(2021年2月17日)
聖火リレーという奇妙な国民精神動員行事がある。参加者の擬似的一体感を醸成するのみならず、その一体感を国家や権威・権力に動員する効果を持つ。東京オリンピックの直前に、この奇妙な行事が行われる予定だが、これに異を唱える自治体が現れた。注目に値する。
本日の毎日新聞夕刊社会面のトップが、「島根、聖火リレー中止検討 知事『五輪開催許容し難い』 コロナ対策、政府に不満」という見出し。他紙も報じているが、『五輪開催許容し難い』とはまことに手厳しい表現。これが、現職知事の言なのだ。積極的に評価したい。
「島根県の丸山達也知事は17日午前、県内で5月に行われる予定だった東京オリンピックの聖火リレーの中止を検討していることを明らかにした。報道陣の取材に『オリンピック開催は現状では許容し難い。聖火リレーにも県としては協力できない』と答えた。」
正午から開かれた臨時の県聖火リレー実行委員会で、知事の「中止検討」が正式に表明された。これは、国に対する不服従宣言にほかならない。もっとも、島根県の「聖火リレー中止」方針が確定したわけではない。毎日新聞も、「新型コロナウイルス感染拡大に対する政府や東京都の対応を改善させる狙いがあり、実施や中止の決定については『(東京都が感染を抑え込んでいるかについて)確認をした上で判断する』とした。」と報じている。
聖火リレーは中止検討の理由は、「東京都などで保健所の業務がひっ迫し、濃厚接触者などの調査が十分行われていない」「そのことが全国的な感染拡大の要因となっていて、島根県とも無縁ではない」「政府や東京都が新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込めていない中、東京オリンピックと聖火リレーを開催すべきではない」「政府や東京都のリスクの高い対応が影響し、感染者が少ない島根の飲食や宿泊業界も大打撃を受けているにもかかわらず、緊急事態宣言地域よりも政府の支援が手薄なことも不公平」などとというもの。端的に言えば、「コロナ対応に専念すべき今、オリンピックどころではあるまい」というアピール。自治体の長として当然の姿勢ではないか。
聖火リレーは、47都道府県全部で行われる。「東京2020オリンピック聖火リレーのルートは、日本全国多くの人が沿道に応援に行けるように考慮して設定された。世界遺産や名所、旧跡など各地域の魅力あふれる場所で聖火リレーが行われる。121日間にわたる聖火リレーのルートと日程を確認しよう」と主催者は呼びかけている。
島根県の聖火リレーは、5月15日・16日の両日、170人が下記の経路を走る予定という。
(萩市)→津和野町→知夫村→益田市→浜田市→江津市→川本町→邑南町→大田市→出雲市→雲南市→奥出雲町→隠岐の島町→安来市→松江市→(三次市)
これがなくなれば、山口県・萩から広島県・三次にショートカットすることになる。
島根の中止は英断である。東北各県はどこもオリンピックどころではなく、次に続く自治体のあることを期待したい。がしかし、それだけに、島根に対する官邸や財界からの風圧には大きいものがあるだろう。
やや驚いたのは、中止になれば浮く予算の額である。「島根県の聖火リレーはことし5月15日(土)と16日(日)の2日間、合わせて14の自治体をめぐる予定」だという。それだけのことに、9000万円の予算が計上されているという。
自治体負担分とは別に、「組織委は2018年、電通と聖火リレーに関する業務委託契約を締結し、約50億円の委託費を計上したが、20年スタート直前での延期となり、業務委託費の多くは支払い済みで戻ってこなかった」という報道を思い出す。聖火リレーの全予算は、少なくとも100億円にはなるのだろう。あらためて、学術会議予算10億円の僅少さを思う。
周知のとおり、オリンピックの聖火リレーは1936年ナチス政権下のベルリン大会から始まった。ヒトラーのほしいままの政治利用を許した、あの「民族の祭典」である。発案者は、ベルリン大会組織委員会事務総長でスポーツ学者のカール・ディームだという。聖火リレーとは、ナチスドイツのプロパガンダの一端として始まった。「五輪ファシズム」の象徴とも称すべきイベントなのだ。
(2021年2月3日)
あいちトリエンナーレ「表現の不自由展」攻撃に端を発した、河村・高須ら右翼グループの大村知事リコール運動は、いよいよその醜態が露わになってきた。
一昨日(2月1日)、愛知県選挙管理委員会がそのホームページに下記の資料を公表している。これは異例のことというべきだろうが、選管は公表の必要ありと考えたのだ。これまでも、河村・高須グループの違法行為は報道されてきたが、県の選管がこれを確認し、公表したことの意味は大きい。選管の決意が伝わってくる。
「愛知県知事解職請求に係る署名簿の調査の取りまとめ状況について」
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/senkyo/00000030201.html
愛知県知事解職請求に係る署名簿の調査の取りまとめ状況について愛知県選挙管理委員会では、2020年12月21日(月)から、愛知県知事解職請求に係る署名簿の調査を実施してきたところですが、調査を実施した全64団体の状況について、裏面のとおり取りまとめましたのでお知らせします。
調査を行った全 435,334 筆のうち、有効と認められない署名は362,187筆で、その割合は、83.20%となっております。
また、有効と認められない署名362,187筆について、
? 同一人により書かれたと疑われる署名が、約 90%
? 選挙人名簿に登録されていない者の署名が、約 48%
? 選挙人名簿に登録されていない受任者により収集された署名が、約24%となっております。これらの内容に重複して該当している署名もあります。
ただし、今回の調査は、直接請求制度に基づかない任意の調査であり、署名簿に書かれた本人など、第三者への聞き取り調査等を実施しておらず、個々の署名について有効又は無効を決定しているものではありません。
現在、直接請求制度が適切に運用されるために、今後の対応を検討している最中でありますので、各市町村ごとの詳細な内訳は、現時点ではお答えすることはできません。
引き続き検討を進め、現行制度の問題点・課題等を整理していきます。
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文中の「調査を実施した全64団体」とは、県内の各市町村と名古屋市内の各区を指している。それぞれに選管があり、大村知事リコールの署名を受け付け、集計している。その64区市町村選管調査の一覧表が公表されている。まとめが、以下のとおり。
県全体の非有効署名割合 83.20%
名古屋市の非有効署名割合 83.10%
その他市の非有効署名割合 83.21%
町村計の非有効署名割合 83.85%
この数値の揃い方が偶然とはとうてい思えない。組織的なノルマにもとづく行動であったことが推察される。河村・高須からの直接指示があったか否かは定かではないが、組織的に大規模な署名偽造が行われたことには疑いの余地はない。また、注意しなければならないことは、「(選管は)署名簿に書かれた本人など、第三者への聞き取り調査等を実施していない」というのだ。つまり、一応は「有効と認められるもの」とされる署名73,147筆が、「有効と確認された署名」ではないことだ。単に、「形式上、一見明らかに無効とは認められない」というに過ぎない。
「同一人により書かれたと疑われる署名が約90%」とは、誰かが何らかの名簿の住所・氏名を書き写している以外には考えがたい。そして、「選挙人名簿に登録されていない者の署名が約48%」とは、その使用した名簿が古くて現在は当該住所地に居住していなかったと考えざるを得ない。
県内各区市町村で同じように行われたのだから、統一した指導部あってのことで、直接間接に関わった、河村や高須の責任が免れようはずがない。
河村は「私も被害者だ」と言ってみたり、高須は「私が不正するわけがない、陰謀だと感じる」と非常識なことを口にしている。大村知事リコール運動を主宰した者として、無責任も甚だしい。右翼の唯一の美点は、潔癖さではないか。責任を他に転嫁し、言い訳に終始する両名の姿は見苦しいかぎりというほかはない。
河村よ、高須よ。その指示で踊らされた者たちの行動を自ら調査せよ。みっともなく愚痴を言いたてる前に、まずはその配下で受任者として登録した者の全員に、何があったのか報告させよ。その報告を公開せよ。
この常識的な問いかけは、メディアからも発せられている。
Q 「同一人物による複数署名」が大量にあったのであれば、受任者本人に確かめては?
