澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

大統領令拒否のイェーツの良心と、「日の丸・君が代強制」を拒否する教師の良心と。

サリー・クイリアン・イェーツ。オバマが任命し、トランプが解任したアメリカの司法副長官である。一昨日までは、まったく知らなかったその人が、昨日から今日(1月31日)にかけて、世界の注目を浴びる存在となった。

この人は、弁護士から検察官となり、連邦検事からオバマ政権で司法副長官に指名され連邦上院で承認を受けた。2015年5月のこと。その票決は84対12であったという。その1年半後に政権が交代したが、トランプ任命の司法長官に対する議会の承認が遅れる事態において、その空位を埋めるために、トランプの要請を受けて司法長官代行を引き受けた。暫定措置ではあるが、司法省のトップとなったわけだ。

こともあろうに、ならず者トランプは、イスラム教徒の多い中東・アフリカ7カ国(シリア・イラク・イラン・リビア・ソマリア・イエメン・スーダン)からの難民・移民の入国を一律制限する大統領令を発して、世界を混乱におとしいれた。米国内にもこの無謀な措置を違憲とする動きが澎湃として湧き起こった。違憲訴訟が起こされたら、政権側の法律家がこれに対応する。イェーツは、その元締めの立場に立たされた。

世界に衝撃が走った。「イェーツ米司法長官代行は30日、『大統領令は、合法であるとの確信が持てない』として、司法省は政権を擁護しないとの見解を明らかにした」というのだ。「この大統領令を法廷で弁護しないよう省内に指示した」「大統領令の合法性や政策としての有効性に疑問があると述べた」という表現の報道もある。

イェーツの決意は徹底していた。同省の弁護士らに、こう述べたという「大統領令が『常に正義を追求し真実を支持するという司法省の厳粛な義務と合致している』とは考えない」。

トランプ政権はただちに長官代行を解任し、後任を任命した。この間、わずか1時間であった。ホワイトハウスの声明は、イェーツ氏が「米国の市民を守るために作られた法律命令の執行を拒否し、司法省を裏切った」と言っている。

イェーツは、政権の上級法律顧問への書簡でこう言っているそうだ。
「(司法長官代行としての)私の責任は、司法省の立場が法的に正当化できると同時に、法律の最も正しい解釈に裏付けられいるよう、保障することです」、「私たちが法廷でとる立場は、常に正義を追求し、正しいことを支持するというこの機関の、厳粛な責務に常に一致していなければならない。」

本来、行政は上命下服の関係が貫かれた一体性を保持しなくてはならない。大統領令に公然と叛旗を翻したイェーツの行為には、当然に批判の立場もあろう。しかし、彼女の職責に関わる良心からは、やむにやまれぬ行為であったことが推察される。

行政の一体性だけでなく、そもそも政権の存立自体も、結局は国民の福利のために憲法が定めた制度である。違憲の大統領令の執行が国民の福利に反するこのときに、無難に大統領令に従うべきか、それとも、憲法の理念を遵守すべしという法律家の良心が命じるところに従うべきか。

彼女の立場や気持は、日の丸に正対して起立し君が代を斉唱するよう命じられた教員によく似ている。公務員としては職務命令に従うべきとされても、教育者の良心が命じるところにおいては起立してはならないのだ。国家は、国民に価値観を強制してはならない。ましてや教育の場で、国家主義を子どもたちに刷り込むことは許されない。教師として、そのような行為に加担してはならないとして不起立を貫いた延べ500人に近い教師が懲戒処分を受けているのだ。

どう考えても、人種・国籍・民族・宗教による差別意識丸出しの、違憲明白な大統領令が間違っている。多くの抗議によるその撤回あるいは是正が望まれる。日の丸・君が代も同様だ。石原慎太郎アンシャンレジーム都政が作りあげた、国家主義丸出しの「日の丸・君が代強制」が間違っているのだ。そして、その強制を支持しているアベ政権の歴史修正主義が間違っているのだ。

いま、世界の世論は、トランプを責めてイェーツを称賛している。これこそが歴史の求める健全な状況だ。日の丸・君が代強制も同じこと。良心に基づく不起立の教員を責めてはならない。強制と処分を繰り返している都教委をこそ、そしてその背後にあるアベ政権をこそ批判し責めるべきなのだ。
(2017年1月31日)

トランプの就任に際して、大統領罷免制度を確認しておこう

現地時間の1月20日、米国でトランプ新大統領が就任した。就任記念式典に参集した群衆は少なく盛り上がりに欠け、一方、異例の大統領就任抗議の大集会は各地で大きな盛りあがりを見せたようだ。

なんとも奇妙な悪夢を見ている心もち。もちろん、日本との関わりでアメリカの事情に関心をもつことにはなるのだが、到底就任に祝意などあるわけがない。「アメリカ・ファースト」「バイ・アメリカン」「ハイヤー・アメリカン」を呼号するトランプと、これを支持の米国内の空気が薄気味悪い。偏狭なナショナリズムの連鎖と、保護貿易主義の連鎖をもたらしかねないからだ。多民族の移民国家として、自由と並んで多様性の尊重を信条としてきたはずのアメリカが本当に、すっかり変わってしまったのだろうか。

自分に言い聞かせる。今の時代に自国のみの経済繁栄があり得ないことはだれの目にも明らかではないか。米国内のあらゆるマイノリティが、トランプを指弾しているではないか。あらゆるマイノリティの連帯は、大きな反トランプ運動のうねりとなるだろう。そして、政権を挫折せしめるだろう。希望的にではあるが、そのように直感する。

トランプはできるだけ早期に、その地位を自ら辞任しなければならない。自ら辞任しないのなら罷免されなければならない。新大統領誕生のこの機会に、大統領罷免の手続を確認しておきたい。

韓国の朴大統領罷免の動きが話題となり、韓国の大統領罷免手続を興味深く知ったばかりのタイミング。韓国も米国も大統領制。訴追・弾劾・罷免の手続は基本的によく似ている。一院制で、憲法裁判所をもっている韓国では、議席総数(300)の3分の2(200)以上の賛成で、憲法裁判所への弾劾訴追をすることになる。訴追を受けた憲法裁判所では、9名の裁判官が弾劾審判を審理し、7人以上の票決参加が要件はあるが、多数決で罷免の可否を決することなる。かつて、盧武鉉大統領も訴追されたが、憲法裁判所の弾劾審判では、罷免否定の決定となった。今回も、審判の行方は予断を許さないという。

