澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

第49回司法制度研究集会 ― 「国策に加担する司法を問う」

本日(11月17日)は、日本民主法律家協会が主催する第49回司法制度研究集会。テーマは、「国策に加担する司法を問う」である。

独立した司法部存在の意義は、何よりも立法部・行政部に対する批判の権限にある。立法部・行政部の活動が憲法の定めを逸脱し国民の人権を侵害するに至ったときには遠慮なくこれを指摘し、批判して国民の人権を救済しなければならない。たとえ、国策の遂行に対してでも、司法が違憲・違法の指摘を躊躇してはならない。当然のことだ。

それが、「国策に絡めとられる司法」「国策に加担する司法」とは、いったいどうしたことだ。日本の司法は、そう指摘されるまでに落ちぶれたのか。

われわれは、違憲審査権行使をためらう裁判所の司法消極主義を長く批判し続けてきた。「逃げるな最高裁」「違憲判断をためらうな」「憲法判断を回避するな」と言って来たのだ。

ところが、最近の判決では、司法部が積極的に政権の政策実現に加担する姿勢を示し始めたのではないだろうか。つまりは、われわれが求めてきた「人権擁護の司法積極主義」ではなく、「国策加担の司法積極主義」の芽が見えてきているのではないかという問題意識である。言わば、「人権侵害に目をつぶり国策遂行に加担する司法」の実態があるのではないか。これは社会の根幹を揺るがす重大な事態である。

冒頭、右崎正博・日民協理事長の開会の挨拶が、問題意識を明瞭に述べている。

これまでの長期保守政権下における裁判官人事を通じて、行政に追随する司法という体質が形成された。その結果として、国策を批判しない司法消極主義が問題とされてきた。しかし、昨今の幾つかの重要判決は、むしろ政権の国策に積極的に加担する司法の姿を示しているのではないか。

国策は民主主義原理によって支えられているが、民主主義原理の限界を画するものが立憲主義の原理、すなわち人権という価値の優越である。日本国憲法は、民主主義原理と立憲主義とのバランスの上に成立している。そのような憲法のもとで、はたして現実の司法は日本国憲法の理念を実現しえているのか。

この問題意識を受けての基調報告が、岡田正則氏(早稲田大学・行政法)。「国策と裁判所―『行政訴訟の機能不全』の歴史的背景と今後の課題」と題する講演。そして、国策に加担した訴訟の典型例として、沖縄・辺野古訴訟と原発差し止め請求訴訟の2分野からの問題提起報告。「国策にお墨付きを与える司法─辺野古埋立承認取消訴訟を闘って」と題して沖縄弁護士会の加藤裕氏と、「大飯原発差止訴訟から考える司法の役割と裁判官の責任」と題する樋口英明氏(元裁判官)の各報告。その詳細は、「法と民主主義・12月号」(12月下旬発行)をお読みいただきたい。いずれの報告も、有益で充実したものだった。参加者の満足度は高かったが、同時に現実を突きつけられて暗澹たる気持にもならざるを得ない。

たいへん興味深かったのは、辺野古弁護団の加藤さんと、大飯原発差止認容の判決を言い渡した樋口さんの語り口が対照的だったこと。淀みなく明晰で理詰めの語り口の加藤さんと、人柄が滲み出た穏やかな話しぶりの樋口さん。鋭い切れ味の加藤さんと、抗いようのない重い説得力の樋口さん。加藤さんは沖縄の民意を蹂躙する政権の国策に加担した判決を糺弾する。樋口さんは国策加担という言葉を使わないが、誰にもそのことが分かる。お二人の話しぶりの対比を聴くだけても、今日の集会に参加の甲斐はあった。

私は樋口さんには初めてお目にかかった。この人なら、当事者の言い分に耳を傾けてくれるだろうという、裁判官にとっての最も必要な雰囲気を持っている。その樋口報告は、私が理解した限りで次のようなものだった。

3・11福島第1原発事故後の原発差し止め訴訟では、認容判決は私が関わったものを含めて2件しかない。棄却判決は十指に余る。「どうして原発差し止めを」と聞かれるが、原発は危険で恐い物だという思いがまずある。差し止めを認めなかった裁判官に、「どうして恐くないのか」聞いてみたい。

また、自分の頭で考えれば当然にこの危険な物の差し止めの結論となるはず。自分の頭で考えず、先例に当てはめようという考え方だから差し止め請求棄却の結論になるのではないか。

危険とは(1)危険が顕在化したときの被害の大きさ
    (2)被害が生じる確率
の2面で測られ、通常この2面は反比例する。一方が大きければ他方が小さい。ところが、原発は両方とも大きい。

原発事故の桁外れの被害の大きさは福島第1原発事故で実証されている。普通、事故の機械は運転を止めれば被害の拡大を阻止できるが、原発はそうはいかない。「止める⇒冷やす⇒閉じ込める」が不可欠で、福島の6基の事故ではそれができなかった。だから、福島第1原発事故の被害があの程度で済んだのは、いくつもの好運の偶然が重なった結果に過ぎない。その僥倖の一つでも欠けていれば、首都東京も避難区域に入っていたはずなのだ。

また、原発事故が起こり被害が生じる確率はきわめて高い。そもそも、基準地震動を何ガルに設定するか極めて根拠が薄い。地震学は未成熟な学問分野というべきで地震予測の成功例はない。気象学に比較してデータの集積もごく僅少に過ぎない。しかも、原発の規準地震動は、通常の木造家屋よりも遙かに低い。その設計において耐震性は犠牲にされている。それが、世界の地震の巣といわれる危うい日本の地層の上にある。

差し止め認容判決の障害は行政裁量といわれるが、既に日光太郎杉事件判決(東京高判1973 年)で十分な批判がなされている。自分の頭でものを考えれば、人格権に基づく原発差し止めも同様の結論になるはず。

会場からは、「日の丸・君が代」強制問題原告からの訴えもあった。これも国策だ。しかも軍隊の匂いがする国策の強制。自分の頭でものを考えず、先例追随のコピペ判決裁判官が、国策加担判決を積み重ねている。「先例追随主義」と「国策加担」とは紙一重というべきものなのだろう。

あらためて思う。事態は深刻である。
(2018年11月17日)

米軍基地を本土に「引き取る運動」について

親しい小村滋君からの【アジぶら通信 第48号】(2018年11月5日付)が届いた。相変わらず沖縄の記事が満載。彼の沖縄に対する思いが溢れている。
そのトップの記事は、「『辺野古』は普天間代替でない!? 」という見出。

こんな書き出しだ。「例えば11月2日の朝日新聞1面の辺野古新基地問題の記事は『米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画で……』で始まっていた。3面や社会面に関連の記事があるときも、書き出しはこの『ハンコ』が押されている。毎日新聞も似た表現の『ハンコ』だ。この表現が『普天間代替施設は辺野古だ』と、多くの人たちに思わせる原因の一つだろう。しかし沖縄に住む、基地問題に関心のある人で、『普天間代替』と思っている人は少ない。」

小村君らしい。古巣の朝日の記事への批判だ。その紋切り型の「ハンコ」的言い回しの不正確を衝いている。枕詞のごとくに、「辺野古」を語るのに、「普天間飛行場の辺野古への移設問題」と言ってはいけない。それが、本土の人々の考え方を誤導している、と言っている。

指摘のとおり、まずもって普天間飛行場には海がない。対して「辺野古」は海の基地でもある。多様な自然を残し工事直前までジュゴンが泳いだ海。この海を潰しての基地の建設。これが「代替」であろうはずがない。

反対派の稲嶺進・前名護市長時代に作ったパンフは普天間になかった「辺野古」の3機能を挙げる。
① 全長270㍍の護岸を持ち、ヘリを運ぶ250㍍余の大型船が接岸できる
② 約1万6000㎡の弾薬搭載エリア。辺野古には元々弾薬庫があるが、新しく建て直すという
③ 航空機用の燃料を運ぶ109㍍のタンカーを横付けできる桟橋
しかも沖縄戦後の米軍占領時代に銃剣とブルドーザーで奪い取った基地が最新鋭設備に更新されて、治外法権に近い地位協定で。日本政府が1兆円余を投じて、あと100年間は使えるという。

以上は1面の要約だが、異論のないところ。しかし、2面以後は論争的テーマを扱っている。
2面の見出しは、「沖縄の基地 全国議論なるか」「小金井市議会で陳情を採択 意見書では共産党が???」となっている。

「東京都小金井市議会で9月25日『沖縄の米軍普天間飛行場移設の候補地として本土の全自治体を対象に公正で民主的な手続きで決める』とする陳情が賛成多数で採択された。この陳情は、今年5月に発刊された『沖縄発 新しい提案 辺野古新基地を止める民主主義の実践』に基いて沖縄出身の市民が提出したものだ。米軍基地による過重な負担を沖縄に押し付けて無関心でいる本土の日本人の『沖縄差別』を乗り越える画期的な試みと思われた。しかし10月5日の同市議会でひっくり返った。陳情に賛成した共産党が、意見書を採択する段階で『本土移転を選択肢とする部分に同意できない』と反対に転じ、採択が見送られた。背景には、革新陣営に根強い『全ての基地に反対』論がありそうだ。結果として、本土と沖縄の分断を図る安倍政権の策に乗せられることにならないか。」これが問題提起だ。

