プーチン・ロシアを非難する轟々たる多方面の声
(2022年3月24日・毎日連続更新満9年まであと7回)
ロシア軍がウクライナに侵攻を開始したという仰天の報から、本日でちょうど一か月、そして4週間。まさかの戦争、まさかの侵略、まさかの原発攻撃、まさかの無差別爆撃…。多くの市民の家が焼かれ、非戦闘員が逃げ惑い、市民や兵士の命が失われた。数え切れない悲しみと怒りと不幸を生み出した、この悪夢の一か月。
プーチン・ロシアのウクライナ軍事侵攻に対する批判は、ほぼ世論を席巻している。親ロシア派として知られる維新の鈴木宗男までが、議会のロシア批判決議に賛成した。こうなると、自公維国や右翼とも声を揃えてのプーチン批判には、内心忸怩たる思いもあるのだが、今はともかくプーチン非難に徹しなければならない。ロシア・プーチンに対する抗議の声を積み上げなければならない。
もう30年も前のこと、湾岸戦争に伴って自衛隊の海外派兵を可能とする「国連平和協力法案」が国会上程されたとき。我が家では「家族声明」を出した。私と妻と中学生の長男と、当時家族の一員で平和を願うチャウチャウの「シシ丸」、4名全員の合議一致の声明。これを新聞に取りあげてもらったことがある。大組織の声明も大事だが、一人ひとりの無数の声明はより重いと思う。
当ブログでは、2月28日に「ロシアのウクライナ侵攻に抗議する、東京弁護士会・兵庫県弁護士会・大阪弁護士会・自由法曹団の各声明紹介」を掲出した。
https://article9.jp/wordpress/?p=18650
その後に目についたいくかの「声明」をご紹介する。ぜひとも、もっともっと、抗議の声を挙げていただくよう期待したい。
(1) ロシアのウクライナ侵攻反対する一庶民声明
一、戦争は、庶民を犠牲にするものであり、どんな戦争も庶民に対する犯罪である。
私は、軍事で儲けようとする国家権力者と対峙する庶民として、ロシアのウクライナ侵攻に反対する。
一、大日本帝国が近隣諸国にしたことは、ロシアがウクライナにしていることと同様である。
私は反大日本帝国の庶民として、ロシアのウクライナ侵攻に反対する。
一、アメリカが敗戦確実の日本に原子爆弾を落とし、日本をアメリカの言いなり国家にしたことは、ロシアがウクライナにしていることと同様である。
私は在日米軍基地の返還を求める庶民として、ロシアのウクライナ侵攻に反対する。
一、アメリカがイラクにしたことは、ロシアがウクライナにしていることと同様である。
私はこれまでの大国の軍事攻略を批判する庶民として、ロシアのウクライナ侵攻に反対する。
一、ウクライナは、チェルノブイリ原発事故を起こしながらなおも原発大国である。
私は、福島原発事故を起こしながらなおも原発大国である日本が、「憲法9条を改正し、大日本帝国のような軍国主義を復活させ、原子爆弾を製造しようとしている」と大国から侵攻されることを憂い、憲法9条の実現と原子力発電所の廃止を求める庶民として、ロシアのウクライナ侵攻に反対する。
一、戦火を逃れて難民になっているウクライナ庶民、経済制裁で苦しんでいるロシア庶民、そして戦闘をしている兵士たちも庶民。
私は、ウクライナ庶民、ロシア庶民と連帯する庶民として、ロシアのウクライナ侵攻に反対する。
(この一庶民が、どこのどなかは知らない。たった一人の「声明」もネットでは拡散できる時代となつているのだ)
(2) ロシアによるウクライナ侵攻について(地方6団体声明)
2月24日、ロシアはウクライナへの軍事侵攻を行った。
このことは、国際社会ひいては我が国の平和と秩序、安全を脅かし、明らかに国連憲章に違反する行為であり、断じて容認できない。
ここに我が国の地方自治体を代表して、ロシア軍による攻撃やウクライナの主権侵害に抗議するとともに、世界の恒久平和の実現に向け、ロシア軍を即時に完全かつ無条件で撤退させるよう、国際法に基づく誠意を持った対応を強く求める。
また、政府においては、邦人の確実な保護や我が国への影響対策について万全を尽くしていただきたい。
令和4年(2022年)2月25日
地方六団体
