東京都議選の結果から参院選を展望する
東京都議選は4年に一度のビッグイベント。そのたびごとに、「総選挙の前哨戦」「国政を占う首都の選挙」として注目されてきた。今回は、「参院選の前哨戦」「改憲の行方を占う選挙」との位置づけである。
16年前、1997年の東京都議選をご記憶だろうか。石原慎太郎が知事に初当選したのが99年4月だから、その2年前。青島知事の時代。その97年都議選から、01年、05年、09年、そして今回の13年都議選まで、5回の都議選における改憲・護憲勢力の消長を俯瞰してみたい。そのうえで、目前に迫った参院選の展望に一言する。
その16年前の都議選の結果は、以下のとおり。
第1党 自民党 116万票(得票率31%) 議席54
第2党 共産党 80万票(得票率21%) 議席26
第3党 公明党 71万票(得票率19%) 議席24
第4党 民主党 39万票(得票率10%) 議席12
ネット 10万票(得票率 3%) 議席 2
社民党 7万票(得票率 2%) 議席 1
共産が、第2党として存在感を示していた。その得票数は、第1党の自民のほぼ70%である。
改憲勢力の主柱としての自民党のその後の消長を見てみよう。
116万票(得票率31%)⇒172万票(得票率36%)⇒134万票(得票率31%)⇒146万票(得票率26%)⇒163万票(得票率36%)
最近5回の都議選での得票数は、116万?172万票。得票率は26?36%で推移している。
自民党の強固な同盟者である公明党については以下のとおりである。
71万票(得票率19%)⇒72万票(得票率15%)⇒78万票(得票率18%) ⇒74万票(得票率13%)⇒64万票(得票率14%)
自公の得票率合計の推移は、
50%⇒51%⇒49%⇒39%⇒50%と安定している。民主躍進の09年選挙を除けば、49?51%であり、今回選挙はその例に戻った。
改憲阻止勢力の主柱である共産党の獲得票の推移は以下のとおり。
80万票(得票率21%)⇒75万票(得票率16%)⇒68万票(得票率16%)⇒71万票(得票率13%)⇒62万票(得票率14%)
今回の都議選で共産党は議席を倍増させて「大きな勝利」を獲得した。しかし、往年の得票の回復には至ってない。今回の「勝利」は、維新や生活・みどり・みんななどの分立や民主の候補者乱立の失敗に助けられてのものという側面を否めない。
しかし、今回の選挙における「勝利」によって、共産党は反自民、改憲勢力批判の票の受け皿としての地位を獲得した。改憲反対票を取り込む唯一の政党としての地位を確立したと言い切ってよい。このことの意義は極めて大きい。
中間政党の第1党である民主党の得票推移は以下のとおりである。
39万票(得票率10%)⇒64万票(得票率14%)⇒107万票(得票率25%)⇒230万票(得票率41%)⇒69万票(得票率15%)
一見して明らかなとおり、獲得票の振幅が極端である。風の吹き次第で、消長激しい政党の典型といえよう。
今回得票数は前回票数のちょうど30%である。09年都議選で民主党に投票した有権者の実に70%が、今回は棄権にまわったか、あるいは他党に投票したのである。ちなみに、昨年12月総選挙における民主党の比例代表区獲得票数は963万票、09年8月の総選挙の票数2984万票に比較して32%であった。有権者の民主党離れは、6か月を経てさらに進行している。おそらくは、参院選では20%台に落ち込むこととなるだろう。
その余の中間政党は存在感を失っている。社民も生活もみどりも、その他諸々の党派もである。唯一ネットだけに存在感がある。5回の選挙の消長は以下のとおり。
10万票(得票率3%)⇒ 14万票(得票率3%)⇒18万票(得票率4%)⇒11万票(得票率2%)⇒9万票(得票率2%)
維新は、今回初めての都議選に挑戦して失敗した。鞍替え組の現有3議席すら守ることのできない惨敗・完敗・大敗。新聞の見出しにもそう書かれ、自らも認めている。醜悪な2人の指導者が、どう取り繕うとも、党内亀裂を覆い隠すことはできない。雨降って地固まることもあろうが、都議選の結果は洪水並みの大雨。大雨は地盤も土台も押し流してしまう。この政党も、勢いや「風」頼みである。候補者も支持者も理念ではなく、勢いや「風」で集まってきた連中。風向きが変わった今、雲散霧消して跡形もなくなる運命が見えてきた。参院選が厳しいというレベルではなく、早晩消滅するということだ。「もう終わったね…、この党」という以外にない。