この陳情は、沖縄発の「新しい提案」と言われる考え方に基づいたもの。「新しい提案」は、引き取る運動」を提起している。次のステップで問題の解決を目指す、という。
①辺野古新基地建設工事を直ちに中止し、普天間基地を運用停止にする。
②普天間基地の代替施設について、沖縄以外の全国のすべての自治体を等しく候補地とする。
③その際、米軍基地が必要か否か、普天間基地の代替施設が国内に必要か否か当事者意識を持った国民的議論を行う。
④国民的議論において普天間基地の代替施設が国内に必要だという結論になるのなら、民主主義および憲法の精神に則り、地域への一方的な押し付けとならないよう、公正で民主的な手続きにより決定する。

沖縄の現状を憂うる者にとって、「①辺野古新基地建設工事を直ちに中止し、普天間基地を運用停止にする。」ことに異論のあろうはずはない。問題は、次の「②普天間基地の代替施設について、沖縄以外の全国のすべての自治体を等しく候補地とする。」の賛否である。これは必ず分かれる。

たとえば原発を考えて見よう。福島の原発、柏崎刈羽の原発、東海第2の原発を、沖縄を含む全土で引き受けようという運動が成り立ち得るだろうか。私はあり得ないと思う。

一方、NIMBY(ニンビー)という言葉がある。“Not In My Back Yard”の略語、それは必要だが「我が家の裏庭には御免だ」というエゴの姿勢を揶揄する際に用いられる。「保育所は必要だ。しかし、我が家の隣に建てられちゃあ、やかましくてかなわん。」「児童相談所は大切な施設だ。だが、そんなものを町内に建てられたら、地価が下がってしまう。」という類のエゴ。ゴミ処理場が典型だろう。どこかに絶対に必要だ。その必要なものなら、すべての受益者の民主的な議論で、立地を決めなければならない。

米軍基地は、原発だろうか、それともゴミ処理場か。わたしは、原発同様のもので断じてゴミ処理場ではないと考えている。どこにもあってはならない、言わば絶対悪である。“Not In Any Yard”なのだ。

もちろん違う立場もあろう。安保必要論からの立場。「抑止力は有効だし必要だ」「中国や北朝鮮からの攻撃に備えた米軍基地は日本のどこかに必要だ」「沖縄だけに負担を押しつけるのではなく、全土で分担が必要だ」という立場。米軍基地必要論を前提に、その偏在を沖縄差別と突きつけられると、心優しい人々には断り切れなくもなるだろう。

おそらく小村君の考え方は、それとも違う。「『基地は、原発かゴミ処理場か』と、最初に切り分けをして本土引き受け賛成か反対かというのではなく、そのことも含めた議論誘発の提案として意味を認めてよいじゃないか。自分も含めて、本土の人間に、我がことと真剣に考えるきっかけを提供する提案だと思う。」ということなのだろう。だから、基地不要論者の小村君が、紙幅を割いてこの提案を紹介しているのだ。そう思う。

実践的な問題として私は考える。この陳情案は、もっと練り上げる必要があったのではないか。私の地元、文京区では、もっとシンプルな請願案で採択に至っている。
http://article9.jp/wordpress/?p=11263

「新しい提案」や「引き取る運動」を前面に出したのではうまくいかない。それこそ、「結果として、本土と沖縄の分断を図る安倍政権の策に乗せられる」ことになりかねない。アジぶら1面のとおり、「普天間移設先」問題としてではなく、「辺野古『新基地』建設反対」を前面に出した陳情にすれば、事情はずいぶん違ったものになったのではないだろうか。
(2018年11月7日)

沖縄県知事選に続く那覇市長選の結果は、安倍政権の凋落と保守友党との疎遠を物語っている

昨日(10月21日)の那覇市長選で、「オール沖縄」の城間幹子候補が再選を果たした。圧勝である。政権与党(+反共野党)候補のみごとなまでの惨敗。
  ▽城間幹子(無所属・現)当選 7万9677票
  ▽翁長政俊(無所属・新)落選 4万2446票
投票率が低かった(48.19%)のは、開票結果が分かりきっていたからだろう。

当選を報じる沖縄タイムスにこんな見出しが。

 「『えっ』早すぎる当確に絶句」「集大成の選挙、訴え届かず」「翁長政俊さん『申し訳ない』」

「『こうも簡単に見捨てるのか』 政府与党、劣勢で配慮一転 那覇市長選敗北」

一方、琉球新報の見出しは、

オール沖縄、衆院補選や夏の参院選に向け弾み」「自民、立て直し急務」というもの。

「オール沖縄」と「自民」との対立構造を描いて、前者に「弾み」がつき、後者は「立て直し急務」と明暗が分かれたことを強調している。下記のリードを、「誰もがもつ無難な感想」と読み飛ばしてはならない。今、明暗ところを分けている沖縄県政における与野党勢力の力関係が、来夏(19年)の参院選への展望となっていることを見るべきだし、これが全国の反安倍野党共闘を大きく励ますものとなつている。

 今年「選挙イヤー」の県内で、締めくくりとなる那覇市長選は、玉城デニー知事が支援する現職の城間幹子氏が再選を果たした。県政与党などで構成する「オール沖縄」勢にとって宜野湾市長選は敗北したものの、知事選、豊見城市長選に続く勝利で、来年4月に実施が見込まれる衆院沖縄3区の補欠選挙や夏の参院選に向け弾みが付いた。
 一方、自民は態勢の立て直しが急務で、4月に発足したばかりの現執行部の責任問題に波及しそうだ。

 琉球新報記事の中で、次の一文が目にとまった。

「那覇市長選は、9月の知事選と同様に『オール沖縄』勢と、安倍政権与党の自民・公明に維新が加わった『自公維』が対決する構図となった。現職の城間氏は、玉城デニー知事や翁長雄志前知事の次男で那覇市議の雄治氏が前面に出る戦術を展開したことで、無党派層を含め幅広い層で支持を広げた。」

おや? 那覇市長選で「オール沖縄」と対決したのは、「自公維」ではなく「自・公・維・希」だったはず。念のため、「希望の党」のホームページを閲覧してみたところ、「2018.09.25 お知らせ・沖縄県那覇市長選挙での推薦證授与について」という記事があり、「希望の党では、来る10月14日告示の沖縄県那覇市長選挙におきまして、翁長政俊氏の推薦證を9月23日に井上一徳政調会長が授与してまいりました。希望の党では、翁長政俊氏を全力で支援して参ります。」とある。

同党ホームページに推薦撤回の記事はないから、投票日当日まで希望の党としては、翁長政俊推薦勢力の一員と自認していたはず。だが、地元有力紙の記者には、無視されたということだ。

沖縄タイムスの記事も同様だった。

 「(翁長政俊候補陣営は)自民、公明、維新の3党態勢で臨んだが、『人海戦術が持ち味の創価学会員の姿が見えなかった』(県連関係者)という。翁長氏選対関係者は『勝てないと思ったら、みんな手を引く。これが現実だ』とため息をついた。」

 さて、臨時国会の開会(10月24日)直前の、沖縄県知事選に続く那覇市長選の結果は今後への影響が大きい。
産経も次のように述べている。

 那覇市長選の結果は単なる首長選の敗北にとどまらない。別の自民党選対幹部は「連敗で雰囲気は悪い。来年は4月に統一地方選、衆院沖縄3区補選もある。このままじゃ戦えない」と漏らす。

 影響は来年を待つまでもない。安倍改憲提案と、辺野古基地建設工事再開の阻止。大きな課題が眼前にある。安倍自民単独の暴走では事は成らない。どうしても補完勢力が必要なのだ。いま、公明・創価学会に自民の補完勢力であり続けることへのためらいが見える。内部批判による不協和音が大きいと報道されている。そして、「希望の党」という反共右翼政党の力量は無視しうるところまで落ちた。森友事件以来、維新の勢いも失せている。

 国民の目に見えてきた安倍政権凋落の傾向が、自民党のみならず「安倍友党」の活動力の低下として顕在化しつつある。それこそが、沖縄県知事選と那覇市長選の結果が教えてくれたものではないか。
(2018年10月22日)

「普天間基地県外移転『容認』」の小金井市議会陳情について

琉球新報が、「『共産は主義主張優先』 陳情提出書、批判と落胆 小金井市議会「普天間」意見書見送り」という記事を掲載している。

批判されているのは、小金井市議会共産党市議団(4名)の姿勢。当初は「普天間意見書」の陳情要請に賛成だったのに、土壇場で態度を変えたため、採択は見送りとなった。これに「陳情提出者らからは、批判や落胆の声が上がった」というもの。共産党の「硬直した主義主張優先の基本姿勢」を露呈したものという琉球新報の批判ともなっている。

