澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

『法と民主主義』6月号(特集「新型コロナウイルス問題があぶり出したもの」)のお勧め

(2020年7月3日)
日本民主法律家協会発行の『法と民主主義』6月号(6月29日発行・第549号)のご紹介とご注文のお願い。
5月号に引き続いての新型コロナ問題特集となっている。先月号の特集が「新型コロナウイルス問題を考える」だったが、今月号は「新型コロナウイルス問題があぶり出したもの」。今までは見えなかった、あるいは目につきにくかった諸問題が、このコロナ禍の中であぶり出されている。まずは、目を背けずに見つめなければならない。

巻頭論文が金子勝氏の「新型コロナウイルス対策はなぜ失敗するのか」。筆者は、住専破綻に端を発した金融危機や福島第1原発事故に典型的に見られるように、日本社会はリスク対応能力を欠いた無責任社会であるとし、今回のコロナ危機にも、適切な対応ができていないという。日本のコロナウィルス対応を失敗と断定して、クルーズ船「ダイアモンド・プリンセス号」事故以来の政府の対応を分析する。その上で、「危機管理の鉄則を踏まえた抜本的なコロナ対策こそが、最大の経済政策になる」という。

次いで、コロナ感染の拡大によってあぶり出された医療の脆弱性が、医療者からの2本の論文によって明らかにされる。これまで、政策的に医療は質も規模も脆弱化させられてきたのだ。

子どもの発達成長権から見た教育も脆弱なのだ。政治的思惑から学校が全国一斉の休校となって、子どもの環境における経済格差が教育格差となっている実態が語られている。

コロナ禍の中では、公文書の作成・保管もおろそかになっている。専門家会議の議事録はいまだ作成されていない。

そして、ドイツ・フランス・イタリアからの報告である。各国とも、真摯な議論をしていることがよく分かる。

さらに、各界各現場から「『新型コロナ問題』から見えてきたもの」の寸評をいただいた。この深刻な事態だからこそ見えてきた様々な問題、とりわけ、この「危機」から生じた社会的弱者への深刻な被害のしわ寄せは看過しがたい。敢えて、お一人の原稿字数を800字に抑えての凝縮したコメント。読者の関心に応える貴重なものとなっている。

なお、「あなたとランチを〈番外編〉」は、「美魔女は法民に乗って?」と題して、33年間「法と民主主義」の編集に携わってきた林敦子さんのインタビュー。この間、1号の欠落もなく「法と民主主義」を作り続けてきたことが、どれほどたいへんなものだったのか、その片鱗が語られている。

そのほか、特別報告が2本。「黒川弘務元東京高検検事長の定年延長と検察庁法改正案問題 ─ 問題の本質と廃案までの経過」「法律家662名が安倍首相を刑事告発 ― 政治資金規正法違反・公職選挙法違反」

以上、読み応えは十分と思う。

ホームページはこちら。
https://www.jdla.jp/houmin/index.html

そして、ご注文はこちらから。よろしくお願いします。
https://www.jdla.jp/houmin/form.html

特集●新型コロナウイルス問題があぶり出したもの

◆特集にあたって ……… 編集委員会・丸山重威
■日本はなぜ間違ったのか
◆新型コロナウイルス対策はなぜ失敗するのか ……… 金子 勝
◆医療政策の大転換を─ショックドクトリンの向こうへ─ ……… 吉中丈志
◆新型コロナ危機、なぜ日本の医療は、脆弱な実態をさらけ出したのか ……… 本田 宏

■基本的人権とコロナ緊急事態── 欧州各国に学ぶ
◆ドイツにおける新型コロナウイルス感染症への対応 ……… 奥田喜道
◆フランスの緊急事態における権力の統制 ……… 植野妙実子
◆期間限定と比例性の原則── イタリアからの報告 ……… 高橋利安

◆緊急事態時における公文書は誰のものか? ……… 榎澤幸広
◆新型コロナウイルス感染症の拡大と子どもの権利 ……… 世取山洋介
◆「新型コロナ問題」から見えてきたもの
前川喜平/鈴木敏夫/大久保賢一/原 和良/笹渡義夫/二平 章/伊賀興一/青龍美和子/大竹 進/菊地雅彦/長谷川京子/笹本 潤/長谷川弥生/原いこい/浪本勝年/金 竜介/岩崎詩都香

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◆連続企画●憲法9条実現のために〈30〉
新型コロナと在日米軍、日米地位協定 ……… 布施祐仁
◆特別報告
黒川弘務元東京高検検事長の定年延長と検察庁法改正案問題
── 問題の本質と廃案までの経過 ……… 大江京子
◆特別報告
法律家662名が安倍首相を刑事告発
──政治資金規正法違反・公職選挙法違反 ……… 米倉洋子
◆メディアウオッチ2020●《コロナ危機・余聞》
逃走する政治、問われるメディア、そして電通
国会閉幕、「火事場」に問題は錯綜 ……… 丸山重威
◆あなたとランチを〈番外編〉
美魔女は法民に乗って? ……… 林 敦子さんインタビュー×佐藤むつみ
◆改憲動向レポート〈No.25〉
コロナ禍の最中にも憲法審査会開催に固執する自民党・公明党・日本維新の会 ……飯島滋明
◆書評●道理の通る国をめざしての刑事弁護六〇年余
── 石川元也著『創意─事実と道理に即して 刑事弁護六〇年余─』(日本評論社) ……… 加藤文也
◆インフォメーション
◆時評●子育て・教育の行方?暴言・暴力の威力(弊害) ……… 村松敦子
◆ひろば●マイナンバー利用の失態と懲りない策動 ……… 奥津年弘

トランプとボルソナロと、そしてアベ。みんなよく似て、みんなヘン。

(2020年6月29日)

すっかりお馴染みとなった、「米ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センター(CSSE)の集計」。本日(6月29日)までに、新型コロナウイルスによる世界の感染者の累計は1000万人を超え、死者数50万人に達した。

これは恐るべき事態というほかない。人類はどうあがいても、ウィルスには勝てない。感染症の撲滅などできようもない。人類は、自然を破壊しつつ、破壊されて平衡を失った自然からの報復を受け続けているのだ。

