澤藤統一郎の憲法日記

改憲阻止の立場で10年間毎日書き続け、その後は時折に掲載しています。

DHCスラップ訴訟資料の公開予告?「DHCスラップ訴訟」を許さない・第17弾

私を被告とする『DHCスラップ訴訟』の事実上の第1回口頭弁論は8月20日(水)午前10時半に開かれる。場所は東京地裁705号法廷。誰でも傍聴可能である。予約も身分証明も不要だ。しかし、満席になると入れなくなる。これが現在のところ、やむをえないのだ。

その場合には、11時から東京弁護士会5階508号室で行われる弁護団会議兼報告集会にどうぞ。こちらも席が足りないかも知れないが、そのときは詰め込みでも立ち見でもなんとかなる。

この集会では弁護団長の解説や、スラップ訴訟に詳しい北健一さん(ジャーナリスト・出版労連書記次長)の報告がある。高名な田島泰彦上智大学教授(メディア法専攻)の研究者としての立ち場からの解説も予定されている。

その口頭弁論期日1週間前の今日(8月13日)、弁護団が被告準備書面(1)を裁判所に提出した。併せて乙号証と証拠説明書も。同時に110名の代理人弁護士の委任状も提出した。当日の法廷で私が行う意見陳述の要旨もである。すべて順調に推移している。あらためて、私は「恵まれた被告」であり「幸せな被告」であると思う。

被告準備書面の主たる主張は、「本件提訴は訴権の濫用に当たるものとして、提訴自体が違法。だから直ちに却下して澤藤を被告の座から解放せよ」というもの。

「訴権の濫用」とは、おそらく聞き慣れない言葉だと思う。本日提出準備書面の次の一節をお読みいただきたい。

「裁判制度を利用することは憲法上の権利である(憲法32条)。しかし、…民事訴訟制度は、事実関係に法を適用して社会に惹起する法律的紛争を解決するという理性的な制度として運営されるべきものであるから、当該訴訟提起が、制度の理念に大きく逸脱する場合は、権利(訴権)の濫用として、提訴行為自体が排斥される場合があることも当然である。このことを端的に示した東京高裁2001年1月31日判決は、『当該訴えが、もっぱら相手方当事者を被告の立場に置き、審理に対応することを余儀なくさせることにより、訴訟上又は訴訟外において相手方当事者を困惑させることを目的とし、あるいは訴訟が係属、審理されていること自体を社会的に誇示することにより、相手方当事者に対して有形・無形の不利益・負担若しくは打撃を与えることを目的として提起されたものであり、右訴訟を維持することが前記民事訴訟制度の趣旨・目的に照らして著しく相当性を欠き、信義に反すると認められた場合には、当該訴えの提起は、訴権を濫用する不適法なものとして、却下を免れない』と述べている(その原審である東京地判も同様の判断を示している)と解するのが相当である」

しかし、なぜ本件『DHCスラップ訴訟』が、「訴訟を維持することが前記民事訴訟制度の趣旨・目的に照らして著しく相当性を欠き、信義に反する」場合に当たると、考えられるのか。それは、準備書面を直接お読みいただくのが適切である。

弁護団の議を経てということになるが、公開の法廷で陳述済みの訴訟資料は、ホームページで公開したいと思う。DHC側が、いったいどんな主張をしているのか、また被告弁護団がどう応訴しているのか、じっくりと時間をかけてお読みいただきたいと思う。

私は常々考えてきた。法廷を公開するという意味についてである。もちろん、誰でも法廷傍聴は可能で、一応そのような運用はなされている。しかし、傍聴希望者が法廷のキャパを超えれば入場できなくなる。標準的な法廷の傍聴席はあまりに数が少ない。傍聴希望者多数と予想される場合には抽籤などしているが、傍聴希望者にキャパを超える理由で傍聴を断ることに本当に正当性があるのだろうか。

東京の事件を沖縄県民が傍聴しようと思っても、事実上無理な話だ。裁判は、アクセス可能なエリアの人々にだけ公開されているが、その以遠の人には事実上閉ざされている。さらに、である。民事事件の法廷を傍聴された方はお分かりだろうが、傍聴していても目の前で何が進行しているのかさっぱり分からない。法廷は、事前に作成された書面をここで陳述したことにする儀式を行うだけの場なのだ。傍聴人に、どのような書面を提出しているのか説明したり、書面を読ませてくれる親切は期待できない。

もちろん、特定の事件に関心を持った場合には、第3者の記録閲覧は可能(申立書に手数料として150円の印紙貼付が必要)だが、事件番号や当事者などの特定の必要はある。これも、謄写申請となれば利害関係人に限られ、その疎明の手続も面倒だ。

プライバシー侵害の問題は別として、裁判「公開」はインターネットによって可能となるのではないか。『DHCスラップ訴訟』は、インターネット公開するのに、最適のケースというべきであろう。原告両名は、自ら公開の法廷での訴訟を望んだ者である。経済的・社会的な強者であるばかりでなく、公党の党首に巨額の政治資金を拠出したことを自ら暴露する手記を公表した者としても、プライバシーへの配慮は必要ない。

公開の法廷で何が行われたのか、訴状・答弁書・原告準備書面・被告準備書面、そして提出された双方の証拠まで、じっくりとお読みいただきたいと思う。本来は、国民誰もが、公開の法廷でその内容を知ることができたはずの資料である。公開することも、アクセスにも遠慮は要らない。但し、訴訟上の主張や証拠に第3者が出てきた場合のプライバシーへの配慮は必要となる。その配慮はしつつも、公開を実現したい。

そうして、この事件を「劇場」にもしたいし、「教室」にもしたい。この訴訟はシナリオのないドラマでもあり、民主主義を学ぶ格好の素材でもあるのだから。
(2014年8月13日)
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また、訴訟費用や運動費用に充当するための「DHCスラップ訴訟を許さぬ会」の下記銀行口座を開設しています。ご支援のお気持ちをカンパで表していただけたら、有り難いと存じます。
    東京東信用金庫 四谷支店
    普通預金 3546719
    名義   許さぬ会 代表者佐藤むつみ
 (カタカナ表記は、「ユルサヌカイダイヒョウシャサトウムツミ」)

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Published in 水曜日, 8月 13th, 2014, at 23:43, and filed under DHCスラップ訴訟.

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