なお、韓国憲法の関係条文は以下のとおりである。
第65条① 大統領、国務総理、国務委員、行政各部の長、憲法裁判所裁判官、法官、中央選挙管理委員会委員、監査院長、監査委員その他法律が定めた公務員が、その職務執行に際して、憲法又は法律に違背したときは、国会は弾劾の訴追を議決することができる。
② 前項の弾劾訴追は、国会在籍議員の3分の1以上の発議がなければならず、その議決は、国会在籍議員の過半数の賛成がなければならない。ただし、大統領に対する弾劾訴追は、国会在籍議員の過半数の発議及び国会在籍議員の3分の2以上の賛成がなければならない。
③ 弾劾訴追の議決を受けたきは、弾劾審判があるときまで、その権限行使が停止される。
④ 弾劾決定は、公職から罷免するにとどまる。ただし、これにより民事上又は刑事上の責任が免除されない。

第111条① 憲法裁判所は、次の事項を管轄する。
第2号 弾劾の審判

二院制のアメリカでは、下院が訴追を決議して、上院が弾劾の可否を審議する。その制度の基本は合衆国憲法に規定されている。なお、大統領の弾劾裁判において罷免を可とするには、上院の出席議員の3分の2以上の同意が必要だという。

米国大使館の広報・文化交流部門であるアメリカンセンターJAPANのサイトが、合衆国憲法の邦訳を掲載している。訳が分かりにくいが、これによると憲法第2章[執行部]の第4条が[弾劾]と標題されて、以下のとおりの条文となっている。

「大統領、副大統領および合衆国のすべての文官は、反逆罪、収賄罪その他の重大な罪または軽罪につき 弾劾の訴追を受け、有罪の判決を受けたときは、その職を解かれる。」(この「軽罪」を「非行」と訳しているものもある)。

これまで弾劾裁判にかけられた大統領は2名。1867年にアンドルー・ジョンソンと、1999年にビル・クリントン。いずれも、下院では弾劾訴追の決議を受けたが、上院の審理では罷免を免れている。
トランプは異例づくしがお好きのようだ。初の罷免大統領として歴史に名を残してはどうだろう。

なお、昨年(2016年)には、韓国とならんで、ルセフ・ブラジル大統領の罷免も話題となった。次のように報道されている。

「ブラジル上院は8月31日、国家会計の不正操作に関わったとされるルセフ大統領を被告とする弾劾裁判の採決を実施し、賛成多数で有罪と判断して罷免し、ルセフ氏は失職した。上院全81議員のうち、有罪が61票、無罪が20票で、規定の3分の2以上を満たした。議長は最高裁長官が務めた。ルセフ氏は国家会計の状況を良好に見せるため、農業融資などを国営銀行に肩代わりさせたと認定され、失職に値すると判断された。15年1月から2期目を務めていたが、同年末から議会で弾劾手続きが始まり、今年5月からは職務停止中だった。」

この手続は、米国にそっくり。もしかしたら、トランプ弾劾のシミュレーションなのかも知れない。2016年は、大統領罷免の当たり年だったようだ。行け、颯爽と続け、ドナルド・トランプよ。
(2017年1月22日)

**************************************************************************
     「DHCスラップ」勝利報告集会は次の土曜日
弁護士 澤藤統一郎
私自身が訴えられ、6000万円を請求された「DHCスラップ訴訟」。その勝訴確定報告集会が次の土曜日に迫りました。この問題と勝訴の意義を確認するとともに、攻守ところを変えた反撃訴訟の出発点ともいたします。ぜひ、集会にご参加ください。

日程と場所は以下のとおりです。
☆時 2017年1月28日(土)午後(1時30分~4時)
☆所 日比谷公園内の「千代田区立日比谷図書文化館」4階
 「スタジオプラス小ホール」
☆進行
弁護団長挨拶
田島泰彦先生記念講演(「言論の自由」の今日的意義)
常任弁護団員からの解説
テーマは、
「名誉毀損訴訟の構造」
「サプリメントの消費者問題」
「反撃訴訟の内容」
☆会場発言(スラップ被害経験者+支援者)
☆澤藤挨拶
・資料集を配布いたします。反撃訴訟の訴状案も用意いたします。
・資料代500円をお願いいたします。
言論の自由の大切さと思われる皆さまに、集会へのご参加と、ご発言をお願いいたします。

       「DHCスラップ訴訟」とは
私は、ブログ「澤藤統一郎の憲法日記」を毎日連載しています。既に、連続1400日になろうとしています。
そのブログに、DHC・吉田嘉明を批判する記事を3本載せました。「カネで政治を操ろうとした」ことに対する政治的批判の記事です。
DHC・吉田はこれを「名誉毀損」として、私を被告とする2000万円の損害賠償請求訴訟を提起しました。2014年4月のことです。
私は、この提訴をスラップ訴訟として違法だとブログに掲載しました。「DHCスラップ訴訟を許さない」とするテーマでの掲載は既に、90回を超します。そうしたら、私に対する損害賠償請求額が6000万円に跳ね上がりました。
この訴訟は、いったい何だったのでしょうか。その提訴と応訴が応訴が持つ意味は、次のように整理できると思います。
1 言論の自由に対する攻撃とその反撃であった。
2 とりわけ政治的言論(攻撃されたものは「政治とカネ」に関わる政治的言論)の自由をめぐる攻防であった。
3 またすぐれて消費者問題であった。(攻撃されたものは「消費者利益を目的とする行政規制」)
4 さらに、民事訴訟の訴権濫用の問題であった。

私は、言論萎縮を狙ったスラップ訴訟の悪辣さ、その害悪を身をもって体験しました。「これは自分一人の問題ではない」「自分が萎縮すれば、多くの人の言論の自由が損なわれることになる」「不当な攻撃とは闘わなければならない」「闘いを放棄すれば、DHC・吉田の思う壺ではないか」「私は弁護士だ。自分の権利も擁護できないで、依頼者の人権を守ることはできない」。そう思い、自分を励ましながらの応訴でした。
スラップ常習者と言って差し支えないDHC・吉田には、反撃訴訟が必要だと思います。引き続いてのご支援をお願いいたします。

 

「トランプは4年もたない。2年で自壊するだろう。」

昨日(1月13日)、日民協の「新春の集い」が開かれた。理事会を兼ねてのことである。新春の挨拶でも、今年は楽観的な希望は語られない。話題は、自ずから「激動の世界情勢」ということになる。とりわけ、トランプ現象を起こしたアメリカの民主主義についてのシビアな意見が相次いだ。

それでも、アメリカがこのままであるはずはない、という希望も語られた。「トランプ政権はもたない。いずれ自壊する」「その時期は、化けの皮が剥がれ、中間選挙で共和党が大敗する2年後」という確信にあふれた予言が説得力をもって語られた。

都民の人気を集めていた舛添要一前知事が、あっという間にバッシングの対象となってその地位を追われた。韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領も同じだ。きっと、トランプも同じ目に遭う。

トランプは、大富豪ではないか。多くの人々を搾取し収奪して財をなした人物。それが、経済的に困窮するホワイトプアー(白人困窮者層)からの支持を集めて大統領に当選するというマンガのような逆説が永続するはずはない。彼が被告として抱えている訴訟は2000件余と報じられている。その敗訴が連続するとき、欺されていた者も覚醒せざるを得ない。

