澤藤統一郎の憲法日記

改憲への危機感から毎日書き続けています

ワタシが強面のニコルソンだ。オスプレイは、今後も飛ばす。

オスプレイは、墜落したのではない。コントロールされた状態で着水したのだ。確かに機体は大破し乗員二人は脱出時に負傷した。常識的には、これは「crush」(墜落)だろう。しかし、そんなことが今問題なのではない。重要なことは機体が着水直前まで完全にコントロールされた状態にあったことだ。だから、誰がなんと言おうともこれは、「landing on the water」(着水)なのだ。

墜落か着水かを分けるものが、「under control」だ。これあればこそ、パイロットは負傷しながらも住宅や住民の被害を避け得たのだ。沖縄の住民は、重大事故から間一髪のところで、オスプレイ・パイロットの的確な判断と英雄的な行為によって救われたのだ。これは表彰に値する。だから、沖縄県は挙ってオスプレイのパイロットに感謝すべきではないか。少なくとも、負傷の米兵に見舞いの言葉があってしかるべきだ。それを、副知事お出ましの抗議とは筋違いも甚だしい。ワタシは怒りを抑えきれない。机を叩くぐらいのことはする。

貴国の総理大臣も私と同じではないか。彼は、2013年9月7日ブエノスアイレスで開催されたIOC総会の席上、福島第1原発の汚染水排出問題を「The situation is under control」と表現している。その言葉で、東京オリンピック誘致に成功したのだ。当時常識的には、事故後の原発の汚染水が外洋にダダ漏れになっていたことは世界中の人が知っていた。それでも、「under control」だ。「under control」とは、かくも使い勝手のよい便利な言葉なのだ。

もし、私の「under control」がウソだというのなら、貴国の総理大臣も大嘘つきだ。そんな大嘘つきが首相を務める国の自治体が、ワタシに抗議する資格などあるわけはない。

そもそも、米軍が日本を片務的に防衛してやっているのだ。沖縄県も日本の一部ではないか。常々、駐留米軍に対する敬意と感謝の気持ちが足りないことを不満に思ってきた。どうして、そのような不遜な態度がとれるのか。

オスプレイの騒音がうるさいとか、事故の確率が高くて不安だとか、軍人の態度が横暴だとか、遵法精神に乏しいとか、そのくらいのことは、些細なこととして我慢してもらわなければならない。沖縄が、他国から攻めてこられたら、うるさいの、危ないの、不愉快だなどというレベルの問題ではないではないか。守ってもらっていることへの感謝の気持がもっとあってもよいはずなのだ。

オスプレイが沖縄に配備されてから既に4年を経過した。その間事故がなかったことはたいへんなことだ。どうしてこのことを立派なことと言わずに、たった一度の事故らしい事故で、被害もないのに大騒ぎをするのだろうか。

安慶田副知事は、ワタシへの抗議のあとの記者会見を行い、こう記事にさせている。
「安慶田氏によると、抗議の際、在沖米軍トップで第3海兵遠征軍司令官のニコルソン四軍調整官の表情はみるみる怒気に染まっていった。ニコルソン氏は『パイロットは住宅、住民に被害を与えなかった。感謝されるべきで表彰ものだ』と述べた。安慶田氏が『オスプレイも訓練もいらないから、どうぞ撤去してください』と伝えると、『政治問題化するのか』などと話し、テーブルをたたく場面もあったという。」「会談後、安慶田氏は記者団に『植民地意識丸出しだ。私たちからすると、抗議するのは当然だ』と感想を述べた。」

ワタシは、「植民地意識丸出しだ」という副知事の記者会見発言に驚いた。副知事は、沖縄を米軍の植民地ではないと思っているようだ。もちろん、19世紀から20世紀前半の「植民地」とは違うかも知れない。しかし、米軍は大きな犠牲を払って沖縄地上戦を制したのだ。また、戦後の占領期に、日本の天皇(裕仁)はマッカーサーに、独立後も沖縄の占領を継続するよう申し出た事実もあるではないか。今の沖縄は、戦争によって、敗戦国日本から戦勝国米国に差し出された「植民地同然」の島ではないか。いまさら、「植民地意識丸出しだ」などという抗議が成立する余地はない。

確かに、沖縄がオスプレイ配備に反対だということは知っている。知事が反対派の筆頭だ。県議会は3度も反対を決議し、41市町村の全議会も同調している。2012年9月には配備反対の県民大会が開かれ、10万1千人(主催者発表)が集まった事実もある。13年1月には全市町村の首長らが参加して東京・銀座を、オール沖縄勢力がデモ行進する事態に発展した。今も、確かに反対する県民世論は強く大きい。

しかし、本来この問題の所管は日本の政府だろう。国が米軍のオスプレイ配備計画に異を唱えたことは一度もない。防衛大臣も「不時着水」と繰り返しているではないか。アベ政権は、もの分かりがよい。だから、沖縄県が何を言っても、ワタシたちは本来無視してよいはずなのだ。それを忙しい時間を割いて、面会してやっていることをよく理解していただきたい。

どんな自動車も飛行機も、所詮は人が作った機械だ。絶対安全ということはありえない。オスプレイも、「いつか落ちる」ものなのだ。それが今回であったというだけのことではないか。今回の事故でワタシ自身が問題ないと確信するまで飛行はしないが、もちろんほとぼりの冷めたころには必ず飛行を再開する。ワシントンもオスプレイは引き続き飛行すると判断している。アベ政権も容認、いや歓迎するに違いない。

それでいったい何が問題なのか、聞かせてもらいたいものだ。ワタシには理解できない。
(2016年12月15日)

トランプ政権 発足以前の前途多難

韓国の朴槿恵大統領批判の運動がすさまじい。印象的なのは、デモ参加者の数だけではなく、抗議行動の整然さである。過激に走って暴徒化するなどの行動は見えない。これなら、老若男女誰もが参加可能だ。韓国の民衆の成熟度と政権の未熟さのコントラストが際立っている。これでは、政権はもたないだろう。

韓国の現政権は出だし順調に見えたが、その未熟さで今瓦解しようとしている。さて、注目のトランプ次期政権だが、発足以前から前途は多難である。これも、任期のまっとうを待たずに瓦解するのではないか。滑り出す前から順調ならざる予感。