「辺野古新基地建設反対」の陳情なら共産党が躊躇したり逡巡するはずはない。「普天間基地即時返還」の陳情でも同じことだ。問題がやや複雑なのは、当該の陳情が、日米安保の存在を当然の前提とし、米軍基地は全国のどこかに必要という観点から、「普天間の移設先として本土のどこかを検討しよう」と理解されるものであるところにある。

「危険な普天間基地を撤去せよ」「辺野古新基地建設反対」では一致できる野党陣営に、安保を認めるどうか、米軍基地の必要性を認めるかどうか、そして本土を移転先として検討することを認めるのかどうか。という、言わば踏み絵を迫る内容となっている。

ちなみに、本年(2018年)6月25日文京区議会本会議で採択された「『辺野古新基地』建設中止請願」の内容を確認しておきたい。

    請願事項 沖縄の「辺野古新基地」建設の中止を国に求めること。
    請願理由 沖縄にある米軍基地の大部分は、米軍占領下で造られたものです。米軍基地の集中に伴い、婦女暴行などの刑事犯罪が頻発し、加えて、ヘリコプターの墜落事故なども続発しており、沖縄県民の生活・安全が脅かされています。
  このような状況下で、沖縄県民は辺野古の新基地建設に反対しています。
    理由は、
    ①沖縄にとって命の源ともいえる海を埋め立てることは認められない。
    ②米軍基地は日本の防衛のためのものであり、その負担は全国で平等に負うべきである。沖縄だけへの押し付けは差別である。
    ③辺野古新基地は普天間基地の代替だと政府は言っているが、強襲揚陸船の係船護岸や弾薬庫などを備えた新基地であって代替基地ではない。
    などです。
    わたしたちは、この沖縄県民の辺野古新基地建設反対の理由に賛同いたします。また、沖縄県民の反対を押し切っての新基地建設は、地方自治・民主主義の精神にも反すると考えます。これらの理由から、辺野古新基地建設は中止されるべきだと考えます。
    わたしたちのこのような請願の理由にご賛同いただき、下記請願を採択され、政府並びに関係省庁に対して要望書を提出していただけるよう要請いたします。

小金井陳情は、文京請願とは基本的にその構造を異にする。沖縄タイムスの要約が分かり易い。

 陳情は「8割を超える国民が日米安全保障条約を支持しておきながら、沖縄にのみその負担を強いるのは『差別』ではないか」と提起。普天間問題を解決する手順を描く。
 (1)辺野古新基地建設を中止し、普天間飛行場の運用を停止する
 (2)本土の全自治体を普天間代替施設の候補地にする
 (3)米軍基地や代替施設の必要性を国民的に議論する
 (4)必要という結論なら、公正で民主的な手続きで決定
-の4段階を示す。

ちなみに、琉球新報の陳情内容紹介は以下のとおり。

米軍普天間飛行場の県外・国外移転を国民全体で議論し、公正で民主的な手続きを経て決定するよう求める陳情。陳情は、名護市辺野古の新基地建設を直ちに中止した上で、代替施設が必要なら全国の自治体を等しく候補地にして「当事者意識を持った国民的議論を行うこと」を求めている。

この陳情が前面に押し出しているものは、「沖縄差別」であって、「基地撤去」ではない。沖縄への基地集中を、「平等に」本土も負担せよという要求である。少なくともその検討を迫るもの。本土の全自治体を普天間代替施設設置の候補地として議論を始めよ、それを拒否するのは沖縄への差別であり、本土のエゴではないかというのだ。気持ちはよく分かるが、簡単には賛成できない。

ゴミ処理場の建設ならどこかに必要だ。必要だが近隣には歓迎されない施設については、どこにどう建設することが最も公平であるかを真剣に議論しなければならない。しかし、原発や基地建設問題を同列に考えよということには、大きな違和感を禁じえない。議論すべきは平等負担ではなく、その全面撤去への道筋ではないか。少なくとも、全面撤去につながる議論でなくてはならない。

9月20日の小金井市議会総務企画委員会で賛成多数となった陳情は、9月25日の本会議に諮られた。定数24人のうち議長を除く採決の結果、旧民進系や共産などの賛成13、自民などの反対6、公明の退席4で賛成多数となった。

この採決を受けて市議会事務局は陳情内容に基づく意見書案を成文化し、10月5日の本会議で採択予定となった。この時点では、「普天間代替、全国を候補に」と、地元紙は歓迎の記事を書いた。ところが、共産党が態度を変えた。10月5日本会議での採択は見送られ、いま陳情案は宙に浮いたままだ。

琉球新報〈解説〉記事は、この事態を招いた共産党の姿勢を、「国民的議論に逆行」と厳しく批判している。

「米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設の中止を掲げ、国内全体で議論する必要性を訴えた陳情に伴う意見書提案を小金井市議会は見送った。いったんは陳情に賛成した共産党会派が賛意を翻す異例の事態となったからだ。陳情を採択した議会としての責任も問われる。沖縄の基地負担を自分の事として考える全国的な動きの先駆けとして注目されていただけに、賛成撤回はその流れに逆行していると言わざるを得ない。」

その言い分がまったく理のないものと言うつもりはない。併せて、琉球新報にこんな記事が掲載されている。

「小金井市議会に陳情を提出した米須清真さん(30)は議会の各会派を回って趣旨を説明したほか、委員会審査で陳述し、内容に理解を求めた。1人会派の議員も多く「国政の与野党に系列化されない政治的環境があったことも大きい」と話す。
 米須さんは5年前に小金井市に移り住んだ。基地問題の公正で民主的な解決に取り組む司法書士の安里長従さん(46)とSNSなどで意見を交わし、取り組みに「共鳴していた」という。5月に出版された安里さんらの書籍を読み「東京で暮らすウチナーンチュとして、住んでいる町でできることがある」と陳情の提出を決めた。当初11月に予定されていた知事選に向け政策論争を促す狙いもあった。各会派に説明する中で出会った、ある中道議員とのやりとりが印象に残っている。居酒屋に流れて議論するうち、日米安保を容認するその議員は「沖縄への偏在が差別」と説明する米須さんに次第に同調し、本会議採決でも賛成に回った。」

日米安保を容認する立場からは、「沖縄差別」解消のために、基地の偏在是正の選択は十分にあり得よう。安保容認が国民の総意であれば、賛成撤回は「国民的議論に逆行」とも言えるだろう。しかし、日米安保こそは日本国憲法体系の最大の敵対物であり、平和への脅威の根源であるとする立場からは、「沖縄差別」解消のための普天間基地本土移設を検討という発想はあり得ない。それは、世論調査による安保容認派のパーセンテージで左右される問題ではない。

共闘は、意見の違いを内包して成立する。大同の中に必ず小異がある。しかし、県外移転『容認』ないしは『検討』を、「小異」として陳情採択に賛成するのは無原則というほかはない。せめて共産党くらいは、原理原則を大切に貫いてもらいたい。安保反対派・安保違憲論者にとっては、この件は無理な踏み絵というほかはないのだから。

また、仮に普天間の移転先を県外としたところで、移転先での反対運動が必ず生ずる。「普天間即時返還」「辺野古反対」を追求することこそが筋でもあり、運動論としても現実的な目標なのではないだろうか。
(2018年10月8日)

「玉城当選」なんとも目出度い。

これは快挙だ。なんとも目出度い。暗雲晴れた心もち。「玉城当選」の報に、カチャーシーを踊りたくもなる。指笛が聞こえてくるようだ。前途は多難なれども、希望が見えてくる。

今日は会う人ごとに、「沖縄の選挙結果、よかったですね」「アベ三選の出鼻をくじきましたね」「臨時国会での改憲発議なんてあり得ないでしょ」と話がはずむ。この選挙結果の最大の功績は、平和や民主主義を願う人々を元気づけたことだ。市民と野党の共闘で、改憲勢力に勝つことができるという自信と勇気。沖縄県民に、御礼を言わねばならない。

各紙の朝刊一面の見出しも踊っている。とりわけ、毎日新聞が素敵なフレーズ。「沖縄県知事選 知事に辺野古反対派」「安倍政権に痛手 玉城氏初当選」というもの。「安倍政権に痛手」に、思わず笑みがこぼれる。

毎日のリードは以下のとおり。「翁長雄志知事の死去に伴う沖縄県知事選は30日投開票され、翁長氏の後継として米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への県内移設計画に反対する元自由党衆院議員の玉城デニー氏(58)が、移設を進める安倍政権が支援した前宜野湾市長の佐喜真淳氏(54)=自民、公明、維新、希望推薦=ら3氏を破り、初当選した。政府は移設を計画通り進める方針だが、玉城氏は『あらゆる権限を駆使して阻止する』としており、今後も政府と沖縄の対立が続く。玉城氏の得票は沖縄県知事選で過去最多得票となった。

