主権者として、天皇制と対峙する姿勢を ? 天皇の交替に際して
天皇の代替わりをテーマに、何度か小さな学習会の講師をお引き受けした。その都度、自分なりにレジメを作り直している。4月29日に予定されている学習会のレジメの一部をご紹介する。これを骨格に報告することになるが、ほぼ趣旨はご理解いただけるだろう。
※日本の民主主義思想と実践は、天皇制と対峙して生まれ天皇制と拮抗して育った。
今なお、その事情は基本的に変わらない。
奴隷主を敬愛するに至った奴隷こそが、真の奴隷である。
天皇制に囚われ、天皇に恐れ入った精神が、
主権者としてあるまじき臣民根性にほかならない。
今なお国民に根強く存在する臣民根性の残滓を払拭し、
天皇制マインドコントロールをはねのけるために、
「誰にも恐れ入らない反権威の精神」を身につけよう。
近代天皇制とは、《権力》と《権威》をもって構成された。
日本国憲法によって天皇の「権力」は剥奪されたが、
天皇の「権威」は、事実上象徴天皇として残された。
ひとえに、政権利用の便宜な道具としてである。
天皇代替わりの今、その道具の有用性が明らかとなり、
新たな権威付さえ、試みられている。
今、日本の民主主義の成熟度が試されている。
自立した主権者としての矜持をもって、
天皇や天皇制に対する毅然とした姿勢を堅持しよう。
※天皇交替劇における主権者意識の検証
☆これから何が起きるのか。
4月1日 新元号発表(「令和」)
4月末日 天皇(明仁)退位??? 退位礼正殿の儀
5月1日 新天皇(徳仁)即位
剣爾等承継の儀(剣爾渡御の儀)
その後、一連の即位行事と宗教儀式
10月22日 即位礼正殿の儀
11月13日?14日 大嘗祭
20年4月19日 立皇嗣の礼
10月22日安倍晋三が発声する「テンノーヘイカ・バンザイ」の笑止千万
しかし、これは喜劇ではなく、民主主義にとっての深刻な悲劇である。
11月13日?14日 大嘗祭のおぞましさ
国民主権原理違反と、政教分離原則違反と。
☆狙われているものは、
象徴天皇の権威付けであり、主権者意識の鈍麻であり、
偏狭なナショナリズムの喚起であり、
社会の矛盾から目を背ける方向での国民統合であって、
総じて、保守政権による天皇利用である。
(天皇の全存在そのものが、権力の政治利用のためのものである)
☆この交代劇のありようは、本来憲法の許さざるところ。
※憲法における天皇とはロボットである。
☆天皇とは、国民主権を脅かす「唯一の国民のライバル」である。
☆天皇とは、日本国憲法上の公務員の一職種であって、それ以上のものではない。
☆象徴とは、なんの権限も権能も持たないことを意味するだけのもので、
象徴であることから、何の積極的法律効果も生じない。
☆本来、「天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為(のみ)を行ふ」だけのもので、国事行為の外に「象徴としての行為」や「天皇の公的行為」を認めてはならない。
☆憲法は、内閣の助言と承認を離れた天皇のひとり歩きを厳禁している。天皇は、自らの意思をもって行動することを禁じられた「めくら判を押すだけのロボット」(宮沢俊義説)である。
☆天皇の地位は、「主権の存する日本国民の総意に基づく」ものであって、主権者である国民の意思によって天皇の地位を廃絶しうることは、もとより可能である。
☆皇位継承法である皇室典範は一法律に過ぎず、国会が改廃しうることに疑問の余地がない。
☆現行憲法においては、「天皇は神聖にして侵すべからざる」存在ではない。
天皇に対する批判の自粛が「菊タブー」をつくる。
※日本国憲法体系の中で、天皇の存在は他の憲法価値と整合しない夾雑物である。
☆憲法体系のかたち
★「人権カタログ」+「統治機構」
人権を抑圧せず、人権を輝かせる統治機構(権力分立)
★3本の柱(国民主権・平和・人権尊重)
☆いずれの憲法体系理解においても、天皇は体系の中に位置づけられない。
体系の外にあって、憲法理念貫徹を邪魔せぬように釘を刺されている存在。
☆憲法の理念に地番を振れば、
1丁目には人権の尊重がある。
1番地には個人の尊厳、以下、精神的自由・人身の自由・経済的自由…
2丁目には、代議制民主主義。3丁目には、恒久平和…。
天皇は、番外地にある。
憲法体系の外にある。憲法が核としているものの例外である。
☆憲法に明記されている以上、天皇の存在は違憲ではない。しかし、憲法が中核としている価値や体系とは矛盾する。したがって、天皇の行為を厳格に制限して、存在を稀薄化する解釈と運用が望ましい。
☆言うまでもなく、人は平等である。貴も賎もない。天皇を尊貴な存在とすれば、その対極に卑賤を想定せざるを得ない。血統に対する信仰は、近代社会では、バカげた妄想でしかない。天皇の血統をありがたがってはならない。
「生きとし生けるもの、万世一系ならざるはなし」
「王侯将相寧んぞ種有らんや」
☆憲法自身がその99条で憲法尊重擁護義務を負う公務員の筆頭に天皇を挙げている。憲法解釈においては、人権・国民主権・平和等の憲法上の諸価値を損なわぬよう、天皇や天皇制をできるだけ消極的な存在とすることに意を尽くさなければならない。
(2019年4月25日)