ロシアのウクライナ侵攻に抗議する、東京弁護士会・兵庫県弁護士会・大阪弁護士会・自由法曹団の各声明紹介
(2022年2月28日)
本日午過ぎ、狸穴のロシア大使館まで出向いて、道路を挟んだ向かいの位置から門に向かって、一人で「侵略者ロシアはウクライナから撤退せよ」「無法者プーチンよ恥を知れ」と声を出してきた。大使館員の誰の耳にも届かなかったろうが、これが精一杯。一応は、個人としての意思表明はしてきた。
実は、たくさんの人々がロシア・プーチンに対する抗議の声を上げているかと思ってきたのだが、誰もいない。代わっていたのは、警察車両と大勢の警察官。私の声は警備の警官にだけ届いて、聞きとがめられた。不審人物と見られてか、二人の警察官がロシア大使館に向かう途中から、私の後にくっ付いてきていた。やり過ごそうと停まるとあちらも停まる。こうして、私の近くに控えていた警察官が、私が声を出したら、近くまで寄ってきて何やら言ってきた。孤立無援。ロシア軍に囲まれたウクライナ同然の体。他国に軍事侵攻してその安全を蹂躙しているロシアだが、その大使館は日本の警察に安全を保障されているのだ。
本日、東京弁護士会と大阪弁護士会が、ロシアのウクライナ侵攻に抗議する内容の会長談話を発表した。兵庫県弁護士会は、2月26日付けで会長談話を発表している。これは素早い。さらに、自由法曹団は2月25日付の「緊急声明」である。こちらは弁護士会に較べれば意思統一がし易いから先頭を切っている。
以下に、東京弁護士会・兵庫県弁護士会・大阪弁護士会の各会長談話と自由法曹団の緊急声明をご紹介する。
概ね、ロシアの軍事侵攻を国際法違反・国連憲章違反と断じた上、市民に対する究極の人権侵害と指摘し、恒久平和主義・平和的生存権を掲げる憲法をもつ我が国の立場から、けっして容認できないとする。ロシアに抗議するとともに、日本政府に国際平和実現のための外交努力を求めるものとなっている。
なお、自由法曹団は当然として、東京弁護士会会長談話の日付が、西暦一本であることにもご注目いただきたい。
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法の支配を蹂躙するロシアのウクライナ侵攻を非難する会長談話
2022年02月28日
東京弁護士会 会長 矢吹 公敏
本年2月24日未明,ロシアがウクライナに大規模な軍事侵攻を開始し,多数の民間人の犠牲者が出ていると報じられています。
当会も会員である国際法曹協会(International Bar Association)は,プーチン大統領によって命じられたウクライナ侵攻を最も強い言葉で非難する声明を出しました。同会のスタンフォード・モヨ会長は,「プーチン大統領によるこの行為は,紛れもなく国際法に違反する行為である。国連加盟国は1945年以来,領土は同意によってのみ変更できると合意しており,このルールは,国際法と国家間の秩序を維持するための中心的なものである。法の支配を保護し促進するために設立されたIBAは,ロシアのウクライナ侵攻を強く非難する。」と述べています。
戦争は,市民の生命・身体の安全を脅かす究極の人権侵害行為です。戦争によって侵されるのは領土だけでなく,そこで暮らす市民の平穏な生活です。
我が国の憲法は,前文で恒久平和主義を規定し,平和を愛する諸国民の公正と信義を信頼し,全世界の国民が平和のうちに生存する権利を有していることを確認しています。恒久平和主義の理念を掲げる憲法の下,基本的人権の擁護を使命とする私たち日本の弁護士は,国際法に違反し,法の支配を蹂躙する今回のロシアの人権侵害行為を,いかなる理由があろうとも断じて許すことはできません。
当会は,このようなロシアのウクライナ侵攻を非難するとともに,同国が法の支配を遵守し,武力侵攻と人権侵害行為を直ちに止めることを強く求めます。
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ロシア連邦のウクライナ侵攻に関する会長談話
2022年(令和4年)2月26日
兵庫県弁護士会
会 長 津 久 井 進
このたびのロシア連邦のウクライナに対する侵攻は、国連憲章及び国際法に違反し、市民に重大な危険と恐怖をもたらすもので、到底、許されるものではありません。ウクライナやロシア連邦をはじめとする市民の方々に一刻も早く平和な日常が取り戻されることを強く望みます。
私たちは国際社会における一市民として、第1に、他国で起きている事実を他人事とせずしっかり直視すること、第2に、その一方で冷静さを欠いた国家主義に陥らないこと、第3に、他者の生命・自由・人権を守り支えることの重要性を、あらためて認識する必要があります。とりわけ、平和的生存権は、戦争や暴力の応酬が絶えない今日の国際社会において、全世界の人々が平和に生きるための全ての基本的人権の基礎となる人権です。自らへの危険を顧みず、政府に反対意思を表明しているロシア連邦の市民の方々の勇気にエールを送ると共に、広く平和的生存権が保障されることを希求します。そして、権力の濫用・暴走の歯止めとなる法の力を期待します。