高須「本当に30万もの不正があるのなら確かめたいとは思います。でも現実には不可能です。不正な署名を書いた人が何千人いるのかはわかりませんが、中に私の熱烈な支持者もいるし、私を陥れようとした人もいるかもしれない。いい人・悪い人を選別することは現実的には不可能です。」
「いい人・悪い人を選別することは現実的には不可能」だから、「受任者本人に確かめることはできない」という「論理」は、本人以外には理解不能である。この「医師」は、「発熱の原因の特定は現実的に不可能だから、診察も治療もできません」「細菌性の症状か・ウイルス性の疾患か特定することは現実的には不可能だから、この患者には対症療法もできません」などと言い出しかねない。
ことは、いやしくも県民から選任された県知事に対するリコール運動である。いいかげんなやりかたが許されようはずはない。署名の偽造は地方自治法が定める犯罪になるのだ。
地方自治法第74条の4第2項は、【違法署名運動の罰則】を次のように定めており、同法81条によって「知事のリコール署名」に準用されている。
「条例の制定若しくは改廃の請求者の署名を偽造し若しくはその数を増減した者又は署名簿その他の条例の制定若しくは改廃の請求に必要な関係書類を抑留、毀壊若しくは奪取した者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。」
つまり、「自治体首長らの解職請求者の署名を偽造し若しくはその数を増減した者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」に処せられることになる。
また、刑事訴訟法第239条(告発)は、こう定める。
1項 何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる。
2項 官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。
選挙管理委員会の委員も職員も「公吏(地方公務員)」に当たる。調査を遂げたら、告発せざるを得ない。また、このリコール署名活動に関わって具体的な「署名の偽造や水増し」を見聞された方には、地元の警察に告発していただきたい。是非とも、徹底した究明と刑事事件としての捜査を期待したい。民主主義のために。
(2020年12月7日)
大村秀章愛知県知事に対する大義のないリコール運動。その署名の偽造・水増し疑惑がいよいよ本格的にメディアに報じられるところとなってきた。この動き、河村たかしと高須克弥とが前面に出てはしゃいでいた印象だが、実務を支えた事務局長は田中孝博という人物。元は減税日本に所属し、現在は維新の愛知5区支部長で同選挙区からの公認立候補予定者である。なるほど、類は友を呼ぶというわけだ。醜悪なトライアングル。
この問題、ネットで疑惑として話題となり、当ブログでも何度か取りあげた。最近のものでは、以下を参照されたい。
リコール署名の偽造・水増しは、犯罪である。その隠蔽は許されない。
https://article9.jp/wordpress/?p=15962 (2020年11月23日)
その偽造署名疑惑、明らかに局面は変わった。これまで、この運動を支えていた複数の人々が、告発者として名乗りを上げ、12月4日記者会見を開いたのだ。各紙、各テレビ局が、この告発内容を報じ、自らも取材し始めている。どうせ、成立見込みのないリコール運動に大したニュースバリューはないが、名古屋市長が関わった運動に大量の偽造署名疑惑があるとなれば、報道の価値は十分である。
まずは、読売新聞記事を紹介しよう。河村や高須のイデオロギーに遠慮するところなく、事実を伝えている。
高須克弥院長らの知事リコール運動「署名7?8割が偽造だろう」…請求代表者ら
美容外科「高須クリニック」の高須克弥院長らによる愛知県の大村秀章知事のリコール(解職請求)運動で、署名集めの請求代表者となっている男性らが4日、県庁で記者会見し、「署名簿に偽造が疑われる不審点が多数見つかった」と主張した。
記者会見したのは複数の請求代表者、街頭活動で署名を集めたり、署名簿に番号を割り振る作業に参加したりしたボランティアら。
会見で請求代表者らは「提出前の署名簿には、明らかに同一の筆跡とみられるものが多数あった。指印も同一とみられる」などと説明。選挙管理委員会に提出した名簿の真偽を各選管を訪ねて確認中という請求代表者の1人は「7?8割が偽造だろう」と述べた。
リコール活動を担っていた田中孝博事務局長は取材に対し、「不正を行う時間はなかった」などと語り、事務局の偽造署名への関与を否定した。
また、共同は、「愛知県知事リコール運動で『不正署名多数』と参加者」として、下記の記事を配信した。
美容外科「高須クリニック」の高須克弥院長らが展開した愛知県の大村秀章知事の解職請求(リコール)運動を巡り、署名活動を担った男性らが4日、名古屋市内で記者会見し「不正な署名が多数あった」と主張した。リコール運動の事務局は不正を否定した。
大村知事は4日の会見で「署名の不正が行われていたら日本の民主主義を揺るがすことになる。関係者が明らかにしてほしい」と指摘した。
男性らは運動発起人の「請求代表者」や署名集めの委任を受けた「受任者」として活動した。会見で「明らかに同一筆跡の署名が多数あった」と証言。瀬戸市で活動した水野昇さん(68)は「一生懸命署名を集めた人は怒っている。真実を解明したい」と語った。
リコール運動事務局の担当者は取材に「不正行為をやる理由がない」と否定した上で「一部受任者が不正の証拠と称し署名簿を盗んだ疑いがある」と訴えた。
高須氏らは11月、43万5231人分の署名を各選挙管理委員会に提出。解職の賛否を問う住民投票実施に必要な法定数約86万6000人の半分ほどにとどまった。県選管によると、提出署名が法定数を満たさない限り、署名が有効かの審査は行わない。(共同)
さらに、地元「東海テレビ」の報道が素晴らしい。誰にも忖度するところのない報道。ぜひ、これを視聴いただきたい。
https://www.tokai-tv.com/tokainews/article_20201204_150292
愛知県の大村知事に対するリコール署名活動を巡り、ある疑惑が浮上しました。署名集めをしたグループなどが4日に会見し、「同じ人物が複数の署名を偽造した疑いがある」と訴えました。
不正に署名された疑いのある住所へ実際に向かってみると、驚きの事実が明らかになりました。
4日午後、愛知県庁で会見を開いたのは、大村知事に対するリコール署名で実際に署名を集めた「受任者」らのグループや、その責任者にあたる「請求代表者」。会見の場で訴えたのは『署名集め”不正”疑惑』です。
請求代表者:
「筆跡が全部同じである。誰かが住民データを側に置いて、それをずっと丸写ししていったんだろうな」
なんと「同じ人が複数の署名を書き、偽造した疑いがある」と訴えたのです。
去年開かれた『あいちトリエンナーレ』を巡り、高須クリニックの高須克弥院長と名古屋市の河村たかし市長が進めた、大村知事のリコール運動。
11月、高須院長の体調不良が理由で、署名集めは途中で終了しましたが、2か月で必要な署名の半数にあたる43万余りの署名が集まりました。その署名に浮上した今回の疑惑。一体どういうことなのか…。
実際に、署名簿のコピーを見せてもらうと…。
リコール署名元受任者の水野さん:
「日にちが違うし、名前がほとんど同筆跡なんですよ」
別々の人の名前が書かれた文字を抜き出してみると、「子」や「増」などよく似た筆跡がいくつもあり、書かれた署名の住所を並べてみても、確かに似ているように見えます。
不審な点に気付いたという水野昇さんは、受任者として集まった署名を提出する作業を手伝っていた11月4日、同一人物とみられる筆跡があることに気付いたといいます。
水野さん:
「誰が見たって筆跡一緒ですよ。量から見て計画的です。驚きました」
水野さんによると、なんと300余りの署名が、たった2人の手によって書かれた可能性があるといいます。
不正は実際に行われていたのでしょうか。名簿に書かれた尾張旭市内の住所に向かってみると、衝撃の事実が明らかになりました。
Q.こちらの住所・お名前は、ご自身で間違いないですか?
署名簿に記載されていた人:
「間違いありません、生年月日もあってるし。ただこの筆跡には全然覚えがないんです。(Q.リコール署名された?)書いたことはありません。書いてません」
住所と名前が一致する人物はいましたが、「署名を書いていない」ことが明らかになりました。さらに別の住所でも…。
Q.こちらご自身ですか?
署名簿に記載されていた別の人:
「えぇ、私ですけど字が違うな…。(書いた覚えは)ないです」
Q.この(署名の)お名前は娘さんですか?
また別の人:
「はい、娘です。今いないです、嫁いで。もう20年くらい前」
取材した5人のうち、2人が「署名を書いていない」と証言。さらに残りの3人は、記載された住所に住んでいませんでした。
請求代表者:
「各選管を回っています。それで不正とみられる署名簿が8割」
不正とみられる署名は蟹江町などでも確認されていて、署名集めの責任者にあたる請求代表者らは、地方自治法違反の疑いで刑事告発を検討。警察と相談を進めています。
今回浮上した不正疑惑について、リコール活動を全面的に支援していた河村市長は…。
Q.不正疑惑についてどのように受け止めている?
