の実現など、あらゆる手段を尽くし全ての拉致被害者の即時一括帰国を求める。
 ⇒安倍流の好戦外交では、1ミリも問題が動かなかった。このことの反省は?

【安全保障】
・弾道ミサイルへの対処能力を進化させ、相手領域内で弾道ミサイルなどを阻止する能力の保有を含めて、抑止力を向上させる新たな取り組みを進める
 ⇒そいつはアブナイ。相手国にも日本領域内で弾道ミサイルなどを阻止する能力保有の口実となる。

【教育】
・道徳教育、高校新教科「公共」、体験活動の充実により、公徳心を持ち、日本の伝統文化を引き継ぎ発展させる人材を育成する
 ⇒そりゃ見当違い。まるでどこかの権威主義国家みたい。権力が、自分の思惑に合うよう、主権者の人格を型にはめてはいけない。

【憲法改正】
・衆参両院の憲法審査会で憲法論議を深め、憲法改正原案の国会提案・発議を行い、国民投票を実施し、早期の憲法改正を実現することを目指す
 ⇒おやおや、岸田自民はアベのしたこと、何も反省していないんだ。これじゃダメだ。

岸田流 「分配重視」の竜頭蛇尾

(2021年10月24日)
 第49回総選挙まで、あと1週間。選挙情勢は混沌としてよく見えない。各政党の政策もよく見えてこない。最大の論争テーマして、岸田さんが設定した「新しい資本主義」「いわゆる新しい日本型資本主義」なるものがよく分からない。正確には、さっぱり分からない。

 「ネオリベ」も「ネオコン」も、頗るイメージは悪い。「新自由主義経済」ではなく、「新しい資本主義」とは、いったい何なのだ。これまでのどのような資本主義に比較して、どこがどう「新しい」と言うのだろうか。分かりにくさの原因はいくつもあるが、何よりも、岸田さん自身がはっきりものを言えない立場にあることが根本原因と言ってよいのだろう。

 アベノミクスの9年は、成長重視で格差貧困をほったらかしの「新自由主義経済政策」であり、その惨憺たる失敗であった。結局、成長もできず格差貧困を大きく拡大しただけ。一方に極端な富裕層を更に肥大化させ、他方で実質賃金を減じてしまった。安倍や麻生の失政に対して、国民的な怨嗟の声が巻きおこらないのが不思議でならない。

 アベノミクスの失敗を素直に認めて、「アベノミクス=新自由主義政策」からの脱却を目指すとすれば、岸田政策はとても分かり易いものになる。アベノミクスの成長重視政策から、格差貧困をなくす経済政策に転換するのだと明言すればよいだけのことだ。だが、ご存知の事情あって、それができない。

 「成長と分配」にかかわる論争を「卵が先かニワトリが先か」論争と同視して、どっちもどっちなどとしてはならない。また、「生産と分配」の論争と混同させてもならない。「成長と分配の好循環」と言っても、あるいは「官民協働で成長も分配も」と唱えても、具体的なイメージは湧かず、何を言っているのか、さっぱり分からない。

 アベノミクスを転換して、「まず配分」を重視の政策でなくてはならない。所得の再分配も、富の再分配も必要なのだ。具体的には、消費税を撤廃ないし半減する。金融所得の分離課税方式を撤廃する。所得税の累進化率を高める。新たな富裕税を創設する。そして、最低賃金を底上げする。具体的にやるべきことはいくつもある。野党が政権を取れば、その格差と貧困の解消が現実化される。

 しかし、岸田さんは、そんなことは言えないのだ。本日(10月24日)の毎日朝刊に、興味深い記事がある。「岸田氏演説、消えた『分配』 野党と差別化『成長』重視」というタイトル。

 「岸田文雄首相が衆院選の街頭演説で「経済成長」に軸足を置いた訴えを続けている。一方で、自身が掲げる「新しい資本主義」で重視する「分配」への言及は抑制気味だ。野党との差別化を狙う自民党が「成長」を前面に出すよう要請したためだが、野党は「アベノミクスと何ら変わらない」などと批判している。

 首相は23日、佐賀県武雄市の街頭演説で「成長」という表現を7回使いつつ、…「分配」の文言は、現地での第一声としては選挙戦5日目にして初めて消え、力点の違いは明らかだった。

 首相は9月の自民党総裁選で格差是正に取り組む考えを強調し、成長重視のアベノミクスの修正とも受け取れる「新しい資本主義」を掲げた。8日に衆参の本会議で行われた所信表明演説では「新しい資本主義」への言及は7回に達した。「成長」(15回)と「分配」(12回)をほぼ同じ回数使った。

