キャロライン・ケネディ大使の沖縄訪問
ケネディ駐日米大使が2月11日から13日まで沖縄を訪問した。平和祈念公園の「平和の礎(いしじ)」「戦没者墓苑」を訪れ、「厳粛な場所を訪れることができ誠に光栄に思います。命を落とされた兵士と一般市民の名前を読むのは圧倒される体験でした」と述べている。一人の市民の感想として真っ当なもの。籾井や百田、長谷川などの、支離滅裂で凶暴な言葉を聞かされて来た身には、このコメントは耳に心地よい。
昨年11月アメリカ大使として日本に着任して以来、ケネディは三陸地震被災地、被爆地長崎などを訪問している。また、安倍首相の靖国参拝について「disappointed!」(がっかりしたわ!)とツィートしたり、和歌山のイルカ漁について「イルカが殺される追い込み漁の非人道性について深く懸念しています」と述べたり、話題にはこと欠かない。50年前に暗殺された父親の柩につきそう5歳の少女の印象もあって、悲劇のプリンセスは過剰な期待と歓迎の空気の中にある。
そのケネディ大使の沖縄訪問にあわせて、琉球新報は2月11日、大使に呼びかける社説を掲げた。日本文に加えて英文でも。
社説は、「沖縄住民にとって米国は民主主義の教師であり、反面教師でもありました。」から始まる。戦後米国は強制的に理不尽な沖縄の基地建設を進めた。普天間基地も住民を排除してつくられた歴史が語られ、名護に移転しても、「県民は事故の危険性や騒音被害などで北部地域住民の命と人権、財産が半永久的に脅威にさらされることを危惧しています」。「イルカ追い込み漁の非人道性について懸念されているというのでしたら、ジュゴンの餌場を破壊して生息地を脅かすことは非人道的ではないでしょうか」。そして最後に「父親譲りの使命感で、米軍が住民の安全を脅かしている沖縄の軍事的植民地状態に終止符を打ち、新しい琉米友好の扉を開いてください。今回の沖縄訪問を辺野古移設断念と普天間撤去への大きな転機とするよう強く求めます」と結んでいる。
アメリカ側からの要求で、名護の稲嶺市長は予定外にケネディ大使と会談した。市長は「普天間基地の名護移設に反対する地元市民の声をオバマ大統領に伝えてほしい」と要請し、ケネディ氏は「よく分かった」と述べて、大統領への伝達に前向きな姿勢を示したという。(沖縄タイムス2月13日)
琉球新報の社説は「新しい琉米友好の扉を開いてください」と呼びかけている。「琉米友好」である。普天間基地のゲートでオスプレイ配備への抗議行動をしていた大田朝暉さんは「ケネディ氏は名護市長の話を聞いた。むしろ恥ずかしいのは地元を無視する日本政府だ」と言っている。
ウォールストリートジャーナルは、仲井間知事と会談したケネディ大使の発言について、「普天間基地の移設計画には言及しなかった」が、「米軍駐留の負担軽減に向けて協力することが重要だ」とまでは述べた、と報じている。
キャロライン・ケネディが何かをなし得るか。まだまったく分からない。個人の善意や理解では到底解決できないほど問題は深刻で大きい。しかし、何度も何度も裏切られ続けた沖縄が、呼びかけて答えてくれるかもしれないという誠実さを感じる相手が、日本政府ではなくケネディ大使だということには、考えさせられる。本土の私たちは、力のなさを深く恥じなければならない。
(2014年2月14日)