感染者・死者の数で群を抜いているのが、アメリカとブラジルである。その両国とも、大統領がマスクを着けないことで共通しているのが、興味深い。

トランプは、マスクを着けない理由を、記者団には、こう語っている。

「ただマスクをしたくないんだ。CDCは“推奨する”と言っている。私は体調は悪くない」

「私は、大統領オフィスの素晴らしい大統領執務机で働いている。マスクをしながら他の大統領や首相や支配者や王族を歓迎するというのはどうかと思う」

「私には合わない。考えを変えるかもしれないけれど。だけど(今の状況は)そのうち過ぎ去るだろう。早く過ぎ去って欲しいね」

トランプ支持者には、マスクを着けない大統領を、強く逞しいリーダーと見る傾向があるとされる。ところが、アメリカのコロナ状況は日に日に逼迫している。そんな悠長なことを言ってはおられない。とりわけ、共和党色の強い南部西部諸州ほど、感染拡大が顕著であるという。

そこで、ペンス副大統領が、マスク着用を住民に呼びかける事態となった。本日(6月29日)、ペンスが南部テキサス州を訪れ、自らもマスクを着用して、住民にマスクを着用するよう呼びかけたことが、話題となっている。のみならず、トランプにマスクを着用して模範を示すよう求める超党派の圧力が高まっているという。

新規感染者数は全米の半数以上の州で急増しており、特に、早期の経済活動再開を推進してきた南部と西部の州で多い。より厳格な法規制を呼び掛ける声も広がっている。これまでは、大統領の批判に消極的な共和党議員の間でも、トランプにマスク着用を強く求める声が高まっている。一部の議員は、米大統領がもっとはっきり模範を示すべきだと主張しているという。

次いで、ブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領である。新型コロナのパンデミックをめぐる世界の対応を「ヒステリー」と呼ぶ人物。当然に右翼、いや極右とよばれる人。知性の欠如においては、トランプと兄たりがたく弟たりがたし。この人に、裁判所から「マスク着用命令」が発せられて、話題となっている。

6月22日、ブラジルの連邦裁判所は、ボルソナーロ大統領に「首都ブラジリア市内で出歩く際にマスクを着けなければならない」とのマスク着用命令を言い渡した、と報じられている。命令違反には罰金が課せられ、その額は最大で1日当たり2000レアル(約4万円)だという。

「公の場でのマスクの着用」は、本年4月以来首都ブラジリア市民の法的義務とされている。これを守らない者には、一切の忖度なしに、大統領にも命令を出す。ブラジルの裁判所はたいしたもの、立派ではないか。

ボルソナロ大統領は、以来人前に姿を現す際はマスクを着用するようにはなったが、6月26日になって、この裁判所の命令を不服として控訴した。このことが、また話題となっている。

AFPは以下のように報じている。

首都ブラジリアでは4月以降、新型ウイルスの感染抑制対策として公共の場でのマスク着用が義務付けられているが、極右のボルソナロ大統領はこの法律をたびたび無視。これを受けてある弁護士がボルソナロ大統領には自身の「無責任な行動」に対する説明責任があるとして裁判を起こしていた。

レナト・ボレリ判事は22日の判決で、ボルソナロ大統領が公共の場でマスクを着用していないと認定し、「大統領には国内で施行されている法律に従う憲法上の義務がある」として法律を守るよう命じ、従わなければ罰金を科すとした。

法律問題で政府を代表する検察当局はAFPに対し、ブラジリアではすでにマスク着用が義務付けられているため、裁判所は無用な介入を行っていると主張した。

そして、我がアベノマスクである。こちらは、マスクを着けないことで知性の欠如を露わにしたのではない。莫大な資金を投じてヘンなマスクを国民に配布したことで、トランプやボルソナロにも負けない判断力不足をさらけ出したのだ。身内も含めて、誰も着用しないから、ムキになって自分だけはヘンなマスクを着用し続けている。それがまたまた揶揄の材料となっている。

トランプとボルソナロと、そしてアベ。みんなよく似て、みんなヘン。

安倍政権を退陣させてこその、命と暮らしの防衛ではありませんか。

(2020年6月9日)
新型コロナウィルス感染症が世界に蔓延しています。言わば、今、コロナウィルスと人類全体が闘っている事態。ウィルスの側は国境を意識しませんが、人類の側の対応は、国境で区切られた国を単位に、総力をあげて闘っています。

ウィルスの存在や人への感染それ自体は自然現象ですが、その対応は、社会的・政治的行動になります。闘いはいまだなかばですが、各国それぞれの流儀のウイルス対策で、成功例もあれば、失敗例も出てきています。

古来、疫病の蔓延は国難と言うべき事態で、国難への対処は国民の一体感を増し、それぞれの国のリーダーは、国難を克服する過程で、国民の支持を固めます。不人気な大統領や首相にとって、コロナは失地回復のチャンスでした。

現に、献身的で賢明な頼りになる政治リーダーとの評価を高めた政治指導者が輩出しています。まずドイツのメルケルの名があがります。そして、台湾の蔡英文、韓国の文在寅、その他ニュージーランドやフィンランド、デンマーク、アイスランドなどがその例です。

これに対して、国民からの評価を失った国の指導者もいます。ハンガリー、ブラジルなど極端な例は除くとして、注目されているのはアメリカのトランプと日本の安倍晋三です。この気の合う両者が、目くそと鼻くそ。

普段はよく見えなかったものが、国民的な危機のときにこそ、誰にもよく見えてきます。わが国にコロナ禍が襲来して、まず見えてきたものは、私たちの国を預かる政権の無能さです。安倍晋三という人物は、コロナで苦しむ国民を尻目に、自宅で犬を抱いて寛いでいるという、ずれまくった感覚。そして466億円の税金を投じて各所帯にアベノマスク2枚を配布するという、アホの対策。しかも、口先だけのスピード感で、やることなすこと、全て後手後手の対応。国民から見離されて、支持率低下というのですが、毎日新聞の世論調査で、支持率27%。まだ27%の国民が支持していることが信じがたい、無為・無策・無能ぶりではありませんか。