問題は、2点ある。まず何よりも、多民族・多人種・価値多元のアメリカを否定して大統領選に勝利したトランプである。国民の亀裂ではなく、統合に意を用いなければならないことが当然なのに、この人の直情径行はそれができないのだ。彼に大統領選勝利をもたらした、その彼の性格が結局は国民の分断を煽ることなって、政権の維持が困難となることが予想される。

本日伝えられた下記の事件は、将来の不安を予測させる象徴的なできごとである。
やや、微妙な問題なので、CNNの報道をそのまま全文を転載する。

 ドナルド・トランプ次期大統領は19日、ニューヨークで上演中のミュージカル「ハミルトン」のキャストらに対してツイッター上で謝罪を要求した。前夜の舞台でキャストの1人が、観劇に訪れたマイク・ペンス次期副大統領にステージ上から呼び掛け、「米国の価値観を守って」と訴えたことが「嫌がらせ」に当たるとの見方からだ。

 「ハミルトン」は米建国の父の1人、アレクサンダー・ハミルトンの生涯を描いたミュージカル。ヒップホップの歌と踊り、そして出演者のほとんどが非白人という配役が話題を呼んでいる大ヒット作だ。

 その客席に19日、ペンス氏が姿を見せた。終演後のカーテンコールでキャストの1人、ブランドン・ディクソンさんはペンス氏に歓迎の言葉を述べた後、人権擁護に関する新政権の意向に懸念を抱いていると発言。「あなたがこの作品に感化されて米国の価値観を守り、私たち全員のために力を尽くしてくださることを願っています。私たち全員のために」と語り掛けた。観客からは大きな拍手と歓声が上がった。

 これに対してトランプ氏は19日朝、ペンス氏がキャストから「無礼」な「嫌がらせ」を受けたとツイートし、謝罪を求めた。

 ディクソンさんはツイッター上でトランプ氏に向け、「会話は嫌がらせではありません。ペンス氏が耳を傾けてくださったことに感謝しています」と返した。

 ペンス氏が劇場に入った時、客席からは少数の拍手と同時にブーイングが起きていた。ディクソンさんはカーテンコールで、ブーイングをしないよう観客に呼び掛けた。

 「ハミルトン」の広報担当者によると、ペンス氏は終演後、会場から出ようとしていたが、立ち止まってディクソンさんの言葉に耳を傾けたという。

朝日デジタルは、ほぼ同旨を報道しているが、次の記事が目を惹く。
「トランプ氏はこれまでも、自分への批判などに敏感に反応し、ツイッターなどを通して反撃をしてきた。大統領になることが決まってからも、行動パターンは変わらないようだ。」

朝日が報じるトランプの送信内容に関する記事は以下のとおり。
「19日朝になって、トランプ氏はツイッターで『私たちの素晴らしい将来の副大統領が、ハミルトンの俳優によってハラスメントを受けた。これは起きてはならない』『劇場は常に安全で特別な場所でなければならない。ハミルトンの俳優たちはとても失礼だった。謝れ!』と発信し、痛烈に批判した。

なんとも、大人げない政治家がいたものだ。これが次期大統領である。世界中がその行動を注視していることが分かっているのに、一俳優に「謝れ!」というのだ。しかも、CNNや朝日の報道のとおりであれば、俳優側に非礼はなく、トランプの激昂ぶりは尋常でない。

ペンスの対応ぶりは、単に彼の無能を表している。この素晴らしい舞台設定の機会を生かして、どうしてこう言えなかったのか。
「ディクソンさん。そして観客の皆さん。なんのご心配にも及びませんよ。次期トランプ政権は、必ず米国の価値観を守ります。肌の色や母語を異にしても、国民誰もが幸せとなる国を目指して全力を尽くすことを約束いたします。ですから、皆さん。これから発足するトランプ政権を暖かくご支援ください」と。

こう言わなかったトランプ陣営幹部の無能さが、今後の心配のタネのひとつ。しかし、トランプの言動は、無能ということではおさまらない。最悪のオウンゴールだ。将棋に「バカ詰め」というものがある。通常の詰め将棋は、どうすれば相手の玉を王手の連続で詰めるかを考える。最善手の連続が要求される。バカ詰めは、どうしたら最悪手の連続で最短で自分の玉が詰まされるかを考えるゲームなのだ。言わばオウンゴールの連続手を考えるのだ。

トランプのやったことは、この「バカ詰め」に等しい。挽回の機会はあつたのに、最悪手を連続して、俳優と観劇者だけでなく、CNNの視聴者やアメリカ世論に、「このトランプという男、差別と排外主義の政策を本気でやりかねない」というイメージを深く刻印した。

第2点は、政治とビジネスの混同、そして私物化である。
日刊ゲンダイの記事を引用する。
 就任前の異例のトランプ・安倍会談。ドナルド・トランプがそこに、娘・イバンカとその夫・ジャレッド・クシュナーを同席させたことに、米国内で「政治の私物化」だと批判が上がっている。米経済誌「フォーチュン」(電子版)が18日伝えた。
 イバンカはトランプが経営する不動産会社の副社長。会談に同席したことで、安倍首相が同社を優遇しかねず、国益と個人的な利益が相反する恐れが指摘されている。
 イバンカ夫妻が機密情報に接する権限を持っていないことも問題視されているという。

一方、トランプは新政権の3人の人事を発表。司法長官にジェフ・セッションズ上院議員、中央情報局(CIA)長官にマイク・ポンペオ下院議員、国家安全保障担当の大統領補佐官にマイケル・フリン元国防情報局長官を指名する。いずれも、共和党内の反発をよそに、早期にトランプ支持を表明したことから、“論功行賞”とみられている。
 加えて3人ともガチガチのタカ派。セッションズは人種差別発言で裁判官の任命を拒否されたことがある。フリンは「イスラム教徒を恐れるのは理にかなう」とツイートしている。この人選では、米国内の反トランプデモがますます激化しそうだ。

いま、米国内の反トランプデモは、新政権の土台を揺るがすほどのものではない。しかし、以上の2点は、トランプには修復不可能で、直情径行ツィートも、身内優遇も政権内非宥和も、これから「ますます激化しそう」ではないか。政権発足前に早くも危機の予感。これは珍しい政権と言わねばならない。
(2016年11月20日)

