安倍国葬が目前、このまま国葬実施強行の意味
(2022年9月21日)
本日が水曜日。来週火曜日(27日)の安倍国葬まで1週間を切った。この時点で、国葬反対の声はますます高く、国葬中止を求める意見の表明は引きも切らない。
安倍国葬を支持するのは、アベトモとして甘い汁を吸った連中、岩盤支持層と言われた右翼勢力、統一教会シンパ。これに「自分は国葬賛成というわけではないが、国葬が実施される以上は敢えて反対するのは礼を失する」とのたまう、どこにでもいる「良識派ぶった体制派」。それに加えて、教祖安倍をどこまでも信奉する信者たち。安倍晋三を「日本の宝」と言ってのけた櫻井よしこのごときがその典型。おそらくは、安倍国葬反対の世の動向を、法難と受けとめているのだ。
自民党の村上誠一郎(元行革相)が、朝日の取材に、「(国葬は)そもそも反対だ。出席したら(国葬実施の)問題点を容認することになるため、辞退する」と明言したという。「安倍氏の業績が国葬に値するか定かではない」「国民の半数以上が反対している以上、国葬を強行したら国民の分断を助長する」「こうしたことを自民党内で言う人がいないこと自体がおかしなこと」とも語っている。その、筋を通す姿勢に感嘆せざるを得ない。
これに対照的なのが、立憲の野田佳彦。野田は、「私も執行部と考え方は同じ。(政府は)国会を絡めず独善的に決めてしまった。これでいいのかとの気持ちはある」と一応は言うのだ。そのうえで、「元首相が元首相の葬儀に出ないのは、私の人生観からは外れる。花を手向けてお別れする」と出席する意向。
言ってることがなんだかおかしい。《国葬是か非か》を問題にしているときに、私的な弔意に問題をすり替えているのだ。野田は、増上寺の家族葬には参加しなかったのだろうか。国葬に出席しなければ安倍への追悼ができないとでも考えているのだろうか。個人的に弔問して追悼すればよかろうし、国葬には出席せず国民の一人として献花台に花を手向けるというお別れのしかたもあろう。
原口一博(立憲・元総務相)が、ツイッターで野田発言を「人生観よりも法と正義が優先する。個人を優先するなど私にはできない」と批判すると、読売が読売らしく、《立民議員、国葬出席の同僚らを相次ぎ非難…》と報じた。自民党幹部の「『弔意を示すな』と強制するのもおかしい」とのコメントを報じている。
しかし、原口ツィッターは、野田の『弔意を示す自由』をいささかも侵害していない。野田は元首相としての仲間意識を大切に、存分に「私の人生観」のとおり安倍に弔意を示せばよい。ツィッターでも、記者会見でも、雑誌記事でも、駅頭演説でも…。そのことを妨害する者はない。問題は飽くまで、「国葬是か非か」なのである。国葬でなければ弔意を表すことができないはずはない。この論点を誤魔化してはならない。
最も批判さるべきは、連合会長の芳野友子の国葬出席表明である。この人、記者会見で「苦渋の判断だが出席せざるを得ない」と言ったという。「苦渋の判断」というのは、どう苦汁したのかさっぱり分からない。「出席せざるを得ない」という結論はなおさらである。
忖度するに、「わたしは、労働者の闘う力など信じちゃいない。労働条件改善は政府に擦り寄ってお願いするしかないんだから、政府から国葬出席を要請されれば、喜んで応じるしかないでしょ」「政府と対決したら、取れるものも取れない。安倍の時代と同様に、上手に付き合うしかないものね」「政府と親密に付き合っていれば、わたしの立場もぬくぬくと安泰でいられるはず」「わたしは、共産党と闘うことを使命としてる。共産党が国葬欠席と言った以上は、私の国葬欠席はあり得ない」「国民は出席と言い、立憲は欠席という。どちらをとっても『苦汁の判断』と言ってみせるしかないでしょ」「中央執行委員会では国葬への批判続出で、『欠席してほしい』と求める声が相次いだのは事実。だけど、出席という結論ありきなんだから、反対意見を押し切ることが『苦汁』だったわけ」
各地の弁護士会が反対声明を出している。本日は沖縄弁護士会の会長声明が出た。各地の自治体の長の国葬参加の公費支出差し止めを求める住民監査請求も各地でなされている。この勢いは止まらない。
注目すべきは、地方議会での国葬反対意見書の採択である。本日夕刻の時点で、「毎日新聞の集計では、少なくとも12市町村の議会が国葬中止や撤回を求める意見書や決議を可決している。」「その他、国葬の根拠となる法整備を求める意見書(長野県伊那市議会)や国会での徹底審議や弔意を強要しないことを求める意見書(北海道日高町議会)なども可決されている」という。
最初の決議は神奈川県葉山町だった。9月6日のこと。意見書は共産党町議が提出。議長を除く13人中、共産、立憲民主、無所属などの計8人が賛成した。意見書では「国葬実施は、安倍元首相の政治的立場を国家として全面的に公認・賛美することになる」「国民に対し、弔意を事実上強制することにつながる」と指摘しているという。
次いで、8日鳥取県南西部にある日南町議会が、元首相の国葬中止を求める決議案を可決。驚くべきことに全会一致である。以後、9日に小金井市、12日に鎌倉市議会が続いた。さらに、15日高知県大月町議会。ここも、自民・公明を含む議員10名の全会一致。16日には国立市。長野県では本日(21日)までに、大鹿村、南箕輪村、長和町、坂城町、箕輪町の5町村で可決している。
鎌倉市議会の例を見ると、議長を除く25人の議員のうち、中間派8人が「好意的な退席」となり、共産党、神奈川ネットワーク運動・鎌倉、鎌倉かわせみクラブなど計12人が賛成。反対にまわった公明党、自民党の5人が孤立した。現在の国民意識をよく反映しているのではないか。
安倍国葬が目前のいま、世論の動向如何にかかわらず、国葬実施に突き進むしかないというのが、政府・与党の態度。これは、政府が国葬撤回の機会を失したと見るべきであろう。国葬の実施は政権に大きな傷を残すだろうからだ。政治状況は、けっして「黄金の3年間」を許さぬものとなる模様である。