忘れてはならないのは、民主党予備選挙でのサンダース現象だ。民主社会主義者を自称するサンダースの大健闘は、アメリカ社会の健全さを示すもの。トランプ現象の結果だけからは絶望しか見えてこないが、サンダースを支持した若者たちが、トランプへの抗議を継続していることに希望を見ることができよう。

集いの冒頭森英樹理事長の挨拶があった。その中で次の指摘があった。
「あまり話題にならないのですが、今年は一九一七年一一月にロシア社会主義革命が成就して一〇〇周年、そしてその崩壊から二五周年となります。その歴史に学ぶべきところはないのでしょうか」
「また、今年はルターが宗教改革を宣言した一五一七年一〇月から五〇〇周年でもあります。カトリックの精神支配から個人を解放して資本主義の成立を準備したという宗教改革からも学ぶところはあるはずです」。

今の世界の激動と混乱の原因を、資本主義そのものの矛盾の表れとしてとらえ直すべきではないか。そしてその矛盾克服の方向を、資本主義自体を変革しようとした歴史からも学べ。そういう示唆なのであろう。

すでに、世界はポストトゥルースの時代だという。しかし、これは何も世界で新たに始まったことでもなかろうという指摘もあった。「この点、日本も世界に遅れをとっていない。まず石原慎太郎がいたではないか。橋下徹も安倍晋三も負けてはいない」。言われてみればそのとおり。「コントロールとブロックの安倍」の嘘を許容する国民が情けない。日本の民衆が、新自由主義をかざして、庶民イジメ専念の安倍に、かくも長期間欺されっぱなしというのも解せない話。

「私の周囲には安倍支持の人間などいません。反安倍の人ばかり。でも、安倍の周囲には安倍を支持しない人などはいないのでしょう。安倍支持派と反安倍派とは、断絶してお互いに説得し合おうという会話の機会さえもない」「私は、意識して安倍支持派との人々とも会話のできる機会を持ちたいと思う」という発言もあった。

解散総選挙は、「今月(1月)にはないが、今年(2017年)にはあるだろう」というのが、一般的な観測である。反アベ派の仲間内だけではなく、親アベ派の人々とも会話を重ねることで、この深刻な事態を切り開いていきたい。

いたずらに、事態に絶望せず、パンドラの箱に残された美しい希望を見失わないようにしたい。政治的混乱の原因を見極め、格差・貧困・経済摩擦・雇用の縮小等々の根本原因を改善する努力を、微力でも重ねていきたいと思う。
(2017年1月14日)
**************************************************************************

「DHCスラップ訴訟」勝利報告集会のお知らせ

私自身が訴えられた「DHCスラップ訴訟」。その勝利報告集会が近づいてきました。あらためてお知らせし、集会へのご参加を、よろしくお願いします。
日程と場所は以下のとおりです。
☆時 2017年1月28日(土)午後(1時30分~4時)
☆所 日比谷公園内の「千代田区立日比谷図書文化館」4階「スタジオプラス小ホール」
☆進行
弁護団長挨拶
田島泰彦先生記念講演
常任弁護団員からの解説(テーマは、「名誉毀損訴訟の構造」「サプリメントの消費者問題」「反撃訴訟の内容」など)
会場発言(スラップ被害経験者+支援者)
澤藤挨拶
・資料集を配布いたします。反撃訴訟の訴状案も用意いたします。
・資料代500円をお願いいたします。

この集会から、強者の言論抑圧に対する反撃をはじめます。ご支援ください。

オール沖縄と闘う、米軍とアベ政権

本日(12月22日)、沖縄県名護市の万国津梁館で、日米両政府が主催する米軍北部訓練場の返還式・祝賀会が行われた。この返還面積(4010ヘクタール)は、1972年に沖縄が本土復帰して以降最大規模のもの。日本側からは菅義偉官房長官やイナダ防衛大臣らが、米国側からはケネディ駐日米大使やマルティネス在日米軍司令官らが出席した。

もちろん、沖縄県知事も県議会議長も出席していない。名護市長もだ。知事はこの式典には出ずに、同じ名護市で行われたオスプレイ不時着事故の抗議集会に参加した。ここで、オスプレイ配備撤回だけでなく、普天間基地の早期返還と辺野古基地建設反対を4200人の聴衆に熱く語りかけた。

翁長知事が、返還式と祝賀会に「出席見合わせ」を発表したのは12月12日夜のこと。欠席の理由は、訓練場内のヘリパッド建設の強引で拙速な進め方と、宜野座村城原区で県などの抗議にもかかわらずオスプレイつり下げ訓練が継続されていることなどにあった。「高江周辺でもこのようなことが起こり得ることが容易に予想され、県としては到底容認できない。北部訓練場の返還には私のみならず、多くの県民が理不尽な思いを抱いている」と述べている。オスプレイの墜落事故は、その翌日、12月13日のことである。

県議会議長の欠席決定は、オスプレイ墜落事故のあとのこと。自民党議員団だけが出席を主張し、各会派で意見がまとまらないため議長が欠席を判断したとのこと。

この返還の記念式典には在沖米軍トップのニコルソン四軍調整官が出席している。オスプレイの墜落事故について、「沖縄県民は住民への事故を回避したパイロットに感謝すべきだ」と発言して、物議を醸した人物。当日のスピーチは伝えられていないが、忌憚なくしゃべらせたらどんなことを言ったか。興味津々。たとえば、以下のようなものだったろう。

「この返還は、沖縄の住民にとって、とても重要なもので、沖縄の状況を改善して負担を軽減するものだ。
 基地が、住民にとっていかに危険で、不安のタネとなっているかはよく知っている。もちろん騒音もひどい。とりわけオスプレイの騒音が耐えがたいのは分かりきったこと。私の家族には、基地の側には絶対に住まわせたくはない。
 だから、このたびの広大な訓練場の返還に対しては、沖縄の住民は『沖縄の負担軽減』としてアメリカに感謝すべきではないか。にもかかわらず、知事は式典出席を拒否して、抗議集会に出席だとのことではないか。せっかく返してやったのに、ありがとうとも言えないのか。無礼きわまる態度ではないか」

「もっとも、大きな声では言えないが、本当のところこの返還は私たち在沖米軍にとっては、痛くも痒くもない。問題は基地の面積ではなく、基地機能の強弱にある。その点、今回の『返還』は明らかに基地機能の強化をもたらすものとして我々にとっても、ハッピーなのだ。なにしろ、『北部訓練最大で51%の使用不可能な土地を返還し、新たな施設を設け、土地の最大限の活用が可能になった』のだから。実のところ、お祝いは、米軍にとってのものなのだ」