河村名古屋市長:
「まず不正不正言っとるけど、無効ですわね、それ。考えられんですよ、審査ですぐ分かるんだから、無効って」
一方、大村知事は…。
大村愛知県知事:
「いろんな情報が私の耳にも入ってきますけれども、投票の偽装と署名の偽造はですね、全く同じ量刑・同じ罰則・罪でありますから、軽くない。事実関係は明らかにされなければならない。関係者は事実関係を明らかにする義務がある」
現在、各地の選管で保管されている署名は、1月にもリコール活動をしていた団体に返却されますが、団体の事務局は「プライバシー保護のため、署名簿は溶かして処分する」としています。
醜悪なトライアングル、やることがいかにも汚い。潔さがない。高須が「リコールの会が仮提出した署名簿は、封印したまま僕の目の前で溶解液に入れて破棄する方針だ。万が一、リコールの会が集めた署名簿の情報が漏洩した場合、すべて責任は取ります」と発言している。
なんという姑息な発言。組織的な大量の署名偽造疑惑が問題とされている。もちろん、高須自身も、その疑惑の首謀者として被疑者の一人とならざるを得ない。にもかかわらず、自ら疑惑を晴らす努力をしょうというのではなく、疑惑の証拠となるべき署名簿を溶解してしまおうというのだ。サクラ疑惑を追及されるや、直ちに名簿を廃棄した、かの前政権並みの汚い手口。「関係者は事実関係を明らかにする義務がある」という、大村知事の提言が虚しい。しかも、「リコールの会が集めた署名簿の情報が漏洩した場合、すべて責任は取ります」と上辺を飾っての取り繕いがみっともない。
関係者の内、高須には最初から特に失うものの持ち合わせはない。維新の傷も大したことはなかろう。しかし、河村の政治生命には致命的な傷が付くのではないか。署名の偽造に少しでも関わっていればアウトだし、直接には不正署名に関わりなくとも、軽挙妄動のみっともなさが際立つことになる。犯罪との指摘を含む不正行為が、自分が肩入れした運動で生じたのだ。事務を担当した田中は、元は減税日本に所属していた知己でもある。監督不行き届きの政治責任は免れない。
記者会見に臨んだ者たちは刑事告発を検討中だという。ぜひとも厳正な捜査の結果を待ちたい。健全な民主主義のために。
(2020年10月25日)
11月1日、来週の日曜日に、いわゆる「大阪都構想」の賛否を問う大阪市の住民投票が行われる。もっとも、この投票で「大阪都」が生まれるわけではなく、府民の意見が聞かれているわけでもない。大阪市選挙管理委員会による正式な名称は、「大阪市廃止・特別区設置住民投票」である。もちろん、ここには「大阪都構想」の文字はない。問われているのは「大阪市を廃止し、4つの特別区に再編する」ことの是非である。
この住民投票が注目されているのは、もっぱら維新の政治的影響力のバロメータとしてである。2015年の前回投票では、維新が「自・公・共」を相手にたたかって敗れた。最近の地元での維新の勢いを背景にした、再度の住民投票だが、今回は公明が鞍替えし、「維・公」対「自・共」の争いとなっている。
これまで、賛成派が断然優勢とされていたが、反対派との差は縮小しつつあると報じられてきた。そして、本日(10月25日)の世論調査結果の速報で、僅差ながらも賛否が逆転したという。これは、大きなニュースだ。
毎日新聞(デジタル)の本日16時09分(最終更新18時52分)の記事は、次のとおり報じている。
大阪都構想 反対が賛成上回る 9月上旬の前回調査から賛否逆転 世論調査
大阪市を廃止し、四つの特別区に再編する「大阪都構想」について、毎日新聞は23?25日、大阪市内の有権者を対象に電話による2回目の世論調査を実施した。都構想への賛否は反対が43・6%で、賛成の43・3%を上回った。賛成49・2%、反対39・6%だった9月上旬の前回調査から賛否が逆転した。11月1日に投開票される住民投票に向け、賛否は拮抗している。
調査は大阪市の有権者を対象に共同通信社、産経新聞社、毎日放送、関西テレビと共に実施。データは共有し、分析・記事化は各社で行った。コンピューターで無作為に発生させた番号に電話をかけるRDD(ランダム・デジット・ダイヤリング)法を用い、実際に有権者がいる世帯にかかったのは1446件、うち1043人から回答を得た。
毎日だけでなく産経も共同して行った世論調査。これを産経がどう報道しているか。ちょっと面白い。
産経(デジタル)は、本日16:40に第一報を配信した。その見出しが以下のとおり。毎日と共通する内容である。
大阪都構想の世論調査、約1カ月半前と賛否逆転
ところが、18:23の配信記事では見出しがまったく変わっている。
大阪都構想、有権者は高い関心 8割超が「投票に行く」
ほとんど同じ内容の報道で、見出しを変えたのが興味深い。「賛否逆転」が、大きなインパクトを持つ人目を惹く見出しであることに疑問の余地はない。記者としては、こう見出しを付けたいところ。しかし、この見出しは反対派を勢いづけることになりはしまいか。あるいは、賛成派からのクレームを招く恐れはないか。忖度の結果の見出し変更ではないかと想像させる。その産経記事の抜粋を引用する。
(産経新聞)16:40
産経新聞社は23〜25日、大阪市内の有権者を対象に電話による世論調査を実施した。大阪市を廃止し、特別区に再編する大阪都構想については反対43・6%、賛成43・3%と拮抗した。9月4〜6日の前回調査では賛成(49・2%)が反対(39・6%)を9・6ポイント上回っていたが、反対が巻き返した。吉村洋文大阪府知事を「支持する」とした人は65・5%で、前回より10・0ポイント減少した。
今回、都構想に賛成する理由のトップは「二重行政が解消されるから」の35・8%で、前回比8・8ポイント減。次いで「思い切った改革が必要だから」の23・8%(同4・8ポイント増)だった。
反対理由で最も多かったのは「メリットが分からないから」の30・8%。「大阪市がなくなるから」(21・3%)、「住民サービスが良くならないから」(15・3%)が続き、それぞれ前回比5・3ポイント増、3・5ポイント増だった。反対派が、大阪市が廃止されると住民サービスが低下するなどと訴えていることが影響しているとみられる。
この世論調査結果は、反対派の宣伝活動が、大きな成果を上げていることを物語っている。バラ色の「大阪都構想」のメッキが剥げかかっているのだ。
ポピュリズム政党・維新は、今やアベスガ政権の走狗となって、改憲勢力の一翼を担おうとしている。11月1日の大阪市住民投票の結果は、憲法の命運にも関わる。反対派の奮闘を期待して已まない。
(2020年7月22日)
地方自治法に「住民訴訟」という貴重な制度が設けられている。自治体の首長や幹部職員に財務会計上の違法行為があって自治体に損害を生じさせた場合を典型に、住民が一人でも原告になって、「この損害を自治体に賠償させることを求める訴訟」を提起することができる。
民事訴訟の提起は、原告の私的な権利侵害に関わるものでなくてはならないことが原則。自分の利害とは無関係に、違法の是正を求めて正義を実現しようという訴訟は受け付けられない。却下(門前払い)の判決で終わることになる。住民訴訟はその例外で、自治体の利益のために住民が裁判を起こすことができる。
国立市の住民が原告になって、「上原公子国立市長の行為に違法があって」、「そのために国立市に3124万円の損害が生じた」「だから、国立市は上原公子個人に対して3124万円の賠償を請求せよ」という訴訟を提起し最終的に勝訴した。こうして国立市の財産的損害が回復された。
これと同じ構造で、東京都の住民40人が東京都を被告として、「石原慎太郎都知事の行為に違法があって」、「そのために東京都に578億円の損害が生じた」「だから、東京都は石原慎太郎に対して578億円の賠償を請求せよ」という訴訟を提起した。昨日その一審判決が言い渡され、残念ながら請求棄却の判決となった。こうして東京都の財産的損害は回復されないままである。
問題は、旧築地市場の移転を巡って生じた。都は、市場移転先の豊洲の土地を東京ガスから587億円で購入した。しかし、これは高額に過ぎる。買った土地は深刻な汚染地で、土壌汚染除去対策費を差し引いた適正額でなければならない。この587億円のうちの適正額との差額が、石原慎太郎の賠償責任の対象となる東京都の損害。石原はこれを支払って、東京都に生じた損害を回復せよ、というのが原告の主張だ。
森友事件と根本のところでよく似ている。一方は、国有地を安価に売り渡した事例。もう一方は、都有地を高額に買い入れた事例。どちらも、地下埋設物の除去費用の負担が問題となっている。石原慎太郎事件で裁判所が認めた損害額は156億円である。森本学園事件での8億円とは比較にならない巨額。判決は、「対策費を踏まえると、正常価格よりも約1・37倍高いが、著しく高額とまでは言えない」「購入は裁量の範囲内で、石原慎太郎に賠償責任はない」と請求を棄却した。これは残念。
原告の主張は分かり易い。「適正な土地購入価格」とは、「汚染のない正常土地と仮定した場合の取引価格」から、「当該の汚染物を除去する対策費用」を差し引いたものでなくてはならない。石原は、環境基準4万3千倍のベンゼンなど深刻な汚染があることを知りながら、汚染除去費用をまったく考慮せず、汚染のない土地としての価格(約578億円)で東京ガスから購入して東京都に差額分相当の損害を与えた、というもの。
問題は、この土地を高く買った石原慎太郎の行為についての違法性の有無。地方自治法及び地方財政法は、公金の無駄遣いを明確に禁止している。私人間の取引とは異なり、税金を原資とする以上は購入価格は適正な金額でなければならない。つまりは、原告の主張は「公金の無駄使いは即違法」ということなのだ。
残念だが、裁判所は原告の主張に同意しなかった。「正常価格よりも約1・37倍高い価格で購入した」ことは認めたが、「この価格は著しく高額とまでは言えない」という。「著しい高額に至らなければ裁量の範囲内で違法とまではいえない」との判断。
