明日(2月7日)日弁連会長選挙
明日2月7日(金)が日弁連会長選挙の投開票日である。次期の日弁連新会長(任期2年)が決まる。私は期日前投票を済ませた。
今回選挙で会長に当選すると目されている候補者は、日弁連の憲法委員会委員長、人権擁護委員会委員長の経歴をもつ。同候補の選挙スローガンが「憲法と人権を守り 築こう明日の日弁連」というもの。政策パンフレットを見る限り、これまでの日弁連の路線を踏みはずすことはない。
人権擁護、憲法「改正」阻止、憲法の理念の尊重、司法の独立、日弁連の在野性の確立等の、日弁連に定着した路線は、全国の多くの弁護士が長年積み上げてきた努力の結晶である。けっして一人のスーパースターの功績などではあり得ない。
そのような実績を積み上げてきた会内「主流派」の存在がある。名付けるなら、「護憲派」「人権派」あるいは「理念派」である。その人的構成において、革新派弁護士層と良心的保守層との緩やかな連合、と言ってよいだろう。近年その優位が揺らぐことはない。たった一度の例外を除いては。
2010年の日弁連会長選挙では、異例の再選挙になって、このときばかりは「主流派」が敗れた。勝利したのは、宇都宮健児君だった。宇都宮候補のスローガンは、「弁護士人口の増員反対」「司法修習の給費制維持」、そして「会内派閥体制の打破」であった。憲法や司法の理念をめぐって、日弁連の方針が争われたわけではない。
政府は、既に司法試験合格者を年間3000人に増員する計画を確立し日弁連も賛意を表明していた。宇都宮君は、「合格者数を年間1500人に削減する」と主張した。これに対して、主流派候補は削減数の明言を避けた。「司法改革」に関わってきたこれまでのしがらみがあったというだけでない。法曹人口増員は司法利用者である国民に有益で、「これに反対することは一般庶民に弁護士のエゴと映るのではないか」「多くの国民の賛意を得られないのではないか」という躊躇があったからである。
主流派と宇都宮君の主たる対立争点はこの点に収斂し、弁護士増員で経済的な苦境に曝されている地方会の多くが宇都宮君を支持した。こうして宇都宮会長が実現した。このとき、主流派の活動家の言葉が印象に残っている。「誰が会長になっても、憲法や司法の理念に関する日弁連の基本路線が揺らぐことはない」。確かにその通りとなった。
組織運営がスムーズに行われる組織においてはどこも同様であろうが、会長のパーソナリティで、日弁連の方針や姿勢が大きく変わることはない。言うまでもないが、人格識見優れた人物が会長選に立候補しているわけではないし、日弁連会長経験者が仲間内で尊敬されている弁護士ということでもない。
1970年代からの会長経験者のうち、個人的に尊敬に値すると思えるのは土屋公献さんくらい。また鬼追明夫さんの硬骨漢ぶりには敬意を惜しまない。その外には、格別敬意を表すべき人を知らない。会長経験者をことさらに持ち上げたり、何もかも一人がやり遂げたような都知事選での宣伝は、聞かされる方が恥ずかしくなるだけでなく、多くの弁護士を白けさせることになるだろう。
ところで、日弁連会長選挙と同時に、私の所属する東京弁護士会の常議員選挙も行われる。こちらも期日前投票を済ませた。私が投票した候補者の公約の一部を抜き書きしておきたい。
「弁護士会は、いま重要な課題を抱えています。国民世論を無視して特定秘密保護法が成立し、事実上の解釈改憲を意図する国家安全保障基本法が国会に上程されようとしています。基本的人権の尊重と恒久平和主義を基本原理とする憲法が危機に晒されています。東日本大震災の被災者と原発事故被害者の早期救済、法曹人口問題、若手会員への支援など課題は山積みです…」
日弁連会長が誰であるかにかかわりなく、弁護士会なかなか真っ当ではないか。
(2014年2月6日)