「北部訓練場の半分の引き換えに我々は、新たな着陸帯6カ所の提供を受けた。MV22オスプレイの使用は、その6カ所の合計で年間2520回が見込まれている。また、東村高江周辺の新設ヘリパッドは、宇嘉川の河口部に設けた訓練区域と連動する形で、海からの上陸作戦や人員救助などの訓練を実施できるようになる。世界唯一のジャングル戦闘訓練施設として重用されてきた北部訓練場に、新たな上陸作戦訓練機能が加わるのだ」

「これまで、北部訓練場内では既設22カ所と2015年に米側に引き渡したN4の新設2カ所を合わせ24カ所のヘリパッドがあった。このうち、今回の返還に伴って閉鎖されるのが7カ所。新たに、N1(2カ所)とG、Hの計4カ所を新たに提供することで、ヘリパッドは21カ所になる。その21カ所の内の15カ所でオスプレイを運用。年間の使用回数は計5110回に上る。高江集落6カ所のヘリパッドの発着数2520回は確かに多いが、訓練の実施は必要不可欠なものだ。もちろん、あらゆる必要な訓練が予定されている。オスプレイの低空飛行ルートも設定され、地上15~60メートルの地形追従飛行を年25回実施する」

「だからまあ、翁長知事が祝賀式典を欠席して、抗議集会に出席する気持もわからなくもない」

菅官房長官はこう語った。
「今回の返還は沖縄の本土復帰後、最大規模のもので、アメリカ軍専用施設のおよそ2割が減少し、沖縄の基地負担軽減に大きく資するものだ。ヘリコプター発着場の移設で地元には引き続き負担をかけることになるが、両村から強い要請があった、返還後の財政措置や地域振興策は確実に実施することを約束する」

以上の発言は、「私は地元に対し、カネの問題についての約束はできるがそれ以上はできない。オスプレイの騒音の軽減もできないし、墜落の不安への対処もできない。」との含意と理解すべきなのだ。また、「もうすぐ、佐賀にも木更津にも、そして横田の上空にもオスプレイが飛ぶことになる。その場合も同様に、『騒音の軽減もできないし、墜落の不安への対処もできない』」と言っているのだ。

翁長知事は、オスプレイ墜落後わずか6日での飛行全面再開のときに、「言語道断」に続けて「政府はもう相手にできない」との姿勢を明らかにした。本日、知事の姿が返還祝賀式になく、抗議集会にあったことが、「沖縄県民は、日本政府を相手にせず」の姿勢を印象づけた。

米軍とアベ政権とは、オール沖縄との全面対決を強いられている。仮想敵国との戦争準備の前に、沖縄県民との闘いを余儀なくされているのだ。周囲を「敵」なる住民に包囲されて、基地が機能できるはずはない。防衛や安全保障政策の実行ができるはずもなかろう。
(2016年12月22日)

ワタシが強面のニコルソンだ。オスプレイは、今後も飛ばす。

オスプレイは、墜落したのではない。コントロールされた状態で着水したのだ。確かに機体は大破し乗員二人は脱出時に負傷した。常識的には、これは「crush」(墜落)だろう。しかし、そんなことが今問題なのではない。重要なことは機体が着水直前まで完全にコントロールされた状態にあったことだ。だから、誰がなんと言おうともこれは、「landing on the water」(着水)なのだ。

墜落か着水かを分けるものが、「under control」だ。これあればこそ、パイロットは負傷しながらも住宅や住民の被害を避け得たのだ。沖縄の住民は、重大事故から間一髪のところで、オスプレイ・パイロットの的確な判断と英雄的な行為によって救われたのだ。これは表彰に値する。だから、沖縄県は挙ってオスプレイのパイロットに感謝すべきではないか。少なくとも、負傷の米兵に見舞いの言葉があってしかるべきだ。それを、副知事お出ましの抗議とは筋違いも甚だしい。ワタシは怒りを抑えきれない。机を叩くぐらいのことはする。

貴国の総理大臣も私と同じではないか。彼は、2013年9月7日ブエノスアイレスで開催されたIOC総会の席上、福島第1原発の汚染水排出問題を「The situation is under control」と表現している。その言葉で、東京オリンピック誘致に成功したのだ。当時常識的には、事故後の原発の汚染水が外洋にダダ漏れになっていたことは世界中の人が知っていた。それでも、「under control」だ。「under control」とは、かくも使い勝手のよい便利な言葉なのだ。

もし、私の「under control」がウソだというのなら、貴国の総理大臣も大嘘つきだ。そんな大嘘つきが首相を務める国の自治体が、ワタシに抗議する資格などあるわけはない。

そもそも、米軍が日本を片務的に防衛してやっているのだ。沖縄県も日本の一部ではないか。常々、駐留米軍に対する敬意と感謝の気持ちが足りないことを不満に思ってきた。どうして、そのような不遜な態度がとれるのか。

オスプレイの騒音がうるさいとか、事故の確率が高くて不安だとか、軍人の態度が横暴だとか、遵法精神に乏しいとか、そのくらいのことは、些細なこととして我慢してもらわなければならない。沖縄が、他国から攻めてこられたら、うるさいの、危ないの、不愉快だなどというレベルの問題ではないではないか。守ってもらっていることへの感謝の気持がもっとあってもよいはずなのだ。

オスプレイが沖縄に配備されてから既に4年を経過した。その間事故がなかったことはたいへんなことだ。どうしてこのことを立派なことと言わずに、たった一度の事故らしい事故で、被害もないのに大騒ぎをするのだろうか。

安慶田副知事は、ワタシへの抗議のあとの記者会見を行い、こう記事にさせている。
「安慶田氏によると、抗議の際、在沖米軍トップで第3海兵遠征軍司令官のニコルソン四軍調整官の表情はみるみる怒気に染まっていった。ニコルソン氏は『パイロットは住宅、住民に被害を与えなかった。感謝されるべきで表彰ものだ』と述べた。安慶田氏が『オスプレイも訓練もいらないから、どうぞ撤去してください』と伝えると、『政治問題化するのか』などと話し、テーブルをたたく場面もあったという。」「会談後、安慶田氏は記者団に『植民地意識丸出しだ。私たちからすると、抗議するのは当然だ』と感想を述べた。」

ワタシは、「植民地意識丸出しだ」という副知事の記者会見発言に驚いた。副知事は、沖縄を米軍の植民地ではないと思っているようだ。もちろん、19世紀から20世紀前半の「植民地」とは違うかも知れない。しかし、米軍は大きな犠牲を払って沖縄地上戦を制したのだ。また、戦後の占領期に、日本の天皇(裕仁)はマッカーサーに、独立後も沖縄の占領を継続するよう申し出た事実もあるではないか。今の沖縄は、戦争によって、敗戦国日本から戦勝国米国に差し出された「植民地同然」の島ではないか。いまさら、「植民地意識丸出しだ」などという抗議が成立する余地はない。