「川柳子愚かな総理で秀句詠み」

川柳こそは、庶民の文芸である。句形以外になんの作法もお約束もない。「俳句はかく解しかく味わう」(虚子)という著作はあっても、「川柳はかく解しかく味わう」はない。誰もが、なんの制約もなく自由に作れる。自由に解釈すればよい。時流に迎合の句も川柳ではあるが、庶民の文芸であるからには反骨の精神あってこその川柳。

朝日川柳欄は、時事ネタに強い。ここ数日のアベ・トランプ会談ネタ。さすがである。「得々と解説するは野暮と知り」であるので、コメントはやめて、同工異曲の一句を付けてみた。

まず確認あなた狸でぼく狐(宮城県 猪又義記)
「まず敬意虎に尾を振るキツネかな」

ハウアーユーそんな程度のことでした(神奈川県 吉井信之)
「ハウアーユーそんな程度に公費出し」

さまでして地球の裏に駆けつける(宮城県 河村麦丸)
「遺伝子に参勤交代朝貢癖」

駆けつけて警護するんだTPP(東京都 三神直)
「かいもなく煙と消えそなTPP」

何となく気が合いそうに見え怖し(埼玉県 忍足ミツ子)
「差別と排外の価値観を同じくし」

この二人強き昔を恋しがり(神奈川県 大坪智)
「強がるは弱き本性隠すため」

なお、駆けつけ警護ネタでは。
武器使用 相手も武器を使用する(東京都 後藤克好)
「武器使用血も流れます死にもする」

操りの案山子(かかし)が似合う稲田かな(神奈川県 高山哲夫)
「つけマツゲみだれ髪異様な閲兵式」

毎日の万能川柳には、時事ネタが少ない。それでも、最近はアベネタが結構多くなっている。こちらも結構ぴりっと辛い。最近の数句。

投書欄見てたら誤字か安倍総統 神戸 酒みちる
「さもあらん立法府の長だもの」

あの人は話が長く語彙不足 宝塚 忠公
「英霊の御霊に捧ぐ誠なり」

米英も政治家てのは変な人 倉敷 中路修平
「変な人政権握って迷惑人」

能力はないが権力ある不思議 大阪 佐伯弘史
「無能者に権力与える民主主義」

官邸にとっちゃ騒音民の声 神奈川 荒川淳
「トランプタワーの二人防音でハーワーユー」

総裁の任期延長やな予感 町田 岡良
「まず憲法の延長確認せい」

戦争を心配してる万柳欄 龍ケ崎 おまめ
「万柳欄?戦争?心配?わしゃ知らん」

国民の皆さんという大雑把 浜松 よんぼ
「皆さんにいつも私は員数外」

自治会長まずは組閣をすると云う 東京 小把瑠都
「クラス会自治会並みのアベ政権」

ついでに、あと幾つか自作を。
「川柳子愚かな総理で秀句詠み」
「アベ総理毎日時事ネタ提供し」なのである。
しかし、川柳子には言っておきたい。
「よいネタと煽るべからずアベ暴走」

さらにおまけ。
「トランプの娘と婿は知る秘密」
「日本人総理と通訳だけが知り」
「アメリカはファミリービジネスカントリー」
「新王朝発足北朝鮮と合衆国」

最後に今日にちなんだ一句。
「立憲主義の月命日や19日」である。
(2016年11月19日)

極右排外主義者同士の「ドン」「シン」会談

よう。オレのファストネームはドナルドだ。ドンと呼んでくれ。
では、ワタクシはシンゾーですから、シンとでも。

オレがドンで、あんたがシン。意味深でいいじゃないか。今後はずっとこれでいこう。
ドンとシンの友情。結構でございます。

あんたとは、ウマが合いそうだ。ドイツやフランスの首脳は、結構うるさいことを言って面白くない。礼儀に欠けるんだな。あんただけが、私に批判めいたことを一切言わないのが、気に入った。
それはもう、ワタクシは身の程をよくわきまえていますから。

メルケルも、オランドも、メイも、みんなヒラリーとおんなじ気取り屋だ。オバマも、オレをバカにしている。あんただけだよ、オレと同類という雰囲気をもっているのは。
そりゃそのとおりです。ワタクシもオバマとは肌が合わない。オバマはワタクシのことは「右翼の軍国主義者」という目で見ていますから。

オレは、「偉大なアメリカを取り戻す」というのがスローガン。
ワタクシは、「戦後民主々義を脱却して日本を取り戻す」。よく似ているのは偶然でしょうか。

お互い、支持勢力が極右の排外主義者。差別のホンネもそっくりだ。民主主義とか人権が大嫌いなところも、よく似ている。
それだけじゃありません。反知性のレッテルがよく似ているし、選挙の前とあとでは、正反対のことを言って平気なことも一緒。お友だちや身内を平気で登用することまで似た者同士。こういうのを、価値観を同じくするって言うんでしょうね。

オレが、次期大統領に決まって以来、全米が湧いているぜ。これまでしおたれていた白人が、ようやく男らしさを取り戻して、ヒスパニックや黒人に威勢を張り始めた。クー・クラックス・クランも眠りから覚めたようだし、ヨーロッパのネオ・ナチ連中も、勢いづいている。
さすがに大きなドンの影響力。でも、ワタクシだって負けてはいませんよ。ワタクシが総理になって以来、日本の差別主義者は勇気百倍、在日に対するヘイトスピーチ・ヘイトデモでの弱い者イジメに懸命です。やっぱり、彼ら右翼は分かるんですね。右翼を支持し差別を推進している、ワタクシの心の内が。

そうだよ、トップの心もちひとつで、国中が変わる。なんてったってアメリカ・ファーストだ。アメリカっていうのは、白人ってことだ。ヒスパニックもムスリムも黒人も「アメリカ」じゃなくて、よそ者だ。民主党の連中は、こんな簡単なことをはっきり言えないから、選挙に勝てない。
日本でもがんばって、在日だけでなく沖縄を差別しています。先日は、内地の機動隊が現地のデモ隊に、「土人」と差別語を浴びせて侮辱しています。鶴保庸介という沖縄・北方担当大臣が、現地の沖縄県民の側に立たずに、土人発言をした内地の機動隊員の擁護に回っています。大臣も、機動隊も、右翼も、ワタクシの気持を忖度してくれています。