次いで、見えてきたのは、あまりに貧弱な医療体制の実態でした。いつの間にか、保健所の数も人員も減らされ、感染症患者のベッドは足りず、医療従事者のマスクや防護服も足りない。うっかりPCR検査の対象を増やすと、病院もベッドも足りない、医療崩壊が起きるという情けなさ。公立病院は統廃合され、独立法人化が進められようとしています。儲けにつながらない医療が切り捨てられつつあるのです。

それだけでなく、コロナ禍による経済活動自粛が強要される中で浮かび上がってきたのが、この社会での格差・貧困の実態です。弱い立場にある人々への苛酷な皺寄せとなっています。

医療も、格差・貧困も、全ては安倍長期政権がつくってきたものです。安倍政権とはなんだったのか、なんであるのか。もう一度、思い起こしてください。

もり・かけ・さくらにカジノの誘致、河合夫婦に賭けマージャン、電通・パソナに、予備費の10兆円。問題は山積です。嘘とごまかしで、オトモダチ優遇。国政私物化の安倍政権ではありませんか。

いよいよ、末期症状の安倍政権は、国会での追及を恐れて、6月17日に国会を閉会し、自宅に閉じこもって犬と遊ぼうとしています。彼は、野党からの追及をされたくない。延長はせず、10兆円という補正予算を抱えて、当分は政策論議をしたくないという姿勢です。

無策・無能な政権は、国民の命にかかわります。安倍政権の退陣を求める声を上げようではありませんか。安倍政権を倒すことは、しっかりと憲法を護ること。しっかりと憲法を護り、憲法の理念を実現することこそが私たち一人ひとりの命と暮らしを護ることにつながります。

ご静聴ありがとうございました。

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まだ6月だというのに30度の炎天下、毎月第2火曜日定例の本郷三丁目昼街宣をおこないました。11名の参加で、今回もプラスター、横断幕、マイクだけの行動でした。

気がついたことがありました。以前より多くなった通行人はさまさまなことが書いてあるプラスターをけっこ
う見入っている姿でした。「にげるなアベ政権」なとと書いてあるものはみなさんよく見ていました。

マイクは、アメリカ合衆国の黒人殺害事件から始まり、日本での第2次補正予算案における憲法83条(財政民主主義)違反の予備費の追及、コロナ禍での独や台湾の指導者の措置と比べ安倍政権の手際の悪さ、などなどを訴えました。

いよいよ安倍晋三政権の背中が見えてきました。安倍政権に政治の舞台から退場してもらう時期がそこまできました。あと一息、立憲野党の統一を促進する市民運動がいよいよ大切になってきました。全力を投入してたたかいぬきましょう。

本郷湯島九条の会 世話人 石井彰

「法と民主主義」5月号購読のお薦め

(2020年5月30日)
私も編集委員の一人なのだから自画自賛となるのだが、最近の「法と民主主義」は充実している。「新型コロナウイルス問題を考える」を特集した5月号(5月27日発刊)も出来栄えがよい。
https://www.jdla.jp/houmin/index.html

特集の意図や内容については、下記を参考にされたい。
https://www.jdla.jp/houmin/backnumber/pdf/202005_01.pdf

以下は、私の私的な感想である。

巻頭論文の「グローバル化のなかのコロナ危機ー市民社会と科学の役割 … 広渡清吾」論文は、さすがの格調。「1 COVID-19のグローバル化」「2 市民社会と国家緊急権」「3 市民社会と科学者の社会的責任」の3節からなり、それぞれが完成度の高い論文となっている。市民社会の本質論からの緊急事態考察にも、元学術会議会長が語る科学者の社会的責任論の展開も、読み応え十分である。

そして、医療、国際比較、経済、憲法、改憲、立法、政権手法などの各分野の論文が続いている。

医療の分野での、「後手後手から迷走した安倍政権─新型コロナ対策迷走の真相と今後の課題 … 上昌広」は、市民読者に対する本号目玉の論稿である。忖度とはまったく無縁の医学研究者が、歯に衣きせぬ貴重な論述で、多くのことを教えてくれる。「医系技官の責任」を語り、政権が感染症蔓延の初期対応を誤り、その軌道修正もできなかったことの経過が具体的に論じられる。戦争や災害の失敗の歴史の再現を見せつけられる思いである。

「世界各国のCOVID-19と緊急事態法制 … 稲正樹」論文は、短いスペースに、各国の対応を比較して興味深い。「成功している国」として、オーストラリア、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ニュージーランド、台湾を挙げ、「失敗している国」として、インド、インドネシア、ブラジル、メキシコを挙げている。また、立憲主義の観点から問題のある国として、アメリカ、ハンガリーが検討されている。その他は、「新法の制定で対応した国」「緊急事態を発動していない国」「緊急事態を発動した国」とのカテゴリーで説明している。

「コロナ禍の経済政策 … 阿部太郎」は、誰しも関心をもたざるを得ない「財源論」において、「将来的には租税負担率を増やしていくのもひとつの手」とした上、消費増税ではなく、「この機に、所得税、法人税の累進性を高めること」を提案している。「各国が同時に累進性を高める方法もあり得る」と示唆的である。

憲法学者二人の専門性が高い論稿もお薦め。
「改正新型インフルエンザ等対策特別措置法における『緊急事態宣言』と野党の対応 … 成澤孝人」と、「新型コロナ感染症対策に便乗する緊急事態条項改憲論 … 小沢隆一」の両論を併せて読むと、憲法レベルでの「緊急事態」と、法律レベルでの「緊急事態」の区分の整理のうえ、ことさらにこれを混同しようとしている改憲派の思惑が見えてくる。

「改正コロナ特措法の制定と緊急事態宣言 … 海渡雄一」は、弁護士の目から見た、立法と宣言の経過を追って、問題点を指摘している。

最後の論稿が、「惨事便乗、場当たり対策から改憲まで ─ コロナ対策の経緯と安倍政権の手法 … 丸山重威」 惨事に便乗した安倍政権のこの手法。このように、まとめて提示されると、なるほど凄まじいばかり。貴重な記録となっている。