全 国 知 事 会 会 長 平井 伸治
全国都道府県議会議長会会長 柴田 正敏
全 国 市 長 会 会 長 立谷 秀清
全国市議会議長会会長 清水 富雄
全 国 町 村 会 会 長 荒木 泰臣
全国町村議会議長会会長 南雲 正
(衆参各議院の決議の前に、地方6団体がこの声明を発していた。侵攻の翌日のこと、素早い対応に驚かざるを得ない。)
(3) 【緊急声明】ロシア軍のウクライナ軍事侵攻を強く非難する
東京を本拠とする国際人権NGOヒューマンライツ・ナウは、2022年2月におけるロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻を強く非難する。
武力による軍事侵攻は、武力行使を原則禁止する国連憲章に対する重大な違反であり、ウクライナの民間人の生命及び安全に対する権利を深刻に侵害するものである。なお、プーチン大統領は、軍事侵攻の事実上の理由として、過去8年間の脅しと大量虐殺の対象となってきたウクライナ国内の人々を守ることであり、そのためにウクライナの非軍事化と非ナチ化を目指すと述べているが、そのような大規模な人権侵害の具体的な証拠は何ら示されていない。また仮に事実だとしても、国連憲章上、そのために一国の判断により武力を行使することは許されない。
ヒューマンライツ・ナウはロシアに対し、直ちにウクライナにおけるすべての軍事行動の停止とウクライナからの全ての兵の撤退をすることを求める。また、ロシアで戦争に反対して拘束された人々の即時釈放と拘束下での人道的処遇の確保を求める。
2022年2月25日,東京
特定非営利活動法人ヒューマンライツ・ナウ
(人権団体の緊急声明である。さすがに早い。ウクライナ侵攻開始翌日の声明。ロシア国内での人権侵害にも言及されている。)
(4) 3月5日毎日新聞の報道では、同時点で、日本の大学や学会少なくとも計約50団体が、ロシア軍のウクライナ侵攻に抗議する声明を学長名などで出している。海外の戦争に学界が強く反応するのは異例という。
日露大学協会の幹事校を務める北海道大の宝金清博学長は「ウクライナ侵攻は許容されない」とする声明を日本語、英語、ロシア語、ウクライナ語で発表した。国内唯一の旧ソ連圏・東欧の地域研究機関、同大スラブ・ユーラシア研究センターも、ウクライナ市民と戦争に反対するロシア市民への連帯を表明。ロシア・東欧学会などロシア関連の学会のほか、東京大や九州大も同様の声明を出した。
また、プーチン露大統領の核兵器を念頭に置いた発言などに関して、原爆被爆地にある広島大や長崎大、原発事故からの復興でウクライナと協力してきた福島大が批判した。
大学事情に詳しい教育ジャーナリストの小林哲夫さんは「大学の反戦声明は、ベトナム戦争でもイラク戦争でもほぼなく画期的だ」としている。
声明を出した主な大学や学会など(3月5日時点、毎日新聞調べ)
【国公立】北海道大、東北大、福島大、東京大、奈良女子大、広島大、九州大、長崎大、新潟県立大、京都市芸大、神戸市外大【私立】北海学園大、酪農学園大、高崎健康福祉大、聖学院大、早稲田大、上智大、明治大、立教大、国際基督教大、明治学院大※、東洋大、武蔵野大、桜美林大、東京農大、東京基督教大、日本福祉大、朝日大、立命館大、龍谷大、京都外大、京都ノートルダム女子大、関西大、大阪観光大、神戸親和女子大【学会など】日本学術会議、ロシア・東欧学会、日本ロシア文学会、日本スラヴ学研究会、日本社会学会、日本18世紀学会、日本社会文学会、日本平和学会、日本医学会連合、日本天文学会、居住福祉学会、日本私立大学連盟、国立大学協会 ※は学科名義や部局有志名義など。他はトップ名義など。
(5) こういう声明には最も縁遠い印象の慶應大学も、慶應義塾大学(関係)教員有志名で、下記の「ロシア政府によるウクライナ侵攻に関する緊急声明」を発出している。
我々、慶應義塾大学でロシア・東欧・ユーラシアに関する研究と教育を行う者は、ロシア政府によるウクライナへの軍事侵攻を強く非難し、即時停戦を求めます。
