高村正彦さん、他人には見えないトンデモナイものが見えるそうですね。そりゃ飛蚊症。早く眼科に行かなくちゃ。
戦争法案への世論の動向をはかるバロメータとして重要なものの一つが、地方紙の姿勢とその紙面構成である。第2次安倍政権発足直後の96条先行改憲の動きを止めたものが、2013年5月憲法記念日前後の地方紙各紙の圧倒的な批判の社説であった。
中央各紙の姿勢は、ほぼ色分けが固定している。地方紙の動向は、世論をはかる指標として意味が大きく、「地元」選出の議員に影響大なるものがある。だから、機会あるごとに地方紙を読むように心がけている。この感覚は、東京育ちにはつかみにくい。また、有力な地方紙・ブロック紙をもたない大阪人にもわかりにくいのではないだろうか。
本日、たまたま神奈川新聞を読んだ。一面トップ、紙面半分以上のスペースを割いて、「安保法案 自民OBも反対」「藤井氏『自公インチキ』」の記事。
「山崎拓・自民党元副総裁、亀井静香元金融担当相らかつて自民党に所属した議員や元議員の重鎮4人は12日、日本記者クラブで会見し、集団的自衛権行使を可能とする安全保障関連法案に反対の考えを表明した。山崎氏は「地球の裏側で後方支援活動をすると憲法違反になる行動を引き起こす。自衛隊と相手方が殺し合う関係になるのは間違いない」と述べた。
ほかに藤井裕久元財務相と武村正義元官房長官が出席した。山崎氏は「問題点が多々あり、十分な審議を尽くすべきで、今国会での成立に反対だ。平和国家としての国是は大いに傷つく」との声明も発表した。‥‥
共同通信の配信記事として、全国の地方紙を大きく飾っているはず。もっとも、トップ扱いの判断や関連記事は、神奈川新聞独自のもの。この記事は、神奈川同様、各「地元」で大きな話題となるだろう。保守系先輩議員からの忠言を、現役の議員諸氏はどう聞くのだろうか。
首都の地方紙・東京新聞は一面左上隅に、「自民OBら 反対表明」の見出しと4人の写真を掲げ、記事は3面にまわした。比較的扱いは小さい。その代わり、社会面のトップに、「砂川事件弁護団再び声明」と記者会見を大きく取り上げた。これまたすばらしい。時宜を得た記事で、これも戦争法案廃案を求める運動に大きく力を与えるもの。
この声明の最後は、「安倍首相や高村正彦副総裁の言説が無価値であり、国民を惑わすだけの強弁にすぎないことはもはや明白であるから、一刻も早く態度を改め、提案している安保法制(改正法案)を撤回して、憲法政治の大道に立ち返られんことを強く要求するものである。」と結ばれている。
記事は、「最高裁判決には集団的自衛権行使の根拠はない」「合憲主張『国民惑わす強弁』」という大見出し。
他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認を柱とする安全保障関連法案について、政府が1959年の砂川事件の最高裁判決を根拠に合憲と主張しているのに対し、判決時の弁護団の有志5人が12日、東京都内で会見し、「裁判の争点は駐留米軍が違憲かに尽きる。判決には集団的自衛権の行使に触れるところはまったくない」とする抗議声明を出した。5人はみな戦争を知る白髪の八十代。「戦争法制だ」「国民を惑わすだけの強弁にすぎない」と批判し、法案撤回を求めた。
「白髪の八十代有志5人」の会見の写真が若々しい。坂本修、神谷咸吉郎、内藤功、新井章、山本博の各弁護士。
会見の冒頭。新井章弁護士は眼鏡を外し、鋭いまなざしを子や孫世代の記者たちに向けた。そして「事件の弁護活動をした私らは裁判の内容にある種の証人適格を持っている」と法律家らしく語り始めた…。
あとは省略するが、「集団的自衛権について砂川判決から何かを読み取れる目を持った人は眼科病院に行ったらいい」というフレーズが紹介されている。そう。飛蚊症(ひぶんしょう)という目の病気がある。ないものがあるように見えるのだ。トンデモナイものが、あたかも飛んでいるように見える。高村正彦さん、誰にも見えないものがあなたにだけは見えているようだ。そりゃたいへんだ。早めに眼科の診察を受けることをお勧めする。
(2015年6月13日)