石原慎太郎は東京都の財産を「正常価格よりも約1・37倍高い価格で購入し」て、東京都には156億円の損害をもたらしたが、「この程度では違法とまではいえない」というのが判決の理由。本当にそれでよいのだろうか。156億円の全部ではなくても、その一部については違法と言えないだろうか。
住民訴訟は、住民の一人ひとりを、自治体の財務会計上の非違行為の監視役とする貴重な制度である。その活用は、自治体財産の保全に裨益するだけでなく、住民の自治意識の涵養にも大きな意義をもつ。一審原告の皆さんと弁護団には、是非控訴のうえ、逆転勝訴に向けて力を傾けていただきたい。控訴審判決での朗報を期待したい。
(2020年6月10日)
半島の南北関係が不安定に見える。北朝鮮の朝鮮中央通信は、昨日(6月9日)、同日正午から南北間の通信連絡線を完全に遮断すると報じた。朝鮮労働党中央委員会本部と韓国大統領府を結ぶホットライン(直通電話)も含まれるという。
突然に北朝鮮が態度を硬化させたのは、脱北者団体が本年5月31日に北朝鮮に向けて風船で飛ばしたビラ50万枚の散布が原因だという。核弾頭や弾道ミサイルのイラストとともに金正恩朝鮮労働党委員長の写真が掲載され、これに「偽善者金正恩!」とのメッセージが書かれていた。これが、北の体制批判として逆鱗に触れた。
正恩の実妹金与正(キム・ヨジョン)が北朝鮮メディアを通じて非難する談話を4日に発表した。朝鮮中央通信によると、与正はビラを飛ばした脱北者らを「祖国を裏切った野獣より劣る人間のくず」「くそ犬」(訳語の正確性は分からないが)などと罵倒。韓国政府が「相応の措置」を取らない場合には、南北合意の破棄も「十分に覚悟すべきだ」と警告した。これに呼応して、6日には、ピョンヤンで脱北者団体を糾弾する大集会が開かれ、人々が「人間のくずを八つ裂きにせよ」と叫んでいる。
金明吉(キム・ミョンギル)中央検察所長も次のように発言している。「歴史の審判は避けることができず、早晩、民族的罪悪を総決算する時が訪れるだろう。最後の審判のその時、共和国(北朝鮮)の神聖なる法廷は、わが最高尊厳(金正恩)を攻撃した挑発者たちを無慈悲に処刑するであろう」というのだ。
北朝鮮の労働新聞も「最高尊厳」に言及している。脱北者団体を「虫のような者」「人間のくず」と罵倒し、北朝鮮へのビラ散布を「北朝鮮の最高尊厳にまで触れる天下の不届き者の行為」と批判したという。のみならず、「さらに激怒するのは責任を免れようとする南朝鮮当局の態度」とし、「人間のくずの軽挙妄動を阻止できる措置からすべきだった」「決断力のある措置を早急に取れ」と主張して、韓国政府を批判し適切な措置を求めている。
「偽善者金正恩!」という表現は、神聖なる法廷で裁かるべき「わが最高尊厳に対する攻撃」だというのだ。これは信仰を共にする仲間内だけに通じる、聖なる存在への帰依の表白である。信仰を共にする世界の外にいる者には理解不能である。権力や権威を批判する自由は、民主主義の基本である。にもかかわらず、信仰を共にする世界の外にいる者に、自分たちの心情を理解しないこと、同調する行動に至らないことに苛立っているのだ。
こういう動きは、海外だけにあるわけではない。北朝鮮の動きは、神聖天皇を戴いた戦前の大日本帝国をルーツとするものと言ってよい。神聖天皇に忠誠を競った臣民の末裔は、日本にも遺物として残存しているのだ。
その日本では、6月2日高須克弥という人物が、愛知県の大村秀章知事をリコールするため政治団体を立ち上げたと発表した。国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」をめぐり、「税金から補助を与えるのが一番許せない」と述べたという。同席者が、百田尚樹、竹田恒泰、有本香、武田邦彦という、「ああ、なるほど」と思わせる分かり易い面々の集合。
大村知事リコールの理由は分かりにくいが、「昭和天皇を含む肖像群が燃える映像作品などの展示内容」が問題というようである。「国、県民にとって恥ずかしいことをする知事は支持できない」とも述べられたという。
北朝鮮の金与正と日本の高須克弥、精神構造は酷似している。金与正にとっての金正恩と、高須克弥にとっての昭和天皇(裕仁)は、ともに「わが最高尊厳」なのだ。この 「わが最高尊厳」に対する侮辱は、神聖なる法廷で裁かるべき攻撃として許せないという。そして、許せないはずのことを傍観している文在寅や大村知事が許せないというのだ。
与正の感情も、高須の胸の内も、信仰を共にする仲間内だけに通じる、聖なる存在への帰依でしかない。民主主義社会においては、将軍様や天子様への信仰を公的に認めることも、それに対する批判の言論を封じることもあり得ない。さらに、忌むべきことは、同調圧力によって、将軍様や天子様への信仰を強制し、あるいはその批判を掣肘しようとすることである。
国内問題としていま問われているものは、天皇(裕仁)に対する批判の表現に対する賛否ではない。わが国における表現の自由の実質的な権利性である。そのことは、この社会の民主主義の成熟度でもある。
この高須の動きは、民主主義のバロメータとなるだろう。たまたまの偶然で、愛知県民が民主主義成熟度計測のサンプルとなった。表現の自由がどれほど護られているか、あるいは絵に描いた餅に過ぎないか。成熟した民主主義が定着しているのか否か。それが試され、計られる。
高須は100万の賛同署名を集めると口にしたという。この件で100万の署名が集まるようなことがあれば、この社会の民主主義成熟度は0点である。その反対に署名ゼロなら満点の100点。得点を数式化すれば、下記のとおりである。
《100?(署名数÷10000)》点
80点以上なら 優
80?50 良
50?13 可
13以下 不可(リコール成立)である。
なお、愛知県内の有権者数は612万人で、リコール(知事の解職請求)は87万人の有効署名で成立する。請求が有効と確認されれば、その日から60日以内に解職の住民投票が行われ、有効投票総数の過半数の賛成で知事は失職することになる。
小池百合子都政にはガマンがならない。その政策の差別性、歴史修正主義、そしてオリンピック開催のためのコロナ感染隠し。自分ファーストの姿勢。これなら舛添都政の方がよっぽどマシだった。
しかし、これまでの政治状況下、容易に対抗候補者が見つからなかった。革新共闘の予定候補者不在のまま、6月18日告示7月5日投開票の日程が目前に切迫である。今のままでは、目くそを選ぶか、鼻くそを選ぶかしか、選択肢がない。アベ政権への批判の民意高まるこの時期に、である。
そのような折も折、「九条の会東京連絡会議」が主催する6月15日としま区民センター大集会の呼びかけが注目されている。その宣伝のチラシは下記URLのとおり。
http://www.9jo-tokyo.jp/plus/chirashi615.pdf
目を引くのは、3人の講演予定者。五十嵐仁と小森陽一、そしてもう一人が「都知事選候補者」である。都政に関係するメーリングリストには、「都知事選の統一候補者も参加の予定です。よろしくお願いします。」と案内されている。6月18日告示の直前だが、この6月15日までに野党の統一候補が決まる模様なのだ。
統一候補選びは、「市民と野党の共闘の実現で都政の転換をめざす呼びかけ人会議」が担っている。その代表呼びかけ人は、浜矩子・五十嵐仁・永山利和の3名。私も1000人に近い呼びかけ人の一人に加わっている。
同「会議」は、次のアピールを発している。
“市民と野党の共闘”で小池都政の転換を” ?呼びかけ?
都民の生活と都政の未来、ひいては日本の将来にも重大な影響をもたらす東京都知事選挙が間近にせまりました。
いま、4年目を迎えた小池都政は安倍政権がすすめる戦争をする国づくり、社会保障の連続的改悪、消費税増税、アベノミクスの推進などと呼応しつつ、保育など若干の分野での対応は見られるものの、大局的にはトリクルダウン政策を柱にすえ、福祉や医療、中小企業対策などの切実な都民要求に背を向ける姿勢をとり、他方、超高層ビルを林立させる石原都政以来の「都市再生」、開発行政を推進してきました。また、オリンピックの見直し、築地市場の存続など都知事選挙にあたって掲げた公約を放棄し、都民の信託を裏切ったことも記憶に新しいところです。
一方、国政、地方政治においては、市民と野党の共闘がおおきく前進しており、東京においても市民と野党の共闘の実現と都民の願いに応える都政への転換が期待されるところです。
こうしたもとで私たちは、東京での市民と野党の共闘の前進と小池都政の転換をめざして「都政を考える夕べ」を開催。また、幅広い呼びかけ人・賛同人の参集をうけ、呼びかけ人会議を起ちあげとりくみをすすめています。
都政転換を願うみなさん。連帯し共同のたたかいをすすめようではありませんか。
2020年3月
呼びかけ人: 浜 矩子(同志社大学大学院教授)
五十嵐仁(法政大学名誉教授)
永山利和(元日本大学教授)
呼びかけ人一同
この代表呼びかけ人3氏は個性的な以下のメッセージを発している。
(「全国革新懇ニュース」に掲載されたもの)
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毒瓜を退治し、東京を民主主義の共同体に なんと素敵な闘いでしょう
浜 矩子さん(同志社大学大学院教授)
今の日本は、国政と都政の両レベルで下心政治の餌食になっている。都知事選が近づいて来る中で、改めて、つくづく、そう感じます。
人々のためにあるはずの政策と行政。それらを、自分たちの野望達成のために手段化する。私物化する。この由々しき姿勢、許し難き行動原理において、安倍政治と小池政治は全く瓜二つです。
我々は、この毒瓜を丸ごと、叩き潰して行かなければいけません。今回の都知事選が、そのための第一撃となることを期待し、確信するところです。善良にして賢明なる市民たちの力と魂をもってすれば、毒瓜の一つや二つ、何のそのです。野党各党にも、団結して市民と魂を一つにしてもらわなければいけません?
