交代すべきは衆議院議長ではない。政権こそ交代を。
今朝(7月28日)の毎日新聞朝刊の記事。「萩生田・自民幹事長代行が、『改憲滞れば衆院議長交代』異例の言及」という見出し。「国会での改憲手続きが滞るようなら、衆院議長を交代させるぞ」という恫喝なのだ。なんたることか。
「自民党の萩生田光一幹事長代行は26日夜のインターネット番組で、国会で憲法改正の議論が停滞したままであれば大島理森衆院議長が交代する可能性に言及した。萩生田氏は安倍晋三首相の側近。改憲を巡る議論を進展させたいとの思惑があるとみられるが、衆院議長の交代は総選挙後に行われるのが慣例で、首相が意欲を示す改憲議論の停滞を理由に議長の進退に触れた発言は波紋を広げそうだ。」
朝日は「『有力な議長置いて国会が改憲シフトを』 自民・萩生田氏」という見出しで、こういう記事にしている。
自民党の萩生田光一幹事長代行は26日夜のインターネット番組で、憲法改正に向けた国会運営について「憲法改正をするのは総理ではなく国会で、最終責任者は総理ではなく議長。有力な方を議長に置いて、憲法改正シフトを国会が行っていくのは極めて大事だ」との考えを示した。
出演者から改憲に向けた衆院議長の重要性を問われて答えた。そのうえで萩生田氏は、大島理森衆院議長について「立派な方だが、どちらかというと調整型。議長は野党に気を使うべき立場だが、気を使いながら(憲法審査会の)審査はやってもらうように促すのも議長の仕事だったと思う」とも指摘した。
安倍晋三首相は参院選を受け、改憲に向けた議論を加速させようとしている。首相側近として知られる萩生田氏が議長の役割の重要性に言及したことは、波紋を広げそうだ。
一議員が、自党から出している衆院議長の国会運営に注文を付け、交代もあり得ると脅かしたのだ。虚飾を剥いで分かり易く言えば、こういうことだ。
「大島理森議長よ、憲法改正問題の国会審議が停滞しているではないか。いったい何をグズグズしているんだ。あんたの姿勢は野党に対して弱腰に過ぎるではないか。事態がこのままで、憲法改正審議がこれ以上遅滞するようなら、審議促進のために、有力政治家に交代させることを考えねばならん」
到底、普通の議員ができる発言ではない。萩生田がこんなことを言えるのは、普通の議員ではないからだ。萩生田といえば、安倍晋三の伝声管。「萩生田氏は安倍首相が白いといえば黒でも白というほど忠誠心が厚い」と、言われる人物である。自分の声はなく、ひたすら安倍晋三の声を拡声して振りまくのが役どころ。
萩生田は単なるスピカーの音声。マイクに向かって喋っているのは安倍晋三。誰もがこう思っているから、首相発言として「波紋を広げそうだ」ということになる。
もっとも、波紋は二通りに考えられる。
ひとつは、安倍の思惑通りに大島議長が動くことだ。議長が改憲審議促進に積極的となり、憲法審査会もその意を体して動き出すという、安倍の意に沿った筋書きの通りの波紋。
しかし、そうなるとは限らない。むしろ、この発言は、改憲策動が進展しないことへの安倍の焦りとも、八つ当たりともとられる公算が高い。大島議長の反発を招くことは必至だし、安倍晋三の驕りに自民党内の結束が乱れる方向への波紋も考えられる。何よりも、野党と国民の反安倍感情を刺激することにもなる。
参院選の評価は人によって様々だが、自民党は大きく議席を減らし、改憲勢力が3分の2の議席をとれなかったことは厳然たる事実である。民意が、改憲を望むものでないことははっきりした。あらゆる世論調査や、候補者・議員アンケートが、改憲は喫緊の課題ではないことを明確にしている。
にもかかわらず、何ゆえ異例の議長交代までさせて改憲審議促進にこだわるのか。民意よりも、自分のイデオロギー優先の安倍晋三とその取り巻きへの批判が必要である。
言うまでもなく、内閣総理大臣とは、憲法を遵守し擁護しなければならない立場にある。にもかかわらず、自分の思いに適わぬ憲法条項を変えてしまえというトンデモ総理が、安倍晋三なのだ。
季節は、冷たい梅雨が去って猛暑の夏到来の様子である。生ものは、早く処理をしないと腐敗する。政権も、本来長くは持たないものだ。アベ政権は、疾うに賞味期限も消費期限も過ぎている。
促進すべきは、議長交代論議でも改憲論議でもなく、政権交代論議である。
なお、赤旗は「“安倍改憲へ衆院議長交代も”ネット番組 自民・萩生田氏が発言 憲法議論加速へ任期途中に」という見出しでの、一面トップ記事だった。
(2019年7月28日)