葛西臨海公園の自然環境をオリンピックから守れ
本日は3連休の中日。天気は晴朗。家に籠もっているのは芸がない。ところが、どこに出掛けるかの算段が容易ではない。人混みは苦手だ。金のかかるところも敬遠。わざわざ外に出て、不愉快な思いをしたくない。で、思いついたのが、葛西臨海公園。オリンピックがらみで、もしかしたら何かあるのではないか…。
京葉線「葛西臨海公園駅」に初めて降りて園内を散策した。人混みに辟易しながら水族館を見学したあと、鳥類園に足を運んだ。こちらはまことに閑静。復元された自然ではあるが、そのたたずまいが好ましい。広い園内をうろうろしているうちにウォッチングセンターにたどりついて、まったく偶然に、しかもまことにタイミング良く、野鳥の会の人々の会合に出くわした。
毎月第4日曜日が定例の探鳥会だそうで、100人規模の探鳥会参加者が共同して本日このエリアで目視した野鳥の種類と個体数を確認しているところだった。相当の時間をかけて、本日の参加者が目にした野鳥は51種類と確認された。その作業が終わったあと、「葛西問題」(オリンピック会場「見直し」問題)についての特別報告がなされた。大要は以下のとおり。
「ご存じのとおり、『野鳥の会・東京』では、葛西臨海公園がカヌー・スラローム競技会場予定地となっていることに、異議を申し立ててきました。『会』としてはオリンピックそのものに反対はしていません。しかし、今や貴重な野鳥の棲息地となった葛西臨海公園を競技会場とすることには納得できません。東京都知事と招致委員会には、『環境保全と両立する東京オリンピックを』と要請し続けてきました。この3月、IOC委員が東京を視察に来たときにも、『会』は委員にアピールをして手応えがあったと考えています。一番の問題は、環境影響評価(アセスメント)にあります。招致委員会のアセスメントは、いまだに明確にされていませんし、IOCの納得を得るものになってはおらず、葛西のカヌー会場のアセスメントは再提出を求められています。
猪瀬知事は、先日『環境に影響あるプランではない。予定のとおりやる』と発言しています。会員の中にも、『もう、何を言ってもダメだね』と残念に思っている方もあるかも知れません。しかし、そんなに簡単に『予定のとおりにやれる』はずはありません。なによりも、IOCは既提出のアセスメントを了承していないのですから、このままでよいはずはありません。招致委員会とは、9月29日にこの問題で話し合うことになっています。全国5万人の『野鳥の会』の会員だけでなく、団体署名は120を超えています。必要になれば、個人署名をいただこうとも思っています。そして、IOCに直接の訴えもしています。『戦いはこれから』です。皆さん、よろしくお願いします。」
帰宅後に、ネットで調べて次のことを知った。
野鳥の会・東京によれば、オリンピック招致委員会がIOCに立候補ファイルと共に提出された環境影響評価書(葛西臨海公園に関する部分)について「委員会都事務局」は「野鳥の会・東京」の公表要求を拒み続けており、「会」は2013年9月8日付の要望書で次のとおり述べている。
「開催地が東京に決まった今こそ都事務局は提出済みの環境影響評価書を公表すべきであり、計画の中身を知らない地元住民や多くの都民に知らせる義務があると考えます。また、IOCが2013年6月に示した各立候補都市に関する評価書においてadditional commentsとして指摘したように、葛西臨海公園及びその周辺に関するより精密な環境影響評価を実施する必要があると考えます」「代替候補地の選定とそれに関する環境影響評価の実施を強く求めます。葛西臨海公園の見過ごすことのできない環境破壊を避ける抜本的な方法として、代替候補地数カ所の選定及び代替候補地に関する環境影響評価を速やかに実施し、新たな計画地の検討に着手することが何よりも重要であると私たちは考えます」
こんなところでも、「情報隠し」だ。隠すのは、多くの人の目を恐れているからにほかならない。規模の大小にかかわらず、権力にとって情報操作は不可欠の保身手段なのだ。
いま、「オリンピック・レガシー」という言葉が大はやりである。だが、負の遺産についての言及が少ない。環境を破壊し生態系を壊して、オリンピックを開催する意義はありえない。葛西臨海公園の鳥類園に足を踏み入れれば、関係者がいかにデリケートに、環境と生態系の保護に気を配っているかを実感することができる。ここには、オリンピックの喧噪は似合わない。野鳥を驚かす建築工事は無用に願いたい。まだ、7年も先のことではないか。十分なアセスメントを実行して、比較的環境への影響が小さくなる場所に変更したらよいだろう。そう、誰もが考えることを都知事や招致委員会はなぜ、見直そうとしないのだろう。