そして、もう一つの特集の目玉が、『「新型コロナ問題」私はこう考える』である。各界の然るべき15人が、新型コロナ感染問題を。それぞれの切り口で問題意識を語っている。
自然科学、社会科学、法学、教育学などの知性を代表する方、中国や韓国の事情に詳しい方、コロナ禍がもたらす、格差や差別と対峙している方、医療や薬学と切り結んでいる実務法律家。お一人の字数を敢えて800時に抑えた寄稿をいただいた。

島薗 進/池内 了/右崎正博/矢吹 晋/堀尾輝久/吉田博徳/鈴木利廣/李 京 柱/藤江- ヴィンター 公子/徐 勝/角田由紀子/井上英夫/水口真寿美/大森典子/田島泰彦

特集以外でのもう一つの目玉は、西川伸一(明治大学教授)さんの「最高裁裁判官の指名・任命手続について─第二次安倍政権による異例の人事から考える─ 」 これは、今年の司法制度研究集会・プレシンポでの講演内容の書き下ろし。来年(2021年)が、「司法の嵐」と言われたあのときから、50周年となる。あらためて、裁判官人事の在り方は、大切な論点となっている。

お申し込みは、下記のURLから
https://www.jdla.jp/houmin/form.html

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「法と民主主義」5月号
特集●新型コロナウイルス問題を考える
◆特集にあたって … 編集委員会・飯島滋明
◆グローバル化のなかのコロナ危機
──市民社会と科学の役割 … 広渡清吾
◆後手後手から迷走した安倍政権
── 新型コロナ対策迷走の真相と、今後の課題 … 上 昌広
◆改正コロナ特措法の制定と緊急事態宣言
── 日本政府のコロナ禍への対応がもたらす、いのちの危機と自由の危機 … 海渡雄一
◆世界各国のCOVID-19と緊急事態法制 … 稲 正樹
◆新型コロナ感染症対策に便乗する緊急事態条項改憲論 … 小沢隆一
◆コロナ禍の経済政策 … 阿部太郎
◆改正新型インフルエンザ等対策特別措置法における
「緊急事態宣言」と野党の対応 … 成澤孝人
◆惨事便乗、場当たり対策から改憲まで
── コロナ対策の経緯と安倍政権の手法 … 丸山重威
◆「新型コロナ問題」私はこう考える … 島薗 進/池内 了/右崎正博/矢吹 晋/堀尾輝久/吉田博徳/鈴木利廣/李 京 柱/藤江- ヴィンター 公子/徐 勝/角田由紀子/井上英夫/水口真寿美/大森典子/田島泰彦
◆特別寄稿
最高裁裁判官の指名・任命手続について
─第二次安倍政権による異例の人事から考える─ … 西川伸一
◆連続企画●憲法9条実現のために〈29〉
国際法から読み解くソレイマニ司令官殺害事件と自衛隊中東派遣 … 山形英郎
◆司法をめぐる動き(57)
・湖東記念病院事件再審無罪判決のご報告 … 井戸謙一
・4月の動き … 司法制度委員会

◆追悼●追悼 森英樹先生 … 米倉洋子
◆追悼●もっとご一緒に闘いたかった … 南 典男
◆メディアウオッチ2020●《コロナ危機とメディア環境の変化》
「つぶやき」が「火事場泥棒」を退治した…真実の伝達と民主主義への信頼を … 丸山重威
◆改憲動向レポート〈No.24〉
「国民の命と健康を守るため、
……政策を総動員して各種対策を進めています」と発言した安倍首相 … 飯島滋明
◆BOOK REVIEW●全集から全て書き出して編集に4年かけた力作
── 市橋秀泰著『立憲主義をテーマにマルクスとエンゲルスを読む』(東銀座出版社) … 井上幸夫
◆時評●異例ずくめの憲法記念日 … 丹羽 徹
◆ひろば●火事場泥棒を許さない─ウェブ集会などの取り組み─ … 江夏大樹

朝日も、「内閣支持率最低」の報道。

昨日の毎日に続いて、本日(5月25日)の朝日新聞朝刊一面に、「内閣支持率29%、発足以来最低に」という同紙の世論調査報道。5月23、24日の内閣支持率前回5月16、17日の調査結果と比較してこう変わった。わずか一週間の変化である。

支持率  33% ⇒  29% (4%減)
不支持率 47% ⇒  52% (5%増)
開差   ?14 → ?23%

 この不支持率29%という数値は、「2012年12月に第2次安倍政権が発足して以来の最低」だという。

なお、NHKも5月15・16・17日に、全国の18歳以上を対象に月例の「RDD」方式の世論調査を行っている。これが丁度、朝日の前回調査(5月16・17日)と重なり、数値も近似している。4月と比較すると以下のとおり。次回6月中旬の世論調査に関心が集まることになる。

支持率  39% ⇒  37% (2%減)
不支持率 38% ⇒  45% (7%増)
開差   +1% →  ?9%

さて、朝日の《内閣支持29%・不支持52%》、毎日の《内閣支持27%・不支持64%》の原因である。長年の、無為・無策・不誠実、国政私物化や不透明に対する国民の審判ではあるが、直近の大きな出来事としては、コロナ対応と、火事場泥棒的な黒川人事強行である。

アベ晋三大好きな「国難」というべき事態。無能なリーダーにとって、自分の存在を目立たせ求心力を高める絶好の機会。トランプとアベの肝胆相照らす二人が、ともに馬脚を現すに至っていることが興味深い。点の稼ぎ時に、大きく躓いたのだ。よほどの無能と言わざるを得ない。

 PCRなどの検査体制の整備に対する政府の取り組みは「評価しない」が59%で、「評価する」は25%。経済的な打撃を受けた人や企業への支援策も「評価しない」は57%で、「評価する」は32%だった。ともに50?60代の評価が低く、7割前後が「評価しない」と答えた。

