澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

「安倍改憲スケジュール断念」という当面の勝利。

今朝(12月7日)の毎日朝刊が、大きく報道している。「改憲『20年施行』断念」「首相、任期中こだわらず」

 安倍晋三首相は憲法改正を巡り、自らが目指した「2020年改正憲法施行」を断念した。相次ぐ閣僚の辞任や首相主催の「桜を見る会」の問題で野党の反発が高まり、改憲の手続きを定める国民投票法改正案の成立が見送られ、20年施行が困難となったためだ。首相は自民党総裁任期が満了する21年9月までに国民投票実施を目指す目標に事実上修正する方針。任期中の施行にこだわらない姿勢を示し、野党の協力を得たい考えだ。複数の与党関係者が明らかにした。

 ニュースソースの「複数の与党関係者」が誰かは不明だが、毎日がこう書くのだから間違いはなかろう。また、毎日がこう書けばこのような流れになるだろう。2017年の5月3日に始まった「安倍改憲」の妄動は、とりあえず押さえ込んだ。ひとまずは、「バンザイ」と小さく叫ぼう。

今臨時国会の会期は12月9日(月)に会期末を迎える。野党は結束して、「桜疑惑」追求をテーマに40日間の会期延長を求めているが、与党は応じようとしていない。予定どおりに9日閉会となれば、またまた、改憲手続きは1ミリも進むことなく、次の会期に持ちこされることになる。

今国会では、参院憲法審査会での実質審議はなかった。衆院憲法審査会では、衆欧州各国調査議員団の報告を踏まえてのフリートーキングは3回開かれたものの、自民党改憲案の提示も、国民投票法の改正案審議もまったくできなかった。来年(20年)の通常国会での改憲策動に警戒は必要だが、安倍改憲策動に勢いはない。

2年前の5月3日、安倍晋三は日本会議幹部の口移しに、9条1項と2項に手をつけることなく、自衛隊を憲法に書き込む「安倍9条改憲」を打ち出した。彼なりに、「改憲実現のために大きく譲歩した現実性ある改憲案」のつもりであったろう。しかし、それでも国民から「改憲ノー」を突きつけてられたのだ。

安倍がぶち上げたのが「2020年施行」である。「東京五輪・パラリンピックが開催される2020年を日本が新しく生まれ変わるきっかけにすべきだ」というわけだ。五輪と改憲、どう関わるのかさっぱり分からぬが、「東京五輪・パラリンピック」がダシに使われ、結局は思惑外れとなった。

安倍晋三はようやく、自らの改憲提案実行の不可能なことを認めて、「20年施行断念」「首相、任期中こだわらず」となったわけだ。もちろん、彼は「改憲断念」とは言えない。言えば、彼を支えている右派・右翼から見離される。

毎日はこうも報道している。

 首相はスケジュールを見直し、時間をかけて野党の協力を得る方針に転換した。自民党幹部は「首相は改正憲法の施行までいかなくても、改憲の道筋を付けたいと考えている」と述べた。

 何げない書きぶりの記事だが、安倍晋三の改憲への執念が伝わってくる。国民が望んで憲法改正の論議が始まっているのではない。国民の改憲を求める声は極めて小さいのだが、首相だけが突出し、焦って改憲策動に必死なのだ。もとより、改憲は、首相の仕事ではない。首相は、主権者である国民から与えられた命令である憲法を、尊重し擁護すべき立場ではないか。気に入らない憲法は遵守せずに改憲するのだ、というのだから、まことに困ったアベ晋三なのである。

モリ・カケに続いての桜疑惑。そして閣僚辞任、入試問題、FTAに給特法である。改憲提案など、やれる状況であるはずもない。

さて、ここまでは、改憲阻止勢力の優勢で水入りである。改めて、仕切り直して、通常国会での取り直しの一番が始まる。先行きに安易な楽観は許されないが、見通しけっして暗くはない。ほのかに桜色さえ、見えるではないか。
(2019年12月7日)

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