開票結果は以下のとおりだった。
玉城デニー   396,632票 得票率55.1%
佐喜真 淳   316,458票 得票率43.9%
その差、実数で8万票。得票率で11%。

はて。この得票率55%と44%の対比。最近どこかで見たような。
9月20日の自民党総裁選で、党員・党友による地方票での安倍晋三対石破茂の得票が、55.4%と44.6%。ちょうど11%の差。この差は小さくない。アベ一強を支えるのは、自民党内の議員集団を締めつけての8割の支持。しかし、党員・党友のレベルではその支持は、55%に過ぎず、国民レベルでは明らかに半数を割ってずっと低い。アベさまご一統は、公明・維新・希望の3党を加えた総力戦で、44%弱しかとれなかったのだ。

県民の投票行動の詳細な分析は後回しにして、改憲阻止運動に関心をもつ立場からの感想を述べておきたい。佐喜真の得票44%と、玉城の得票55%とは、憲法改正国民投票における改正是と否の目安になるのではないか。今回の選挙の最大の争点は新基地建設容認か反対か。これは、憲法の平和主義についての賛否と重なる。辺野古新基地建設容認の自民・公明・維新・希望の4党が、アベを先頭とする改憲勢力の総体。対して、憲法の平和主義を擁護しようというのが、立憲・国民・共産・社民・自由・社大の改憲阻止勢力。アベ改憲への賛否の分布が、佐喜真の得票44%と玉城の得票55%に表れたとみて、大きくは間違っていまい。アベ改憲の発議などは軽々にできないことが、深く印象づけられた。自民の非アベ勢力、公明の良心層はアベとの心中を警戒しなければならなくなる。

週刊朝日オンラインが、こう伝えている。
安倍政権としては辺野古基地移転問題などを抱え、絶対に勝たなければならない選挙だった。自民党幹部がこう頭を抱える。「4年前に翁長氏に負けた瞬間から、4年後に勝つためにやってきた。告示前から、二階幹事長を筆頭、筆頭副幹事長の小泉進次郎氏も3回も沖縄入り。公明党も山口代表以下、幹部が続々と現地に入った。新潟県知事選挙で勝利したように、期日前投票で圧勝して貯金をつくり、当日は互角で勝つ戦術だった。だが、自民党、公明党の支援者でも辺野古など基地移転問題では反対を示す離反者が続出した。玉城氏の演説会に創価学会の三色旗を振る人まで出て、票が流れてしまった。とりわけ、これまで安倍首相に代わって厳しい姿勢を沖縄にとり続けていた菅官房長官が進次郎氏と一緒に入って演説したことが、失敗だった。辺野古のへの字も言わず、携帯電話の値下げの話などを延々と喋り、『帰れ』と怒号まで飛び交う始末だった」。

驕れるアベも久しからず、野分の前の灯の如し。
(2018年10月1日)

ヤマトを変えるのは沖縄から、明日の知事選からだ。― 「アジぶら通信が紹介する玉城デニーの人間像」

明日(9月30日)は、いよいよ沖縄知事選挙。嵐の中の選挙の様相だが、天候だけでなくこの選挙が象徴する政治状況も大きな嵐の中にある。「オール沖縄」側の勝利は、アベ政権に大きな打撃を与えて、日本の政治状況を変革する展望につながる。

「オール沖縄」と「市民と野党の共闘」は、誰と、あるいは何と闘っているのか。もちろん、真に闘う相手は佐喜真候補なんぞではない。沖縄の自・公勢力でもない。明らかに、その背後にある政権との闘いであり、アベ政権を支えてきた日本会議以下の右翼陣営との闘いにほかならない。そして、さらにその背後にある好戦国アメリカの軍事戦略との闘いでもある。

保守中道と革新を糾合した「オール沖縄」と「市民と野党の共闘」とは、民主主義や平和を希求する諸潮流の統一戦線にほかならない。その幅の広い「オール沖縄」が候補として推す人物の人間像を確認しておきたい。

旧友小村滋君の【アジぶら通信 第47号】(2018年9月29日発信)の転載である。小村君の目を通して見た、玉城デニー像。これは、実に分かり易い。

まずは、後書きに当たる「アジぶら後記(9月29日、小凡)」から。
デニーさんの演説を聴いて、ラジオで鍛えた話術の巧みさと共に、その内容にも 驚いた。分かりやすく胸を打つ。今、アメリカからVFP(平和を求める退役軍人たち)など沖縄応援の声をよく聞く。デニーさんが、知事としてアメリカへ行けば、ますます応援団は膨らむのではないか。最後の「直談判」は、まだ見ぬ父親に呼びかけているようにも私には聞こえた。

今号の標題は、「基地のない、豊かな沖縄、すでに」というもの。実は、「豊かな沖縄は、すでに」実現しつつある。「基地のない沖縄も、既に実現の道筋が見えている」と、デニー候補の演説から読み取れるというのだ。なるほど、そういうことか。

沖縄の故翁長雄志知事が「戦後沖縄の歴史を背負った政治家」と評して、後継候補に指名した玉城デニーさん(58)を紹介したいと、玉城選対本部「ひやみかちうまんちゅの会」呉屋守将会長)のホームページを見た。多くの選挙演説の動画の中から、9月24日行われた宜野湾総決起大会での「玉城演説」と同会制作のプロフィール「基地の町のロック少年が沖縄県知事選挙に立候補するまで」を参考に書いた。

9月20日の自民党総裁選で、安倍政権3年延長が決まった今、「ヤマトを変えるのは沖縄から」との思いを込めて。

戦後沖縄の歴史を背負い

玉城演説は家族の話から始まった。「私の母は伊江島生まれ、私は与那城勝連で生まれ育ちました。結婚して家内が沖縄市の出身なもので、子育てするには両親が側に居る方が良いだろうというので沖縄市に住み、もう35年になります。私は4人の子どもに恵まれました。一番上が33歳男、次が31歳女、26歳男、21歳女です。どうです上手でしょ、何が上手だか…(笑い)。それに孫が2人、孫は癒やされますねぇ…」

玉城さんは沖縄市議だった2005年、民主党から衆議院沖縄3区で立候補したが落選。09年再び挑戦して当選した。「普天間代替は最低でも県外」を掲げて鳩山政権が成立した時だった。辺野古問題から鳩山首相、小沢幹事長らが辞任離党。玉城さんは野田内閣の消費増税法案に反発して離党した。その後、12年未来の党、14年はオール沖縄候補、生活の党公認。17年は無所属など政党は変わったが、「辺野古新基地反対」は貫いた。

玉城さんは1959年生まれ。父親は基地に駐留のアメリカ人で、母親のお腹に居る時、命令が出て父は帰国。母は米国に渡る積もりでデニスと名前を付けた。しかし「ボクが2歳の頃、沖縄でシングルマザーとして育ててゆく決意をした。その時、父の手紙も写真も全て焼いた。物心ついてボクが何を聞いても『忘れた』。これがボクの家族ストーリー、原点です」。本名は康裕。

1ドル360円の時代。母は、ボクを仲の良い友だちの家庭に預けて基地で働いた。生みの母は「おっかあ」、育ての母は「アンマ-」と呼んだ。
10歳から母と2人暮らしに。コザ(現・沖縄市)の米兵相手のバー街が生活圏だから、ジュークボックスからベンチャーズやビートルズのロックが聞こえてくる。ロック少年に。高校ではバンドも結成した。「お前は顔が洋風だから英語で歌えるだろう」とボーカルだった。「沖縄生まれ沖縄育ち、生粋ウチナーンチュのボクに英語が喋れるはずないのに」

ラジオが育てた政治家
高校を出てから上智大学の社会福祉専門学校へ。昼は仕事しながら夜間の学校へ通った。沖縄に帰って福祉関係の事務職に就いたけど面白くなくて。ライブハウスのバンドに入った。そこで結婚相手に出会った。内装業やら、ラジオの手伝いやら、自分探ししているうちにラジオのパーソナリティやタレントに。元々のコミュ力を活かして12年間。すっかり沖縄では有名人になった。良い番組を作りたいとシンポジウムや講演会に参加し、勉強するうち政治にも興味を持った。

2001年12月、「(02年4月の)沖縄市長選に出ないか」と誘われた。知人に相談したら新聞に報じられ、ラジオ番組は全て降ろされた。「42歳の衝撃です」(笑い)。半年ほど落ち込んだ。一念発起、02年9月の沖縄市議選に立候補し、史上最高得票で当選した。政治家デニーのスタートだった。