維新に比して「みんな」は手堅い。自滅・自壊という可能性が小さい。極端な新自由主義政党であり、改憲志向政党として徹底して具体的に政策の批判をしなければならない。
さて、目前の参議院議員選挙である。7月4日(木)公示で、7月21日(日)が投票日。今度は前哨戦ではなく、正規戦である。日本国憲法の命運ががかかっているという意味で、かつてない重い選挙でもある。前哨戦で見たとおり、自公の保守勢力は侮りがたい。中間政党は見る影もない。どうしても主力である共産党に期待するほかはない。票の集中を他党支持の有権者にも呼び掛けたい。
戦後民主々義を懸けての選挙戦といっても過言ではない。憲法や平和・人権・民主々義を大切に思う人々に、共産党への大きな支援を訴えたい。
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『政治家「大串博志」の空っぽブログ』
政治家「大串博志」とは、衆議院議員佐賀2区選出の民主党議員。野田内閣の内閣府大臣政務官だった。その大串が、本日の毎日新聞一面トップに登場した。「プルサーマル米に約束ー昨秋 民主政権 国民に説明せぬまま」という見出。記事の内容は、「昨年9月野田佳彦首相の代理として訪米した大串博志内閣政務官(当時)が米エネルギー省のポネマン副長官に『プルサーマル発電』の再開をひそかに約束していた」というもの。
当時、「使用済み燃料の再処理工場」、「高速増殖炉もんじゅ」はトラブル続きで、稼働のメドなどまったくたっていなかった。それは現在も同じ状態でかわりはない。だから使用済み燃料の再処理は、イギリスやフランスにずつと依頼している。再処理で出来上がったMOX燃料(燃えかすからプルトニウムを取り出して含有量を増やして作る)は、もとのウラン燃料の4倍と高価だが、もともとは高速増殖炉「もんじゅ」の燃料として発電に使う予定だった。ところが、これが失敗続きで稼働の見通しはない。そこでやむなく普通の原発のウラン燃料に、3分の1ほどのMOX燃料を混ぜ込んで、おそるおそる燃やす。この過程を「プルサーマル」という。
大串政務官は、アメリカから「増え続ける核爆弾の原料のプルトニウムをどうするつもりか」とせめられて、「プルサーマルで使いますからご安心を」と約束してきたというわけだ。原発をやめさせたくないアメリカ原発産業の強い要請もあったのだろうし、原発再稼動をやりたくて仕方がない野田政権のホンネもあったろう。エライことを約束してきたものだ。しかも、まったく秘密裡に。
その日(2012年9月14日)の「大串ひろしブログ」は、政府がエネルギー・環境会議で「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう」決定したことを紹介し、「今回の出張で米国の関係者に対しては、これまでの日本の議論の経過などについて意見交換を行い、今後も十分意見交換を行っていこうということになっています」と述べている。
次の日のブログは「世界を股にかける、というとカッコよくきこえますが、トンボがえりの海外出張は、役所勤務時代もよくやりましたし、慣れっこです」とごきげんだ。プルサーマル密約など窺うべくもない。これが「空っぽブログ」。
本日の毎日新聞では、大串氏は取材に対して「誰に面会したのかは外交上言えない。(プルサーマルに関しては)覚えていない」と答えたと伝えている。
大串氏が密約してきたアメリカとの路線を渡りに舟として、安倍政権はプルサーマル再開をめざす方針だ。民主党と大串氏は、大はしゃぎでアメリカに出かけていって、「覚えていない」密約を結んできた責任をどうとるつもりなのか。
プルサーマル発電のあとには、「使用済みMOX燃料」を処理するための「第2再処理工場」の建設が必要になる。これが、格段に危険なものといわれている。大串氏は自分の選挙区の佐賀県に、その危険な施設をつくる覚悟があるのか、無責任な政治家に腹が立つ。
(2013年6月25日)