そして、黒川問題である。
黒川氏を定年延長させていたことについて、安倍首相の責任が「大きい」と答えた人は68%に達した。「それほどでもない」は24%。自民支持層でも52%が、首相の責任は「大きい」と答えた。

このまま、一直線にアベ政権崩壊という事態となれば、歴史に黒川弘務元検事長の偉大な功績が残ることになるだろう。

また、注目すべきは、「新型コロナの感染が拡大して以降、政治への関心が「高くなった」が48%、「低くなった」が4%だったこと(「変わらない」は48%)。「高くなった」は男性は39%で、女性は56%。関心が「高くなった」人に限ると、内閣支持率は24%だった。そして、新型コロナの感染再拡大を「心配している」が9割を超えている。アベ国政私物化政権に対する国民の批判は、到底おさまりそうにもない。

本日の緊急事態宣言解除のアベ会見。なんとも、白々しく嘘っぽい。あれでは、国民の信頼と共感を得ることができない。この人の不徳のいたすところ。支持率低下、不支持率大幅上昇も、むべなるかな。

(2020年5月25日)

我が輩(アベノマスク)の悲劇

我が輩はマスクである。白い布製。2枚で一組。サイズは極めて小さく、着用者の顔をデカく見せるとして、評判はよくない。正式の名はまだないが、アベノマスクと呼ばれることが多い。生みの親がアベだからだが、名付け親はアベではない。ときに、アホノマスクとも、ムダノマスクとも、ゴテゴテノマスクとも蔑まれる。はなはだ、肩身が狭い。

生みの親であるアベは、ウィルス感染の防御に役立つと触れ込んだが、あれは、どうもいいかげんなデタラメだったようだ。最近の実験結果では、ほとんど役に立たないとされ、ますます評判を落とした。アベはマスクで国民の口を塞ごうとしているなどと言われると、我が輩も返す言葉がない。立つ瀬がない。

物心ついたときから、肩身が狭かった。何せ466億円の壮大な無駄遣い。アベノ無為・無策・無能を象徴する「ムサクのマスク」と揶揄された。少しは役に立つはずの我が輩なのだが、どうしてこんなにも、貶められなければならないのか。これも、親の因果とあきらめるしかないのか。

我が輩、どこで生れたかとんと見当がつかぬが、遠いベトナムだったと教えられたことがある。物心ついたのは、日本の各地で「汚れがひどい」「シミがある」と騒がれ始めたあの頃のこと。あとは御難続きで、親を怨んでばかりの身の上に。

我が輩は、生まれながらに、「汚い」「不衛生」の烙印を押されて、回収⇒点検⇒費用の加算⇒評判の下落⇒配達の遅延⇒さらなる評判の下落、という悪循環。ちょうどアベ政権の評判凋落と軌を一にする。

ようやく、我が輩の兄弟が全国に配送され始める頃、世の中にはマスクはあふれて値段も下がった。なんとも、頃を見計らったようなバカげた成り行き。結局は、466億円という溜息の出るような無駄遣いが深く印象に残ることに。

ある弁護士はこうつぶやき続けている。

アベノマスク2枚 届いた方へのご提案。
★ 製造元の記載もない、危なっかしい(衛生商品たるマスクですらない)1枚200円余りのマスクの「返送運動」をしましょうよ。

返送の宛先は、官邸よりも自民党がふさわしく、意義があるかと。
 〒100-0014千代田区永田町1丁目11−23 自由民主党御中
 ― 切手94円は必ず貼って。
 ― 手紙を添えても可。匿名も違法ではない。
 ― マスク袋は開けないでそのまま返送を。
手紙は、例えば
・安倍晋三氏を総理総裁からおろし、別の人に替えて下さい
・危なっかしいマスクいりません。それより首相を代えて。

これに、こんな別の弁護士の反応も。

 私も全く同じ事を考えていました。
 自民党本部で活用してもらうのが1番いいですね。
 品質が信頼できれば、サイズが小さいから子どもさんに活用してもらう手もあったのですが・・

 なんと、子どもに着用させるのもためらわれる我が輩なのか。自民党に送るのがふさわしいと言われるそんなふがいない我が輩だと言うのか。

アベが親だから、アベが汚いことをやってきたから、アベの評判が悪いから、ああ、我が輩まで、これほど疎まれるとは。気が付けば、アベ本人以外、アベノマスク着用者は見あたらない。

結局のところ、我が輩は、アベ政権のコロナ対策の不手際の産物と相場が決まった。針のムシロのこの身の上に同情してくれる人とてなく、「自民党に送ってしまえ」はあまりにひどい。

この世をはかなんで、覚悟を決めた。吾輩は死ぬ。死んで太平を得る。せめて我が輩の生みの親にも一言遺しておきたい。「いつまでも、権力にしがみついてるのはみっともないよ」と。南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。ありがたいありがたい。
(2020年5月20日)

コロナ風だけではない。アベ暴風の中、本郷三丁目交差点で。

ご近所のみなさま、ご通行中の皆さま。お騒がせしますが、もう少しの時間。耳を傾けていただくようお願いします。
本郷湯島九条の会は、日本国憲法とその平和の理想をこのうえなく大切なものと考え、毎月第2火曜日の昼休み時間を定例の街頭宣伝活動の日と定めて、ここ本郷三丁目交差点「かねやす」前で、雨にもまけず風にも負けず、新型コロナの緊急事態にも負けずに、ささやかな訴えを続けています。

緊急事態と言われる今だからこそ、国民の声が封じ込められるようなことがあってはならない。このようなときにこそ、大切な表現の自由を錆び付かせず、訴え続けなければならない。そのような思いからの、本日の宣伝活動です。

先月同様、私たちからご通行中の皆様に、署名を求めたり、ビラの配布のために近づいたりはいたしません。基本的には、全員マスクをして、スタンディングのスタイルで訴えております。横断幕や、スローガンを書いたプラスターをご覧ください。そして、昼休みの限られた時間、マイクでの訴えに耳をお貸しください。