豊かさ、全県民の共有に
玉城演説に戻ろう。「沖縄の実質経済成長率は全国1位なのです。人口増加率も地価上昇率も全国1位。県内総生産3300億円増、観光収入2606億円増、アジアへ直行便4.3倍、入域観光客数366万人増……これは皆さんにお配りしたチラシ『マキテーナイビランド』の裏の『誇りある豊かな沖縄』を翁長雄志から私・玉城デニーが引き継ぎ『新時代沖縄』を築く、に出ています」「沖縄の経済はこんなに成長した。こんなに豊かなんですよ。これは翁長知事が一括交付金とあらゆるメニューを組み合わせて創った4年間の成果が出ているんです」(拍手)。「沖縄の経済は確実に豊かになっている。しかし、それだけでは十分でないこの豊かさが県民ひとり独りに行き渡っているかどうか。残念ながら、全国では子ども6人に1人が貧困にあえぎ、沖縄では3人に1人という現実がある。翁長知事は、全国に先駆けてこの実態調査をした。そして県庁にプロジェクトチームを立ち上げて、30億円の基金を準備して取り組み始めました」「私は、女性がお腹に生命を宿した、その時から母子手帳を交付し、41市町村どこに居ても子育てができる体制を創っていく。私は今、そのための闘い、選挙戦をしています」(拍手)

私(小凡)はネットで見ていたので、このチラシを見ることができなかった。「ひやみかちうまんちゅの会」からチラシとその数字の出典を送ってもらった。翁長知事が兼ねて主張してきた「基地収入は県民所得の5%にすぎず、那覇新都心など返還後の経済効果は30倍以上」という実態をより詳しく示したチラシだった。基地を返還してもらった方が着実に経済成長できることを示しただけではない。安倍政権側の候補の主張「反基地ばかり言っているから経済も福祉も発展しない」に反論したものだ。

平和あっての豊かな経済
玉城演説は続く。「経済が豊かであるためには平和でなければならない。世界中でテロや紛争がおき、その地の住民は生きていくのが精一杯です。我々はそういう人たちも支援しなければなりません。幸い、沖縄はテロや紛争は免れています。この平和を維持するのが、子や孫への我々の責務です。
2012年に沖縄の海兵隊9000人はグァム、ハワイ、オーストラリア、米本国に移転させると発表されました。辺野古新基地に関係なく、です。2006年のSACO合意、普天間は辺野古に移すというパッケージ論はなくなったのです。それなのに政府は6年間もこのことを放置したままです。だったらアメリカに要求しましょう。(一段と声を張り上げ)普天間飛行場は即時閉鎖し、我々沖縄県民に返還しなさい。それが私たちの正義です(拍手)。普天間の返還は来年の2月が期限です。だったら返しなさい!それを言ってどこが悪い!(拍手と指笛)。辺野古新基地は絶対に造らせない、と言ったのも翁長知事です。沖縄県は、富川、謝花の両副知事が翁長知事の思いを受け止めて、8月31日に埋立て承認の「撤回」をして頂きました。もう辺野古に新基地はできないのです。平和は座していては、やって来ない。普天間に続く青空を、普天間の土地を取り戻しましょう。辺野古の新基地計画を止めましょう。私はこの選挙でこのことを主張し続けます。

「父の国で直談判」
大丈夫です、きっと実現します。どうしてデニーがそんなことを言えるの? 私の父はアメリカ人、私の母はウチナーンチュ。私はアメリカに行ったら、こう言います。「私の父はアメリカ人。その息子の私が民主主義の手続きを踏んで要求しているのに、民主主義の国アメリカは、息子の要求を拒むはずはありません」と。皆さん、こういうことが言えるのは、この玉城デニーだけですよ。(拍手と指笛の嵐)(9月28日小凡記)

明日の投開票の結果に期待したい。
(2018年9月29日)

沖縄知事選挙明後日に ― フェイク選挙との闘いだ

ひとつの地方選挙が、これほどにも注目されることは珍しい。その沖縄知事選挙の投開票が明後日、9月30日に迫ってきた。

この選挙の帰趨は、アベ政権の外交や安保政策の前途を占うことになる。改憲阻止運動の成否にも大きく影響する。「市民と野党の共闘」の試金石でもある。

この選挙最大の具体的な争点は、明らかに辺野古新基地建設の可否である。ところが、デニー陣営がこれに「反対」の立場を鮮明にしているのに対して、佐喜真陣営は「賛成」と言わない。争点ずらしなのだ。

現地の佐喜真陣営もこれを丸抱え支援している政権も、辺野古新基地建設に賛成することは県民感情を逆撫でして、選挙に不利なことをよく心得ている。それゆえの辺野古新基地建設賛成隠しであり、争点ずらしなのだ。

現地に支援に行った人の報告では、いま、辺野古はたいへんに静穏だという。政府に、大浦湾埋立工事を強行する動きはない。沖縄県がした「承認撤回処分」を不服とする審査請求手続への着手もない。これは、興味ある現象ではないか。アベ政権と言えども、世論を無視しての断固埋立強行はできないのだ。

選挙が終わるまでは争点をずらして爪を隠しておいて、佐喜真が勝てば、「辺野古基地建設容認の民意は確認された」と新基地建設を強行しようというのだ。いかにも、薄汚いアベ政治らしいやり口。これは、フェイク選挙といってよい。

 

もう一つのフェイク選挙の手口。
昨日(9月27日)の沖縄タイムス(デジタル)に、「沖縄県知事選で偽情報検証:フェイク『共産党出馬の翁長知事が訪米しても政府関係者の誰にも会えなかった』」という記事。ファクトチェックである。

沖縄タイムスが検証の対象とした問題のフェイク情報(偽ニュース)は、次のツイッター。「3561件のリツイート、5797件のいいね」がついている。

情けなくて涙が出てくる。こんな人が県知事候補ですか。
「私には米国人の血が流れてるから米国に物が言える」
…共産党出馬の翁長知事が訪米しても政府関係者の誰にも会えなかったし、沖縄の米軍基地の中にすら入れなかったのに、ハーフってだけで米国に堂々と意見できるとか、いい加減にしなさい
するめのよっちゃん#沖縄は日本だ(2018年9月14日)

無数にあるフェイク情報(偽ニュース)の中から、ファクトチェックの対象として適切なものを選択したと思う。記事の全文は以下のとおり。

 沖縄タイムスは法政大・藤代裕之研究室の協力の下、国際ファクトチェック・ネットワーク(IFCN)の基準にできる限り沿って、フェイクニュースをチェックした。告示日の13日から26日までに、フェイクニュースの疑いが高い60件が記者から集められた。
 IFCNの基準は、(1)特定の党派に偏らず公平に行う(2)情報源の詳細も公開する-など5項目。
候補者の政策は、有権者自身が実現可能性を判断するものであり、扱っていない。真偽不明な投稿は混乱を招く恐れがあるため見送った。
    
内容
ツイッター「情けなくて涙が出てくる。こんな人が県知事候補ですか。 「私には米国人の血が流れてるから米国に物が言える」…共産党出馬の翁長知事が訪米しても政府関係者の誰にも会えなかったし、沖縄の米軍基地の中にすら入れなかったのに、ハーフってだけで米国に堂々と意見できるとか、いい加減にしなさい!
    
本紙が虚偽と判断した理由
共産党県委「翁長前知事が党から出馬したことはない」。訪米に同行記者「政府関係者と会った」。県「知事は米軍基地の中に入れる」
    
玉城氏が遺志を継ぐ翁長雄志前知事について、共産党県委員会は「党から出馬した事実はない」と説明。2014年に翁長前知事が就任して以降の訪米を本紙記者が同行取材し、国務省や国防総省などの関係者との面談で沖縄の基地負担軽減を直訴した記事を掲載している。
県基地対策課によると、基地内への抗議や要請、司令官の交代式などのイベントは、副知事や知事公室長が対応し「基地内に入れないということは一切なかった」との見解を示した。

このツイッターの投稿者「するめのよっちゃん#沖縄は日本だ」なる者のプロフィルは、以下のとおり。沖縄の自民党員だという。

『つぶやくだけでも保守活動』 安倍総理応援の為、自民党党員に。選挙ボランティアもしており、選挙期間中はツイッター不在気味。 日本の為に頑張る人を応援♪ 山本幸三氏を財務大臣に!消費税増税反対! 日本を壊すマスコミが敵。 沖縄県民。膠原病療養中。 DM使ってません。 毎週水曜日6時50分~ツイキャスやってます。

この在沖縄ネトウヨがハッシュタグとして使う「沖縄は日本だ」がもの悲しい響きをもっている。そもそも沖縄の右翼というのがもの悲しい存在なのだ。よく知られているとおり、2013年1月沖縄県の38市町村長、41市町村議会議長らからなる代表団が、上京して政府に「オスプレイの配備撤回と普天間基地の県内移設断念を求める建白書(=建白書)」を提出した。このときの、沖縄世論を代表するデモ行進に、日の丸を手にした沿道の一団から「売国奴」「日本から出ていけ」などの声が浴びせられた。明らかに組織され動員された本土右翼の行動。右翼の目からは「沖縄は日本ではない」。だから「沖縄は本土のために沈黙せよ」というのだ。2013年1月といえば、アベ晋三が右派勢力の手によって政権に返り咲いた直後のこと。「沖縄は本土のために沈黙せよ」は、アベ政権のホンネでもあった。