確かに、沖縄がオスプレイ配備に反対だということは知っている。知事が反対派の筆頭だ。県議会は3度も反対を決議し、41市町村の全議会も同調している。2012年9月には配備反対の県民大会が開かれ、10万1千人(主催者発表)が集まった事実もある。13年1月には全市町村の首長らが参加して東京・銀座を、オール沖縄勢力がデモ行進する事態に発展した。今も、確かに反対する県民世論は強く大きい。

しかし、本来この問題の所管は日本の政府だろう。国が米軍のオスプレイ配備計画に異を唱えたことは一度もない。防衛大臣も「不時着水」と繰り返しているではないか。アベ政権は、もの分かりがよい。だから、沖縄県が何を言っても、ワタシたちは本来無視してよいはずなのだ。それを忙しい時間を割いて、面会してやっていることをよく理解していただきたい。

どんな自動車も飛行機も、所詮は人が作った機械だ。絶対安全ということはありえない。オスプレイも、「いつか落ちる」ものなのだ。それが今回であったというだけのことではないか。今回の事故でワタシ自身が問題ないと確信するまで飛行はしないが、もちろんほとぼりの冷めたころには必ず飛行を再開する。ワシントンもオスプレイは引き続き飛行すると判断している。アベ政権も容認、いや歓迎するに違いない。

それでいったい何が問題なのか、聞かせてもらいたいものだ。ワタシには理解できない。
(2016年12月15日)

トランプ政権 発足以前の前途多難

韓国の朴槿恵大統領批判の運動がすさまじい。印象的なのは、デモ参加者の数だけではなく、抗議行動の整然さである。過激に走って暴徒化するなどの行動は見えない。これなら、老若男女誰もが参加可能だ。韓国の民衆の成熟度と政権の未熟さのコントラストが際立っている。これでは、政権はもたないだろう。

韓国の現政権は出だし順調に見えたが、その未熟さで今瓦解しようとしている。さて、注目のトランプ次期政権だが、発足以前から前途は多難である。これも、任期のまっとうを待たずに瓦解するのではないか。滑り出す前から順調ならざる予感。

問題は、2点ある。まず何よりも、多民族・多人種・価値多元のアメリカを否定して大統領選に勝利したトランプである。国民の亀裂ではなく、統合に意を用いなければならないことが当然なのに、この人の直情径行はそれができないのだ。彼に大統領選勝利をもたらした、その彼の性格が結局は国民の分断を煽ることなって、政権の維持が困難となることが予想される。

本日伝えられた下記の事件は、将来の不安を予測させる象徴的なできごとである。
やや、微妙な問題なので、CNNの報道をそのまま全文を転載する。

 ドナルド・トランプ次期大統領は19日、ニューヨークで上演中のミュージカル「ハミルトン」のキャストらに対してツイッター上で謝罪を要求した。前夜の舞台でキャストの1人が、観劇に訪れたマイク・ペンス次期副大統領にステージ上から呼び掛け、「米国の価値観を守って」と訴えたことが「嫌がらせ」に当たるとの見方からだ。

 「ハミルトン」は米建国の父の1人、アレクサンダー・ハミルトンの生涯を描いたミュージカル。ヒップホップの歌と踊り、そして出演者のほとんどが非白人という配役が話題を呼んでいる大ヒット作だ。

 その客席に19日、ペンス氏が姿を見せた。終演後のカーテンコールでキャストの1人、ブランドン・ディクソンさんはペンス氏に歓迎の言葉を述べた後、人権擁護に関する新政権の意向に懸念を抱いていると発言。「あなたがこの作品に感化されて米国の価値観を守り、私たち全員のために力を尽くしてくださることを願っています。私たち全員のために」と語り掛けた。観客からは大きな拍手と歓声が上がった。

 これに対してトランプ氏は19日朝、ペンス氏がキャストから「無礼」な「嫌がらせ」を受けたとツイートし、謝罪を求めた。

 ディクソンさんはツイッター上でトランプ氏に向け、「会話は嫌がらせではありません。ペンス氏が耳を傾けてくださったことに感謝しています」と返した。

 ペンス氏が劇場に入った時、客席からは少数の拍手と同時にブーイングが起きていた。ディクソンさんはカーテンコールで、ブーイングをしないよう観客に呼び掛けた。

 「ハミルトン」の広報担当者によると、ペンス氏は終演後、会場から出ようとしていたが、立ち止まってディクソンさんの言葉に耳を傾けたという。

朝日デジタルは、ほぼ同旨を報道しているが、次の記事が目を惹く。
「トランプ氏はこれまでも、自分への批判などに敏感に反応し、ツイッターなどを通して反撃をしてきた。大統領になることが決まってからも、行動パターンは変わらないようだ。」

朝日が報じるトランプの送信内容に関する記事は以下のとおり。
「19日朝になって、トランプ氏はツイッターで『私たちの素晴らしい将来の副大統領が、ハミルトンの俳優によってハラスメントを受けた。これは起きてはならない』『劇場は常に安全で特別な場所でなければならない。ハミルトンの俳優たちはとても失礼だった。謝れ!』と発信し、痛烈に批判した。

なんとも、大人げない政治家がいたものだ。これが次期大統領である。世界中がその行動を注視していることが分かっているのに、一俳優に「謝れ!」というのだ。しかも、CNNや朝日の報道のとおりであれば、俳優側に非礼はなく、トランプの激昂ぶりは尋常でない。

ペンスの対応ぶりは、単に彼の無能を表している。この素晴らしい舞台設定の機会を生かして、どうしてこう言えなかったのか。
「ディクソンさん。そして観客の皆さん。なんのご心配にも及びませんよ。次期トランプ政権は、必ず米国の価値観を守ります。肌の色や母語を異にしても、国民誰もが幸せとなる国を目指して全力を尽くすことを約束いたします。ですから、皆さん。これから発足するトランプ政権を暖かくご支援ください」と。

こう言わなかったトランプ陣営幹部の無能さが、今後の心配のタネのひとつ。しかし、トランプの言動は、無能ということではおさまらない。最悪のオウンゴールだ。将棋に「バカ詰め」というものがある。通常の詰め将棋は、どうすれば相手の玉を王手の連続で詰めるかを考える。最善手の連続が要求される。バカ詰めは、どうしたら最悪手の連続で最短で自分の玉が詰まされるかを考えるゲームなのだ。言わばオウンゴールの連続手を考えるのだ。

トランプのやったことは、この「バカ詰め」に等しい。挽回の機会はあつたのに、最悪手を連続して、俳優と観劇者だけでなく、CNNの視聴者やアメリカ世論に、「このトランプという男、差別と排外主義の政策を本気でやりかねない」というイメージを深く刻印した。