ところで聞きたかったのは、あんたの「積極的平和主義」ってやつ。平和主義なんて、あんた嫌いだろう。一人前の男が口にすることじゃない。でも、国民の多くは平和主義が好きだ。そこで「積極的」を付けると、言葉は平和主義だけど、内容は武力行使容認なんだ。このからくりでどこまで国民をだませる?
国民騙しのテクニックは、ワタクシが先輩ですからお教えします。問題は、TPPですよ。以前はTPP反対で、「ぶれない自民党」と言ってました。「反対だけど、アメリカや近隣諸国が望む以上は、聖域を護りつつの交渉参加はやむを得ない」と言って舵を切りました。今では自民党は強行採決までしてTPPを通そうとしています。もちろん、すべてはアメリカへの義理立てでのことです。そんなことをお考えいただき、もう選挙は済んだことですから、TPPについては、候補者としての発言と、行政の責任者としての発言は分けていただきたいところ。

あんた、そりゃ駄目だ。TPP離脱は、オレの公約の目玉だ。他のことはとかく、この公約はアメリカ・ファーストと結びついているんだ。どうしても骨抜きにはできない。
とは言ってもですね。そもそも、自由貿易の伸展は歴史の流れでございまして、貴国の利益にもなることですから、ここは相互主義の立場から譲歩をお願いしたのです。

なんだと。あんたはオレに説教しようというのか。
いいえ、とんでもない。お願いしているだけで。

なら、お断り。こちらは、アメリカ・ファーストの旗は降ろせない。アメリカ・ファーストとは、日本も敵ということだ。
それは上等でございます。こちらも、ジャパン・ファーストの旗は降ろせない。ジャパン・ファーストとは、アメリカが敵ということでございます。

そういえば、お互いが排外主義のナショナリストだ。そもそも利害が一致するはずはないんだ。我が合衆国には、「黄禍」という言葉が伝統としてある。
こちらも一緒でございます。表面は取り繕っても、排外主義者同士が親密になれるはずはございません。我が日本には、「鬼畜米英」という言葉が伝統としてあります。

「リメンバー・パールハーバー」だ。
東京を焼き、広島・長崎に原爆を落としたのはアメリカじゃないか。

今日のところは、決裂はまずい。表面だけは取り繕っておこう。「両者は、日米関係の緊密化こそが、両国の利益のみならず、世界の平和や経済発展にとって、死活的な重要事であることを相互に確認した」くらいの発表で、お茶を濁しておこう。それでいいな。しんきくさいシンよ。

「親密に、将来の夢と希望を語り合った」とか。今日のところだけはね。どんくさいドンよ。
(2016年11月17日)

似た者同士、トランプ・アベの「日本核武装化新時代?」

敬愛するドナルド・トランプ次期大統領閣下。
貴国の従属的同盟国の総理・アベでございます。

大統領選の結果判明のその瞬間まで、私ども官邸は閣下を当選の見込みない泡沫と決めこんで、貴国の次期大統領はヒラリー・クリントン氏と予定した行動をとっておりました。これは、ワタクシの無能な部下の愚行とご寛恕いただきたく、非礼をお詫びするための拝謁の機会を得たくご連絡するとともに、併せて厳粛に属国並みの忠誠を誓約申しあげます。

思えば、ワタクシと閣下とは、人種差別の心情や反知性の粗暴な人格において、また反リベラルの右翼思想においても、排外的なナショナリストとしても、似た者同士と申しあげてよろしいかと存じ、僭越ではありますが、頗る親近感をいだいております。ホンネのところで、これほどぴったりと価値観を共有する同盟国の首脳は他にないとの思いを強くしているところでございます。

閣下同様ワタクシも、従来の保守・中道政権が国民から飽きられたことを奇貨として、右翼を基盤に政権を獲得したのでございます。政権の支持基盤が極端に右傾化しましたから、ワタクシもリベラル派からは悪評噴出して「私の首相ではない」「私たちの政権ではない」「アベ政治を許さない」と悪評さくさく、反発は今なお根強いところでございます。とりわけ、ワタクシの政権になって以来、ヘイトスピーチ・ヘイトデモ・ヘイトクライムが、社会に蔓延いたしました。これも、閣下の場合と兄弟相和するものとして、親近感を強くする所以のひとつなのでございます。

そのような思いから、属国の身をかえりみず、多少はお役に立つべきことを申しあげたいと存じます。

今、閣下は、合衆国大統領への就任を目前として頗る緊張のご様子とお見受けいたします。しかし、ナニ、ご心配には及びません。ワタクシごときに日本国首相が務まるのです。文字通り浅学非才、人格低劣、政治的見識皆無。単なる「右翼の軍国主義者」に過ぎないワタクシにおいてです。閣下に大統領職が務まらぬはずはありません。政策の立案・実行は、すべてしかるべき官僚が行うのですから、御輿の上の木偶人形が緊張したり心配したりの必要はございません。トップというものは、しゃべって物議を醸す生身よりは、しゃべらぬ木偶の方がずっとマシなのでございます。

ただ、これだけはやっかいです。閣下の支持基盤の中核は右翼ないし極右です。激しい人種差別の感情に駆られた排外主義者が貴政権の最も熱狂的な支持者となっています。この支持者の熱狂に応えたいのが、閣下の真意ではあろうと忖度申しあげますが、実はそれがなかなかやっかいなこと。「公約を破るのか」「選挙民を欺したのか」「おまえには何枚舌があるのか」という非難を覚悟で、この右翼勢力を宥めなければなりません。ここがたいへんに難しいところ。

ワタクシも靖国派や日本会議や、諸々の極右勢力の支援によって政権に就きました。この勢力の要望こそがワタクシの政治信条のホンネなのです。ですから、直ぐにでも9条改憲を実現したい。天皇の元首化をはかりたい。全国民に国旗国歌尊重を強制したい。核武装もしたい。沖縄を押さえつけて米軍基地の拡充を実現したい。「神武は実在した」「南京事件は幻だ」という教科書を津々浦々に普及したい。NHKを官邸の広報チャンネルとして純化したい。全閣僚の堂々の靖国神社参拝を実現したい。…願望は、やまやまですができないのです。第1次アベ内閣当時、ワタクシは権力の座にあればなんでもできると思っていまして、憲法改正の序章と位置づけた教育基本法改正には手を付けましたが、それも不十分なままで、結局はそれまで。それ以上のことはできなかったのです。結局は選挙に負けて、前代未聞のみっともないありさまで政権を放棄しました。是非、その轍を踏まれることのないよう、ワタクシを反面教師としてご用心ください。