小池都政の下で、東京はどんどん、人々が住む街、人々のための街ではなくなって来ました。下心政治のモンスターが、その目立ちたがり願望を満足させるためのパフォトマンス会場。それが今の東京です。こんな東京はあまりにも悲しい。
地方自治は民主主義の要です。人々に最も近いところで、人々の意向に
従っ政策決定が行われる。その舞台が地方自治体です。国家権力の横暴から人々を守る守護神。それが地方自治体であるはずです。
東京を再び地方自治体にしなければいけません。民主主義のための共同体にしなければいけません。街にしなければなりません。東京を市民の手に奪還しなければいけません。今回の都知事選はそのための闘いです。なんと素敵な闘いでしょう。
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都政を変えれば日本は変わる
五十嵐 仁さん(法政大学名誉教授)
新型コロナウイルスの脅威が高まり、都民の健康と命、生活を守ることが緊急の課題となっています。五輪・パラリンピックも延期になりました。損害は多岐にわたり、莫大ですが、そのツケは都民に回って来ることになります。
このような情勢の下で実施される都知事選挙は、首都東京の政治決戦として特別の意義を持っています。
その第1は、最大の地方自治体のトップを決める選挙として、「いのちとくらしを守る」行政のモデルを提示することです。とりわけ、公社・都立病院の独法化、羽田新ルート、カジノ誘致の問題は急速に浮上してきた重大争点です。
また、小池知事が掲げていた「築地を守る」などの公約がどれだけ実現されたかという検証も欠かせません。
第2は、モリ・カケ、桜を見る会、検事長人事での疑惑、公文書管理のずさんさ、政治の私物化などで国民の信を失っている安倍政権に審判を下すチャンスだということです。
都知事選で「ノー」を突きつけ、東京を変えれば日本は変わります。
第3は、解散・総選挙を間近に控えた時期での大型政治戦としての意義があります。都知事選は共闘の試金石であり、誰が候補者になっても勝てる枠組みを草の根から作っていかなければなりません。「市民と野党の共闘」を確固たるものすることが必要です。
石原・猪瀬・舛添・小池と続いた不毛な都政の連鎖を断ち切るチャンスです。住民無視の荒れ野となった都政を立て直し、都民の手に取り戻そうではありませんか。
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オリ・パラ会場攬乱、築地潰し、臨海カジノヘ向かう都政はご免だ
永山 利和さん(元日本大学教授)
先代、先々代の都知事は身から出た錆で小池百合子知事に17兆円を超える財政規模を誇る?都政城?を明け渡した。汚名を着た歴代都政城の跡目を小池知事が継いだ。当初、オリ・パラのボート、水泳など開催予定の競技場問題、築地移転予定の豊洲市場の環境・衛生問題などで、先々代の前の石原知事の不始末まで遡るかと見せた、が…。
顧みれば小池都政4年の功績は何だったろう。
築地のネズミ退治に何らかの戦果を挙げたろうか。小池百合子戦法は、初発は撹乱が効くかに見えた。衆議院選挙では「分断と排除」戦法で、国政への野望もご開帳に及んだ。思えば、都民ファーストはまさに初発だけだった。3代前の石原都政を引継ぎ、?都民ラスト?・?デベロッパー・ファースト都政?へ見事に立ち戻った。
首都東京は、オリンピック選手村開発=「晴海フラッグ」の?大出血サービ?に象徴されるように、臨海部にカジノも誘致し、中央、港、千代田の都心区、さらに大崎、新高輪、渋谷、新宿、池袋など主要ターミナル開発を大手金融・不動産・ゼネコンなどデベロッパー軍団がオリ・パラ開催リズムに合わせ、?濡れ手に粟?宜しく。?開発ロンド?を舞う。
都政は都営交通、上・下水道などの都民インフラを都開発軍団のインフラに衣替えされる。内開府も特区開発メニューを拡げ、都民の声を聴く術すら奪う。
こんな都政はご免だ。
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同会のホームページは、下記URL。同会の中心メンバーが、地道に各野党をまわって、統一候補の擁立に努力している様子がよく分かる。
https://www.yobikakenintokyo.com/
傍観しているだけでなく、ぜひあなたも下記のURLから、野党共闘候補者の擁立に賛同の意思表示を。
https://www.yobikakenintokyo.com/ご賛同のページ/
(2020年5月26日)
暮れから正月にかけて、市民団体の機関紙や活動報告が夥しく郵送されてくる。草の根で地道に活動している多くの人々がいることに、この上ない心強さを覚える。
その中の,いかにも手作りの一通が提起している問題をご紹介したい。
「学校と地域をむすぶ板橋の会」という市民団体がある。略称は「むすぶ会」。公立校における「日の丸・君が代」強制を、地域の問題として受けとめようという貴重な運動体。その機関紙が、「手と手 声と声」という。不定期の刊行なのだろうが、そのN0.19が暮れに届いた。
その中に、「板橋区男女平等推進センターでチラシ配架を拒否される」という看過しがたい記事がある。チラシ「配架」とは、来館者の誰もが取っていけるよう「棚にチラシを置いておく」ことだという。市民運動用語では、「置きビラ」である。
「政治的なチラシは、配架して便宜をはかることができない」と拒否されたという。これは、地域に訴えようという市民団体には、切実な問題である。おそらく全国のあちらこちらで,同様の問題が起こっているのではないだろうか。行政が市民運動を「政治的」と色づけて、「政治的な活動には一切の協力お断り」というありがちな構図。これは、考えさせられる。やや長文だが、全文転載させていただく。
板橋区男女平等推進センターには、私たち登録団体が依頼すれば窓口のラックにチラシを置けることになっています。来館者が自由にチラシを取ることができます。
会は、7月に日比谷で開催された「日の丸・君が代」問題等全国学習・交流集会に賛同し、この集会チラシに「むすぶ会は賛同団体です」と連絡先を明記したシールを貼り、7月8日にラックに置いてほしいと依頼しました。しかし、センターから「政治的なものはダメ。登録団体連絡会のルールにもある」と拒否の電話がありました。
私たちは忙しくて直ぐ話に行けないが、判断した責任者と話したいと返事をしました。9月5日に担当の係長と話をすることになりました。係長の見解は課長も当然承知している内容とのことです。
区の判断
板橋区男女平等推進センター「スクエア・I(あい)」のチラシ類の取り扱い基準(登録団体用)の「3 配架をお断りするもの(3)政治的なもの」にあたると判断した。
区として、地方公務員法36条(政治的行為の制限)の「2 職員は、特定の政党その他の政治団体又は特定の内閣若しくは地方公共団体の執行機関を支持し、又はこれに反対する目的をもって、あるいは公の選挙又は投票において特定の人又は事件を支持し、又はこれに反対する目的をもって、次に掲げる政治的行為をしてはならない。(略)四、文書又は図画を地方公共団体又は地方独立行政法人の庁舎(略)、施設等に掲示し、又は掲示させ、その他地方公共団体又は特定地方行政法人の庁舎、施設、資材又は資金を利用し、又は利用させること。」とあり、地方公務員として、行なってはならないことであるから断った。
私たちの反論
チラシ裏面に「安倍政権下で教育は危機から崩壊へ」と書かれていますが、「安倍政権という言葉をもって拒否するのはおかしい。」「特定の政権を言葉に出すと政治的となるのか。政治的で問題とされるのは選挙のことではないか。現政権の施策について考えようというのは全く問題ない。」「職員の政治的行為の制限の規定を住民にまで及ぼすのはおかしい。」「公務員は憲法に基づき全体の奉仕者だ。表現の自由を保障すべきだ。」「板橋区は政権が推進しているオリンピックパラリンピックを推し進めている。実際の仕事はどちらかの立場で行っている。」「政治的とは何か? 社会生活の何にでも関係する。」「仮に、オリンピックを成功させよう、とか憲法を考えようとかでも政治的だからダメというのか。」「区は、反対しているからダメと言っているに過ぎない」「9条俳句の裁判で公民館は負けた」「勝手な判断で団体の活動に介入するべきでない」
等と抗議しました。
2014年にも区は、区民祭り時に男女平等推進センター掲示の登録団体紹介用に提出した会のポスターに対して、「議員の目にとまる可能性があり、」政治的と捉えられる心配があるから」と文章中の「『日の丸・君が代』強制反対!を掲げた活動紹介として添付した講演写真の「『日の丸・君が代』強制に反対!板橋のつどい」との文字をボカシてほしいと言ってきました。その時は期間が追っており他の部分でも趣旨は伝わると判断し掲示を優先しました。ところがその後の話合いの場では、「男女平等に関係ないから」と言い方を変えてきました。それ以降は、このような問題は起きませんでした。
今回、区は、一貫して「政治的」を理由に 「区施設の管理責任を持つ必要がある」「会の活動を否定している訳ではない」と言い私たちの意見について「弁護士に確認してみます」と答えました。私たちは、今後、配架依頼した時の対応を見ていく、ということでこの日の話し合いを終えました。
その後、会が実行委員として参加している「わいわい祭り」のチラシ(戦争させない!なくそう原発!と記載)は、何の問題もなく配架されました。今回同封の「板橋つどいのチラシ」は、これから配架依頼しますが、区の対応によっては速やかな話し合いを要求し、配架を獲得したいと考えます。ご注目ください。
理不尽な行政側の言い分に、活動家が位負けすることなく頑張って抗議し反論している様子が彷彿とする。できれば、このような場合には行政側の文書が欲しい。問題のチラシの何が「政治的なもの」なのか理由を確認したいところ。
ややはっきりしないが、板橋区の言い分は、次のように整理できるだろう。
(1) 「男女平等推進センター・チラシ類の取り扱い基準(登録団体用)」に、「配架をお断りするもの」として「政治的なもの」と規定されているところ、当該のビラはその「政治的なもの」に当たるので配架をお断りする。