当時那覇市長だった翁長雄志ら沖縄の良心的保守派は本土の沖縄差別に衝撃を受け、これが政治勢力としての「オール沖縄」結成に至り、2014年沖縄県知事選挙において辺野古移設反対派の翁長候補支援の枠組みとなったとされる。「オール沖縄」の産みの親は本土右翼の沖縄差別なのだ。換言すれば、アベ政権そのものの体質なのだ。「沖縄も日本ではないか」は、翁長陣営の叫び。今は、デニー陣営が承継している。沖縄のネトウヨが掠めとるべき言葉ではない。これも、フェイクだ。
(2018年9月28日)

投票用紙に特定の候補者名を記載した場面を撮影して報告を求める」行為には、公職選挙法第228条1項(投票干渉罪)に該当する疑いがある

9月20日付のリテラに、横田一記者が、インパクトのある記事を掲載している。「沖縄県知事選で佐喜真陣営が公共事業予算アップをエサに建設業者を選挙運動に動員! 投票した人リストまで提出させ…」と題するもの。今、沖縄で何が起こっているのか、具体的で迫力に満ちた記事。民主主義とは、選挙とは、そしてアベ政権の本性とは…。考え込まざるを得ない。個々の選挙運動員における選挙違反の問題以前に、知事選の基本構造それ自体が、政権による利益誘導となっているという指摘なのだ。
https://lite-ra.com/2018/09/post-4267_2.html

その冒頭の一部を引用させていただく。
「沖縄県知事選で佐喜真淳・前宜野湾市長を推薦する自公維が、札びらで県民の頬を叩くような卑劣な選挙を始めた。告示翌日(9月14日)の建設業界の総決起大会で、建設業界職域代表の佐藤信秋参院議員(自民党)や公明党の太田昭宏・前国交大臣や維新の下地幹郎政調会長ら国会議員が次々と挨拶。辺野古反対の翁長雄志知事時代に一括交付金や公共事業予算が約500億円も減ったことを問題視する一方、“「対立から対話」を掲げる佐喜真知事誕生なら、公共事業予算は増加に転じて建設業者の労務単価(人件費)もアップする”という“にんじん”をぶら下げて、辺野古反対を言わない新基地容認派の佐喜真候補への支援を業者に呼びかけたからだ。

「ーさきま淳氏とともに建設産業の発展をー」と題された建設産業政策推進総決起大会は、14日の平日、金曜日の14時から開始。勤務時間中のはずなのに、那覇市内のホテルの会場に駆けつけた建設業者は「約1200人」(主催者)だったという。

会場入口では「内部資料」と記載された文書が配布されていた。「期日前投票の協力願い!!」と「『さきま淳』入会申込について(お願い)」を銘打った要請文2枚と、氏名や居住地を表に書き込む形式の「期日前実績調査票(個人報告用)」「入会申込書」がセットになっていた。いずれも県建設業協会の政治団体である「沖縄県建設産業政策推進連盟」が送付先でFAX番号が明記され、「期日前実績調査表」には次のようなただし書きがあった。

「※予定調査ではありません。実際に行った後にご報告下さい」
「※従業員・ご家族・親戚・友人・知人の方々の期日前の状況について、確認をお願い致します」
「※個人情報についての取り扱いには十分にご注意下さい。当方も十分に注意を致します」
「※氏名、地域、実行日については、必ず記入頂けますようよろしくお願いします」

●佐喜真陣営のなりふり構わぬ選挙戦略!期日前選挙に行った人の名簿まで提出
人手不足が深刻な建設業界としては、勤務時間帯に総決起大会に駆けつけるだけでもかなり負担に違いないが、さらなる“宿題”として従業員・ご家族・親戚・友人・知人に期日前投票を依頼、実際に行った人の名簿提出も要請されていたのだ。

民間企業経営者なら、気が重くなる“政治的活動要請”に見えるが、壇上で挨拶した国会議員の面々は違った。「大米建設」創業者の下地米一・元平良市長が父で、同社代表取締役会長の下地米蔵・建設業協会会長が兄の下地幹郎衆院議員(沖縄1区で落選・比例九州ブロックで復活)は、平然とこう言ってのけた。

「この選挙は日本にとっても沖縄にとっても大切な選挙ですので、仕事をやめて選挙運動しましょう」

つまり、勤務時間中の選挙運動(無償労働提供)を要請していたということになる。民間企業の経営者が利益創出に関係ない無償労働(政治的活動)を社員に指示すれば、株主から背任で訴えられる恐れがある。そのため、「佐喜真知事誕生のための選挙運動が建設会社の利益になる」という前提で、総決起大会出席や期日前投票調査票提出や後援会入会要請など“タダ働き”をさせているということではないのか。「無償労働提供による佐喜真氏支援活動」の見返りに「建設業者の利益拡大」を約束する“買収選挙”ともいえる。…」

この下地幹郎の発言は聞き捨てならない。建設業協会傘下の企業とその従業員に、「仕事をやめて選挙運動しましょう」と呼びかけたのだ。

横田記者は、下地の「仕事をやめて選挙運動しましょう」の呼びかけの意味を、「従業員に“タダ働き”をさせるということではないのか」と理解した。もちろん、仮にそうであったとしたら、それ自体が労働契約・労働基準法上の大きな問題ではあるが、常識的にそれはあり得ない。建設会社の社員が、協会や会社からの呼びかけに応じて「ただ働きの選挙運動」をするはずはない。明言はされていないが、各企業に対して、「社員の給料は減額することなく、会社の仕事をやめて選挙運動をさせなさい」、あるいは「選挙運動期間中は、通常の業務に替えて佐喜真支持の選挙運動への従事を業務命令として、本来の仕事ではなく選挙運動をさせるように」という呼びかけ以外に考えがたい。

この呼びかけの内容は、明らかな公職選挙法違反である。具体的には、運動員買収罪(公職選挙法221条1項・3年以下の懲役)に当たる。もちろん、「大切な選挙ですので、私は一定期間仕事をやめて選挙運動をします」と有権者個人が自発的に行動することは自由だ。しかし、それは飽くまで会社の指示によるものではなく、自主的な判断で、しかも自分の経済的な負担でしなければならない。本来選挙運動は無償でなければならないからだ。有権者が議会制民主主義の政治プロセスに参加する行為なのだから当然のことである。有償での選挙運動は、運動員買収罪として、金銭授受の当事者双方に犯罪が成立する。

経営者が社員に「仕事をやめて選挙運動を」と要請する場合に、「君たち、無償で選挙運動してくれ」と言えるはずはない。「給与は保証するから、佐喜真候補の当選のために働いてくれ」と言うしかない。その場合、選挙運動時間に相当する賃金分が運動員買収の対価となる。こうして、主権者個人ではなく、企業が選挙の主体となる。民主主義は大きくねじ曲げられることになる。しかも、留意すべきは、選挙運動を命じた企業だけではなく、これに応じた従業員の側にも犯罪が成立するのだ。

これまで、企業ぐるみ選挙の弊害が論じられてきた。私の過去のブログ「『ぐるみ・金権』選挙の徹底取り締まりを」(2013年9月17日)も参照いただきたい。
http://article9.jp/wordpress/?p=1190

「公選法は、選挙運動に対する報酬の支払いを禁じている。支払った方も、支払いを受けた方も選挙違反として犯罪にあたる。だから、徳州会から派遣された各職員は、所属する病院に1週間~1か月程度の欠勤や有給休暇を届け出た上で選挙運動を行っていた。もちろん、純粋に無給のボランティア活動であれば犯罪とはならない。「有給休暇中のボランティア」とするのが、カムフラージュの常套手段だ。実際のところは、欠勤・休暇は形だけで、欠勤で減額された給与分は、同月の賞与に上乗せして補填され、実質的な選挙運動の報酬が支払われていたという。鹿児島までの交通費やホテルの宿泊費なども、同会側が負担したとのこと。
選挙運動の自由は最大限保障されなければならない。一方、選挙の公正が金の力でゆがめられてはならない。金がものを言うこの世の中で、買収・供応等の金権選挙・企業ぐるみ選挙を許してはならない。経済的な格差を投票結果に反映させてはならず、取り締るべきは当然である。」

建設業協会の企業ぐるみ選挙推進との関係は必ずしも明確ではないが、9月21日の沖縄タイムスには、「誰に投票したか撮影して報告、とネットで話題に 沖縄知事選 弁護士有志が禁止要請」の記事が出ている。

沖縄弁護士会所属の弁護士有志の「投票の自由と秘密を守り公正な選挙を求める弁護士の会」(池宮城紀夫代表)は19日、県選挙管理委員会に対し、県知事選の投票所での写真撮影や録音、録画などの禁止の告知を徹底するよう要請した。