「この非常時だ、国を信頼して思いきったことをやらせるべきだ」という声もあります。しかし、それは明らかに間違っています。権力には常に批判が必要です。このようなときにお上にお任せしていては、徹底した弱者の切り捨てが行われます。しかも、安倍政権まやることです。政治と行政を私物化し、ウソとごまかしに明け暮れ、散々に公文書を隠し改竄してきた、薄汚い政権ではありませんか。こんな政権を信頼してお任せできるはずはありません。

アベ内閣のコロナ禍対策には、後手後手という批判が集中しています。しかし、それだけではありません。この汚い政権は、コロナに国民の意識が集中している間に、どさくさ紛れの悪法成立をたくらんでいます。まさしく火事場泥棒。その典型が、検察庁法改正法案です。

先週の金曜日5月8日に、衆院内閣委員会は、国家公務員法と検察庁法の抱き合わせ法案の審議を行いました。野党抜きの審議強行です。国家公務員の定年延長については問題がない。問題は、幹部検察官の人事に官邸が介入できるように仕組みをあらためる検察庁法改正案にあります。

アベ政権は、各省庁の幹部人事に介入することによって、その権力を固めてきましたが、検察庁人事にも手を出したい。そうすることによって、マクラを高くして眠りたいのです。

かつて、検察は国民からの信頼を得る存在でした。田中角栄をも逮捕し、起訴した実績を持ちます。検察のトップは、「巨悪を眠らせない」と名言を吐いています。そんな検察では、安倍は安眠することができない。アベは、検察を我が手におさめることで、ぐっすり眠りたいのです。

この法案のねらいは、官邸による官邸のための検察人事への介入を認めることなのです。人事への介入を通じて政権に対する検察の牙を抜こうというのです。この法案は、官邸が幹部検察官を選り好みして、政権に擦り寄るヒラメ検察官には定年を延長し、硬骨漢には定年延長の途を閉ざそうというのです。

こうして、検事総長や検事長や、あわよくば検事正までの全ての検察官を官邸寄りの人物で固めてしまおうということなのです。

アベ政権とは、後ろ暗い政権です。政治を私物化し、行政を私物化してきた。しかも、その手法は嘘とごまかしで固められたもの。公文書の隠匿・廃棄・改竄はお手のもの。モリ・カケ・サクラでは、内閣の関係者多数が刑事告発されています。安倍晋三本人も告発対象となっています。

硬骨な検察幹部が決意を固めれば、政権トップに対する刑事訴追がなされて、たちまち政権は崩壊の危機に陥ることになります。そこで、アベは、黒川弘務東京高検検事長を検事総長にしようと考えました。彼こそは、安倍政権の守護神と異名をとった検察官。そのための布石として、定年となった黒川の定年を延長した。2021年8月に定年退職する稲田検事総長のあとがまに据える含み。

この露骨な検察幹部人事介入強行は実は違法なのです。これに対する非難が巻きおこると、アベはまたまた考えました。違法・脱法だというのなら、法律を変えてしまえ。そうすれば問題ないじゃないか。いかにもアベらしいやり口。

これが、どさくさ紛れの法案の正体です。検察を手中に置くことでのアベの安心は、国民の不安、民主主義の不安でもあります。何よりも、刑事司法の公正に対する国民の信頼を失墜させることにほかなりません。このことに危機感を抱いた一人の女性が、8日に「ツイッターデモ」を呼びかけて、「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグを付けたツイッターを発信しました。これに賛同する同じハッシュタグのツイートが600万件を超えたと報じられています。

しかし、それでも政権は明日(5月13日)の委員会審議強行を明言しています。強行採決もあるかも知れません。これを止める力は、世論しかありません。

皆様。ツイッターでも、メールでも、ブログでも、ファックスでも、声を上げてください。鑑定や国会や、与党に声を届けてください。よろしくお願いします。

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薄曇りの夏日になった本郷三丁目かねやす前の昼街宣になりました。
男女合わせて7人の方々が結集しました。これまでのように署名・チラシ配布は控え、かつ social distance を取るという気の配り用なのです。マイクの声は本郷通り、春日通りに響き渡りました。さまざまな plasterを一人2枚持ち、かねやす前に立ち道行く人々に訴えました。

マイクはやはり検察庁法改定案に集中しました。黒川弘務東京高検検事長の定年は2月8日で、その前の1月31日に「黒川弘務東京高検検事長の定年延長の閣議決定」を安倍晋三首相は強行したのです。黒川検事長を検事総長に据えようという魂胆がみえみえなのです。ということは安倍晋三首相は自らの罪を自覚し、罰を恐れている証左とも言えます。このことを訴えました。かつ国家公務員法改定案に潜り込ませる「束ね法案」ということです。検察庁法が一般の国家公務員法と別につくられている意義は、検察官は起訴の権限を独占し準司法官的な役割を担っていることにあります。安倍晋三政権は、法体系・法解釈を破壊し、法の支配から「人の支配」に変えるというクーデターを強行しようとしているのです。

plaster のいくつかを書いておきます。
●アベ政権の検察私物化ゆるさない
●憲法改悪許さない
●おそいおそい 急いで給付を
●倒産・廃業・失業 ストップ
●はやく家賃給付・給料補償・雇用助成金を
●だまされないぞ コロナ不安につけこむ憲法改悪
●エッセンシャルワーカーの給料引き上げよう、みなさんありがとう
まだまだいっぱいありますが、このへんにしておきます。

道行く人々もそれとなく聴いているようでした。これからが正念場です。

「本郷・湯島九条の会」石井 彰

(2020年5月12日)

アベ政権の火事場泥棒にご注意を

今年の流行語大賞の選考は、気が滅入る言葉ばかりとなる。「コロナ」と「サクラ」、それに「ソーシャル・デスタンス」と「マスク」は当確だろう。「3密」と「アマビエ」も有力。さらに「後手後手」と「火事場泥棒」もダークホースだ。これまでは、「嘘とごまかしのアベ政権」、「公文書、隠匿・改竄・破棄のアベ政権」、「政治と行政私物化のアベ政権」と言ってきたが、このたび目出度くも「後手後手のアベ政権」、「火事場泥棒アベ政権」と枕詞が増えたわけだ。