ところで、問題は日米軍事同盟です。閣下は、選挙期間中日米軍事同盟の片務性を大いに問題にし、「アメリカが日本を守ってやっているのに、日本はそのコストを払っていない」「コストの全額を払わないなら米軍は撤退する」「日本は、核兵器でも何でも持って自国を守るべきだ」と繰り返して来られました。

失礼ながら、閣下が日米軍事同盟やガイドライン、そして沖縄を中心とする目下の基地問題にどれだけ通暁しておられるのか懸念なしとはしませんが、おっしゃっていることには一理あると感服しています。

とりわけ、日本の核武装の問題。日本国民の核アレルギーにはなかなかに根の深いものがあり、残念ながら直ぐには実現する見通しは薄いと考えざるをえません。しかし、これまでの貴国大統領とはまったく立場を異にし、我が国に核武装を促すとは、さすがに見上げた見識。閣下とワタクシとで、日本の民衆の核アアレルギー解消を目標とする「新日米同盟関係」を打ち立てることにご賛同いただけたら幸甚に存じます。

おっしゃるとおり、中国のみならず北朝鮮までが核をもっている北東アジアの軍事環境下で、日本が核に関して丸腰では軍事バランスを欠いて平和が危ういと言わざるを得ません。日本をめぐる国際環境が核開発を許すのなら、幸いに日本はプルトニゥム保有大国です。一部は貴国の要請に応じて返還したとは言え、未だに核弾頭5000発分と見積もられているプルトニゥムは他の用途なく、処理に困っておるところでございます。潜在的核保有国と言われる我が国が、核武装することにさしたる時間は要しません。核爆弾の運搬技術は種子島で実験を重ね、既に軍産学協調の成果として完成の域に達していますから北朝鮮に対して核優位に立つことはいともたやすいこと。

これこそ、新しい核の抑止力に基づく平和を切り開く、「トランプーアベ親密外交新時代」。是非とも国民の核アレルギーの払拭を通じての核抑止力均衡に基づく積極的平和の実現に向かってともに努力を重ねていこうと、かように愚考いたしております。
 誠惶誠恐頓首々々謹言
(2016年11月12日)

敗北したのは、アメリカのエスタブリッシュメントだ。

まさかと思っていたことが現実になった。反知性で、排外主義で、倫理性に欠けた、粗暴な男が、世界最強にして最も富む国の政治指導者になった。これは、文字通りの衝撃だ。ドルが売られて円が買われ、日本の株価も1000円も下がった。世界が動揺していることの表れだ。このトランプショックは、いったい何を物語っているのだろうか。

おそらく、原因は複雑に入り組んで、一義的な解答はあり得ないというべきなのだろう。多様な理解があり得て、一面的に自分に都合のよい見方で割り切ることは避けたいと思う。それでも、何かを言わねばならないという気持になる。

両陣営の対抗軸は何だったのだろう。
 民主党対共和党
 リベラル対コンサーバティブ
 政治家経験者対未経験者
 知性対非知性
 常識対非常識
 グローバリズム対ドメスティック
 自由貿易対保護主義
シリコンバレー対沈みゆくラストベルト
 移民寛容派対排外主義派
 高所得層対低所得層
 勝ち組対負け組
フェミニズム対マッチョ
 女性対男性
 都市中間層対地方ブルーカラー
 カラード対ホワイト
 安定志向対変化願望
 格好付け対ホンネ
 ……
どれもしっくり来ない。

実は、ヒラリーはエスタブリッシュメントのシンボルとなって、敗れ去ったのではないだろうか。エスタブリッシュメントとは、既成の秩序。つまりは、資本主義体制それ自体とその体制の上に築かれた政治的、文化的秩序のことである。その頂点にあるものとしてヒラリーが怨嗟の的となったのだ。

ヒラリーは、トランプと闘う以前に、サンダース現象に遭遇して苦しんだ。サンダース現象こそが、鮮やかにアメリカの抱える問題をえぐり出して見せつけた。貧困と格差の拡大、そしてその固定化である。かつては、「貧しき者も、その汗と努力によってやがては報われる」という、アメリカンドリームの幻想が、貧困や格差の害悪を糊塗していた。しかし、いま、若者たちにその幻想は消え失せている。

貧困や格差の再生産と固定化は、到底自己責任で論じることのできない、不平等感を社会に蔓延させたのだ。資本主義の負の部分を剥き出しにしてよいとする新自由主義が、一握りの極端な勝ち組と、多くの貧困者層との修復しがたい対立構造をつくり出した。このような経済秩序がつくり出した一握りの極端な勝ち組が、エスタブリッシュメントにほかならない。ヒラリーは、ウォール街から金を集めて、そのシンボルとされたのだ。

経済体制がつくり出す不平等や諸々の不合理を、民主主義的政治過程で抑制する。それこそがサンダースの唱える民主社会主義であろう。ヒラリーはサンダースに一定の妥協をする形で、この真っ当な陣営からの挑戦を乗り切った。

しかし、次にヒラリーが対決したトランプ陣営は正体不明のヌエのごとき存在で、結局は対処すべき方法を見つけられなかった。正体不明で多面的なトランプ旋風も、その基本はエスタブリッシュメントに対する怒りであったろう。新自由主義が行き着いた資本主義がもたらした、格差と貧困にあえぐ人びとの怒りである。

グローバルな資本主義に対する不審や不満の運動が、サンダース現象では社会民主主義的な理性ある行動の集積となり、トランプ旋風では、移民排斥や人種差別の粗暴な形で表れた。そのどちらの闘いでも、ヒラリーは格差や貧困の蔓延する社会でのエスタブリッシュメントのシンボルとされ、最終的には敗北したのだ。