第2点は、政治とビジネスの混同、そして私物化である。
日刊ゲンダイの記事を引用する。
 就任前の異例のトランプ・安倍会談。ドナルド・トランプがそこに、娘・イバンカとその夫・ジャレッド・クシュナーを同席させたことに、米国内で「政治の私物化」だと批判が上がっている。米経済誌「フォーチュン」(電子版)が18日伝えた。
 イバンカはトランプが経営する不動産会社の副社長。会談に同席したことで、安倍首相が同社を優遇しかねず、国益と個人的な利益が相反する恐れが指摘されている。
 イバンカ夫妻が機密情報に接する権限を持っていないことも問題視されているという。

一方、トランプは新政権の3人の人事を発表。司法長官にジェフ・セッションズ上院議員、中央情報局(CIA)長官にマイク・ポンペオ下院議員、国家安全保障担当の大統領補佐官にマイケル・フリン元国防情報局長官を指名する。いずれも、共和党内の反発をよそに、早期にトランプ支持を表明したことから、“論功行賞”とみられている。
 加えて3人ともガチガチのタカ派。セッションズは人種差別発言で裁判官の任命を拒否されたことがある。フリンは「イスラム教徒を恐れるのは理にかなう」とツイートしている。この人選では、米国内の反トランプデモがますます激化しそうだ。

いま、米国内の反トランプデモは、新政権の土台を揺るがすほどのものではない。しかし、以上の2点は、トランプには修復不可能で、直情径行ツィートも、身内優遇も政権内非宥和も、これから「ますます激化しそう」ではないか。政権発足前に早くも危機の予感。これは珍しい政権と言わねばならない。
(2016年11月20日)

「川柳子愚かな総理で秀句詠み」

川柳こそは、庶民の文芸である。句形以外になんの作法もお約束もない。「俳句はかく解しかく味わう」(虚子)という著作はあっても、「川柳はかく解しかく味わう」はない。誰もが、なんの制約もなく自由に作れる。自由に解釈すればよい。時流に迎合の句も川柳ではあるが、庶民の文芸であるからには反骨の精神あってこその川柳。

朝日川柳欄は、時事ネタに強い。ここ数日のアベ・トランプ会談ネタ。さすがである。「得々と解説するは野暮と知り」であるので、コメントはやめて、同工異曲の一句を付けてみた。

まず確認あなた狸でぼく狐(宮城県 猪又義記)
「まず敬意虎に尾を振るキツネかな」

ハウアーユーそんな程度のことでした(神奈川県 吉井信之)
「ハウアーユーそんな程度に公費出し」

さまでして地球の裏に駆けつける(宮城県 河村麦丸)
「遺伝子に参勤交代朝貢癖」

駆けつけて警護するんだTPP(東京都 三神直)
「かいもなく煙と消えそなTPP」

何となく気が合いそうに見え怖し(埼玉県 忍足ミツ子)
「差別と排外の価値観を同じくし」

この二人強き昔を恋しがり(神奈川県 大坪智)
「強がるは弱き本性隠すため」

なお、駆けつけ警護ネタでは。
武器使用 相手も武器を使用する(東京都 後藤克好)
「武器使用血も流れます死にもする」

操りの案山子(かかし)が似合う稲田かな(神奈川県 高山哲夫)
「つけマツゲみだれ髪異様な閲兵式」

毎日の万能川柳には、時事ネタが少ない。それでも、最近はアベネタが結構多くなっている。こちらも結構ぴりっと辛い。最近の数句。

投書欄見てたら誤字か安倍総統 神戸 酒みちる
「さもあらん立法府の長だもの」

あの人は話が長く語彙不足 宝塚 忠公
「英霊の御霊に捧ぐ誠なり」

米英も政治家てのは変な人 倉敷 中路修平
「変な人政権握って迷惑人」

能力はないが権力ある不思議 大阪 佐伯弘史
「無能者に権力与える民主主義」

官邸にとっちゃ騒音民の声 神奈川 荒川淳
「トランプタワーの二人防音でハーワーユー」

総裁の任期延長やな予感 町田 岡良
「まず憲法の延長確認せい」

戦争を心配してる万柳欄 龍ケ崎 おまめ
「万柳欄?戦争?心配?わしゃ知らん」

国民の皆さんという大雑把 浜松 よんぼ
「皆さんにいつも私は員数外」

自治会長まずは組閣をすると云う 東京 小把瑠都
「クラス会自治会並みのアベ政権」

ついでに、あと幾つか自作を。
「川柳子愚かな総理で秀句詠み」
「アベ総理毎日時事ネタ提供し」なのである。
しかし、川柳子には言っておきたい。
「よいネタと煽るべからずアベ暴走」

さらにおまけ。
「トランプの娘と婿は知る秘密」
「日本人総理と通訳だけが知り」
「アメリカはファミリービジネスカントリー」
「新王朝発足北朝鮮と合衆国」

最後に今日にちなんだ一句。
「立憲主義の月命日や19日」である。
(2016年11月19日)

極右排外主義者同士の「ドン」「シン」会談

よう。オレのファストネームはドナルドだ。ドンと呼んでくれ。
では、ワタクシはシンゾーですから、シンとでも。

オレがドンで、あんたがシン。意味深でいいじゃないか。今後はずっとこれでいこう。
ドンとシンの友情。結構でございます。

あんたとは、ウマが合いそうだ。ドイツやフランスの首脳は、結構うるさいことを言って面白くない。礼儀に欠けるんだな。あんただけが、私に批判めいたことを一切言わないのが、気に入った。
それはもう、ワタクシは身の程をよくわきまえていますから。

メルケルも、オランドも、メイも、みんなヒラリーとおんなじ気取り屋だ。オバマも、オレをバカにしている。あんただけだよ、オレと同類という雰囲気をもっているのは。
そりゃそのとおりです。ワタクシもオバマとは肌が合わない。オバマはワタクシのことは「右翼の軍国主義者」という目で見ていますから。

オレは、「偉大なアメリカを取り戻す」というのがスローガン。
ワタクシは、「戦後民主々義を脱却して日本を取り戻す」。よく似ているのは偶然でしょうか。

お互い、支持勢力が極右の排外主義者。差別のホンネもそっくりだ。民主主義とか人権が大嫌いなところも、よく似ている。
それだけじゃありません。反知性のレッテルがよく似ているし、選挙の前とあとでは、正反対のことを言って平気なことも一緒。お友だちや身内を平気で登用することまで似た者同士。こういうのを、価値観を同じくするって言うんでしょうね。

オレが、次期大統領に決まって以来、全米が湧いているぜ。これまでしおたれていた白人が、ようやく男らしさを取り戻して、ヒスパニックや黒人に威勢を張り始めた。クー・クラックス・クランも眠りから覚めたようだし、ヨーロッパのネオ・ナチ連中も、勢いづいている。
さすがに大きなドンの影響力。でも、ワタクシだって負けてはいませんよ。ワタクシが総理になって以来、日本の差別主義者は勇気百倍、在日に対するヘイトスピーチ・ヘイトデモでの弱い者イジメに懸命です。やっぱり、彼ら右翼は分かるんですね。右翼を支持し差別を推進している、ワタクシの心の内が。

