拝啓 菅良二今治市長殿
御地はもう躑躅と藤の季節でしょうか。しまなみ海道の島々も、そろそろ初夏の潮風が吹きわたる頃かと存じます。
今治市内の松山刑務所・大井造船作業場から受刑者が逃走してから1週間が経過しています。諸事、なにかと話題の今治市ですが、市長の大任ご苦労なことと拝察申しあげます。
さて、本日(4月16日)各紙の報道で、貴職が報道各社の取材に応じて、加計学園が経営する岡山理科大学獣医学部新設計画に関連する発言をなされたことを知り、筆を執りました。
先に中村時広愛媛県知事が報道機関に対して、県職員が作成した文書の写を示して、2015年4月2日に、県職員や今治市職員、そして加計学園の幹部職員らが、首相官邸を訪れたこと、当時首相秘書官だった柳瀬唯夫氏と面会し同氏が「本件(加計学園設置案件)は、首相案件」と述べたことが明らかにされています。その旨、県には報告されていると、知事ご自身が率直に述べていらっしゃるところです。
したがって、報道機関の関心は、県職員と同様に今治市の担当職員も、当然に柳瀬氏と面会した際に同氏が「本件は、首相案件」と述べて親身のアドバイスをしたであろうことの確認であったはずです。
ところが、あにはからんや、貴職は「『首相案件』という言葉については『今回の報道で(初めて)目にした』と述べ、自身は『聞いていない』と否定した」旨報じられています。これは到底信じがたいところです。
既に愛媛県知事ご自身が語られたように、「愛媛県の職員には、事実を曲げる何らの動機がない」ことは明白です。一方、これを否定する柳瀬秘書官や安倍晋三首相の側には、事実を事実として認めるわけにはいかない、敢えて事実を否定し、あるいは曲げなければならない動機が大いに存在するところではありませんか。
のみならず、中村知事が県職員の作成と認めた文書とほぼ同じ内容の文書が、獣医師行政を所管している農林水産省で見つかってもいます。既に、真偽・正邪・黒白・理非・曲直は紛う方なく明白になっていると断じざるを得ません。貴職が真実の側につかず、首相や秘書官の側、すなわち虚偽と不正義の側の立場を選択されたことを、今治市民のために不幸なことと、まことに残念に思います。
貴職は、担当の市職員から事情を聞き取ったとしながら、県職員作成の文書に記されている内容や面会相手については、「市情報公開条例に基づき、非開示としておりコメントを控える」と述べたということです。しかも、そのコメントを控える理由について「国や県に迷惑がかかってはいけない。マイナスのイメージがあってもいけないから」と説明したと報じられています。僭越ながら、これは、貴職の見識不足も甚だしいと、厳しく指摘せざるを得ません。
また、別の報道では、非開示の理由を「国や県は一緒に取り組んできた仲間だから、迷惑は掛けられない」と説明したともされています。まことに語るに落ちたとはこのことで、貴職は「真実を語れば、国や県に迷惑をかけることになる」とおっしゃっておられるのです。
真実よりも、「国」や「県」が大切。市民のために真実を語ることよりも、国や県に迷惑をかけてはならないことが、より大事なのだと言っておられるのです。
敢えて申しあげます。真実は、権力に抗してこそ明らかにされなければなりません。政権に不都合で、迷惑がかかる文書であればこそ、これを適正に作成し、保管し、公開する意義があるのです。安倍政権に迷惑がかかるから公開できない、コメントもできないとは、民主主義のイロハもご存じないと慨嘆せざるを得ません。
かねてから、加計学園加計孝太郎氏には、政治権力に擦り寄って、教育をビジネスにしてきた、との悪評芬々たるものがあります。世人の見るところ、その加計孝太郎氏や、腹心の友安倍晋三首相らの「悪だくみグループ」と、愛媛県や今治市とは一線を画すものと受けとめてまいりました。自治体は、政治と結託した政商に利用された被害者だとの認識です。愛媛県の姿勢はこのことを裏書きしています。
ところが貴職の本日のコメントは、今治市も悪だくみの仲間だったのか、と認識を新たにせざるを得ません。今や、安倍政権は沈みかけた船ではありませんか。これまで、安倍一強に擦り寄っていた人々も、我先に船から逃れているありさまではありませんか。今、安倍政権に義理立てしようとしている貴職の態度は、よほどそうせざるを得ない後ろめたい事情なしには考えられないところです。
しかも、天網恢々疎にして漏らさず、とか。是非とも、真実を語っていただきますよう、お願い申しあげます。しからざれば、監査請求・住民訴訟・情報公開請求訴訟等々の法的手段で、今治市民が貴職を法的に追及し糺弾することになることと思い、僭越ながら助言申しあげる次第です。
匆々
(2018年4月16日)