澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

河村・高須の両名は、愛知県知事リコールの署名偽造の責任をとれ。

(2021年2月3日)
あいちトリエンナーレ「表現の不自由展」攻撃に端を発した、河村・高須ら右翼グループの大村知事リコール運動は、いよいよその醜態が露わになってきた。

一昨日(2月1日)、愛知県選挙管理委員会がそのホームページに下記の資料を公表している。これは異例のことというべきだろうが、選管は公表の必要ありと考えたのだ。これまでも、河村・高須グループの違法行為は報道されてきたが、県の選管がこれを確認し、公表したことの意味は大きい。選管の決意が伝わってくる。

「愛知県知事解職請求に係る署名簿の調査の取りまとめ状況について」
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/senkyo/00000030201.html

 愛知県知事解職請求に係る署名簿の調査の取りまとめ状況について愛知県選挙管理委員会では、2020年12月21日(月)から、愛知県知事解職請求に係る署名簿の調査を実施してきたところですが、調査を実施した全64団体の状況について、裏面のとおり取りまとめましたのでお知らせします。

 調査を行った全 435,334 筆のうち、有効と認められない署名は362,187筆で、その割合は、83.20%となっております。

 また、有効と認められない署名362,187筆について、
? 同一人により書かれたと疑われる署名が、約 90%
? 選挙人名簿に登録されていない者の署名が、約 48%
? 選挙人名簿に登録されていない受任者により収集された署名が、約24%となっております。これらの内容に重複して該当している署名もあります。

 ただし、今回の調査は、直接請求制度に基づかない任意の調査であり、署名簿に書かれた本人など、第三者への聞き取り調査等を実施しておらず、個々の署名について有効又は無効を決定しているものではありません。

 現在、直接請求制度が適切に運用されるために、今後の対応を検討している最中でありますので、各市町村ごとの詳細な内訳は、現時点ではお答えすることはできません。

 引き続き検討を進め、現行制度の問題点・課題等を整理していきます

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文中の「調査を実施した全64団体」とは、県内の各市町村と名古屋市内の各区を指している。それぞれに選管があり、大村知事リコールの署名を受け付け、集計している。その64区市町村選管調査の一覧表が公表されている。まとめが、以下のとおり。
 県全体の非有効署名割合  83.20%
 名古屋市の非有効署名割合 83.10%
 その他市の非有効署名割合 83.21%
 町村計の非有効署名割合  83.85%

この数値の揃い方が偶然とはとうてい思えない。組織的なノルマにもとづく行動であったことが推察される。河村・高須からの直接指示があったか否かは定かではないが、組織的に大規模な署名偽造が行われたことには疑いの余地はない。また、注意しなければならないことは、「(選管は)署名簿に書かれた本人など、第三者への聞き取り調査等を実施していない」というのだ。つまり、一応は「有効と認められるもの」とされる署名73,147筆が、「有効と確認された署名」ではないことだ。単に、「形式上、一見明らかに無効とは認められない」というに過ぎない。

「同一人により書かれたと疑われる署名が約90%」とは、誰かが何らかの名簿の住所・氏名を書き写している以外には考えがたい。そして、「選挙人名簿に登録されていない者の署名が約48%」とは、その使用した名簿が古くて現在は当該住所地に居住していなかったと考えざるを得ない。

県内各区市町村で同じように行われたのだから、統一した指導部あってのことで、直接間接に関わった、河村や高須の責任が免れようはずがない。

河村は「私も被害者だ」と言ってみたり、高須は「私が不正するわけがない、陰謀だと感じる」と非常識なことを口にしている。大村知事リコール運動を主宰した者として、無責任も甚だしい。右翼の唯一の美点は、潔癖さではないか。責任を他に転嫁し、言い訳に終始する両名の姿は見苦しいかぎりというほかはない。

河村よ、高須よ。その指示で踊らされた者たちの行動を自ら調査せよ。みっともなく愚痴を言いたてる前に、まずはその配下で受任者として登録した者の全員に、何があったのか報告させよ。その報告を公開せよ。

この常識的な問いかけは、メディアからも発せられている。

 Q 「同一人物による複数署名」が大量にあったのであれば、受任者本人に確かめては?
 高須「本当に30万もの不正があるのなら確かめたいとは思います。でも現実には不可能です。不正な署名を書いた人が何千人いるのかはわかりませんが、中に私の熱烈な支持者もいるし、私を陥れようとした人もいるかもしれない。いい人・悪い人を選別することは現実的には不可能です。

「いい人・悪い人を選別することは現実的には不可能」だから、「受任者本人に確かめることはできない」という「論理」は、本人以外には理解不能である。この「医師」は、「発熱の原因の特定は現実的に不可能だから、診察も治療もできません」「細菌性の症状か・ウイルス性の疾患か特定することは現実的には不可能だから、この患者には対症療法もできません」などと言い出しかねない。

ことは、いやしくも県民から選任された県知事に対するリコール運動である。いいかげんなやりかたが許されようはずはない。署名の偽造は地方自治法が定める犯罪になるのだ。

地方自治法第74条の4第2項は、【違法署名運動の罰則】を次のように定めており、同法81条によって「知事のリコール署名」に準用されている。

「条例の制定若しくは改廃の請求者の署名を偽造し若しくはその数を増減した者又は署名簿その他の条例の制定若しくは改廃の請求に必要な関係書類を抑留、毀壊若しくは奪取した者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。」

つまり、「自治体首長らの解職請求者の署名を偽造し若しくはその数を増減した者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」に処せられることになる。

また、刑事訴訟法第239条(告発)は、こう定める。
1項 何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる。
2項 官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。

選挙管理委員会の委員も職員も「公吏(地方公務員)」に当たる。調査を遂げたら、告発せざるを得ない。また、このリコール署名活動に関わって具体的な「署名の偽造や水増し」を見聞された方には、地元の警察に告発していただきたい。是非とも、徹底した究明と刑事事件としての捜査を期待したい。民主主義のために。

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