(2) 地方公務員法36条(政治的行為の制限)2項・四号を根拠に、地方公務員として、「政治的活動に庁舎を利用させてはならない」とされているから、配架お断り。
言うまでもなく、この問題のベースには、憲法がある。「むすぶ会」の会員には、思想・良心の自由(19条)があり、思想・良心に従って表現する自由(21条)が基本権として保障されている。板橋区には、区民の基本的人権を尊重し、その施設を区民に利用させるに際して、一切の差別的取り扱いをしてはならない。これが大原則である。
法律レベルで問題とすべきは、地方自治法第244条と社会教育法第23条である。
(1)「男女平等推進センター・チラシ類の取り扱い基準」の内容は詳らかにしないが、係長が言うような内容であれば、明らかに両法に違反している。違憲・違法で無効である。早急に取り扱い規準を作りかえなければならない。
(2)問題は、区民の権利の有無なのだから、職員の地位を定める地方公務員法の規定を持ち出すのは筋違いである。しかも、担当職員の地公法36条解釈は、明らかに間違っている。
地方自治法第244条を確認しておこう。市民運動が行政施設を利用する際の大原則である。お上に、施設を使わせてもらっているのではない。私たち主権者・住民の権利としての公の施設の合理的使用方法を条文化したものである。
第1項 普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとする。
第2項 普通地方公共団体は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。
第3項 普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならない。
市民運動活動家は、地方自治法第244条2項を暗記しておくとよい。「板橋区は、むすぶ会のセンター利用を拒否してはならない」のだ。
もう一つは、社会教育法第23条である。いわゆる「公民館」に関する法的根拠。
関連条文を引用しておこう。
社会教育法「第五章 公民館」
第20条(目的) 公民館は、市町村その他一定区域内の住民のために、実際生活に即する教育、学術及び文化に関する各種の事業を行い、もつて住民の教養の向上、健康の増進、情操の純化を図り、生活文化の振興、社会福祉の増進に寄与することを目的とする。
第22条(公民館の事業) 公民館は、第20条の目的達成のために、おおむね、左の事業を行う。
五 各種の団体、機関等の連絡を図ること。
六 その施設を住民の集会その他の公共的利用に供すること。
第23条(公民館の運営方針)
第1項 公民館は、次の行為を行つてはならない。
一 もつぱら営利を目的として事業を行い、特定の営利事務に公民館の名称を利用させその他営利事業を援助すること。
二 特定の政党の利害に関する事業を行い、又は公私の選挙に関し、特定の候補者を支持すること。
第2項 市町村の設置する公民館は、特定の宗教を支持し、又は特定の教派、宗派若しくは教団を支援してはならない。
これで十分だろう。問題は、社会教育法第23条1項2号である。公民館の運営において禁止されているのは、「特定の政党の利害に関する事業を行い、又は公私の選挙に関し、特定の候補者を支持すること。」に限定されている。市民運動における安倍政権批判が、「特定の政党の利害に関する事業」になろうはずはない。
「手と手 声と声」の主張はまことにもっともなのだ。
「安倍政権という言葉をもって拒否するのはおかしい。」「特定の政権を言葉に出すと政治的となるのか」「政治的で問題とされるのは選挙のことではないか」「現政権の施策について考えようというのは全く問題ない」「職員の政治的行為の制限の規定を住民にまで及ぼすのはおかしい」「公務員は憲法に基づき全体の奉仕者だ」「表現の自由を保障すべきだ」「板橋区は政権が推進しているオリンピックパラリンピックを推し進めている。実際の仕事はどちらかの立場で行っているのか」「政治的とは何か? 社会生活の何にでも関係する。」「仮に、オリンピックを成功させよう、とか憲法を考えようとかでも政治的だからダメというのか。」「区は、反対しているからダメと言っているに過ぎない」「9条俳句の裁判で公民館は負けた」「勝手な判断で団体の活動に介入するべきでない」
すべて、自信をもっていただきたい。
ほとんど無関係だが、地方公務員法36条2項にも触れておきたい。その条文は以下のとおりである。
36条2項
職員は、
・特定の政党その他の政治的団体又は特定の内閣若しくは地方公共団体の執行機関を支持し、又はこれに反対する目的をもつて、
・あるいは公の選挙又は投票において特定の人又は事件を支持し、又はこれに反対する目的をもつて、
次に掲げる政治的行為をしてはならない。
四 文書又は図画を地方公共団体庁舎、施設等に掲示し又は掲示させ、その他地方公共団体の庁舎、施設、資材又は資金を利用し、又は利用させること。
一見して明らかなとおり、これは公務員の規律の問題である。本件に関係するとすれば、「職員が、特定の目的をもって、庁舎、施設を利用させること」という禁止規定に触れるか否かである。重要なのは、36条2項の目的である。下記のどちらかがなければならない。
1 特定の政党その他の政治団体・特定の内閣・地方公共団体の執行機関を支持又は反対するという目的
2 公の選挙・投票において特定の人または事件を支持または反対するという目的
注意すべきは、目的をもつ主体は職員である。「むすぶ会」のチラシが、そのような職員の目的を推認させることになるとは、到底考え難い。「安倍政権下で教育は危機から崩壊へ」と記載されていたとしても、その配架を許可した職員が、安倍内閣に反対する目的で配架したことになろうはずはない。
のみならず、同法36条には次の第5項の規定がある。
5 本条の規定は、職員の政治的中立性を保障することにより、地方公共団体の行政及び特定地方独立行政法人の業務の公正な運営を確保するとともに職員の利益を保護することを目的とするものであるという趣旨において解釈され、及び運用されなければならない。
担当職員は、安心してビラの配架を認めてよい。うっかり禁止すると大ごとになる。板橋区は憲法と法の趣旨立ち返って、言いがかりに等しい社会教育施設の濫用的運用を改めるべきである。
なお、この通信の最終ページには、次の集会案内が掲載されている。このビラの配架がどうなったか。興味津々である。
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「日の丸・君が代」強制反対!
2020板橋のつどい
【開催要項】
2020年2月1日 開場17:30 開会18:00 閉会20:30
場所:板橋グリーンホール601号室
東武東上線大山駅・都営地下鉄三田線板橋区役所前駅共に下車5分
講演:現代の教育政策とこれからの課題
講師:現代教育行政研究会代表 前川喜平さん
1955年奈良県生まれ。東京大学法学部卒業後、79年文部省(現・文部科学省)入省。文部大臣秘書官、初等中等教育局財務課長、官房長、初等中等教育局長、文部科学審議官を経て、2016年文部科学事務次官。17年同省の天下り問題の責任をとって退官。現在は、自主夜間中学のスタッフとして活動する傍ら、執筆活動などを行う。
報告:CEART(セアート、国連の合同専門委員会)報告を生かす取り組み
「日の丸・君が代」ILO/ユネスコ勧告実施市民会議 準備会
2014年、アイム89東京教育労働者組合は、東京都教育委員会が発した10・23通達が、国際労働機関(ILO)と国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「教員の地位に関する勧告」(1966年発出)に違反していると申し立てました。その結果、19年春「日の丸・君が代」強制に対する、是正勧告が両機関で承認され、公表されました。国際機関からのこの問題に関しての是正勧告が出されたのは初めてのことだそうです。
しかし、文科省は日本語訳を行おうともせず、できるだけ知られずに忘れ去られることを願う姑息な対応をしています。それに対して、勧告の拡散・実現を求め、「日の丸・君が代」ILO/ユネスコ勧告実施市民会議を組織し、3月1日に発足集会を開催する準備が進められています。
つどい当日には、勧告内容、今後の取組みについてのアピールが市民会議準備会メンバーから行われます。
報告:八王子「天皇奉迎」に子どもたちは動員されなかった
元東京教組八王子支部役員 水谷 辰夫さん
4月23日に天皇が退位の報告に昭和天皇の墓を訪れた際、二小、横山二小、浅川小の子どもたちが「日の丸」の小旗を振らされ「天皇奉迎」に駆り出された。それに対して……。
(2020年1月13日)
本日のブログは、やや長文だが理屈っぽくなく、読み易い。生き生きとした活動家の奮闘ぶりを紹介するもの。
広島県「(安芸)府中町」は人口5万余。県外の者には紛らわしいが、県東の「(備後)府中市」とは異なる。マツダの企業城下町として知られ、100万都市広島との合併を拒否して、広島市という海に囲まれた孤島のような存在となっている。
その町議会の議員定数は18。うち、共産党が2名、公明党が2名。残る14が無所属だが、そのうち2名が選挙公報にマツダの社員であることを明記している。
その「ふちゅう町議会だより」の今年(2019年)2月1日号に、こんな記事が掲載されている。
・府中町議会議場に国旗及び町旗掲揚に関する決議
賛成多数可決
町民を代表する議員の議決場所である本会議場に、国旗及び町旗を掲揚することについて、11人の議員が議案を提出しました。
提出された議案に対し、「議会運営委員会に付託し、慎重に審議すべき」と動議がありましたが、この動議は賛成5人の少数で否決されました。
改めて議案について反対討論と賛成討論が行われた後、採決を行い、賛成多数で原案可決となりました。
議長と欠席者を除く議決は、賛成10・反対5だった。多数決強行の議員の中に、公明の2と、マツダの2が含まれている。共産以外にも、反対票3があったことが注目される。