本日(11月9日)決着したアメリカ大統領選挙の結果は、ヒラリーの敗北に意味がある。それは、新自由主義・グローバリズムという形の資本主義の行き詰まりを意味している。一方、トランプ勝利の意味は小さい。
(2016年11月9日)

4月1日の日米首脳密談

【ワシントン発USO】訪米中の安倍晋三首相は本日(4月1日)、ワシントンでオバマ米大統領と会談した。会談は2度行われ、2度目の会談は秘密会談として行われた。

 秘密会談では、冒頭オバマ氏が安倍氏に対して、沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場の移設を巡る訴訟で、日本政府と沖縄県が和解して移設工事が中断していることを重大な問題として指摘し、「移設計画が大幅に遅れることが必至ではないか。このことは日米間の信頼関係に重大な影響を及ぼすことになる」と叱責した。

 これに対して、安倍首相は「普天間基地の名護市辺野古への移設は沖縄県民の強硬な反対世論によって、これを強行することは到底不可能な事態に立ち至っている。辺野古基地新設工事は、現在中断しているにとどまらない、実は断念せざるをえない」ことを説明し、アメリカ側の理解を求めた。

 オバマ氏は大いに驚き、「辺野古への移設が不可能であれば、世界一危険な飛行場と言われる普天間は、いつまでも現状維持となることを沖縄県民は覚悟しなければならない」と述べたが、ここで安倍氏のさらに驚くべき発言が続いた。

 「普天間を現状のまま放置する選択肢はあり得ません。もし、そんなことを私の口から言えば、沖縄県民の反米・反政府感情が沸騰するというだけではなく、安倍内閣が崩壊を免れません。県内移設は断念というだけでなく、普天間基地の維持も諦めざるを得ないのです。是非とも、このことをご了解ください。」「軍事専門家も、今や必ずしも沖縄に海兵隊基地を維持する必要はないと言っていることもあり、この際に辺野古移設を断念するだけでなく、普天間基地の全面撤去もやむを得ないと判断した次第です。」

 さらに、安倍氏はこうも続けた。「今、辺野古移設を強行した場合には、安倍政権が7月の国政選挙で勝てないというだけでなく、反米的な政権に取って代わられる危険さえあります。日本には『急がば回れ』ということわざがあります。あるいは、『損して得取れ』『小の虫を殺して大の虫を活かせ』などとも言います。小の虫に過ぎない沖縄の海兵隊基地維持はすっぱりと諦めて、親米安倍政権の存続という『大の虫』を生かしていただくよう伏してお願い申しあげます。」

 オバマ氏は、苦虫を噛み潰したような表情でしばらく沈黙したあとに、このように発言した。「私は、レームダック状態にありながらも、キューバと国交を回復することで、多少は後世に名の残る仕事をした。辺野古移設の断念と、移転先なしの普天間基地撤去によって懸案の抜本解決ができるのであれば真剣に考えてみよう」

さらに、もう一つの議題である環太平洋パートナーシップ協定(TPP)についてオバマ氏は、「公開の会談では、『これが最優先の議会(承認)案件だ』としたが、実は議会の承認は無理な情勢だ。また、次の大統領に誰が就任するにせよ。今の大統領選での論戦をみていれば、新大統領がTPP推進の立場に立つとは到底考えられない。」と述べて、一転して悲観的な状勢認識を吐露した。

これに対して、安倍氏も「実は、TPPは我が国でもすこぶる評判が悪い。我が国でも、TPPの承認を強行すれば、政権がもたないと心配せざるを得ないのです。」「加えて、TPP担当大臣が、あっせん利得処罰法違反を指摘されて立件されかねない立場にあり、後任大臣が無能で知られた人物となったのです。」「そんなわけで、TPPも強行すれば安倍政権の命取りとなりかねないのです。」と応じ、両首脳は、表面上はともかく真意のところではTPP承認の推進を見送る方向で一致した。

さらに、安倍首相から、オバマ氏に対して、2点の要請があった。
ひとつは、5月に開かれる主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)において、伊勢神宮を公式行事の場として使用することは日本国憲法の政教分離原則に抵触することになるので、伊勢神宮との公的な接触は厳に避けていただきたいとの要請があり、オバマ氏はこれを了解した。

また、公開の会談においてオバマ氏が「自分が大統領として日本を訪問するこの最後の機会に、日米関係をさらに良くする努力をしたい」と述べたことに関連して、安倍氏はこう提案した。

「そのようなご努力の一環として、是非とも、広島の原爆資料館だけでなく、東京夢の島の第五福竜丸展示館を訪問の上、日本人の核なき世界への強い願いをご理解いただきたい」。この唐突な提案に対してオバマ氏は、極めて意外なことを聞かされたとの様子をみせながらも、大いに喜んで「せっかくのお申し出を実現する方向で検討させていただきたい」と応じた。

会談はこの間1時間近くに及び、前半は不穏な雰囲気であつたが、最後は両者笑みをかわして面談を終えた。

なお、最後に、オバマ氏からこの秘密会談の内容については議事録を作成しないこと、秘密は厳格に守るべきことの確認を求め、安倍氏はこれに応じた。したがって、以上の内容が公表されることはない。
(2016年4月1日)

若者よ、安倍晋三の反知性に学ぶな。サンダースのカネに綺麗な格好良さに学べ。

アメリカ大統領選挙の予備選挙から目が離せない。2月9日のニューハンプシャー州予備選開票結果が、ひときわ興味津々たるものとなった。

まずは共和党。
「9日夜、支持者の前で勝利宣言したトランプ氏は開口一番、『なんて素晴らしいんだ。我々は偉大な米国を取り戻しつつある』と誇らしげに語った。トランプ氏が掲げるスローガンは、『偉大な米国を取り戻す』。政治経験はなく、イスラム教徒入国禁止や全不法移民の即時強制送還など、過激で現実離れした主張が目立つが、政治家としての『経験』よりも『変化』を望む共和党支持層に浸透した。」(読売)

ならず者トランプのスローガンは、「偉大な米国を取り戻す」なのだ。いま、「偉大な米国」は、何者かによって奪われ、失われている。その認識を前提に、奪われた「偉大な米国」を「何者かの手から」取り戻さねばならない。そう、大衆のナショナリズムの感性に訴えて、支持を獲得しているのだ。反知性の「にわか政治家」が、反知性の大衆に語りかけるには、「偉大な米国」を「取り戻す」という論法がうってつけだというわけだ。