こうした観点から、日本政府には、解決に向けた積極的な外交努力を求めます。
当会は、これまで数多くの機会で、市民の方々とともに、個人の尊厳と恒久の平和の実現に不可欠である平和的生存権の保障を求めてきました。基本的人権の尊重と社会正義の実現を使命とする弁護士として、外交努力によって戦争の惨禍がこれ以上深刻化しないことを心より願って、この会長談話を発表いたします。
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ロシア連邦のウクライナに対する軍事侵攻に反対する会長談話
この度、ロシア連邦はウクライナに対して軍事侵攻を行い、ロシア連邦自身がこの軍事侵攻を認めている。また2022年2月26日、日本政府はロシア軍の侵攻を「侵略」と認定している。
国連憲章は、その前文において「国際の平和及び安全を維持するためにわれらの力を合わせ、共同の利益の場合を除く外は武力を用いないことを原則の受諾と方法の設定によって確保し」た旨を規定し、また、国連憲章第2条は、「すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危くしないように解決しなければならない。」「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。」と規定している。この国連憲章の武力行使の禁止は、戦争が最大の人権侵害であることを踏まえて規定されたものである。ロシア連邦によるウクライナへの軍事侵攻は、明確に国連憲章に違反するものであり、決して容認出来ない。
日本国憲法前文は、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し」、第9条において、「武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と規定する。
弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とするものであり、日本政府に対し平和的紛争解決に向けたなお一層の努力を求めるとともに、ロシア連邦によるウクライナに対する軍事侵攻に強く抗議する。
2022年(令和4年)2月28日
大阪弁護士会
会長 田中 宏
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ロシア連邦によるウクライナに対する軍事行動に断固として抗議し、
直ちに軍事行動の停止を求める緊急声明
ロシア連邦は、2022年2月24日日本時間午後、主権国家たるウクライナに対し、軍事行動を開始した。ロシア連邦は、すでに首都キエフ郊外を含む複数の軍事施設に対して攻撃を開始し、ウクライナ側には子どもも含めた死傷者がでているとの報道もある。
ロシア連邦からは、ウクライナ国内で独立宣言をした2つの地域についてその独立を承認した上で、その「独立国」と締結した「友好相互援助条約」に基づき、同地域の住民の安全と権利保障のための措置と主張しているとの報道がされている。
しかし、2つの地域の住民の安全と権利保障のためにウクライナに対して武力攻撃する正当な理由はないのであって、ロシア連邦の軍事行動自体がウクライナにおける平和を侵すものであることは明らかである。ロシア連邦の軍事行動は、国連加盟国の主権、独立及び領土保全の尊重、武力行使及び武力による威嚇の禁止を明記している国連憲章、国際法の基本原則に反した侵略行為であり、ウクライナの主権及びウクライナ国民の人権を著しく侵害するだけでなく、第二次世界大戦以降、国際連合及び各国の不断の努力によって維持拡大してきた国際的な平和的枠組を破壊するものにほかならず、国際社会の平和秩序の維持という観点からも許されるものではない。
ロシア連邦は、2015年2月に調印した停戦のための「ミンスク合意」はもはや存在しないと言い切り、自らが当事国となった合意を反故にする姿勢を示しているが、直ちに国連憲章の諸原則に沿って、平和的に解決をはかるプロセスに立ち戻るべきである。
自由法曹団は100年にわたり、平和、民主主義、人民の生活と権利を守るためにたたかい続けてきたものであり、まさに平和を破壊し人民の権利を踏みにじるロシア連邦の軍事侵攻は、全くもって承服できない。自由法曹団は、ロシア連邦の軍事行動に断固として抗議し、直ちに軍事行動の停止を求める。
以上
2022年2月25日
自由法曹団 団長 吉田健一