「後手後手」は誰の目にも分かり易い。なにしろウィルスは融通がきかない、アベに忖度してくれないのだからこうなる。これに対して、「火事場泥棒」には、一言説明が必要だろう。昔から、火事場泥棒は卑劣極まりない犯罪と非難されてきた。混乱に乗じた手口が汚いということもあろうが、被害者の不幸に付け込んで私益をむさぼろうという心根こそが卑劣極まりないという非難の本質なのだろう。アベ政権と与党が今国会でしていることは、まさしく「火事場泥棒」と非難を受けねばならない。

いま、コロナ禍という大火の真っ最中である。国政は、国民のために、全力を上げて鎮火に努力しなければならない火急の事態。人びとが火を避け、火を消そうと必死で右往左往しているその火事場で、政権と与党はずる賢く立ち回ろうとしている。国民の関心がこの火勢に集中しているのをこれ幸いと、普段ならできないことを火事場の混乱に乗じて一気呵成にやってしまおうというのだ。薄汚い、「火事場泥棒」以外の何ものでもない。

政権が火事場泥棒として狙うものは、まずは改憲である。その第一歩としての憲法審査会での審議入り。そして今注目の検察庁法改正問題(検察人事コントロール法案)。その他、種苗法改正、「スーパーシティ」法案(国家戦略特区法改定案)、サクラ疑惑封じ込め、森友事件収束等々。油断も隙もない。

この火事場で盗まれようとしているのは、法の支配であり、立憲主義であり、 三権分立であり、刑事司法の公正であり、農産物の自給体制と農家の経営であり、行政の公平性等々である。コロナだけにではなく、アベ政権と自公の与党、そして急速に政権に近づこうとしている維新の動向に目を光らせねばならない。

火事場でも、泥棒の被害を避けるための警戒が必要なのだ。火事にだけでなく、戸締まりにも用心していることを示さなくてはならない。普段なら、集会、デモがその役目を果たすことになるのだが、今それができない。

それでも、知恵のある人はいるもので、この事態での火事場泥棒被害を避けるための工夫として、「Zoomで『#検察庁法改正案に抗議します』の反対集会をしよう」という呼びかけが始まっている。さて、どんなものになるのか、これは興味深い。

(2020年5月11日)

ウィルスもアベもとおくにとんでいけ

毎日新聞の仲畑万能川柳、これが常にも増して面白い。憂さ晴らしに、川柳はもってこいである。本日(5月8日)選の中に次の一句。

コロナうつ万柳詠んで吹き飛ばせ 尾道 瀬戸の花嫁

のみならず、このご時世ネタは尽きない。この万柳のためだけに、毎日新聞を定期購読しているファンもあると聞く。むべなるかな、この川柳欄に群がる投稿者たちは独特の部分社会を形作っている。社会の本流からは少しはずれた、それゆえに健全な部分社会。