そうだよ、トップの心もちひとつで、国中が変わる。なんてったってアメリカ・ファーストだ。アメリカっていうのは、白人ってことだ。ヒスパニックもムスリムも黒人も「アメリカ」じゃなくて、よそ者だ。民主党の連中は、こんな簡単なことをはっきり言えないから、選挙に勝てない。
日本でもがんばって、在日だけでなく沖縄を差別しています。先日は、内地の機動隊が現地のデモ隊に、「土人」と差別語を浴びせて侮辱しています。鶴保庸介という沖縄・北方担当大臣が、現地の沖縄県民の側に立たずに、土人発言をした内地の機動隊員の擁護に回っています。大臣も、機動隊も、右翼も、ワタクシの気持を忖度してくれています。

ところで聞きたかったのは、あんたの「積極的平和主義」ってやつ。平和主義なんて、あんた嫌いだろう。一人前の男が口にすることじゃない。でも、国民の多くは平和主義が好きだ。そこで「積極的」を付けると、言葉は平和主義だけど、内容は武力行使容認なんだ。このからくりでどこまで国民をだませる?
国民騙しのテクニックは、ワタクシが先輩ですからお教えします。問題は、TPPですよ。以前はTPP反対で、「ぶれない自民党」と言ってました。「反対だけど、アメリカや近隣諸国が望む以上は、聖域を護りつつの交渉参加はやむを得ない」と言って舵を切りました。今では自民党は強行採決までしてTPPを通そうとしています。もちろん、すべてはアメリカへの義理立てでのことです。そんなことをお考えいただき、もう選挙は済んだことですから、TPPについては、候補者としての発言と、行政の責任者としての発言は分けていただきたいところ。

あんた、そりゃ駄目だ。TPP離脱は、オレの公約の目玉だ。他のことはとかく、この公約はアメリカ・ファーストと結びついているんだ。どうしても骨抜きにはできない。
とは言ってもですね。そもそも、自由貿易の伸展は歴史の流れでございまして、貴国の利益にもなることですから、ここは相互主義の立場から譲歩をお願いしたのです。

なんだと。あんたはオレに説教しようというのか。
いいえ、とんでもない。お願いしているだけで。

なら、お断り。こちらは、アメリカ・ファーストの旗は降ろせない。アメリカ・ファーストとは、日本も敵ということだ。
それは上等でございます。こちらも、ジャパン・ファーストの旗は降ろせない。ジャパン・ファーストとは、アメリカが敵ということでございます。

そういえば、お互いが排外主義のナショナリストだ。そもそも利害が一致するはずはないんだ。我が合衆国には、「黄禍」という言葉が伝統としてある。
こちらも一緒でございます。表面は取り繕っても、排外主義者同士が親密になれるはずはございません。我が日本には、「鬼畜米英」という言葉が伝統としてあります。

「リメンバー・パールハーバー」だ。
東京を焼き、広島・長崎に原爆を落としたのはアメリカじゃないか。

今日のところは、決裂はまずい。表面だけは取り繕っておこう。「両者は、日米関係の緊密化こそが、両国の利益のみならず、世界の平和や経済発展にとって、死活的な重要事であることを相互に確認した」くらいの発表で、お茶を濁しておこう。それでいいな。しんきくさいシンよ。

「親密に、将来の夢と希望を語り合った」とか。今日のところだけはね。どんくさいドンよ。
(2016年11月17日)

似た者同士、トランプ・アベの「日本核武装化新時代?」

敬愛するドナルド・トランプ次期大統領閣下。
貴国の従属的同盟国の総理・アベでございます。

大統領選の結果判明のその瞬間まで、私ども官邸は閣下を当選の見込みない泡沫と決めこんで、貴国の次期大統領はヒラリー・クリントン氏と予定した行動をとっておりました。これは、ワタクシの無能な部下の愚行とご寛恕いただきたく、非礼をお詫びするための拝謁の機会を得たくご連絡するとともに、併せて厳粛に属国並みの忠誠を誓約申しあげます。

思えば、ワタクシと閣下とは、人種差別の心情や反知性の粗暴な人格において、また反リベラルの右翼思想においても、排外的なナショナリストとしても、似た者同士と申しあげてよろしいかと存じ、僭越ではありますが、頗る親近感をいだいております。ホンネのところで、これほどぴったりと価値観を共有する同盟国の首脳は他にないとの思いを強くしているところでございます。

閣下同様ワタクシも、従来の保守・中道政権が国民から飽きられたことを奇貨として、右翼を基盤に政権を獲得したのでございます。政権の支持基盤が極端に右傾化しましたから、ワタクシもリベラル派からは悪評噴出して「私の首相ではない」「私たちの政権ではない」「アベ政治を許さない」と悪評さくさく、反発は今なお根強いところでございます。とりわけ、ワタクシの政権になって以来、ヘイトスピーチ・ヘイトデモ・ヘイトクライムが、社会に蔓延いたしました。これも、閣下の場合と兄弟相和するものとして、親近感を強くする所以のひとつなのでございます。

そのような思いから、属国の身をかえりみず、多少はお役に立つべきことを申しあげたいと存じます。

今、閣下は、合衆国大統領への就任を目前として頗る緊張のご様子とお見受けいたします。しかし、ナニ、ご心配には及びません。ワタクシごときに日本国首相が務まるのです。文字通り浅学非才、人格低劣、政治的見識皆無。単なる「右翼の軍国主義者」に過ぎないワタクシにおいてです。閣下に大統領職が務まらぬはずはありません。政策の立案・実行は、すべてしかるべき官僚が行うのですから、御輿の上の木偶人形が緊張したり心配したりの必要はございません。トップというものは、しゃべって物議を醸す生身よりは、しゃべらぬ木偶の方がずっとマシなのでございます。

ただ、これだけはやっかいです。閣下の支持基盤の中核は右翼ないし極右です。激しい人種差別の感情に駆られた排外主義者が貴政権の最も熱狂的な支持者となっています。この支持者の熱狂に応えたいのが、閣下の真意ではあろうと忖度申しあげますが、実はそれがなかなかやっかいなこと。「公約を破るのか」「選挙民を欺したのか」「おまえには何枚舌があるのか」という非難を覚悟で、この右翼勢力を宥めなければなりません。ここがたいへんに難しいところ。