また同時に、ウクライナとロシアの両国に対し、また全世界に対して、すべてのウクライナ語話者およびロシア語話者、ウクライナ国民およびロシア国民に対する、迫害・差別・誹謗中傷・行動の強制が行われることのないよう、強く要望します。暴力はもちろん、暴言の応酬、政府と国民とを同一視した個人攻撃、少数派や弱者に対する差別、発言や行動の強要は、どのような状況下であれ許されるものではありません。
現在、ウクライナ国内はもとより、世界中に暮らす当事国の国民と関係者がこの戦争に傷つき眠れぬ日々を送っています。その原因の一つは、周囲の人々からの、あるいはネット上での心ない非難や態度、無責任な言葉です。ウクライナやロシアにおける民族構成と歴史認識には想像を越える複雑さがあり、両国民一人一人のこの戦争に対する立場は、属する国家のそれと必ずしも一致しません。また出自や思想信条の違いによってその生命や職業が脅かさることは、そもそもあってはなりません。
我々は、だから部外者は黙っていようと言うのではありません。むしろ今こそ、少しでも客観的な情報を求め、多くの当事者たちの生の声に耳を傾けるべきでしょう。戦争終結後も両国には深い傷と溝が残ります。失われた人命と遺族の悲しみは永遠に歴史に刻まれ、ウクライナ社会は復旧に多大な時間を要し、ロシアは国際社会で孤立を深めるでしょう。そうした戦後世界で共に生きるために今できることは何か、我々は考えるべきです。
2022 年 3 月 2 日
慶應義塾大学 熊野谷葉子(法)、越野剛(文)、朝妻恵里子(理工)三神エレーナ、大串敦(法)、北川和美、深澤洋子、守屋愛、アナトーリー・ヴァフロメーエフ, 廣瀬陽子(総政)、後藤クセーニヤ
(6) 日本ペンクラブは、日本文藝家協会、日本推理作家協会とともに、3月10日、「ロシアのウクライナ侵攻に関する共同声明」を発表しました。13時からの共同記者会見には日本ペンクラブ桐野会長、日本文藝家協会林真理子理事長、日本推理作家協会京極夏彦代表理事が出席し、声明を発表後、記者の質問に答えました。
「ロシアによるウクライナ侵攻に関する共同声明」
私たちは、ロシアによるウクライナ侵攻に強く反対します。
これは、完全に侵略であり、核兵器使用に言及した卑怯な恫喝であり、言論の自由を奪い、世界の平和を脅かす許し難い暴挙です。
私たちは表現に携わる者として、人々の苦悩や悲嘆、そして喜びを表してきました。しかし、新たな戦争の愚かさについてなど、書きたくはありません。
ウクライナの人々の命、人々が築いた文化、産業、街や学校、施設などがこれ以上破壊されないように、そしてロシアの人々の自由と命も無用に奪われることのないように、一日も早い戦争の終結を願います。
2022年3月10日
日本ペンクラブ・日本文藝家協会・日本推理作家協会
各団体理事会および有志による声明文
日本ペンクラブ 会長 桐野 夏生
日本文藝家協会 理事長 林 真理子
日本推理作家協会 代表理事 京極 夏彦
(7) ロシアによるウクライナ侵攻に関する緊急声明
2022年3月1日
一般社団法人日本医学会連合
会長 門田 守人
2022年2月24日にロシアがウクライナに軍事侵攻を開始しました。独立国家の主権を侵害し国際秩序を毀損する行為として許されるものではありません。さらに、戦闘に関わる人的被害の報告とともに、国連難民高等弁務官事務所(the office of the united nations high commissioner for refugees; UNHCR)からは、故郷を追われた避難民は36万人以上に達するとの報告がなされています。
人々の生命・健康を守るべき立場の医学・医療に関わる学会を代表する学術団体として、日本医学会連合は、人命および人権を代償に一方的に現状変更を迫る軍事侵攻に強く反対します。
世界各国が協調と対話を重ね、平和的外交手段で可及的速やかに事態を収拾することを求めます。
(医学界が平和を求め戦争を忌避するというのは、当然のことながら心強い)
(8) 平成2年に平和都市宣言をした君津市は、世界の恒久平和は人類の共通の願いであり、その実現には人々が互いに理解を深め合い、戦争のない社会を追求するとともに、あらゆる差別や暴力を排除していかなければならないと考えています。