 だが衆院選に入りこのバランスが崩れている。19日の福島市の街頭演説で「成長」は8回に対し、「分配」は3回にとどまった。20日以降は「成長」への偏重が加速し、「分配」の文言を使わない演説も増えた。「新しい資本主義」に触れるのも0回か1回が続いている。」

 「首相周辺は「首相の主張が変わったわけではない。自民党側から選挙戦術の進言があった」と明かす。

 やっぱり、「岸田自民党」ではなく、「安倍・麻生・甘利・高市 自民党」なのだ。来週日曜(10月31日)の投票日には、「安倍・甘利 自民党」に大敗北の審判を下さなければならない。 

総選挙と国民審査を間近にして、本日は悪名高き「10・23通達」発出の日

(2021年10月23日)
 「3・11」「1・17」「3・10」「6・23」「8・6」「9・1」…。人は、それぞれに、月と日を記憶する。私にとっては「10・23」が忘れてはならぬ日となっている。2003年以来、今日まで。

 18年前のこの日、東京都教育委員会が悪名高い「10・23通達」を発出した。東京都教育委員会とは、石原慎太郎教育委員会と言って間違いではない。この通達は、極右の政治家による国家主義的教育介入なのだ。学校儀式における国旗・国歌(日の丸・君が代)への敬意表明、つまり「国旗(「日の丸」)に向かって起立し国歌(「君が代」)を斉唱せよ」という職務命令を全教職員に徹底せよと強制する内容。

 形式は、東京都内の公立校の全ての校長に対する命令だが、各校長に所管の教職員に対して、入学式・卒業式等の儀式的行事において、「国旗に向かって起立し国歌を斉唱する」よう職務命令を発令せよ、職務命令違反には処分がともなうことを周知徹底せよというもののだ。実質的に知事が、校長を介して、都内の全公立校の教職員に、起立斉唱命令を発したに等しい。教育法体系が想定するところではない。

 あの当時、元気だった次弟の言葉を思い出す。「都民がアホや。石原慎太郎なんかを知事にするセンスが信じられん」。そりゃそのとおりだ。私もそう思った。こんなバカげたことは石原慎太郎が知事なればこその事態、石原が知事の座から去れば、「10・23通達」は撤回されるだろう、としか考えられなかった。

 しかし、今や石原慎太郎は知事の座になく、悪名高い横山洋吉教育長もその任にない。石原の盟友として当時の教育委員を務めた米長邦雄や鳥海巌は他界した。当時の教育委員は内舘牧子を最後にすべて入れ替わっている。教育庁(教育委員会事務局)の幹部職員も一人として、当時の在籍者はない。しかし、「10・23通達」は亡霊の如く、いまだにその存在を誇示し続け、教育現場を支配している。

 この間、いくつもの訴訟が提起され、「10・23通達」ないしはこれに基づく職務命令の効力、職務命令違反を理由とする懲戒処分の違法性が争われてきた。

最高裁が、
 秩序ではなく人権の側に立っていれば、
 国家ではなく個人の尊厳を尊重すれば、
 教育に対する行政権力の介入を許さないとする立場を貫けば、
 思想・良心・信教の自由こそが近代憲法の根源的価値だと理解してくれさえすれば、
 真面目な教員の教員としての良心を鞭打ってはならないと考えさえすれば、
 そして、憲法学の教科書が教える厳格な人権制約の理論を実践さえすれば、

「10・23通達」違憲の判決を出していたはずなのだ。そうすれば、東京の教育現場は、今のように沈滞したものとなってはいなかった。まったく様相を異にし、活気あるのになっていたはずでなのだ。

 10月31日、総選挙の投票日には、公立校に国家主義を持ち込もうという現政権を批判して、立憲野党4党(立民・共産・社民・れいわ)の候補に投票しよう。そして、最高裁裁判官の国民審査においては、最高裁を総体として批判する意味において、遠慮なく審査対象11人の全員に「×」をつけていただきたい。

 全裁判官に「×」はやや無責任に思える、比較的マシな裁判官には、「×」をつけたくない、とおっしゃる方は、宇賀克也裁判官にだけは「×」を付けずに投票されたい。
 
 その理由については、下記のURLを参照願いたい。

国民審査リーフレット
https://www.jdla.jp/shinsa/images/kokuminshinsa21_6.pdf

第25回最高裁国民審査に当たっての声明
https://www.jdla.jp/shiryou/seimei/211020.html

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