ワタクシも靖国派や日本会議や、諸々の極右勢力の支援によって政権に就きました。この勢力の要望こそがワタクシの政治信条のホンネなのです。ですから、直ぐにでも9条改憲を実現したい。天皇の元首化をはかりたい。全国民に国旗国歌尊重を強制したい。核武装もしたい。沖縄を押さえつけて米軍基地の拡充を実現したい。「神武は実在した」「南京事件は幻だ」という教科書を津々浦々に普及したい。NHKを官邸の広報チャンネルとして純化したい。全閣僚の堂々の靖国神社参拝を実現したい。…願望は、やまやまですができないのです。第1次アベ内閣当時、ワタクシは権力の座にあればなんでもできると思っていまして、憲法改正の序章と位置づけた教育基本法改正には手を付けましたが、それも不十分なままで、結局はそれまで。それ以上のことはできなかったのです。結局は選挙に負けて、前代未聞のみっともないありさまで政権を放棄しました。是非、その轍を踏まれることのないよう、ワタクシを反面教師としてご用心ください。

ところで、問題は日米軍事同盟です。閣下は、選挙期間中日米軍事同盟の片務性を大いに問題にし、「アメリカが日本を守ってやっているのに、日本はそのコストを払っていない」「コストの全額を払わないなら米軍は撤退する」「日本は、核兵器でも何でも持って自国を守るべきだ」と繰り返して来られました。

失礼ながら、閣下が日米軍事同盟やガイドライン、そして沖縄を中心とする目下の基地問題にどれだけ通暁しておられるのか懸念なしとはしませんが、おっしゃっていることには一理あると感服しています。

とりわけ、日本の核武装の問題。日本国民の核アレルギーにはなかなかに根の深いものがあり、残念ながら直ぐには実現する見通しは薄いと考えざるをえません。しかし、これまでの貴国大統領とはまったく立場を異にし、我が国に核武装を促すとは、さすがに見上げた見識。閣下とワタクシとで、日本の民衆の核アアレルギー解消を目標とする「新日米同盟関係」を打ち立てることにご賛同いただけたら幸甚に存じます。

おっしゃるとおり、中国のみならず北朝鮮までが核をもっている北東アジアの軍事環境下で、日本が核に関して丸腰では軍事バランスを欠いて平和が危ういと言わざるを得ません。日本をめぐる国際環境が核開発を許すのなら、幸いに日本はプルトニゥム保有大国です。一部は貴国の要請に応じて返還したとは言え、未だに核弾頭5000発分と見積もられているプルトニゥムは他の用途なく、処理に困っておるところでございます。潜在的核保有国と言われる我が国が、核武装することにさしたる時間は要しません。核爆弾の運搬技術は種子島で実験を重ね、既に軍産学協調の成果として完成の域に達していますから北朝鮮に対して核優位に立つことはいともたやすいこと。

これこそ、新しい核の抑止力に基づく平和を切り開く、「トランプーアベ親密外交新時代」。是非とも国民の核アレルギーの払拭を通じての核抑止力均衡に基づく積極的平和の実現に向かってともに努力を重ねていこうと、かように愚考いたしております。
 誠惶誠恐頓首々々謹言
(2016年11月12日)

敗北したのは、アメリカのエスタブリッシュメントだ。

まさかと思っていたことが現実になった。反知性で、排外主義で、倫理性に欠けた、粗暴な男が、世界最強にして最も富む国の政治指導者になった。これは、文字通りの衝撃だ。ドルが売られて円が買われ、日本の株価も1000円も下がった。世界が動揺していることの表れだ。このトランプショックは、いったい何を物語っているのだろうか。

おそらく、原因は複雑に入り組んで、一義的な解答はあり得ないというべきなのだろう。多様な理解があり得て、一面的に自分に都合のよい見方で割り切ることは避けたいと思う。それでも、何かを言わねばならないという気持になる。

両陣営の対抗軸は何だったのだろう。
 民主党対共和党
 リベラル対コンサーバティブ
 政治家経験者対未経験者
 知性対非知性
 常識対非常識
 グローバリズム対ドメスティック
 自由貿易対保護主義
シリコンバレー対沈みゆくラストベルト
 移民寛容派対排外主義派
 高所得層対低所得層
 勝ち組対負け組
フェミニズム対マッチョ
 女性対男性
 都市中間層対地方ブルーカラー
 カラード対ホワイト
 安定志向対変化願望
 格好付け対ホンネ
 ……
どれもしっくり来ない。

実は、ヒラリーはエスタブリッシュメントのシンボルとなって、敗れ去ったのではないだろうか。エスタブリッシュメントとは、既成の秩序。つまりは、資本主義体制それ自体とその体制の上に築かれた政治的、文化的秩序のことである。その頂点にあるものとしてヒラリーが怨嗟の的となったのだ。

ヒラリーは、トランプと闘う以前に、サンダース現象に遭遇して苦しんだ。サンダース現象こそが、鮮やかにアメリカの抱える問題をえぐり出して見せつけた。貧困と格差の拡大、そしてその固定化である。かつては、「貧しき者も、その汗と努力によってやがては報われる」という、アメリカンドリームの幻想が、貧困や格差の害悪を糊塗していた。しかし、いま、若者たちにその幻想は消え失せている。

貧困や格差の再生産と固定化は、到底自己責任で論じることのできない、不平等感を社会に蔓延させたのだ。資本主義の負の部分を剥き出しにしてよいとする新自由主義が、一握りの極端な勝ち組と、多くの貧困者層との修復しがたい対立構造をつくり出した。このような経済秩序がつくり出した一握りの極端な勝ち組が、エスタブリッシュメントにほかならない。ヒラリーは、ウォール街から金を集めて、そのシンボルとされたのだ。

経済体制がつくり出す不平等や諸々の不合理を、民主主義的政治過程で抑制する。それこそがサンダースの唱える民主社会主義であろう。ヒラリーはサンダースに一定の妥協をする形で、この真っ当な陣営からの挑戦を乗り切った。

しかし、次にヒラリーが対決したトランプ陣営は正体不明のヌエのごとき存在で、結局は対処すべき方法を見つけられなかった。正体不明で多面的なトランプ旋風も、その基本はエスタブリッシュメントに対する怒りであったろう。新自由主義が行き着いた資本主義がもたらした、格差と貧困にあえぐ人びとの怒りである。

グローバルな資本主義に対する不審や不満の運動が、サンダース現象では社会民主主義的な理性ある行動の集積となり、トランプ旋風では、移民排斥や人種差別の粗暴な形で表れた。そのどちらの闘いでも、ヒラリーは格差や貧困の蔓延する社会でのエスタブリッシュメントのシンボルとされ、最終的には敗北したのだ。

本日(11月9日)決着したアメリカ大統領選挙の結果は、ヒラリーの敗北に意味がある。それは、新自由主義・グローバリズムという形の資本主義の行き詰まりを意味している。一方、トランプ勝利の意味は小さい。
(2016年11月9日)

澤藤統一郎の憲法日記 © 2016. Theme Squared created by Rodrigo Ghedin.