閣議決定による解釈改憲許さずー「毎日」が熱い
解釈改憲の閣議決定を目前にして、ここ数日各紙が熱い。なかでも、毎日の熱さが群を抜いている。権力が暴走する今こそ、ジャーナリズムの本領を発揮すべき時ではないか。そのような気迫が伝わってくる。各界からの意見集約が質・量ともに充実しており、閣議決定案文や想定問題集などの資料の掲載も充実している。何よりも、立憲主義堅持の立場から集団的自衛権行使容認の閣議決定は認めがたいとする「社是」が紙面の隅々にまで感じられる。今、人に購読をお勧めするのは毎日新聞だ。
昨日(6月28日)の毎日社説はこの問題で2本。「集団的自衛権行使容認問題にかかる公明党の転換 『平和の党』どこへ行った」、そして「閣議決定案 9条改憲にほかならぬ」。
http://mainichi.jp/opinion/news/20140628k0000m070117000c.html
http://mainichi.jp/opinion/news/20140628k0000m070118000c.html
いずれもオーソドックスな姿勢で説得力ある明快な論旨。
続いて今日のトップは、世論調査の「集団的自衛権『反対』58%」「『説明不十分』8割」である。
「毎日新聞は27、28両日、全国世論調査を実施した。政府が近く集団的自衛権の行使を容認する方針となったことについて賛否を聞いたところ、『反対』が58%で、『賛成』の32%を上回った。政府・与党の説明が『不十分だ』とする人は81%で、『十分だ』とする人の11%を大きく上回った。安倍内閣の支持率は前回の5月調査より4ポイント低い45%。第2次安倍内閣発足以来、最低となった。不支持率は35%で前回調査より2ポイント増え、これまでで最も高くなった」という。
もう少し詳しく見てみると、「集団的自衛権の行使を容認『賛成』の32%」のなかで、「全面的に行使すべき」の意見は20%に過ぎないのに対して、「限定した内容にとどめるべき」の意見が74%である。
「また、安倍晋三首相が、行使を可能にすれば、他国が日本を攻撃することを思いとどまらせる『抑止力』になると説明していることについて尋ねたところ、抑止力になると『思う』と答えた人は27%にとどまり、『思わない』は62%だった。行使に反対する人のうちでは86%が抑止力になると『思わない』と答えた。首相は5月15日の記者会見で、行使容認で『あらゆる事態に対処できるからこそ、抑止力が高まり、紛争が回避される』と述べるなど、抑止力強化につながるとの考えを繰り返し説明しているが、国民への理解は十分には広がっていない」
「日本が集団的自衛権を行使できるようにした場合、他国の戦争に巻き込まれる恐れがあると思うか聞いたところ、『思う』が71%で、『思わない』の19%を大きく上回った。政府は行使を限定すると説明しているが、範囲が拡大して戦争につながることへの危機感が強いことがうかがえる」
そして何よりも、今回の憲法解釈の変更に、「賛成」は27%、反対が60%である。前回調査より、「賛成」は10ポイント減り、「反対」は6ポイント増えた。勝負あったというべきだろう。
にもかかわらず、安倍自民よ、何故こうまで無理を通そうとするのか。公明党よ、何故こうまで安倍政権に追随しなければならないのか。
ところで、本日の毎日朝刊は、小泉敬太論説委員顕名の社説を掲載している。「視点・集団的自衛権 司法の審査」というもの。
論旨は、「安倍政権の解釈改憲は司法審査に耐えられるはずがない」ということ。そして、「違憲判決の影響の深刻さは計り知れない」という警告である。
「集団的自衛権に基づき自衛隊が派遣されるような事態を迎え訴訟が起こされれば、司法判断が出ることになる。解釈変更が憲法上「適正」かどうかを最終判断する権限(違憲審査権)は最高裁にある。その時、違憲判決が出ないとは言い切れない」「政府・与党には、三権の一角を占める司法の場で、いずれ事後チェックを受けることを見据えた慎重で冷静な論議が欠けているのではないか」と問いかけている。
同論説は「今の裁判所に違憲判決を出せるはずがないと、政府・与党は高をくくってはいないか」という問いかけ。これがキーフレーズだ。政府・与党は明らかに「高をくくっている」。「最高裁が、集団的自衛権公使は違憲などという判決を出せるはずはない」と思い込んでいる。そう思い込ませた最高裁の罪は重い。権力多数派の憲法からの逸脱にブレーキをかけねばならない立場の最高裁が、あらかじめブレーキ役を放棄していると見くびられているのだ。
言うまでもなく、砂川事件最高裁大法廷判決(1959年)以来の「統治行為論」である。「高度の政治性を有しているテーマについては、一見極めて明白に違憲無効と認められない限り、司法審査権の範囲外」という司法の権限と責務を放棄する立場。
しかし、毎日論説は、「もし『統治行為論』が再び持ち出され、審査の対象とされないようでは司法の消極姿勢が問われるだろう」と批判する。その上で憲法学者の意見を借りて「違憲判決が出た場合の影響は計り知れない。自衛隊活動の正当性に疑念が深まり、賠償責任を負うなど政府が抱え込む訴訟リスクはあまりに大きい」と警告している。
そうだ。もし、集団的自衛権行使容認が閣議決定から各立法に進展し、現実に国民誰かの権利や法的利益の侵害の恐れが明らかになった時点では、遠慮なく提訴をしよう。弁護団だけでなく、多くの学者や元官僚の皆さんの力を借り、圧倒的多数の国民の声をバックに無数の違憲訴訟で、最高裁を動かそう。
法律家として、集団的自衛権行使を合憲という者はよもやあるまい。必要なのは、違憲判断に踏み切る裁判官の勇気だけなのだから。
(2014年6月29日)