野鳥の会はオリンピック開催には反対しないという。私は反対だ。反対だが、IOCは2020年東京開催を決定した。決定したからには開催されることにはなろうが、できるだけ、デメリットの少ないものにしていただきたい。この点で野鳥の会に同調する。デメリット最小化の一つとして、カヌー競技を葛西臨海公園地域で行うことはやめていただきたい。本日、初めて現地を訪問して、そう確信した。
ではカヌー会場は、どこがよいだろうか。野鳥の会東京には、都内何か所かの腹案があるようだが、私は、東京を離れて福島を提案したい。福島市内ではない、福島第1原発の汚染水が洩れているとされるあの海域での開催。「汚染水による影響は福島第一原発の港湾内の0・3平方キロメートル範囲内で完全にブロックされている」のだから、その「0・3平方キロメートルの範囲」を外した、すぐ側の海域を競技場とすること。汚染水が完全にブロックされコントロールされており、それゆえ福島がいかに安全であるかを世界にアピールする絶好のチャンスではないか。政府の事故処理の自信と、「首相は嘘つきではない」ことのアピールとして、このくらい効果的な名案はなかろうと思う。
多数の観客には、原発事故処理の現場を案内するオプショナルツアーにも参加してもらう。現場作業の実体験イベントや、安倍首相の無責任発言糾弾決議を上げた浪江町町民との交流イベントも組み入れるなど工夫をしたい。せっかく、世界が日本の事故後の処理状況の真実を知ってもらえる最上のチャンスになると思うのだが。
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「ペンギンは人に慣れる」らしい
ペンギンはおかしな生き物だ。鳥か魚か、哲学的な課題を提供する。
「鳥は飛ぶもの」とすれば、飛ぶことができないから鳥ではない。「魚は水の中に棲むもの」とすれば、陸に上がってよちよち歩けるから魚でもない。
水中では確かに飛んでいる。「だから魚である」ともいえるし、だから「鳥であるともいえる。そもそも、定義とは何か、鳥と魚との分類にいかなる意味があるのか。考え込まざるを得ない。
鱗はなくて、羽毛をもつ。鰓呼吸ではなく肺呼吸をする。固い殻の卵を産む。これらのことからは、鳥らしいとしぶしぶ納得するけど、また、お目にかかった時には、きっと考え込むことになる。
葛西臨海水族園に135羽ののフンボルトペンギンがいる。その中の1羽は、昨年、脱走して、82日間東京湾一周旅行で世間を騒がせたペンギンだ。認識番号3373なので、「さざなみ」と名付けられた。カラーリングの識別標がついてはいるが、到底見分けはつかない。
ペンギンたちの遊ぶ様子は上からも見ることができるが、ガラス越しに横からも見える。たくさんの子どもたちがガラスに取り付いている。差し出した手にペンギンが寄ってきて、じゃれるからだ。頭をこすりつけたり、身体をくねらせたり、流し目をくれたり、大サービスだ。大人もびっくりして目を離せない。ペンギンがこんなに人なつっこいなんて知らなかった。まるで猫のようだ。ずいぶん利口そうだし、これなら狭い世界には住み飽きるだろうし、脱走もするだろうと納得。
葛西臨海水族園は家族連れでいっぱいだ。入園料は700円(小学生以下無料、65歳以上350円)で、民間の水族館に較べればとても安い。そのうえ年間パスポート2800円で1年間入場自由だ。駐輪場には子どもイスがついた自転車がいっぱい駐めてある。まわりは広い公園で、江戸川と東京湾散策もできる。家族で楽しんでいるうちに、子どもは「お魚博士」になれる。そのうえ「鳥博士」にもなれる。
広々としたフィールドと屋内外の観察施設を備えた鳥類園では鳥ウオッチングが楽しめる。水辺には、今の季節でも50種類以上の鳥がいる。白く大きくて目立つサギ類、カモ類、シギ類、小さなカイツブリなど、鳥を知らない人でも充分楽しめる。これから冬鳥もふえて、鳥観察の絶好の季節になる。
この鳥類ウオッチングゾーンの環境は、関係者が大切に守り育てて、手塩に掛けて作りあげてきたことがよく解る。一度でもこの場に来て鳥たちを見た人は、この静かで美しい環境を壊してはならないと肌で感じるはず。「野鳥の会」ならずとも、絶対に守っていきたい「東京の宝」だ。
今の季節、花壇には白と黄色と真っ赤なヒガンバナの群落。石垣の間には、ひっそりと咲くいかにも自然感覚のヒガンバナ。まだまだ蕾もあって楽しめる。
以上、いいとこだらけの葛西臨海公園の宣伝でした。
(2013年9月22日)