選挙運動収支報告書を読む
東京都庁39階の窓から、丹沢・富士の方角を眺める。本日は、かすんで遠くまでの見通しがきかない。この国の現状を見る思い。近くには巨大な高層ビル、そのむこうには見渡す限りびっしりと小さなビルがひしめき並んでいる。よくもまあ、人は短い間にこんなにもたくさんの建造物を作ったものだろう。
200年前、ここは江戸近郊の景勝地だった。熊野神社のまわりに滝や池があり、茶屋や料亭が建ち並んだ花街だったという。浮世絵「名所江戸百景」や、「江戸名所図絵」に、その情緒が描かれている。眼下に見える新宿中央公園のあたりだ。上から見ると、新緑の木々の樹冠がいろとりどりのブロッコリーを置いたようで、人工的ではあるけれど美しい。
さて、このどこまでも広がっている東京都、そしてこの居心地の悪い東京都庁のトップを選任する選挙があったのは、つい4ヶ月前のこと。教育委員会への用事のついでに、初めて都の選挙管理委員会に行ってみた。まずは、総選挙における東京3区・石原宏高候補の選挙運動費用収支報告書を閲覧し謄写の申請をする。ついでに、4か月前の東京都知事選挙における猪瀬直樹、松沢成文、宇都宮健児各候補の報告書も閲覧してきた。3候補の報告書いずれも私には初見で、興味深くもあり驚ろかされるものでもあった。
権力を有している者には国民に対する説明責任があり、情報公開の義務がある。情報公開の制度化は、近年国民が勝ち取ってきた輝かしい成果のひとつである。これから権力者たらんとする公職選挙の候補者についても同じこと。誰からどのように集めた金を、どのように使って選挙を行ったかに関しては、透明性の高い正確な情報公開が必要である。それなくして、腐敗した金権選挙を防止することができない。
公職選挙法は金銭面からの選挙浄化のために、すべての候補者に選挙運動費用収支報告書の作成と選管への提出を義務づけ、選管が受理した日から3年間保存して、「その期間内においては何人もその閲覧を請求することができる」と定めている。権利は行使しなければ錆びついてしまう。大いに閲覧請求をして、市民の目を金権腐敗一掃のために生かさねばならない。
閲覧の場所は都庁第一本庁舎の39階。都選管事務局に申し込めば、誰でも即時に収支報告書の閲覧ができる。もちろん無料。身分証明も印鑑も不要。職員は親切で、嫌がった顔などしない。もっとも、閲覧だけでなくコピーを申請すると、1枚30円の費用を要する。この費用の低額化がこれからの課題。なお、政治団体の政治資金収支報告書の方は、既にインターネットでの公開が実現している。
石原宏高議員の選挙の収入合計は13,413,515円。その内訳は、1300万円までが自民党支部からの寄付。あとの41万円余が個人献金である。この1300万円の中に、税金が変身した政党助成金が資金源となっていると思うと不愉快極まる。
支出は10,843,382円。収支報告書を眺めているだけでは、公選法違反も賭博業者との癒着も見えてこない。報道されていたとおり、人件費欄の事務員の住所として、「東京都大槻市」という記載の不自然に気付くくらいがせいぜい。「墨田区押上」の住所地がスカイツリーであるなどと不自然さを見破った赤旗の記者はたいしたもの。他の情報との突き合わせをしないと違法をあぶり出せない。謄写を申請したので、手許に届いてからじっくりと検証してみよう。
ところで、都知事選3候補の収支報告の感想については、次の機会の記事としたい。
(2013年4月11日)