「偉大なアメリカ」を「美しい日本」に置き換えれば、安倍晋三の論法そのままである。「活力ある大阪」に置き換えれば橋下流だ。「偉大なアーリア人国家」を「ユダヤ人の手から取り戻せ」といえば、ナチスのスローガン。すべて、兄たりがたく弟たりがたし。

そして、真っ当な政治戦で歴史的な開票結果となった民主党。
「サンダース氏は9日夜、大歓声をあげる支持者を前に笑顔で手を振り、『偉大な我が国の政府は、一握りの裕福な選挙資金提供者のものでなく、すべての人々に属するものだ』と強調。同氏はウォール街など一部富裕層と政治の癒着を指摘。ウォール街への課税強化や貧富の格差是正、公立大授業料無償化、国民皆保険導入などを訴え、この日も「勝利は、まさに『政治革命』の始まりに他ならない」と訴えた。」(朝日)

さすがサンダース。政治とカネの真髄を語っている。「一部富裕層と政治の癒着」こそが諸悪の根源なのである。クリントンは「一部富裕層と癒着した政治の担い手」として、この選挙に敗れたのだ。この意味は、とてつもなく大きい。まさに、革命的というべきではないか。

政治資金と賄賂、本質的にその差はない。人が政治にカネを注ぎ込むのは、政治からの見返りを求めてのことである。政党や政治家がカネを受けとれば、スポンサーに利益を還元する政策を実行しなければならない。だから、「一握りの裕福な選挙資金提供者」はウォール街に利益をもたらす政治を求めて、莫大な政治資金を提供するのだ。大企業が累進課税に抵抗し逆進性の高い消費増税を求めて、企業献金をしているのだ。アベ政権がそれに応えて、貧乏人への増税で財源を捻出し、大企業と大金持ちに減税しているではないか。企業経営者が、企業への規制緩和の政治を求めて巨額の裏金を提供している例もある。

古今東西を問わず、カネをもらえば縛られる。カネを出したら報われる。スポンサーと政治家の持ちつ持たれつの醜悪な関係が結局政治のあり方を決めてきた。アメリカ大統領選挙こそ、資金力が当落を決め、スポンサーを潤す政治が行われた典型例として怪しまれなかったではないか。

サンダースの選挙はこれまでの常識を逆転した。政治資金の潤沢は、「一握りの裕福な選挙資金提供者との癒着の証明」となった。企業や富裕層からの支持は、マイナスイメージに暗転した。社会を貧富対立の階級構造から見る立場からすれば、当たり前のことだが、今までなかったことが実現したのだ。

これから先、クリントンの巻き返しを予想する声も高い。それでもなお、ニューハンプシャーの開票結果は、持たざる陣営に限りない希望を与えるものとなった。富裕層からのカネで買われない候補者が、格差や貧困をなくする政治を実現する希望である。がんばれサンダース、熟年の星。

ところで、本日の東京新聞「こちら特報部」の欄で、「高校生未来会議」なる存在を初めて知った。明らかにシールズ対抗を意識した体制派動員組織。というよりは、アベお手盛り組織。こちらの方に、文科省や教育委員会がいちゃもん付けることはないのだろう。

3月に全国から150人を集めて2泊3日の「全国高校生未来会議」なる合宿イベントを行うという。場所は、衆議院第一議員会館。見逃せないのは、「交通費も宿泊費も支給する」と明言していること。その金の出所は企業の寄付金なのだ。要するに、紐のついた金で、金をもらうことに抵抗感のない無自覚な高校生をあつめて、アベ流の政治教育をしようというのだ。

サンダースが、カネに綺麗なことでアメリカの若者にアピールしている一方で、日本の若者が体制派に金で釣られようとしている。日本の若者よ、サンダースを見よ。サンダースを支持しているアメリカの若者たちを見据えよ。

「全国高校生未来会議」に集おうとしている高校生諸君に言いたい。
キミたち、格好悪いぞ。キミたち意地汚いぞ。キミたち、みっともないぞ。精神が貧しいぞ。
そして、忠告しておきたい。金をもらえば縛られるのだ。高校生未来会議なんぞに関わると未来が失われる。人生の大損をするぞ。

人の精神は若いときほど自由でしなやかなのだ。キミたちは、いま何ものにもとらわれず、自由に誰の意見をも等距離で聞いて自分を形成することができる。当然に反体制、反アベの選択も自由。実はこれが、若さの大きな特権なのだ。年を経るにしたがって、人は次第にしがらみを身につけていく。このしがらみは、精神の自由をも奪う。考え方も表現や行動も自由でなくなるのだ。現にあるこの社会の体制に適合せざるを得ないと自ら自由を捨てることが、多くの人にとって大人になるということだ。悲しいがそれが現実だ。キミたちは貴重な精神の自由を謳歌せよ。安倍晋三ごとき者の策略に乗って、金をもらって縛られる愚挙をやめよ。歴史修正主義として名高く、自ら「私を右翼の軍国主義者と呼びたいなら、そう呼んでいただきたい」などという人物の手の内で躍ることをいさぎよしとしてはならない。

安倍晋三の反知性ではなく、サンダースのカネに綺麗な格好良さを学ぼうではないか。
(2016年2月10日)

民主社会主義者の米大統領誕生で、歴史にインパクトを

アメリカ大統領選の予備選が実に興味深い。共和党のトランプとクルーズは、言葉の正確な意味で「ならず者」、あるいは「ゴロツキ政治家」というべきだろう。排外主義と極端な宗教保守主義をウリにし、いずれもその非寛容の政治姿勢を示すことで、右派の民衆から熱狂的支持を獲得している。アメリカの反知性と暗部を象徴しているとしか形容すべき言葉を知らない。

一方、民主党である。ヒラリー・クリントン独走の構図が崩れて、バーニー・サンダースが本命に躍り出た。2月9日ニューハンプシャー州の予備選挙では、サンダース圧勝を予測する複数の世論調査結果が公表されている。これは凄いことだ。サンダースこそがアメリカの希望を象徴している。