要請書では「特定の候補に投票したことを明らかにするため、投票用紙に候補者名を記載した場面を撮影して報告を求める企業があるとの情報がネット上で流れている」と指摘。これが事実であれば「有権者の投票の自由や投票の秘密を侵害する由々しき事態だ」とし、その企業が特定されなくても、同情報が流れていること自体が有権者の投票行動に悪影響を及ぼしかねないとして、禁止の周知徹底を求めている。

私は、「選挙人に対して、投票用紙に特定の候補者名を記載した場面を撮影して報告を求める」行為は、公職選挙法第228条1項の(投票干渉罪)に該当するものと思う。

同条1項は「投票所において正当な理由がなくて選挙人の投票に干渉し又は被選挙人の氏名を認知する方法を行つた者は、1年以下の禁錮又は30万円以下の罰金に処する」と規定する。この条文は、他人に干渉されることなく、自由に候補者を選定することのできる選挙人の権利を保障するために、他からの干渉を処罰する規定である。選挙人に対して拒否しがたい影響力を持つ会社が、選挙人の意思如何にかかわらず、会社が指示する特定の候補者に投票するよう働きかけ、その干渉を確実に成功させる手段として、当該選挙人に対して、投票所において投票用紙に特定の候補者名を記載した場面を撮影して報告を求めているのだから、公職選挙法第228条1項(投票干渉罪)に該当する犯罪行為というべきである。

まだ判例はないだろう。捜査の対象としたという例も聞かない。しかし、明らかに投票の自由を侵害する可罰性の強い行為だ。このような指示をした者に対する告発があってしかるべきだと思うし、投票の自由と選挙の公正を確保するため、選挙管理委員会は厳正な対応をしなければならない。
(2018年9月23日・連続更新2002日)

沖縄知事選序盤情勢 「デニー優勢なれども予断を許さず」

注目の沖縄知事選。その帰趨が、辺野古新基地建設の成否を大きく左右する。のみならず、政局や改憲問題にも大きな影響を及ぼさざるを得ない。

沖縄とは、安保体制と日本国憲法体制との矛盾の結節点である。安保体制派(政権与党)と、日本国憲法派(市民と野党の共闘)が、総力でせめぎ合う最前線。その地の民意の動向は常に注目の的となる。しかも、今回知事選の最大の争点は、アベ政権による辺野古新基地建設強行の是非である。

県民の意思が、辺野古新基地建設強行反対であることは論を待たない。沖縄経済が基地依存を脱して久しい。沖縄の基地は、県民の生活の安全にも経済にも、摘出すべき病巣以外のなにものでもない。

昨日(9月19日)の琉球新報が、世論調査の結果を「承認撤回『支持』7割 辺野古埋め立て」の記事を載せている。「70、60歳代で多く 自民支持層も一定数」の小見出しもある。

国が辺野古新基地を建設するためには、大浦湾の海面を埋立てなければならない。公有水面埋立法は、県知事の許可または承認がなければ海面の埋立はできないこととしている。仲井真元知事は民意を裏切って国にその承認を与えた。翁長知事は、「オール沖縄」勢力の与望を担って、前回2014知事選で仲井真陣営に圧勝して、まずは「承認を取り消した」。

紆余曲折はあつたが、法廷闘争で知事の「承認取消し」は認められないとして確定した。しかし、万策尽きたわけではない。翁長知事は、膵癌末期の症状を押して「承認撤回」の手続に着手し、同知事の死後の8月31日知事職代行者の副知事によって、正式に「承認撤回」の処分がなされた。

今回選挙において選出された新知事の最初の仕事は、「翁長前知事の意向に沿って、仲井真元知事がした辺野古新基地建設のための国の大浦湾海面埋立工事に対する承認の撤回を維持する」のか、あるいは「(翁長知事の)承認撤回を(新知事において)撤回する」のか、判断が迫られることになる。

今回知事選の争点が、「辺野古新基地建設強行の可否」を問うものとは、具体的には、(翁長前知事の)承認撤回を支持するか否かである。世論調査の結果は、県民の7割が「支持」派なのだ。「支持しない」派は2割にとどまる。民意の所在は明らかという所以である。

 琉球新報社が沖縄テレビ放送、JX通信社と合同で14日から3日間に実施した電話世論調査の結果、辺野古新基地建設に伴う埋め立て承認を沖縄県が撤回したことについて、「強く」と「どちらかといえば」を合わせて約7割が支持していることが分かった。支持しないと答えたのは約2割だった。県民の間に、米軍普天間飛行場の辺野古移設を阻止したい意思が強いことが改めて浮き彫りになった。8月31日に県が埋め立て承認を撤回してから、その判断についての県民の評価が示されるのは初めて。

 承認撤回に「強く支持する」が56・8%、「どちらかといえば支持する」が12・5%だった。一方で「全く支持しない」は12・1%、「どちらかといえば支持しない」は9・2%だった。「分からない」は9・4%あった。

同じ、琉球新報社世論調査については、9月17日に次のような結果が報道されている。
「調査で投票先を決める際に重視する政策」では、
 「基地問題」が     41・6% 
 と最も高い。ついで
 「経済、景気、雇用」が 26・7%、
  「医療、福祉」が13・0%、
  「教育、子育て」が7・5% と続いた。

知事選の最大の争点となる普天間飛行場の名護市辺野古への移設問題については
「県外に移設させるべきだ」の割合が最も高く28・1%、
「国外に移設させるべきだ」が21・2%、
「無条件に閉鎖し撤去するべきだ」が19・7%と続いた。
これに対し「辺野古に移設させるべきだ」は17・1%、
「辺野古以外の県内に移設すべき」は4・3%だった。
分からないは9・7%。
約7割が辺野古移設に反対の意見だった。

以上の調査結果は、おそらく沖縄県民の率直な心情なのだろう。この意見分布なら、選挙結果は、翁長承継を標榜し、承認撤回を前面に掲げているデニーの勝利、それもダブルスコアでの圧勝以外にはない。しかし、有権者の現実の投票行動が必ずしもこのような調査のとおりにならないことは、名護市長選で「オール沖縄」の稲嶺候補が敗れたことに表れている。

この知事選は、本来はまぎれもなく「辺野古新基地建設の賛否を問う県民投票」である。県民の多くは辺野古に新基地を作らせたくないと思っている。辺野古移設容認派は2割に満たない。にもかかわらず、「辺野古新基地建設反対」を明言し、翁長知事の埋立承認撤回の立場を承継することを公約に掲げるデニー圧勝の予測とはならない。強大な政権与党が対立陣営に肩入れしているからだ。与党側候補を勝たせるために、辺野古問題での投票行動をひっくり返すだけの経済的利益供与をチラつかせることができるのだ。

だから、自公は、徹底したステルス(争点隠し)戦術をとっている。名護でも成功した「対立よりは協調」「経済振興策をこそ」と訴えている。しかも、県民の一部には、「どうせ国には勝てない。司法も国の味方じゃないか。公正な判決など期待できない」「ならば少しでも、よい条件の獲得を」との気持がある。自公が県民世論を覆して、佐喜真を当選させる目はあるのだ。

だから、序盤情勢についての電話世論調査報道では、慎重な琉球新報としてはデニー優勢とは打てない。

琉球新報社は沖縄テレビ放送、JX通信社と3社合同で14~16日の3日間、県内全域の有権者を対象に実施し、選挙戦序盤の情勢を探った。調査結果に本紙の取材を加味すると、県政与党が支援する無所属新人で前衆院議員の玉城デニー氏(58)と、無所属新人で前宜野湾市長の佐喜真淳氏(54)=自民、公明、維新、希望推薦=が接戦を繰り広げている。一方、投票先を決めていない有権者も一定数おり、その投票動向によって情勢は流動的な要素がある。

どちらが優勢とは書かずに、「接戦」となっている。デニーを先に、佐喜真をあとに書くのは、調査の限りではわずかながらもデニー有利の読みなのだろう。それでも「接戦」である。

もう一つの世論調査が公表されている。リサーチコム社のもの。
「沖縄県知事選 投票意向は国政の与野支持層で二分も、序盤は玉城氏が先行」「内閣支持率は全国平均を大きく下回り、支持しないが6割強」とこちらの方が歯切れがよい。

つまりは、国政の与党支持層が佐喜真を応援し、国政野党支持層がデニーを支持している構図だという。告示直後は玉城デニー氏先行、佐喜真氏追い上げるか」とまとめられている。これは、9月15~17日の調査限りのもの。

電話調査の結果に選挙ドットコムが取材で得た情報を加味したところ、佐喜真氏は8月の調査時点から手堅く支持を広げているものの、玉城氏が幅広く浸透し、先行しています。ただ、調査時点から投票日の30日までは2週間ほどあることから、情勢が変わる可能性もあります。