※最近の句で目立ったのは、マスクネタである。

マスク二枚配りみんなの口封じ  浦安 さやえんど
  これは秀逸。愚かな意図を見抜いた上で、笑い飛ばしている。

アベマスク家族4人であみだくじ 鹿沼 鹿沼土
  ハズレの二人がバツゲームとして使うことになる。

マスクよりお似合いですよ「頰っ被り」 戸田 小松多代
  もちろん、マスクを配ったあの人のこと。

二枚ずつアベノマスクの二百億 北九州 エミリー
  当初は200億の報道だった。いずれにしても愚かの極み。

10万とマスクのどっち先か賭け 静岡県 増田謙一郎 

布マスク変えられないか前広に 千葉県 姫野泰之 

散会時マスク総理は即外す 東京都 後藤克好 

躊躇なくマスク二個とは情けない 町田 不銹鋼

一世帯一人もいれば七人も 宗像 水芭蕉

売れる程手作りマスク上手くなり 寝屋川 ヒロポン

マスクかけ佐保姫別れの袖を振り 埼玉県 磯貝満智 

春うららマスクの形に日焼けして 柏原 年中無給

香港のマスク禁止は終わったの? 大野城 ぶび子

完売の文字が褪せても来ぬマスク 多治見 和宇茶中

※マスク以外のコロナ禍も笑いのネタに

二週間いつまでたっても二週間 東京都 新井文夫 

捲(めく)っても出口見えないカレンダー 茨城県 清水方子 

検査する代わりコーヒー嗅がされる 青森 よしのまち

オナラして臭い感じて安心し 大阪 板はん

コーヒーのたびに匂うか確かめる 東京 緑カレー

恐ろしやコロナ対策銃を買う 西宮 軒の小雀

取った税貸してあげると言う政治 海老名 しゃま

言い訳のアベオンステージNHK 別府 タッポンZ

志村さん「だいじょぶだあ?」って言ってたじゃん 千葉 ペンギン

オレなんざもともと距離を置かれてる 行田 ひろちゃん

ニュースから消えて下さいコロナの字 大田原 武田正子

メモを読む総理に空気読まぬ嫁 福岡 猫懐

クラスター→オーバーシュート→ロックダウン 交野 令和の令子

怖いのはコロナニュースに慣れたとき 神奈川 カトンボ

新聞が痩せた戦中思い出す 神奈川県 金澤紀六 

ステイホーム肥後で申せば「籠城じゃ」 長崎県 前田一笑 

あるんだね皆テレワークできる社も 宝塚 おーい銅将

ウイルスは「やってる感」では騙せない 東京 三次

コロナ禍も議員歳費はご安泰 水戸 むっちゃん

コロナから知る全国の知事の顔 岐阜 金子錆男

消毒をした手でノブを触るドジ 和歌山 松原まつこ

予定表消してばかりだこの春は 高槻 風頼坊

ひと月の長さ感じる新コロナ 山形 かみやじい

こんな時弱い人から解雇され 相模原 アンリ

日本語で怖さがわかる都市封鎖 茨木 イシマリ

我も彼もマクベスのごと手を洗う 熊本 しゅ

こんな事あるんやなあと空見上げ 伊丹 しずく

世界から握手抱擁消える日が 芦屋 言閑マダム

目に見えぬコロナこわくてひきこもる 三豊 泣きっ子

呼吸器もベッドも足らぬ医療大国 白石 よねづ徹夜

※川柳子は安倍晋三にも優しい

万柳の良いとこ安倍の支持もいる 白石 よねづ徹夜

もう既に「あきれ夫人」と呼ばれてる 川崎 さくら

後手後手の旦那のたまう「前広」と 神奈川県 安藤隆喜 

取る気ない責任だから軽く言え 東京 城山光

※9月始業もネタになる。

新入生引き受けますと秋桜(コスモス)が 埼玉県 磯貝満智
  これは優しい。コスモスがサクラにささやいている。

袴(はかま)から浴衣に変わる卒業式 埼玉県 金子雄一 
  なるほど。それも楽しい。

九月から始業コロナが薄笑い 東京都 大和田淳雄
  これは恐い。9月からの始業などできるものかと鬼のよう。

※ そして健全な精神は森友事件を忘れない。赤木さんのことも。

悪代官しっぽ切りまで部下にさせ 鹿沼 鹿沼土

部下死んだかまっちゃおれぬ出世道 周南 石丸壽人

忖度は懲戒受けても出世する さいたま 高本光政

権力の凄まじさ遺書見せつける 日立 北の馬場

忖度は人を殺すと皆知った 福岡 ナベトモ

もういいよ事実を言っても佐川さん 豊川 雨ニモ負太

起訴不起訴凄い力の検事さん 兵庫 新ポスト

(2020年5月8日)

不要不急の防衛費の支払いが大切か、コロナ禍に苦しむ国民の生活が大切か。

お代官様。
3郡16か村の百姓一同からのお願いでごぜいますだ。よろしくお聞きくだされ。

ほかでもねえ、今年の年貢のことでごぜいますが、どうしたって払えっこねえ。

ご存じのとおり、今年はこの領内に悪疫が流行りましてな。疫病神は、田にも畑にも、森にも林にも、はびこりましたでごぜいます。疫病神から逃れる場所と言えば、疫病退散のお札を貼った家の中だけでごぜいましてな。

そんな案配で、お代官様の指図もありまして。田起しから出穂の季節まで、村人一同は、外に出ることはかないませんで、一家揃って家内で自粛でございました。もちろん、子どもの寺子屋通いも、できねいありさまで。

だあれも、田にも、畑にも出ることとてなく、薪を切ることも、山菜摘むこともできんまま。これまでの蓄えを食い潰して、とうとう秋を迎えたでごぜいます。いつもの年であんしたら、五公五民で米俵を積み上げとるころですが、今年ばかりは納めるにも米はない。米に代わる金目の物もない。村人は、芋ばかりを食って生き延びておりやんす。そんなわけで、今年ばかりは年貢をご勘弁いただきたい。

いや、おねげいはそれだけではごぜいませんだ。来年の種籾は村内のどこを探しても、一粒たりともござりませんので。このままでは、来年の米の作付けはおぼつかねいことでございましてな、来年の年貢を納めることもできません。ここは、代官様の思し召しで、村民一同の全所帯に種籾一俵ずつを、お助け米として一律にお配りいただきとうごぜいます。

もとはと言えば、百姓どもが毎年この場に積み上げて納めた年貢の内のちょびっとをお返しいたただきたいというだけのこと。ぜひとも、お聞き届け願いたいものでごぜいます。

もちっと、おねげいがごぜいます。村の子どもたちが、今年は手習いやら稽古事も満足にできません。立派な子どもは、領国の宝でごぜいますし、親の願いでもごぜいます。子どもたちの学びのためのお金の工面を、代官様、是非ともおねげいしますだ。

いんや、それだけではねい。村人みんな、疲れ果て、腹を空かせ、病んでおります。ご領主様が、領民のためにやってくれたのはマスク2枚を配っただけ。あとは、ご城内にこもって犬と遊びほうけているちゅうとか。このままでは、領民は飢えて死ぬか、他国に逃げるかするより外はございませぬ。領民がいなくなれば、ご領主様もあの奥様も、食べてはいけなくなりますぞ。ぜひとも、お城と代官所の藏を開けて、お助け米を領民にお配りいただくよう、お願いしますだ。

まだある。すっかり荒れた田畑も山も林も手入れをしなけりゃならん。疫病退散のお祝いの祭りも盛大にやらねばならん。川のさらいも、堤防の直しもせねばならん。村人の薬も買わねばならん。ここは、思い切って、ドーンとお助け金を弾んでもらわねばなんねい。

この段、覚悟のお願いじゃ。お気付きなされまたかな。村人3千人。鉈だの鎌など携えてこの代官屋敷を取り巻いておりますぞ。必ず聞いてくだされい。

なんとな。そんなカネはないとな。そうは言わせぬ。ご領主は、遠国のバカ殿からF35ステルス戦闘機やイージス戦闘システムを買い付ける約束をしたそうじゃと聞いておる。なんと愚かなご領主様よ。百姓どもの汗と涙が不要不急の武器の買付に消えて、それでも疫病で苦しむ民百姓を見殺しにするとおっしゃるか。

同じ遠国のバカ殿から、同じような兵器買付の約束をした隣国のご領主の方はウチのご領主とはずいぶん違って、こうじゃというではないか。
「韓国政府は4月16日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う対策として追加補正予算を編成し、全世帯に支給する「緊急災害支援金」の財源として、国防費9047億ウォン(約795億円)を削減して充てることを決定。4月30日に補正予算が成立しました。削減対象はF35ステルス戦闘機やイージス戦闘システムの米国からの購入費で、支払いを来年に先送りする方向だといいます。」(半田滋)

隣国にできたことが、どうしてご領内ではできぬことがありましょうや。いずれ、ご承知いただけないときは、われら一揆に立ち上がる覚悟はとうにできている。この屋敷を取り巻いた百姓どもの鬨の声が聞こえませぬかの。そっちの覚悟はいかがかの。
さあどうじゃ、肚をくくってご返答をいただきたい。さあ、さあ。さあさあさあさあ。
(2020年5月7日)

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