澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

統一教会スラップに怯んではならない。言論封殺の成功体験を作らせてはならない。

(2022年11月15日)
ジャーナリスト有田芳生が「統一教会―銃撃・北朝鮮・自民党―」と表題したパンフを作成している。編集・発行は立憲フォーラム、頒価100円。今起きている問題の整理に手頃な内容。

 その冒頭に、「有田芳生×与良正男」の「30年の放置繰り返すな」と題する対談が掲載されている。毎日新聞9月2日夕刊記事の転載。その中で、有田はこう詳しく語っている。

有田 一連のオウム事件が裁判の局面に移った95年秋のことです。警察庁と警視庁の幹部に呼ばれ、統一教会についてレクチャーしてほしいと頼まれたんです。当日、全国から集まった目の鋭い男性たちの前で教団の歴史や霊感商法の手口などを話しました。終了後、両庁の幹部に聞くと、「オウム事件はほぽ決着がついた。次は統一教会の摘発を準備している」と言うのです。
与良 ところが、その後も摘発は行われませんでした。
有田 10年たった2005年、警視庁公安部の幹部2人と居酒屋で飲む機会がありました。「統一教会をやると言っていたけど、何もなかったじゃないですか」と聞いたら、「政治の力だ」と。それ以上は言わないんですが、警察に太いパイプを持つ政治家が動いたとしか考えられませんでした。実際、07年の教団の内部資料を見ると、「対策費」という名目で毎月1億円の予算がついている。その一部は「警察に強い国会議員の対策」と関係者から聞きました。おそらく領収書のあるようなお金ではないので、どこへどう流れたかは確認しようがない。ですが、こうした資料から推測すると、95年以降、警察の動きを察知した教団が政界への働きかけを図っていた可能性が浮かんできます。

 この対談は8月下旬と思われるが、そのときにはこのような発言が問題となるとは思いもよらなかっただろう。

 有田は8月18日には、テレビ朝日「モーニングショー」に出演し、旧統一教会に関連して要約以下の発言をしている。

 「1995年秋に警察庁と警視庁の幹部の依頼で、対象者を聞かずに20?30人を相手にレクチャーを行い、その際に、「統一教会の摘発」を視野に入れていると聞いたと明かした。
 そのうえで、その10年後のこととして「幹部2人と話をした時に、10年たって、今だから言えることを教えてくれって聞いたんですよ。なんでダメだったんですか。一言ですよ。『政治の力』だったって。圧力」

 8月19日放送の日本テレビ番組「スッキリ」でも同趣旨の発言がなされている。
そして、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)は、10月27日に至って有田と日本テレビを被告として、名誉毀損訴訟を東京地裁に提起した。請求金額は2200万円である。典型的なスラップ訴訟といってよい。

 報道によると、「スッキリ」で有田がした教団についての発言内容は、以下のとおりである。

「一時期距離を置いていた国会議員達も、もう一度あの今のような関係を造ってしまったっていうその二つの問題があるということを思うんですが、どうすればいいかっていうのは、やはりあの、もう霊感商法をやってきた反社会的集団だって言うのは警察庁ももう認めているわけですから、そういう団体とは今回の問題をきっかけに、一切関係をもたないと、そういうことをあのスッキリ言わなきゃだめだと思うんですけどね」

 要約すれば、「霊感商法をやってきた反社会的集団だっていうのは警察庁ももう認めている」という内容。これが名誉毀損文言であると主張されている。
 
 とすれば、この訴訟は比較的単純な事実摘示型名誉毀損訴訟である。報道が正確なものだったとして、有田の「霊感商法をやってきた反社会的集団だっていうのは警察庁ももう認めている」という発言が、統一教会の社会的評価を低下させるに十分な名誉毀損文言に当たることは論を待たない。

 訴訟では、被告の側の抗弁として、公共性・公益性・真実性(または相当性)を挙証しなければならないことになる。名誉毀損訴訟の実務において、公共性と公益性の立証のハードルはさして高いものではない。問題は、事実上真実性(または真実と信じたことについての相当性)の立証如何に絞られる。

 被告は2名だが、日テレ側が有田発言の真実性の立証に格別の役割を果たすことは考え難い。被告有田自身が真実性や相当性の立証活動に奔走しなければならないことになる。軽々には言えないが、スラップの提起そのものを違法とした反訴の提起にも期待したい。

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