この決議の経過を,ネットで詳細に報告しているのが、共産党の二見伸吾議員。その熱意と奮闘ぶりが生き生きと伝わってくる。そして、理論的にも、さすが共産党議員。自分の立場で考えた、国旗掲揚問題がよく整理されている。抜粋してなお長文ではあるが、紹介させていただく。
「国旗」に反対するものは「非国民」だと副議長
http://futamishingo.com/3792/
「(2018年)12月議会最終日の今日、18日に「府中町議会議場に国旗及び町旗掲揚に関する決議(案)」が出されました。
この議案に対して、山口こうじ議員(無所属)から、「全く論議のないまま決すること、拙速は避けるべき。次の定例会まで議会運営委員会に付託の上、慎重に審議を」という動議が出されました。
▼山口議員の動議
口頭により動議を提案します。本案についてですが、議会運営委員会に付託し、慎重審議すべきです。
過去の議事録を読み直したところ平成17年から19年にかけて府中町議会は議会運営委員会、全員協議会、そして本会議で論議を積み重ねてきました。全員協議会では議員一人ひとりが国旗について時間をかけて慎重に検討しました。
その議論を踏まえ、議会運営委員会は、『府中町議会本会議場に国旗及び町旗掲揚に関する決議』を否決致しました。加島議運委員長は否決に至った経緯を平成19年3月議会で次のように報告しております。
「全員協議会でも多くの議員から全会一致が望ましく、(その方が)いいのではないか、また申し合わせ等による方法で対応すべき問題であると、全員の理解のもとに実施すべきものとの意見がありました。よって、決議という手段、多数決で決めることには問題が少々あるんではないんかと、また決して国旗を否定するものではない、慎重的意見が大半を占める中、この件で議会運営に支障が生じることがあってはならない、現状維持が望ましい、そしてもう一点は、町民の中にも日の丸に賛成しかねる人もおられる、強引に議会が掲揚すべきではないと思う、そういったいろんなご意見があったことを報告をさせていただきます」
本会議でも賛成、反対の討論がありましたが、採決の結果、原案に対して賛成少数で、国旗の掲揚は否決されました。
このように平成17年から19年にかけて丁寧な論議をつみかさ、その結果、国旗の掲揚に賛成の方も含めて、慎重に検討しよう、強制にならないようにしよう、議会運営に支障が生じないようにしようという結論に至ったわけです。
にもかかわらず、慎重審議の上否決されたものが、新たに議論する場を設けることもなく唐突に議案として出されました。論議もせず、多数決で決めようというのは、これまでの論議を大切にしてきた府中町議会の歴史と伝統の否定ではないでしょうか。
急いで多数決でことを決することは避けるべきだと思います。次の定例会まで議会運営委員会に付託の上、慎重に審議すべきと思いますので、どうぞみなさん、よろしくご理解のほどお願いしたいと思います。
これに対して、国旗掲揚推進派の議員(副議長)が動議を出し、山口議員を誹謗中傷しました。
「一つにまとまることはありえない。全会一致などというのはおかしい。議運には一部のメンバーしかいない。チャーチルは国民が反対してもヒットラーとたたかった」ほか、支離滅裂。
私は「議事進行」と声を上げ、「山口議員は慎重審議をと言っているのであって、全会一致で決めなければならないとは言っていない。言っていないことで批判するのはおかしい」「議運への付託というのは全員協議会での論議も当然含まれている」と反論。論議はヒートアップしていきます。
すると副議長は「国旗を否定する者は非国民だ」と言ったのです。
これに対しても「議事進行」で、猛烈に抗議し、取り消すよう求めました。さすがにこれはまずかったと思ったのか、言い過ぎであったと認めました。しかし、語るに落ちるとはこのこと。国旗への忠誠を求め、それを拒む者は非国民のレッテルを貼る。許しがたいことです。
山口議員の出した動議は共産党2人、山口議員を含め無所属議員3人の計5人が賛成。残念ながら賛成少数で否決されました。
その後、反対・賛成の討論を経て、「国旗及び町旗掲揚に関する決議(案)」は採決され、賛成多数(議長を除く出席議員15人中、賛成10人、反対5人)で可決されました。
国旗掲揚に反対ではないが、議論なしの拙速な決め方に反対だという議員が共産党以外に3人もいたことに感激。立場をこえて、審議を尽くす民主的な議会運営になるように今後も協力・共同をすすめていきたい。
以下は、私の反対討論と梶川三樹夫議員の賛成討論です。
■二見伸吾 反対討論
議員提出議案「府中町議会議場に国旗及び町旗掲揚に関する決議(案)」に反対の立場から討論します。
まず初めに、議場に府中町町旗を掲示することには異議がないことを申し上げます。問題は国旗の掲示であり、5つの問題点があります。
第一に、地方自治法に照らして問題がある。
地方自治法第1条の2は、地方自治体の役割について「住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担う」と述べています。
「国民」ではなく、「住民の福祉」の増進が地方自治体の役割なのです。国民と住民は同じではありません。住民には日本国籍を持たない人たちも含まれます。
ですから、決議(案)の述べている「日本国民としての自覚と誇り」を求めるのは、そもそも自治体のあり方としておかしい。
9月19日、法務省は、日本に在留する外国人が今年6月末時点で263万7251人(速報値)で、統計を取り始めた1959年以降、最も多かったと発表しました。日本の総人口は約1億2659万人で、在留外国人数はこの約2%にあたります。府中町でも外国籍の町民は663人、町民の1.3%が外国人なのです。今後さらに町内に住む外国人は増えることになるでしょう。
国旗=日の丸については、日本人のなかにも様々な受け止めがある。ましてや、かつて日本が戦争をしかけ、侵略した国々の人たちも日本に在留し、今後さらに増えていくわけです。このことをよく考える必要があります。
外国人の方には選挙権・被選挙権はありませんが、住民すなわち府中町民です。私たち町議会議員は日本国民でない外国人を含めた府中町民の代表なのです。
このことを踏まえたとき、「国民として自覚と誇りを持て」と議場に国旗を掲示することは、地方自治法のめざす方向に反するものであることは明白です。
第二に、過去に国旗、日の丸が戦争で果たした役割です。
1945年に終わったアジア太平洋戦争において日の丸は戦争のシンボルでした。そのことは戦中に使われた修身の教科書に明確に述べられています。例えば国民学校3年生用の『初等科修身一』(1942年)には次のように書かれています。
「敵軍を追ひはらって、せんりゃうしたところに、まっ先に高く立てるのは、やはり日の丸の旗です。兵士たちは、この旗の下に集まって、聲をかぎりに、『ばんざい。』をさけびます」
侵略の先頭に日の丸があり、そのことを小学生にも教え、子どもたちを軍国主義に導く役割も果たしたわけです。日本人はアジアで2000万を超える人々を殺しました。南京大虐殺の死者は30万人と言われています。
「虐殺は、大規模なものから1人?2人の単位まで、南京周辺のあらゆる場所で行なわれ、日本兵に見つかった婦女子は片端から強姦を受けた。最も普通の殺し方は小銃による銃殺と銃剣による刺殺である。大勢を殺すときは、まず隊列を作らせて、手近な殺人予定地まで歩かせる。着き次第、まとめて機関銃で皆殺しにする。生存者がないかどうかを銃剣で刺してテストしたのち、死体を積み上げて石油をかけ、焼いてしまう」(本多勝一『中国の村』朝日文庫)
こういうことを中国だけでなくアジア全土でやりました。従軍慰安婦、中国人や朝鮮半島(韓半島)の人々を徴用工として賃金も払わず、暴力を振るって働かせた。日の丸はこういう戦争と一体のものです。
第三に、国旗・国歌は強制はしないというのが政府の立場です。
「国旗及び国歌に関する法律」制定当時の内閣総理大臣は小渕恵三氏です。1999年(平成11年)6月29日の衆議院本会議において、次のように答弁しています。
「政府といたしましては、国旗・国歌の法制化に当たり、国旗の掲揚に関し義務づけなどを行うことは考えておりません。したがって、現行の運用に変更が生ずることにはならないと考えております」。
この立場は現在の政府でも引き継がれています。内閣府のホームページをみますと「内閣総理大臣の談話(平成11年8月9日)」が載っており、「今回の法制化は、国旗と国歌に関し、国民の皆様方に新たに義務を課すものではありません」とあります。
議場正面に国旗を掲示するとどうなるのか。現在、議場では、まず議長に向かって礼をし、その後、同僚議員のみなさんに向かって礼をしています。国旗を掲げると議長の後ろにある国旗に礼をすることが事実上強要されます。私は日の丸、現在の国旗が戦争中に果たした役割を考えるとき、日の丸に向かって礼をすることはできません。国旗に対して特段の感情を持たない人はいいでしょう。しかし、私は違います。議会の代表である議長に対しては失礼のないようにしたい。しかし、議長に対して礼をすると国旗・日の丸に対しても礼をすることになる。礼をしてもしなくても私は質問に立つたびに苦痛を感じます。これは憲法の定める「思想及び良心の自由」を侵すものであります。
第四に、第二次世界大戦後の日本の国のありようです。
日の丸にまつわる問題は、「過去のものとして反省したのだからもういいではないか」という意見もあります。
しかし果たしてそうでしょうか。今の日本はどうか。南京虐殺も従軍慰安婦もなかった。安倍総理は、徴用工問題は解決済みで、「今回の裁判の原告は(徴用でなく)全部『募集』に応じたため、『朝鮮半島出身労働者問題』と言いたい」と言う。過去、日本がやってきたことをなかったかのように否定する。
先ほど申しました外国からの移民、外国人労働者の扱いは酷いものであります。戦前・戦中で犯した過ちに対して反省するどころか、開き直り、同じ過ちを繰り返しています。
2015年、安倍政権のもとで、アメリカ軍が起こす戦争に自衛隊が参戦し武力を行使することを可能にした安保法制=戦争法が成立しました。そのもとで、航空母艦、空母のことを「多用途運用護衛艦」と言い換え、アメリカとともに海外で戦争する準備をすすめています。戦闘機を積むのに空母ではないとごまかす。