よって、今回のロシアによるウクライナへの軍事侵攻を断じて容認することはできず、令和4年3月7日に、市と市議会の共同による声明を発表しました。
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に対する共同声明
2月24日、ロシアは国際社会の声を無視し、ウクライナへの軍事侵攻を開始した。
これは、武力の行使を禁ずる国際法や国連憲章に違反し、国際社会の平和と秩序を根幹から脅かすもので、断じて容認することはできない。
平成2年に「世界の恒久平和は、人類の共通の願いである」とする平和都市宣言をした君津市及び君津市議会は、ロシアによる軍事侵攻に対し、抗議と非難の意を強く表明するとともに、ロシア軍の即時無条件での撤退を強く求める。
また、政府においては、国際社会と連携し、ウクライナの人々及び在留邦人の安全確保や国民生活にもたらす影響への対策に万全を尽くすよう要請する。
令和4年3月7日
君 津 市 長 石 井 宏 子
君津市議会議長 三 浦 章
(国際問題についての声明に元号使用は情けないが、市長と議会議長の連名で、地方自治体の声明として簡潔に立派なものとなっている。)
(9) ロシアによるウクライナ侵攻に抗議する声明(文京区)
文京区は、世界の恒久平和と永遠の繁栄を願い、昭和54年12月「文京区平和宣言」を行うとともに、昭和58年7月には「文京区非核平和都市宣言」を行い、核兵器の廃絶と軍縮を全世界に訴えています。
この度、ロシアがウクライナに軍事侵攻を行ったことは、国際社会の平和と秩序、安全を脅かす行為であり、断じて容認することはできません。
加えて、核兵器の使用を示唆したことは、唯一の被爆国として、被爆の恐ろしさと被爆者の苦しみを全世界の人々に訴え、再び広島・長崎の惨禍を繰り返してはならないことを強く主張している文京区及び文京区民の声を踏みにじるものであります。
ここに、私は、平和宣言及び非核平和都市宣言を掲げる首長として、核兵器の使用に断固反対し、ロシアに対して厳重に抗議するとともに、即時に攻撃を停止し、完全かつ無条件での撤退を強く求めます。
令和4年3月4日
文京区長 成澤 廣修
(私の地元自治体の区長声明。核兵器核兵器に断固反対と言っている)
(10) ウクライナ侵攻に関する声明文(中央大学)
2022年2月にはじまったロシア政府によるウクライナ侵攻によって、多くの市民の生命が失われ、平和の中に生きるという本質的な人権が侵害されています。中央大学は、この惨禍を終わらせようとする国際社会の努力に敬意を表するとともに、大学を設置する学校法人として、また高等教育研究機関としての責任を果たし続ける所存です。
いうまでもなく、学びは人類の福祉、平和と人権の基礎であり、それを守ることが高等教育研究機関の重大な責務です。そこで、中央大学は、その使命の一つを「人類の福祉に貢献すること」であると学則に定め、また中央大学ダイバーシティ宣言においても「すべての人びとに学びの機会が平等に開かれることの重要性を認識」していることを表明して、世界中の国や地域から、多くの学生・研究者・教員を受け入れています。
中央大学は、この惨禍の一日も早い終息を祈望しつつ、ウクライナやロシアからの学生・研究者・教員の皆さんが安心して教育研究を継続できるよう全力で努力するとともに、キャンパスの内外を問わず、ロシアをはじめとする出身地に基づく全ての差別やヘイトに反対することを表明いたします。
2022.03.17
理事長 大村 雅彦
学 長 河合 久
(ウクライナ・ロシア両国からの留学生・研究者・教員の人権に配慮を、という趣旨の声明。なるほど)
(11)(一社)国際空手道連盟極真会館 田畑 繁 理事長が、日本国内外に「ウクライナ侵攻」についての声明文を発表しました。
声明文「ウクライナ侵攻について」
理事長 田畑 繁
大山倍達総裁は1975年の第1回世界大会において、極真理念を発表しました。
