澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

参議院議員諸君に訴えるー特定秘密保護法案の採決強行に与してはならない

参議院の議員諸君。国民の代表であるあなた方に、そして良識の府の選良としてのあなた方に、民主々義と平和をこよなく大切に思う立ち場から、心からの訴えを申し上げたい。

臨時国会の会期の期限が目前だが、今国会における特定秘密保護法案の審議打ち切りと採決強行に与してはならない。通常国会に審議を継続して、徹底した慎重審議を尽くしていただきたい。それが、圧倒的多数の国民の声であり、憲法的良識が必然とするところでもある。

あなた方は、議会制民主々義の担い手として国民から重い負託を受けている。憲法41条によって、国民に新たな義務を課し、権利を制限できるのはあなた方以外にはないとされている。あなた方が間違えば、その影響は直ちに国民に及ぶ。あなた方が大きく間違えば、国民は大きな被害を被らざるを得ない。場合によっては、あなた方の判断の間違いが、取り返しのつかない歴史の悲劇を生むことにさえなりかねない。あなた方の重責は、慎重に行使されなければならない。

人権や民主々義に対する侵害の危惧が指摘されている法案の審議や賛否については、くれぐれも慎重でなくてはならない。「拙速」「軽率」「審議不十分」「国民の心配が払拭されない」と批判されるような事態を招いてはならない。数を恃んで、日程内に成立させるスケジュールの消化優先では、国会審議とは名ばかりの実態のないものでしかないことになる。多くの国民から、そのように印象をもたれることは、あなた方にも不本意なことではないだろうか。

この法案の内容は国会の地位を貶め、議会制民主々義を形骸化するものとお考えにならないか。この法案の基本思想は、「国会議員と言えども行政機関の長が定めた特定秘密を知る必要はないし知ってはならない」「こと国の安全保障にかかわる問題については、国会は行政機関の長が許容した範囲での情報で審議を進めればよい」というものではないか。議会の権威を貶めるこの法案に、どうして国会が賛同ができるのか。少なくとも、もっと徹底した審議が必要とお考えにはならないか。

また、議会制民主々義の形骸化は、平和を危うくするものとお考えにはならないか。戦前の歴史の教訓を改めて噛みしめていただきたい。議会制民主々義の形骸化は、軍部横暴と軍国主義謳歌と並行する事態ではなかったか。特定秘密保護法による安全保障にかかわる情報の秘匿は、この轍を踏むものとはならないか。少なくとも、そのような国民の危惧を払拭するものとなり得ているだろうか。

さらに、強調して申し上げたい。このまま「会期内採決強行」の事態となれば、参議院の権威を貶めることになるのでないか。衆議院の採決強行が11月26日、四党修正案が参議院に送付されてから会期末までは10日しかない。この短期間の形ばかりの審議で参議院が採決したのでは、「参議院は衆議院のカーボンコピーでしかない」といわれても反論のしようがないではないか。いったい、参議院の良識はどこにいってしまったのか。参議院の存在意義はどこにあることになるのか。なにゆえ、参院不要論に手を貸す愚挙を敢えて行おうというのか。

むしろ、今こそ、参院の良識と存在意義と、そして権威を国民に印象づける絶好の機会ではないか。今や、徹底した慎重審議を求める世論は天の声。圧倒的な多数の意見である。その天の声を汲み取るべきことこそが、参議院議員諸君のその重責を全うするにふさわしいあり方ではないか。

「12月4日には、地方公聴会を開催した。これで国民の声を聞きおえたから、さあ採決だ」では、余りに議会の審議のあり方が貧しい。参議院が衆議院の二の舞を演じるようでは、それこそ議会制民主々義の危機といわざるを得ない。国会内外での幅広い国民の声によく耳を傾けて、国民からの重い負託に応えていたくよう、切に要望する。
(2013年12月4日)

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Published in 水曜日, 12月 4th, 2013, at 16:01, and filed under 未分類.

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