また、沖縄タイムスの伝えるところによれば、期日前投票が前回と比較して倍増しているという。
「30日投開票の沖縄県知事選で、14日から始まった期日前投票者数が前回2014年知事選と比べ倍増している。16日までの3日間で、11市の総数は1万4628人で、前回同期比で約1・96倍に上っている。市の中で最多は那覇市の3327人で、前回の3・39倍に上っている。最も増加率が高いのは沖縄市の3・95倍で、既に2107人が投票を済ませた。」という。

名護市長選の期日前投票者が異様に多かった。期日前投票者数は異例の当日有権者の44.4%。これが、「オール沖縄」稲嶺候補の思わぬ敗北の一因と言われたことが気にかかる。民意を撹乱することなく、適切に反映する選挙であって欲しいと切に思う。
(2018年9月20 日・連続更新1999日)

正念場の沖縄知事選、「魂」派と「腹」派の一騎打ちだ。

本日(9月13日)、沖縄知事選か告示された。9月30日が投票日で、即日開票となる。主要な争点は、辺野古新基地建設反対の姿勢を貫くか、それともこれを容認するのか。これは、政権の外交・内政の根幹に関わる問題。したがって、選挙の帰趨は、政権の存続にも憲法改正の可否にも大きく影響する。

翁長県政承継を標榜する新基地建設反対派からは玉城デニーが立候補し、政権の意向を酌んだ容認派からは佐喜真淳が立候補した。事実上、この二人の一騎打ち。デニーは県民を代表し、佐喜真は政権を代理している。沖縄と政権の角逐である。それはだれにも自明なことだが、佐喜真側は意識的にこの構図の明確化を避けている。

県民派は沖縄の「魂」を掲げ、政権派は「魂では喰えない。背に腹は代えられない」と、魂よりは「腹」を第一義として掲げる。

デニー側の支持勢力は、「市民と野党の共闘」。幅は広いがまとまりをどう作るかがに課題があるという。佐喜真側は政権と与党の丸抱え。これに、維新がくっついての「保守連合」。この両者の対立関係は、今後の国政における政治地図の基本構図だ。統一地方選、参院選、さらには次の総選挙の基本構図でもあり、そのまま改憲勢力と改憲阻止勢力の対決の構図でもある。

そのような状況下に始まったデニーと佐喜真の「論戦」は、今年2月4日の名護市長選を彷彿とさせる。
翌2月5日、私は当ブログに「名護高校の生徒諸君 ― 小泉進次郎のトークに欺されてはいけない」と題する記事を掲載した。まさかの稲嶺候補敗北という衝撃のなかでのつぶやきであり、ぼやきでもあった。
http://article9.jp/wordpress/?p=9879

私はその記事で、小泉進次郎の選挙演説を、〈詐欺まがい悪徳商法のトーク〉になぞらえて、若い高校生諸君に「欺されてはいけない」と警告を発したのだが、時既に遅しで愚痴にしかなっていない。

本日、沖縄知事選の告示日に当たって、同じことを繰り返さざるを得ない。今度は、名護だけではなく沖縄全県の若い有権者を念頭において語りかけねばならない。

稲嶺落選は、「名護ショック」であった。ショックは連鎖することが少なくない。一つの選挙結果で作られた空気が、次の選挙結果に伝染するのだ。勝者の側の勢いが次の選挙でも有利に働き、敗者の側の萎縮が次の選挙のデメリットになる。

沖縄での名護ショック、全国的には新潟ショックの影響が、最近の選挙に蔓延している。ウソとごまかしで塗り固められた安倍政権を支える与党勢力が、最近の選挙では優勢な現実を見据えなければならない。

名護市長選の敗因として、巷間言われていることはいくつかある。
オール沖縄の稲嶺陣営は基地反対を焦点に明確化し、渡具知陣営は争点をそらして経済活性化を訴えた。その作戦の巧拙が勝敗を分けた、というのだ。なるほど、政権が経済支援をエサに渡具知陣営への露骨な利益誘導を行ったということなのだ。基地反対の稲嶺陣営にはムチだけを、一方渡具知陣営にはアメを差し出したというわけだ。

また、辺野古基地建設反対運動の先が見えず、住民が疲れ果ててこれまでとは別の選択を強いられた結果だともいう。反対しても、国は強大で抗いがたい。裁判所だって、所詮は国家機関だ。政府の肩を持つに決まっている。それは既に明らかになっているではないか。いずれ基地はできてしまう。それなら、無用な抗争をするよりは、条件闘争に転じた方が得ではないか。望まぬ基地を押しつけられるのだ、その見返りをできるだけとるという方針のどこが悪い、というわけだ。

公明党がその存在感を示さんがために選挙運動に全力をあげた結果であったともいう。公明党が力をいれた選挙では、期日前投票の割合が高くなるといわれるが、その現象が如実に出た結果と受けとめられている。

さらに重要なことは、この選挙では初めての18歳・19歳の選挙権行使が、保守の側に有利に振れて「オール沖縄」派敗北の原因となった…のだとも。

この名護ショックの原因の構図は、沖縄知事選告示に当たって、既視感に充ち満ちている。

政権は沖縄に基地の負担を強いたうえに、こう言っているのだ。
「おとなしく基地の建設を認めろ。そうすれば悪いようにはしない。その見返りは真剣に考えてやろう」「しかし、言うことを聞かないのなら、徹底して経済的に締め上げるから覚悟しろ」
こう言われて、「我々にも五分の魂がある」という意気地派と、「魂では喰えない。背に腹は代えられない」という現実派が真っ二つになっている。前回知事選では「五分の魂」派の翁長陣営が圧勝したが、今回は「背に腹」派の勢いは侮りがたく、予断を許さない。

公明党・創価学会は、前回知事選では自主投票だった。しかし、今回選挙では佐喜真陣営に本腰を入れた応援態勢。全国から5000人規模の活動家をこの選挙戦に送り込んでいるとされる。

若者の動向、はどうだろうか。
名護市長選における地元OTV(沖縄テレビ)の出口調査では、年代別の投票先は次のようだったという。若者世代の保守化は著しいというほかない。
10代 稲嶺37% 渡具知63%
20代 稲嶺38% 渡具知62%
30代 稲嶺39% 渡具知61%
40代 稲嶺41% 渡具知59%
50代 稲嶺38% 渡具知62%
60代 稲嶺65% 渡具知35%
70代 稲嶺68% 渡具知32%
80代 稲嶺67% 渡具知33%
90代 稲嶺86% 渡具知14%

RBC(琉球放送)の出口調査では、
10代 稲嶺33.3% 渡具知66.6%
20代 稲嶺44.0% 渡具知56.0%

人は若くしては理想に燃えて革新派であり、社会で長く生きるにしたがって世のしがらみと妥協して保守派に転じる。そう信じていた私は戸惑うばかりだ。10代で既に保守派が多数とは、人類にいったいどんな異変があってのことなのだろうか。

名護市長選挙で、ネットの動画に見た高校生は、おとなしくにこやかに、小泉進次郎のつまらぬ話しを聞いていた。これには、少なからぬ衝撃を受けた。「この美ら海を埋め立ててよいのか」「オスプレイで学校の騒音はどうなるのか」「ヘリが校庭に落ちてきたらどうする」などとヤジは飛ばない。本来は、こう問い質すべきなのだ。「どうして、選挙演説で基地のことをお話ししないの」「辺野古基地の建設は我慢しなければならないの」「基地ができたら、今普天間の学校や保育園で起こっていることが今度は名護で起こることにならないの」「オスプレイはどのくらいうるさいの」「どうして、渡具知さんが勝った場合だけ経済振興になるのですか。稲嶺さんでは応援しないと言うことですか」「あなたは私たちに、具体的に何をお約束されるのですか」「そのお約束は、稲嶺さんが市長ではできないのでしょうか」「稲嶺さんの政策のどこに間違いがあるということでしょうか」「結局あなたは、名護のためにはではなく、基地建設推進のために渡具知さんを応援しているのでではありませんか」

さて、今回知事選は、政権と向き合う沖縄にとっての正念場である。ということは、全国の「市民と野党の共闘」にとっての正念場でもある。来年の参院選や改憲問題にも影響する重大事態。不利なことも多々あるが、ウソとごまかしで行政を私物化している政権の評判はまことに芳しくない。我がこととして、この選挙を闘い抜きたい。

**********************************************************************

いまこそウソとごまかしの「安倍政治」に終止符を! 賛同署名のお願い。
http://article9.jp/wordpress/?p=11058

安倍政治に即刻の終止符を求める人々の熱い言葉の数々。
http://article9.jp/wordpress/?p=11073

ネット署名に是非ご協力を。そして、拡散もお願いします。

署名は、下記URLからお願いいたします。

https://bit.ly/2MpH0qW

(2018年9月13日・連続更新1992日)

澤藤統一郎の憲法日記 © 2018. Theme Squared created by Rodrigo Ghedin.