今年1月4日の年頭会見で安倍総理は「今年こそ、憲法のあるべき姿を国民にしっかりと提示し、国民的な議論を一層深めていく」と主張しました。実際には年内には何もできなかったわけですが、憲法を変え、戦争のできる国へ変えようとしている。
医療制度や福祉はどんどん悪くなり格差と貧困が広がっています。東京電力福島第一原発事故で避難している人たちは満足な補償も受けていない。7年も経つのに生活再建のめどの立たない人がたくさんいる。沖縄の人たちがどんなに辺野古基地建設に反対しても、平気で無視して美しい海に土砂を投入する。
こういう日本で、「日本国民としての自覚と誇り」を持て、国旗を敬え、議場にも掲示しろ、というのでしょうか。
大切なのは「日本国民としての誇り」が持てるような日本にすることです。
戦争のないもとで、誰もが健康で文化的な暮らしができ、自由で平和な日本をつくることではないでしょうか。旗の問題ではない。
最後に 府中町議会の歴史と伝統に対してです。
府中町はこれまで日の丸=国旗を議場に掲示してきませんでした。それで何か問題があったでしょうか。議論が深まらないとか、どうしても真剣になれないとか。そんなことはなかったはずです。
今から10年ほど前、2005年から2007年にかけて町議会で国旗の掲示について論議がありました。当時の議事録を読み、その真摯な討論に感激しました。国旗の掲示に反対ではないが、十分に審議すべきである、いろいろな意見があるなかでそれを封じ込める形で決めるべきでない。こういう意見が多数でした。
慎重審議という結論になった1回目の全員協議会のあと、突如本会議に、今回と同じような議案が今回と同じやり方で出されました。そのとき、お亡くなりになった加島議員が「十分お互いに意見を交わしながら検討の時間を持とう」というのが全員協議会での結論であり、議運への付託をすべきという動議を出し、議案提出者を含め議員全員がこの動議に賛成したわけであります。
このように、重大な問題について軽々に結論を出さず、熟議するというのが府中町議会の歴史であり、よき伝統であります。今回の提案はこの歴史と伝統を踏みにじるものであります。
以上、5点を申し述べまして、本議案に対する反対討論といたします。
■梶川三樹夫議員 賛成討論
平成11年8月9日に成立した「国旗及び国歌に関する法律」によって、これまで慣習法として定着してきた我が国の国旗「日の丸」、国家(議事録のママ)「君が代」が改めて法制化されました。
現在、我が日本国の国旗「日の丸」は国民に親しまれ、定着しており世界各国からも、広く認められているところです。自分の国の国旗を敬愛し、誇りに思うことは、世界各国の国民にとっても共通した感情であり、日本国民もまた同様であります。
このような認識に立ち、我が国、我が県、そして本町の永遠の繁栄と恒久の平和を切に願い、憲法に基づく民主主義実現の厳粛な議場に国旗を掲揚することは、極めて自然なことと考えます。
本町においても、町の施設には国旗が掲揚され、小中学校の入学式、卒業式での国旗掲揚率は100%です。
広島県内の23市町の調査でも、議場に国旗、市町旗が掲揚されてないのは府中町と大崎上島町のみになりました。その大崎上島町も来年度には、議場に国旗、町旗を掲げる予定と聞いております。
戦後73年を過ぎた現在、先に述べた理由からも、我が国の国旗を議場に掲揚してはいけないといった結論には至らず本議案については、賛成をいたします。
この反対討論と賛成討論。月とスッポン、提灯と釣り鐘の落差。それでも、数で負ければ、負けは負け。悔しいが、どうにもならない。
ところで、先の「山口議員の動議」は、民主主義における合意形成の在り方についてのお手本を見せてもらっている感がある。「これまでの国旗掲揚をめぐる府中町議会での論議の経過 2005-2007」は、下記URLに詳しい。感動的な議論の積み重ねで、これまでの国旗掲揚が阻まれてきた。ここに、保守の良識を見ることができる。しかし、いまや日本の保守は余裕を失い、良識をなげうったかに見える。公明党も同様である。
http://futamishingo.com/3846/
反対討論の中で出てきた、副議長(西友幸議員)の「非国民発言」。議事録では以下のとおり。
○12番(西友幸君) 発言ですよ、私の。ちょっと失礼ですよ、共産党。
ですから、全体の議員の中でやれば、議運というのはもう半分ぐらいの議員の中でまとめていこうというわけですよ。そんなひどいこというてありませんよ、これ。みんな一人一人思想を持って、日本国民として堂々として生きていっとるわけですから、それを上げないなんて何て非国民なことを言うんか、私は理解できんのですが。以上です。私のほうは。
○7番(二見伸吾君) 意見の異なる者に対して非国民という言い方はないと思います。これは撤回していただきたい。
山口議員は全会一致ということは一言も言ってない。山口議員が言ってるのは、慎重審議をすべきだということを言ってるんで、全然違う。西議員が言ってることは、言ってないことで批判してるじゃないですか。こんなでたらめな話ないです。
○12番(西友幸君) 二見議員に非国民言うたのは、私が確かに言い過ぎだと思いますけど、これは議員というのは我々議会に出て、それぞれいろんな意見を言うことを与えられて権限を持っとるわけなんですよね。
西議員の発言はこのように補うことができるだろう。
「私たち議案提出の議員11人は、みんな一人一人がそれぞれの思想を持って、日本国民として堂々として生きていっとるわけですから、当然に議場には国旗を掲揚すべきだと考えている。それを国旗を掲揚しないなんて、何て非国民なことを言うんか。私には理解できんのです」
なお、私が府中町の二見議員に注目したのは、醍醐聰さんのツイートで、同議員が町議会の賀詞決議に反対したことを教えられてのこと。この点についての下記の記事も面白い。ぜひ,お目をお通しを。
国民主権をないがしろにする賀詞決議に反対しました
http://futamishingo.com/4308/
二見伸吾,全開・絶好調である。がんばれ、最前線で。
共産党の地方議員が、このように全国で生き生きと逞しく奮闘しておられることを頼もしく思う。
(2019年9月23日)
昨日(9月17日)の午後、沖縄の地方紙記者からの電話取材をうけた。住民訴訟を提起した市民6名を被告として、宮古島市が損害賠償請求訴訟を提起予定という件。これをスラップというべきか意見を聞きたい、という内容。
私が記者に話したのは、基本的には9月2日の下記ブログ記事のとおり。
おやめなさい ― 宮古島市・下地敏彦市長の市民に対するスラップ提訴
https://article9.jp/wordpress/?p=13268
あれやこれや、DHCスラップ訴訟の吉田嘉明との比較で話をしたが、記者が最も興味をもったのは、下記の点だった。
「客観的に見て、市長がやろうとしていることは、市への批判に対する報復と萎縮を狙った民事訴訟として、典型的なスラップと言わざるを得ない。
スラップの提訴は、民事訴訟制度本来の趣旨から逸脱した違法行為だ。だから、スラップ提訴の原告は、不法行為損害賠償の責任を負うことになる。当然に反訴あることを覚悟しなければならない。
その場合、スラップ訴訟の原告となった宮古島市だけでなく、これを推進した下地市長個人も、提訴の提案に賛成の表決をした市議会議員も、共同不法行為者として責任を問われることになる公算が高い。
憲法51条によって、国会議員はその表決について責任を問われることはないが、地方議員にこの免責特権はない。もちろん、合理的な根拠にもとづく限り、軽々に議員が表決の責任を問われるべきではないが、明らかな市民イジメのスラップでの賛成表決では事情が異なる。
一連の経過から見て、現在議会に上程されている本件提訴案件は、一見明白なスラップであり、一見明白な違法提訴である。したがって、賛成の表決をした議員も有責となる可能性が限りなく高い。
スラップの被告とされた住民側の弁護団は、必ず、市と市長だけでなく、賛成討論をした議員、賛成表決をした議員をも被告として、逆襲の訴訟を提起する。そうなると、市議会議員が被告席に座らされて、スラップの痛みを実感する側にまわることになる。
だから、沖縄県内のメディアが、宮古島市議会議員に「市長の提案に賛成の表決に加わると、被告席に座らされ、個人責任を追及されることになる」という警告の記事を書くことの実践的意味は大きい。うっかり賛成しようとしている議員への親切ともなる。ぜひ、その旨を大きな記事にしていただきたい。
取材の電話は2度あった。2度目の電話で要点を確認している最中に、記者が突然声をあげた。
「あれ、ちょっと待ってください。今緊急速報が入りました。市長は、議会への提訴案件を取り下げたそうです」
「おや、そうですか。それはよかった」ということとなったが、小一時間の電話での取材が無駄になった模様。
ただ、どうもこの撤回は確定的なものではないようだ。現地紙の報道は、下記のようなものとなっている。
「下地敏彦市長は17日、市議会9月定例会に提出した、市民6人を『名誉毀損』で訴える議案を撤回することを佐久本洋介議長宛てに文書で通知した。撤回の理由を『内容を精査する必要が生じたため』としている。再提案の可能性も含んでおり、野党側は市の動きを注視する考えだ。」(宮古毎日新聞)
「宮古島市議会(佐久本洋介議長)は18日の本議会で、宮古島市(下地敏彦市長)が市議会に提案していた不法投棄ごみ事業を巡る住民訴訟の原告市民6人を提訴する議案について、市側が申し出た議案の撤回を全会一致で承認した。
下地市長は質疑で、撤回理由につて『(議案の中身を)きちんとする必要があるので、精査する』などと述べた。再提案については明言しなかった。」(琉球新報)
だから、再度申しあげる。市長さん、こんなみっともないスラップはおよしなさい。宮古島市と市民の恥となる。市長個人もスラップの責任を問われて損害賠償請求訴訟の被告となる。それだけではない。スラップの提訴に賛成した市議会議員諸君も、同様に表決の責任を問われて被告となる。誰にとっても、よいことはないのだから。
(2019年9月18日)