「極真カラテは人種、民族、国境を越え、政治、宗教、思想の垣根を撤廃し、世界人類の平和の実現を目指す。」
私たちは一人一人の命の尊さを知っています。武道は、人命を尊重し、敬意を表し、礼儀礼節を尽くします。両親に授けていただいたかけがえのない命ほど大切なものは、世の中にはありません。世界中どの国でも、両親の愛、家族の愛を一身に与えられて、人は育っていきます。人は元々、愛し合う力を持っています。人間は愛の結晶です。
しかし、戦争は命を殺す行為です。平和とは真反対の行為です。戦争の犠牲の上に成り立つ平和などありません。この、何物にも代えられない尊い命を戦争の犠牲にしてはなりません。
私たちは、これ以上、戦争による犠牲者が出ないこと、又、亡くなった全ての人に哀悼の誠を尽くします。
そして、極真会館は戦争に反対します。
(空手界からの戦争反対の声明、スポーツ界から、もっと同様の声が欲しい)
(12) 東京藝術大学 学長声明
ロシアによるウクライナ侵攻は、許しがたい暴挙であり、決して容認できるものではありません。
ウクライナは、作曲家のセルゲイ?プロコフィエフ、カロル?シマノフスキ(キエフ県生まれ)、20世紀最高のヴァイオリニストのダヴィッド?オイストラフやナタン?ミルシュタイン、そして1931年から13年間にわたり東京藝大音楽学部の前身である東京音楽学校で多くの音楽家を育て、日本音楽界の恩人とも言うべきピアニストのレオ?シロタなど多くの優れた音楽家を輩出しています。戦禍に直面するウクライナ市民の苦しみはもちろんですが、ロシアの人々もごく少数の一部の指導者たちの過った判断によって突入した侵略戦争により、世界中からの経済制裁や、優れたアーティストやアスリートもロシア人であるからという理由で締め出されるなどの理不尽を強いられています。
このような愚かな戦争が、一刻も早く終結することを願います。
令和4年3月4日
東京藝術大学長 澤 和樹
(平和あっての芸術。専門性高い分野からの声明は貴重)
(13) 日本遺族会声明
ロシアのウクライナ侵攻に対する抗議声明
先の大戦で、愛しい肉親を亡くし、二度と私たちのような戦没者遺族を出さないという固い決意のもと、昭和22(1947)年に結成以来、70年余の長きにわたり、一貫して恒久平和な社会を求め活動を続けている日本遺族会は、ロシアのウクライナ侵攻に断固抗議する。
ロシアは、2月24日ウクライナ東部で攻撃を開始した。露軍は東部、北部、南部から侵攻し戦闘は全土に広がり、首都キエフでは市街戦が激化し、多数の民間人が死傷し、戦線は拡大を続けている。
ウクライナでは、18歳から60歳の男性は出国が禁じられ、90日以内に軍に動員される国民総動員令が発動され、ウクライナ国防省は火炎瓶を作って市民に徹底抗戦を求めている。50万人以上が国外に退避し、逃げ場を失った多くの市民は、地下鉄を防空壕とし、不安な日々を過ごしている。市街地のマンションや学校への砲撃、国を守るために銃を手にする市民、この惨状を目の当たりにし、かつての戦争を思い出さずにはいられない。
ウクライナの現状は対岸の火事ではない。愚かな指導者の誤りで、戦争はいつでも始まることを今、示している。
ロシアのウクライナ侵攻は、人々のささやかな幸せを、ありふれた日常を一瞬にして奪った。いかなる理由があろうと、誰であろうと個人の自由を奪う権利はない。そして、いかなる場合も、意見の相違を埋めるのは、対話による話し合いしかありえない。
国籍も、言語も、肌の色も、全てが違ったとしても、世界中の誰しもが、愛しい人がいて、その人の幸せを願っている。
武力による報復は、更なる悲劇しか生み出さない。故に本会は、戦争の悲惨さ、平和の尊さを訴え続けることで、平和を希求してきた。
ここに日本遺族会は、ロシアのウクライナ侵攻を非難し、即時停戦、撤退を求める。
令和4年3月2日
一般財団法人日本遺族会
会長 水落敏栄
(遺族会が、「ウクライナの現状は対岸の火事ではない。愚かな指導者の誤りで、戦争はいつでも始まることを今、示している」という言葉は重い。ロシアとウクライナの両国に新たな「戦争遺族」が生み出されることは、いかにも辛い)