かくて、アメリカの光と影、リベラルと極右が、大きな対立とせめぎ合いを見せている。アメリカが抱えている深刻な矛盾をリベラルの側から解消するとすればサンダース。極右の側から切り込めば、トランプかクルーズ流に。アメリカは両極化の様相なのだ。

アメリカの抱える深刻な矛盾とは、格差と貧困であり、それがもたらす絶望である。中間層が没落し、若者が未来に展望を見出しがたい現実。希望を見出しがたい社会は、当然に荒れる。暴力と犯罪がはびこり、刑務所が満杯になっている。これが、レーガノミクスから始まった新自由主義が到達した社会だ。さらに、宗教や文化に対する非寛容が加われば、テロの温床はバッチリだ。まさしく、アベノミクスがもたらすであろう日本社会の先取りの姿にほかならない。

アメリカの抱える矛盾への対応策としては二つの基本手法が考えられる。まずは、社会の矛盾を解消するのではなく、矛盾に対する不満や批判を押さえ込む手法だ。難民は受け入れない。マイノリティーの宗教も文化も押さえ込む。テロも暴力も犯罪も厳罰をもって徹底して取り締まる。刑務所は必要なだけ増やせばよい。かくて、マイノリティーの主張を一掃し、不平や不満を表に出さないよう封じ込めば、いっときながらもマジョリティーにとっての住みごこちのよい社会ができあがる。

もう一つは、この社会の格差や貧困を社会悪として、これをなくすことを目指すやり方だ。いまやアメリカ社会の財産と所得分布の不公平は耐えがたいものとなっている。ならば、所得や財産の再分配が必要だ。これに手を付けなければならならず、ウォール街との闘いが避けられない。これが、サンダース自らが、「民主社会主義者」と称する所以であろう。

民主社会主義(democratic socialism)であって、社会民主主義(social democracy)ではない。民主的(democratic)という形容は付けながらも、自らを社会主義(socialism)を信奉する者(socialist)だと広言しているところが見事である。

アメリカの社会で政治的影響力を持とうとすれば、自助努力こそが大切とする、経済的自由主義を逸脱することは考えられなかった。いま、自らを民主社会主義者(democratic socialist)と規定する人物が有力な大統領候補となり、若者層から熱烈な支持を得ているという。そのことを必然化するだけのアメリカの深刻な現実があるのだ。

サンダースは急進的な格差是正策を前面に打ち出し、最低賃金の大幅な引き上げや、大企業や富裕層への増税などを訴えている。国民皆保険や公立学校の無償化などが政策の目玉として話題となっているが、これは他と切り離された個別政策ではなく、格差、貧困の再生産を防止するための政策という位置づけ。その政治姿勢について、1月26日の毎日新聞に現地で取材する西田進一郎記者の次の記事が分かり易い。

「『多くの人々を助ける計画を紹介してきたが、現実的にお金はどう手当てするのか』集会では、格差是正を中心課題に据え、公立大学の無償化などを掲げるサンダース氏に対し、こんな質問が浴びせられた。クリントン氏との差が縮まってきたことで、政策の詳細にも少しずつ焦点が当たり始めている。
サンダース氏は政策実現に必要な予算について、税制の『抜け道』を使っている企業への課税や、最富裕層への増税を充てると説明。タックスヘイブン(租税回避地)などを使った企業の課税逃れを無くすことで1000億ドル(約12兆円)を徴収し、社会基盤整備に投資して雇用を生み出すなどと説明した。
公約に掲げる国民皆保険制度の実現には、10年間で約1700兆円必要との試算がある。集会で司会者から増税について尋ねられたサンダース氏は『増税する。しかし、個人や企業の保険料もなくす』などと説明した。」

所得再分配を実現するために、企業課税を強化し、個人所得課税の累進制を強化するのは常識的な手法である。サンダースは、その政策を推し進めることを掲げて大統領選を闘うことを公表し、その掲げる政策故に支持を獲得しているのだ。企業減税の大盤振る舞いをして、庶民増税を押しつける、安倍晋三流の経済・財政政策とは真逆の政策である。

ニューハンプシャー州予備選を控えての、サンダースとクリントンの討論会が報道されている。「民主党の立候補者を2人に絞った討論会は今回が初めて。両候補の政策の違いが浮き彫りとなった」(BBC日本語版)とのことだから、関心をもたざるを得ない。結局は、サンダースの政策にクリントンが引っ張られているではないか。

毎日新聞の西田記者報道は、両者の討論を、「『体制派』対『反体制派』」の構図を作りたいサンダース氏に対し、これを否定して『実績と政策の実現可能性』に焦点を当てたいクリントン氏が反撃し、火花を散らした」としている。

「クリントン氏はエスタブリッシュメント(体制派)を代表しているが、私は普通の米国人を代表している」。サンダース氏は、クリントン氏が自分や自分を支持するリベラル層や若者たちとは異なる立ち位置にいると再三印象付けようとした。クリントン氏が『進歩派』を自称することについても、かつて『穏健派』と表現していた発言を持ち出して否定した。

これに対し、クリントン氏は『私を体制派とみなしているのは一人(サンダース)だけだ』と反論。サンダース氏が、金融業界(ウォール街)からクリントン氏側への資金提供に触れ、同氏は中間層や労働者家族に必要な変化をもたらすことはできないと批判すると、『あなたや陣営がやってきた巧妙なレッテル貼りはやめる時だ。政策課題への見解の違いについて話そう』と強い口調でまくし立てた。」

金融業界(ウォール街)とつながり、ここから政治資金の提供を受けていることが、「非進歩派」「体制派」の烙印と見なされ、明らかにマイナスシンボルとされている。格差、貧困の抜本是正をテーマとする選挙では、その格差や貧困の張本人である財界との関係が厳しく問われる。政治資金をウォール街に依存していることは、それだけで非難される材料になるのだ。これまでのアメリカの選挙とは明らかに様相を異にしている。

サンダースの問題提起に、クリントンが振り回されているという構図。また、サンダースがTPP反対の立場を明確にし、クリントンもこれに追随せざるを得ない論戦となっているのも興味深い。

これは、ひょっとするとひょっとするのではないか。初の女性大統領もみたいところだが、女性というだけでは稲田朋美のような極右もいる。「民主社会主義者の米大統領」の実現の方が、はるかに世界と歴史へのインパクトが強い。
(2016年2月7日)

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